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34:愛されていると言う事

茶会の日から10日も経っていたことに衝撃を受けた。それから、それまでに起きた出来事を説明され、仮契約から、勝手に契約したことを謝罪された。


 

「了承を得ずに、進めてしまった事、本当にすまない。謝って許される事ではないのだが――」

「モリア君、本当に危険な状態で、あなたの生死がかかっていたのです。」


様子を見に来ていたカタルフィー先生もあの時の状況を思い返しながら、説明してくれた。



「別にかまいません。あっ、そうだ、スカー、あなたもあのお茶会のあった日、何か嫌なことがありませんでしたか?僕、自分の感情ではない感覚が沸いていたのですが、襲撃(しゅうげき)でそれどころでは無くなってしまったので、忘れていました。」



襲撃の事というより、あの痛かった記憶を思い出したくなくて、その前の事を考えていたら、そう言えばと思い出したことを、何も考えず口に出した。すると、また胸の中に、苦いような、もやッとした感情が沸いた。あぁ、これが、契約したことによる弊害かと、身をもって体感した。



「――・・、スカー、とりあえず謝罪は受け取りました。そして僕は、許します。あなたも、そこまで考えこみ過ぎないようにしてください。申し訳ないのですが、まずは、母と少し話す時間をもらってもいいですか?」



母は、亡くなった父の代わりに領地の運営をしている。もうすぐ義兄が継ぐことになっているが、引継ぎが難航しているみたいなのだ。なので、早く帰してあげないといけない。母の入室と入れ替えに、スカーたちは退室して行った。



「母様、心配をおかけしました。」

「そうね、ちょっと今回はびっくりしたわ。でも、モア、領地から出てよかったでしょう?」


私のおかげよね?と言いたげな母の顔に、敵わないと思った。


「はいはい、母様のいう通りです。」

「まぁぁぁ!あの素直に、母様すごい~ってお目目を輝かせていた、私のかわいい坊やはどこへ行ったのかしら?」

「ここですが?」


いつもの掛け合いに、母と二人笑う。あぁ、生きててよかった。


「冗談はさておき、母様、引継ぎはどうなっているのですか?」

「う~ん・・・、予定より押してるわね」



やはり、母一人に負担が大きすぎる。そう思っていた時、ノックの音が響いた。入ってきたのは、ガスタルバーグ一家。



「大勢で押しかけて申し訳ない。しかし、そろそろ私も仕事で行かなければならなくてね。妻と娘も領地に帰るそうだ。そこで、今回のお詫びと言っては何だが、何か望みがあったりしないだろうか?」



公爵様の申し出に、僕はすぐにのった。



「では、公爵様、クケルト男爵領に優秀な補佐官をお付けください。今、母が一人で支えている状況です。ですが、我が領は貧しく、優秀な補佐役を雇う余裕がありません。」



僕の提案を、公爵様は快く引き受けてくれた。他に望むことはと聞かれたので、十分ですと言うと、



「すぐに手配しよう。私の事は次から、名前で呼ぶように。それでは、次はモリアのもっと元気な姿で会えることを楽しみにしている。」

「本当に助けていただいた事、感謝しています。次は、領地の屋敷でお会いしましょう。」

「モリア様、お大事になさってください。それから、お兄様の事よろしくお願いします。またお会いしましょう」



そう言ってナダルグ様たち3人は、部屋を出て行った。母様も、仕事をしてくると部屋を出て行き、スカーと2人になった。



「慌ただしくて、すまない。」

「いえ―――・・・、」



母とも話が出来、公爵様たちもいなくなったことで、ほっとしたのか、疲れが出たのか、急激に眠気がやってきた。まだ自分でうまくバランスが取れないので、背中にたくさんの枕やクッションが入っているので、横になる事が出来ないのが、ちょっと不満だ。そんな事を考えていると、


「眠くて、横になれないのが不満か?・・・なんでわかったのかという顔をしているな。モアは・・、幻獣は言葉を話せないから、状況を見て推測するしかなかった。合っているか?」


そう言って、障害物をどけて横にさせてもいながら、


「はい、なんだか不思議な感じです。」


「正直に――・・・、気持ちが悪いといってもいいんだ・・・。」


「それを言ったら、僕だってスカーの感情を覗いているのと同じです。気持ち悪いですか?険悪します?後悔してますか?」


「そんなわけ!」

「それなら、それなら僕だって同じ気持ちです。」


しばし沈黙が場を支配したが、ふわふわと夢見心地の今のうちに、普段は口にすることを(はばか)られる事を言ってもいい気がした。


「僕は、記憶のある頃から父が、病床に()していて、誰にも甘えることが出来ませんでした。義兄がいましたが・・・、僕に興味はなかったみたいです。友達もおらず、家族にも頼れない。物語の中だけが生きがいで、母に心配をかけない様に、表情をあまり表に出さない様になりました。だから、誰かに心情が筒抜けなのは、恥ずかしいような、不甲斐ないような、戸惑いが大きいんです。」



言葉もだが、この言葉にしがたい感情が届いているのなら、伝わってくれ―――。




「――・・俺も、公爵家長兄であり、防衛の要である街の次期当主として、感情のコントロールは叩き込まれた。だから、確かに、誰かに、この心が伝わっているというのは、どう表現していいか、わからない感情だ。モアの場合と、モリアの場合は勝手が違う。どれが正解なのか、俺にもわからない。」


「それなら、とことん話し合いましょう。幼少の頃からの誰も知らない話も、恥ずかしいと思っていた夢の事も、諦めた苦い思い出だって、全部聞きます。そして全部言いますから、聞いて・・くださッい――・・・。」


もう目が開けていられなかった。体は休息を求めている。


「わかったモリア、目が覚めたら、聞いてもらいたい話がある。絶対話すから、最後まで聞いてくれ。まずは俺の話からだ。だから、今は回復のために、眠れ。・・・おやすみ」



なにかを固く決意する感情をキャッチした所で、僕は眠りに落ちて行った。


誤字脱字、気を付けてはいるのですが、見逃していたら、微笑ましくスルーしてくださるか、優しく通報してくださるか、よろしくお願いします。

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