42:その後
どのシーンに年齢指定を入れたらいいか不明ですが※R15いれときます。
迎えに来てくれたのは、バロルだった。普段の豪華な馬車ではなく、その辺を走っていそうな、質素な馬車に着がえと、暖かな飲み物が用意されていた。
「緊急護符を使うなど何事かと思いました。お怪我などございませんか?とりあえず、お話は帰ってからいたしましょう。」
そう言って、僕たちを馬車に乗せると、御車台にバロル自ら乗り込み手綱を握った。確かによく見ると、バロルがいつもの服装ではなく、ボロの外套を身にまとい、馬車と違和感がないようにしていた。僕は、ホッとしたのか、揺れのせいなのか、眠くなってきた・・・。
「モリア」
名前を呼ばれ、目が覚めた。だが、まだ眠気の方が強くて、横にある暖かなものから離れがたく、いやいやと首を振ると、
「モリア、もう屋敷につく、このままでは風邪を引いてしまうから、風呂に入るぞ。起きろ」
寝ぼけながら体を起こすと、横にあった暖かなものとは、スカーの肩だった。いつの間に横に座っていたのか、よくわからなかったが、僕はスカーに手を引かれるまま、馬車を下り、屋敷の大浴場へ連れて行かれ、服を脱ぎ、髪の毛を洗ってもらい、泡立ったスポンジを手渡され、意識がはっきりする頃には、しっかり湯船につかっていた。
「はぁ~また、このまま寝れそうだ――。」
「風呂で寝るな。危ないだろう」
すぐ横で浸かっていたスカーを見ると、洗った髪を結い上げていた。浮き上がる鎖骨、上がり切れていない後れ毛、温まって頬に差す紅色――。
だが、がっつり割れたシックスパック、剣を握るもの特有の手。うッ、うらやましくなんかないんだからね・・・。
「ふふっ、じろじろ見てうらやましがっていたと思ったら、どうでもいいや、と言うような心情は一体なんだ?」
「神様は、不公平だー!と、一瞬思いましたが、顔の造形は、どうしようもできませんが、肉体はスカーの努力の結果なので、うらやむ暇があるのなら、筋トレにはげめって話ですし、僕は、不特定多数にモテるより、1人で十分だと思ったまでです。」
「・・・俺だって、1人で十分だ。」
「へぇー、ちなみに、どういった子がタイプなんですか?」
「――・・・これと言ってタイプは無い。好きになった子がタイプって事じゃないか?」
「僕に聞かれても?それなら、今まで誰かを好きになった事ってあるんですか?」
「・・・、あれが恋だったのかは、わからない。でも、今のはちゃんとわかる。」
「??そうですか。僕には、まだよくわからない感情なので、はっきりわかったら教えてくださいね」
そろそろ逆上せそうなので、先に上がることにした。このポカポカしている感じはお風呂のせいなのか、スカーの心情だったのか僕にはまだわからない。
※
入浴の間に学園には、連絡を入れてくれていたみたいだ。それから、スカーと話し合い、ナダルグ様に手紙を書いて、魔伝令便ですぐに送った。それからすぐ、スカーと僕はある部屋に通された。
「今回は緊急案件と言う事で、魔鏡をあちらとつなぎます。」
鏡魔石と言うものが存在する。昔は鉱山があったらしいのだが、乱獲し過ぎて、今では出ても少量。鉱山があった頃に、鏡魔石を作って作られた魔術具、お互いの姿を映し、声を届ける。つながった、あちらの部屋にはナダルグ様と夫人がいて、こちらにはスカーと僕だ。
「スカー、手紙は読んだ。あそこに書かれていたことに、間違いはないか?」
「姿をしっかりとこの目で見たわけではないので、断定はできませんが、声、話し方から間違いないかと・・・、それに、モリアが一緒にいた人物が老師であると言いました。」
「横から失礼します。はい、あの声は、間違いありません。それに、間違いだったとしても、この国で何かを仕出かす事、武器が大量にあったことだけは事実です。」
「・・・、わかった。私が王城に行き、王に直接伝えよう。」
「待ってください。その役目、夫人にお願いすることはできませんか?」
生意気な事を言っているのは重々承知だが、これは勘だ。確信はない。だが、ナダルグ様は領地を離れない方がいい。そんな予感がする。
「――・・・、すみません。うまく言えないのですが、ナダルグ様は領地に残ってください。お願いします」
「モリア様を信じます。あなたは、残ってください。わたくしが、行きますわ。」
「はぁ―――・・・わかった。その代わり、ナディも連れて行きなさい。出発は明朝、今から準備を」
「モリア様、スカー、すぐ行きます。決して、勝手に動いてはいけませんよ。」
そう言って通信は切れた。今夜は僕たちも解散かと思ったが、スカーの部屋に夕食を用意しているらしく、僕はスカーの部屋に通された。まず、一口ワインを飲んだ。そして、あたたかなスープと少しのパン、チーズをかじったら少し肩の力が抜けた。どうやら思っていたより緊張していたようだ。スカーもグラスを片手にソファーに深く腰掛けリラックスしている。
「あの通路は、どういう経緯で作られたものなのでしょうね?」
「今回の話は、下手に広げていい話ではないから、ニック先輩に聞くのもな・・・。」
下手したら、王家の醜聞を隠ぺいするために誰かが死ぬ・・・身震いしてしまった。夫人が到着するのに2,3日かかるとして、それまでに何ができるのか。
「あぁ、母様に手紙を出さないと!」
「そうだ!悠長にしている場合か?」
「いえ、あの町は知らせがなかったとしても、大丈夫です。むしろ相手の方が、ヤバいと思いますが――、とりあえず知らせておきましょう。王族が関係している事は伏せて、危険が迫っている事だけ。あとは、母様と、義兄が何とかするでしょう。」
「そう言えば、義兄殿は、どういった人物なんだ?見たこともないのだが・・・?」
「リームデイル・クケルト。父と前妻との間の子どもです。今年28ですね。まぁ、あの人は・・・、神経質で繊細、なのでなるだけ領地から出ないので、社交の場にも行ったことはないと思います。幼馴染と結婚して、子どももいますし――。」
ただ、昔たった一度だけ伸ばした手を、振り払われたことがあった。ちょうど今の僕くらいの年だっただろうか?なぜあんな目を向けられたのか、僕にはわからない。だが、あれ以来、誰かに手を伸ばすことを止めたのは覚えている。
「――・・、すまないモリア。なるほど、こんな風に見えるのか・・・。次からは、俺に手を伸ばせばいい。必ずつかんで、離さないから」
何と答えていいのか、わからなかったが、ふっと口元が緩み、一口ワインを含んだ。




