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39:僕のはなし

初めにしなければいけない話は、僕の生まれ育った、クケルト男爵領の特殊さからだった。ピリア王国辺境北部手前、特にこれと言った特産も何もない、辺境に守られ、楽をしている・・・、と王都周辺の貴族家は思っている。これは、わざとそう思わせるように王家、および一部の上位貴族が作ったうわさだ。



辺境が防衛の要なら、僕の実家は第二次防衛であると同時に、亡命者を受け入れる領地だった。遡る事、数百年前――。もともとこの土地は、盗賊やはぐれ者たちの里だった。そこに王国が軍をさし向けて一掃しようとしたが、この里、ちゃんと長がおり、統率もしっかりとれていたので、落とすことが出来なかったどころか、返り討ちにあい、王家の面目丸つぶれ。



そこで、丸ごと仲間に取り込んでしまえと、里長に準男爵位を与え里が町になり、エルラドになる前の国の戦いで功績を残し、男爵になった。今でも当時の名残なのか、入ってくる人間を必ず受け入れ保護する。



「それで、今までトラブルは無いのか?」

「トラブルだらけですよ?亡命にかこつけて、間者も入ってきますので!でも、亡命してくる方達って、荒くれ者だけではなく、政敵に敗れて逃げてきた頭脳派の人や、元暗部の方たちも多いので、変なのはサクッと居なくなります。」



実は、僕の母様も高級娼婦なんてしていましたが、どこで生まれ育ったのかなど一切知りません。何かありそうな気はしますが、今の所、困っていることもないので、聞いたこともありません。


僕は、幼少の頃から、母は忙しく、町には年の近い子供もいなかったので、近所に住むお兄さん、お姉さんによく遊んでもらいました。ときどき、おじさんおばさん達も参戦して、



「どんな遊びだったんだ?」

「う~ん・・・、一番古い記憶では、まず食べられるものと、そうでないものの見分け方から、教わりました。それから、毒物の扱い、抽出の仕方、野営の仕方に、動物、人間に限らず急所を教えてもらったり。ただ、運動神経だけはいくら教えてもらっても、いまいちだと言われました。」



身体能力的に、これ以上伸びないと分かると、今度は、元宰相や元暗部だったおじさんたちが、人間の心理的誘導方法、表情の隠し方、それとなく相手を操る方法などを教えてくれた。拷問方法は初期の段階で挫折した。



「まぁ、このような感じで、特殊な職業についてらっしゃった方たちの、第二の人生を送る町が僕の実家と言う訳です。では、ここから本題に入って行きますね」


「ちょっと待て、突っ込みたいところは山ほどあるが、そこはあえて置いておく。これが本題だったんじゃないのか?」


「いえ、全く。むしろ関係ないくらいなんですが、この特殊事情を話さないと、たぶん話の意味が分かりづらかったので、説明しました。それでは、話しますね。スカーは、僕が老師、アクア、ユリウスの三人組を見逃したのは覚えていますね?」



夏季休暇にあった事件。そこに関わっていたユリウスと老師、そしてスラムの仲間だと思っていた、アクア。カルラとメルラは後にその事を知り、怒りと落胆をない混ぜた感情をあらわにしていた。


「でも、実は彼も、いやいや従っていたんですよ。」



僕は、一度だけ彼と2人で話す機会を得た。そうなるように誘導したんだが・・、その時、彼とした取引はふたつ。一つは、カルラたちに黙っておく代わりに、撤退ルートのリーク。もう一つは、亡命の提案だった。昔、教わった事の中に、相手の目をじっと見て、そいつが自分のために動いているのか、誰かのために動いているのか見極めろと言われたことがある。



そこで、誰かのために動いている奴で、なおかつ、それを脅しの材料にされているのなら、助けて、手ゴマにしろ。そいつは絶対お前を裏切らない。



「僕は彼に、お土産を渡したんです。」



人通りのない裏路地――



「話をしていても焦っていないと言う事は、盗聴の類は無いと言う事ですね。でも、監視は付いていると言う所でしょうか?」


「――・・・、そうだ」


彼は小声で僕の問いに答えてくれた。


「僕にはあなたが喜んで従っているようには、見えません。もしかしたら、力になれるかもしれません。話してもらえますか?」


彼は、たぶん期待していない。だが、もう、藁にも縋る思いなのだろう。吐き捨てるように話し始めた。


「もう知ってると思うが、俺はエルラド人だ。あの国は――、ハリボテだ。貧富の差が激しく、俺は貧民街で仲間たちと一緒に何とか生きていたが、仲間が一人、病にかかった。」


そこまで聞けば、あとは想像することは容易い。たぶん、保護という名目の元引き離され、彼は仕事と言うかたちで今回の依頼を受けたのだろう。


「仲間の方に会えていたのですか?」

「あぁ、潜入してからは無理だったが、それまでは手紙や、顔を合わせることも出来た。」


秘密を知り過ぎた彼は、消される可能性が大きい。彼の仲間も、現段階で生きているのか不明だ。それでも、希望がないと人は生きられない―――。




「彼を含めて6個。ペンダントを渡したんです。必ず全員、身に着けておくことを念押ししました。」

「ペンダントなんてよく持っていたな。」


「露店で買った安物です。実は、大事だったのはペンダントではなく、そこに付けている特殊塗料の方だったんです。」


うちの町にいる、自称:錬金術師が開発した塗料は、これまた仕組みは不明だが、波動が出るらしい。それをキャッチするアイテムを持っている奴らが、実はいろいろな国にいる。



「あとは、任せておけば、保護して町に案内される仕組みです。」



僕が寝込んでいる間に、手紙が来ていた。人数は5名――。結局、病気にかかっていた仲間は、知らない間に亡くなっていたらしい。知らされていなかったアクアは、しばらく荒れたらしいが、何とか心の整理は付いた。それから、エルラドに潜入している、こちらの仲間の手引きで、亡命に成功した。今では、5人で何とか生活しているらしい。



「なので、彼らのおかげで町の何人かの手が空いたので、王都に侵入して、僕の寝込んでいた2カ月の間、諜報活動をしてもらっていました。」


「・・・何かわかったのか?」


「はい、大変興味深い事がわかりました。」



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