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45/56

45:実験

王城から秘密裏に学園に帰り、僕は同好会のメンバーに頼んでその日から、ある実験を始めた。


「わ~!コボル、かわいい」


サリー先輩が契約している幻獣は、犬に似ているコボルだった。大型犬ぐらいの大きさだが、毛がモフモフでとても温厚。


「お昼寝してたら、隣に寝てたんだ~」


なんとも和やかな、光景だったことだろう。だが、幻想圏で昼寝はやめた方がいいと思う。次は、ニック先輩。王家に連なる方はいったいどんな幻獣を使役しているのだろうと、わくわくしていると、


「もういるよ?」

「??」


一体どこにいるのだろう?先輩をよーく観察すると――、先ほどまではなかったスカーフ・・・?と思ったら動いた!スネルクだ。


「真っ白で美しいだろう?あちらでも、透けるほどの淡いピンクなんだ。大きさは三倍くらいあるけど」


幻獣との相性なのかはわからないが、みんな個性的だった。気が付くと、モアがいた。そのモアと同じくらいの大きさの、真っ黒な短毛の足長、ねこ?


「オレの幻獣、コヨーテだ。」


ねこの様にきりっとした目。だが、ピンととがった耳。口元はネコに近い。足先手先に白い模様が入っている。ゆらゆら揺れる尻尾、かわいい


「触ったら、怒りますかね?」

「かじられるから、やめとけ!」



最後はカタルフィー先生。


「私は、ここで出してしまうと大変な事になりますので、また今度にしましょう」


先生の契約している幻獣は、ギャントギガム。山ぐらいの大きさのまさに巨人だ。なぜ契約に至ったのか、ぜひお伺いしたいが、今は時間がないので、また今度――。






「【ヨル、座って。お腹なでさせて】」



ここはスカーと僕の部屋。そこにいるのは、ダン先輩と、コヨーテのヨル。実は、本契約から左目に魔力の流れを感じることができるようになっていた僕は、ヒマな時間、特訓に明け暮れていた。ケガから回復するまでの間、本当に時間が有り余っていたので、1人で、実験と鍛錬を繰り返していた。



その時にわかった事が、意識して、魔力を循環させると、左目に術式が浮かび上がる。これをスカーに解読してもらったのだが、見たこともないとお手上げだったので、これは後回し。次は、僕の意思で幻獣がお願いを聞いてくれるのかの実験。モアで試したのだが、ダメだった・・・。



わからない事ばかりで、つまらなくなってきたので、魔力を流し、感じ取る事だけは毎日やりながら、日々を持て余していたある日、魔力循環をさせながら、昔、母が歌ってくれた歌を口ずさんだ。すると、いつの間に現れたのか、モアがお座りしていた。もっともっと、という感情が伝わってきたので、魔力を言葉に乗せるような感覚で、言ってみた。



「【スカーに思いっきりジャレついてきて】」



その瞬間、モアが目の前から消え、それと同時に隣の部屋から、うわっ!という声が聞こえた。成功だ。それから密かに、僕とスカーの検証が始まったのだ。



「おいおい、ウソだろ?オレの命令も、ときどき無視する気まぐれ屋が、大人しく腹を撫でさせてる・・・だと!」


「ダン、この事を知っているのは、ここに居る3人だけだ。誰にも話さないでくれ。」

「・・・、確かにこんな事が公になったら、モリア、連れて行かれるぞ」


「それか、王家とか、偉い人の為に使われる、超高級奴隷になるでしょうね。」

「それが分かっているのなら、むやみに力を使わない事。いいな?」


「でも、緊急事態の時は使えるように、練習させてください。守りたい時に守れない力なんて、いりません」

「おっ!こんなチンチクリンでも、男だな。モリア!」

「【ヨル、噛め!】」


「わー!やめろバカ野郎」



久しぶりに3人で騒いで、珍しくスカーがお腹を抱えて笑っていた。こんな時間が、もっと長く続いて欲しいと願いながらも、タイムリミットは迫ってくる。






ちょうど3日前、ガスタルバーグ、スラム街から暴動が始まったと知らせが入った。そして昨日、クケルトでも、謎の部隊との交戦が始まった、と王都新聞が騒ぎ立てていた。学園の生徒は冬期休暇のため、帰る準備をしていた生徒も全員、安全が確認されるまで待機となった。



――早朝4時半――



まだ太陽も登らない、凍てつく朝方。外套をすっぽりとまとった、人物が一人、足早に図書館の塔のある方へと向かっていた。協力者に頼んで作ってもらった合鍵で、そっと侵入する。


こちらの方から入るのは、実に何年ぶりだろうか?彼とわくわくしながら辿った道を、今はひとり淋しく進む。だが、これも彼のため。最後には2人で笑って過ごせるようになる。そう信じてここまで、進んできたのだ。その実現まであと少し―――・・・。



通路も開け、ここへ続く道の扉もすべて開けてきた。あとは、朝日が昇ると同時に、開幕の花火が上がれば、スタートだ。もうだれにも止められない。ここに大勢の敵が流れ込んできて、この国は終わる。そうすれば、彼は自由だ。その前に、彼を迎えに行って安全な場所に逃げなければ―――



「おはようございます?」



思ってもみなかった声に、サッと体制を低くして、背中に挿してあるサーベルの柄に手を添える。今までだって何度も、何度も、命のやり取りは経験してきた。本当に危なかったときだって何度もあった。大丈夫、声も、気配も一人分だ。



「早いですね。あッ、初めまして、知っているかもしれませんが、僕モリアと言います。ユリウスさん、ですよね。」


そう言って、顔の見えるところまで出てきたのは、どこにでもいる平凡な顔立ち。少し珍しいのは、漆黒の髪色くらいだろうか?それなのに、こいつは彼の隣にいる。最初から許せなかったのだ。だって、この5年、彼の隣はずっと空いていた。それは、僕の事が忘れられなかったからだろう?



だから、本当は10年ほどかかる計画を、僕は短くした。彼の隣にすぐ戻れるように―――。それなのに、彼の隣に当然のようにいる、こいつが許せなかった。だから、何度も消えてくれるように、計画を練ったのに、上手く行かなくて・・・。そっちから、のこのこ来てくれるなんて、なんて都合がいいんだ。



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