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36:当事者の口から語られる2

その日は、週末休みだったにもかかわらず、珍しく父上からの呼び出しがあった。


「父上からの呼び出しなんて、珍しいな。王都の屋敷だし、ユリウスも行くか?」


軽い気持ちで誘ったのだが、ユリウスは、スカーが珍しいと思う位なら、とても大事な用事だと思うから遠慮すると、俺とダンを学園から送り出した。屋敷につき、バロルに父の執務室に案内された。


「ただいま戻りました。父上。何かあったのですか?」


そう言って部屋に入ると、まずはソファーに座りなさいと言われたので、それほど緊急事態が起こっているわけではないと、ほっとした。バロルがお茶の用意をし、壁際に控えたのを確認してから父からこんな言葉が出た。



「最近、カンティー男爵家の次男ユリウスをそばに寄せているらしいな。」


今まで一度だって、交友関係に口を挟んでこなかった父からの言葉に、驚いたと同時に、うれしかった。いかに彼が気が合うのかを俺は父に話した。最後まで黙って聞いてくれた父から、



「スカー、彼の父親、カンティー男爵はここ最近、あまりいい噂を聞かない。そこで、彼の息子であるユリウスとも、しばらく距離を置きなさい。」



心にヒビが入ったような気がした。そして、沸々と怒りがわきだした。それは、大人の事情であって、俺が彼と友情を築くのに、何の関係があるのだろうか?両親は仕事が忙しく、それをわかっていた俺は、今までわがまま1ついった事は無い。次期跡取りとしての、期待にも応えられるよう、学業をおろそかにしたことだってない。



それなのに、唯一の、本当に気心の知れた友人を、取り上げようとするこの父親に、俺の心はぐちゃぐちゃになってしまった。それから、何と答えて、どうやって学園に戻ってきたのか覚えていない。しばらく父上の顔は見たくなかった。



部屋に籠って出てこない俺を心配したのだろう。ユリウスは、食堂で二人分の食事をお願いして、俺の部屋へと運んできた。


「スカー、両手が塞がっているんだ。この扉を開けて、2人でご飯を食べよう。」



その前に、ダンも訪ねてきていたのだが、父上の手先の様にダンの事を感じてしまい、部屋に入れなかった。ダンが、ユリウスに頼んだのだろうか?悪いことをしてしまった。今度は罪悪感で動けないでいると、


「スカー!僕、見て分かる通り、腕力ないんだ。早くしないと・・、もう、限――界・・・ッ」


急いで扉を開けて、トレーを引き受けた。



「今日もおいしかった。スカーも食べられたね。・・、ねぇ、御父上に何か言われたの?」


ユリウスはとても鋭い。俺は貴族教育で、表情をコントロールしているつもりなのだが、いつも気づかれてしまう。


「それは、――僕について?」


ポーカフェイスを保つが、


「あっ、やっぱりそうだった。なに?もう関わるなとか、屋敷に呼んだらダメ、とか言われた?」


こんな事が伝わると、ユリウスが傷ついてしまうので、必死に隠そうとしたのだが、


「スカー、僕はそんな事ぐらいじゃ、傷つかないよ。君は優しいね。」

「違う!傷つかないんじゃない。傷ついていることに、気づいていないだけだ。なんで、大人の事情に俺達を巻き込むんだ――・・・。俺は、本当は・・、後継者になんてなりたくなかった」



それまで我慢していたモノが、一気に爆発した。ずっと小さい、子どもの頃から溜めていた不満、すべて泣きながらユリウスに話していた。


「――、辛かったね。でも、えらかったね。スカー」


そう言って、ユリウスは俺を抱きしめてくれた。そして、今度は僕の番だと、自分の幼少の頃の話をしてくれた。



もともと母が平民で、男爵家で下級のメイドをしていた事。そこで男爵に手を出されユリウスを身ごもった事。それを知った男爵が、王都の平民街にユリウスと母親をひっそりと、お金を握らせ追い出した事。7歳の時、母親が流行病で亡くなった事。それから男爵に引き取られ、義母と義兄につらく当たられているが、父親は見てみぬフリをしている――・・・。



「だからね、僕も学園にいる時間が一番楽しい。ありがとう、スカー。君のおかげだ」



ユリウスは、高等からさらに大学部まで勉強して、幻獣や幻想圏の研究者になりたい、と話してくれた。功績を上げて、あの家から必ず開放されるのだと、だから、多少の事ではへこたれたりしない。そう言って笑っていた。



お互いの深い部分を話したからか、俺とユリウスはそれまで以上に親密な関係になった。だが、それが壊れ始めたのは、いつからだっただろうか・・・?



初等部3年の夏季休暇――。父上とは、ユリウスの一件から、いまだに関係がぎくしゃくしていた。なるだけ顔を合わせたくなくて、セバスとバロルにお願いして、父上がどちらかの、屋敷に行くタイミングで入れかわりに帰ってきていた。



「坊ちゃん、いつまでも、このままではいけませんよ?」


この頃は、セバスの言葉も煩わしかった。


「わかってる。ユリウス、行こう」




3年に上がってから、幻想圏の事を学校で習うようになった。この夏、大人の介入しない領地屋敷の外れの森で、俺とユリウスは禁止されている幻想圏へ2人で行き、俺は山の守護者、スコティウェリルと契約を交わした。



しばらくは誰にも契約には、気づかれなかったのだが、モアは子どもで好奇心旺盛。勝手にこちら側に来てしまうことが、今より何倍も多かった。それにより、屋敷のものに気づかれ、母上からは驚愕、父上からは失望の顔でみられた。


家族の溝は深まるばかりだったが、あの頃の俺にとっては、どうでもよかった。本当に俺の事を理解してくれる存在が、いたからだ。



それが崩れたのが、夏季休暇が終了してしばらくの事だった。実は、俺がモアと契約したことが分かってすぐ、ユリウスは男爵領に帰されてしまったのだ。手紙のやり取りはあったが・・・、そう言えば、ここしばらく返事が来ない。どうしたのかと思っていたが、学園でまた会えるだろうと、気にしていなかった。



「ガスタルバーグ君、ちょっと」



担任に呼ばれたので、廊下に出ると、迎えが来ているから、今すぐ早退しなさいとの連絡だった。いったい何が起こっているのか分からなかったが、とにかく急いで馬車に乗り、王都の屋敷へと向かった。



「スカー、あなたは無事だったのね。良かった」



そう言って、馬車から下りた俺を抱きしめたのは母上だった。そばにはナディもいる。俺は何が起きているのかさっぱりだった。




思った以上に長くなる・・・まぁ、いいか!

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