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28:スカーの留守とお茶会

先輩の回路調節は、1週間に一度になったある日。


「モリア、すまない。」

「なにがですか?・・、スカー?」


あれからしばらく経つが、まだ呼び名には慣れず、ぎこちない。毎回スカーにクスッと笑われるのがセットだ。


「俺は、明日からしばらく領地に帰ることになった。父上からの呼び出しだ。なるだけ、1週間以内には戻ってこれるよう何とかするつもりだが、もし間に合わなかった時は、カタルフィー先生にお願いしたから、先生を頼ってくれ。」



どうも領地でトラブルが発生したらしく、スカーとダン先輩が行くことになったらしい。


「学生なのに大変ですね。」

「俺は嫡男だし、領地が広いから、早いうちから学んでおかないとな。父上が防衛のため出陣した時など、母上と俺で代理領主をしなければならないしな。」



やる事が多すぎて、母上と二人でなんとか回している状態らしい。これを優秀な部下がいるとは言え、1人でしている父上は、いい意味で化け物だと思っていると話してくれた。これを将来自分がしなければと思うと、時間が足りないと感じるらしい。



「それなら、気を付けて行ってきてください。僕の方は最悪、事情を知っている誰かに、魔力をもらえばいいだけですから」



そうは言ったが、スカーと契約してから、一度だけダン先輩の魔力を供給してもらったのだが、なんだか・・・、美味しくなかった。何を言っているんだと、自分でも思うのだが、本当に満足できなかったのだ。



「なるだけ急ぐ。」

「怪我とか事故の方に気を付けて、安全第一で帰ってきたください。それから、モアを僕の方に付けるはやめてくださいね!これは譲りませんから!!」



仮とは言え、契約してから、気づいたことがある。スカーは、懐に入れた人間にとても甘い。本当に甘い。激アマだ!自分の身を守ってくれるであろう、モアを僕の方に付けていると知ったのは、ここ最近ダン先輩が密告してきた。



もともと、室内に籠る僕にどんな危険が迫るというのか、コンコンと説教してしまった。それからは控えてくれるようになったが、たまにモアの気配を感じるので、様子見はさせているようだ。実は、その時に気づいたことがある。モアは僕にバレない様に、こちらでの実体に変化するのではなく、幻想圏の時の姿でうろついていた。



その姿は、他の人間の目に映る事は無く、気配も感じない。僕が感じ、見ることが出来るのは、この瞳に融合しているモノのおかげみたいだ。自分が人間から離れて行っているような気もするが、どこまで出来るのか、検証してみたい気もする。本当にしたら、怒られるでは済まないかもしれないが・・・。



回路の調節のために出発を遅らせていたのか、スカーはそのままの足で、呼びに来たダン先輩と一緒に馬車に乗り出発して行った。







それからの数日は、これと言って問題はなかった。実は、あれから不気味なくらい、ディスペルが大人しい。こりて反省してくれていればいいのだが、ああいったタイプは、身を滅ぼすくらいの何かをするまで、止まらない事だってある。考えすぎても仕方ないが、頭の片隅に留めて、警戒しておくに越したことはない・・・。



「こんにちは」

「・・、こんにちは、ニック先輩。なんだかとっても、お久しぶりな気がしますね?」

「そうだね。ちょっと後片付けが、忙しくて、やっと一息付けたよ。」


ニック先輩の後片付けとは、ガスタルバーグ領の事だろう。確かに、王族まで話を、通していた方がいい案件で、でも、表に出せない――・・・。お察しします。


「それに、後片付けしてたら、新たな問題が、僕の知らないところで、発生しててね・・・。」


あッ、これ、バレているというより、報告したんですね。

「・・・すみ、ません・・・?」

「なんで疑問形?」

「僕はある意味、被害者です」


責めてないよ。ごめんね・・・と王族に謝られた僕はどんな顔をしていたのだろう。



「気を取り直して、モリアの事はスカーから聞いたよ。彼が領地に帰っている間、僕がなるだけサポートするから遠慮なく頼ってね。それから、これは、モリアにとってはいいお知らせとは言えないかもだけど・・・、はい、これ。」



そう言って渡されたのは、1通の招待状だった。







あの日、ニック先輩の渡されたのは、お茶会の招待状だった。差出人は―――ガスタルバーグ公爵夫人。スカーのお母様だ。領地にお邪魔させてもらった、夏季休暇、結局一度もお会いすることなく、帰ってきたので、会えずじまいだったのだが、今回、社交シーズンに向けて一足早く、王都の屋敷に滞在しているため、よかったら次の週末、娘と、ニック先輩、僕と夫人の4人でお茶会はどうですか?という内容だった。



本音を言うと断りたい!!でも、下位貴族が上位貴族の招待を断ることなど・・・ムリ。そして、スカー、妹さんいたのですね。知らなかったです。こうして、週末の予定が決まり、ニック先輩に返事をチェックしてもらいながら、手紙を託した。



「着ていく洋服がないので、断るとか・・・?」

「王都だからな、それなりの貸衣装屋がある。今から呼ぼうか?」

「!下手に動きづらい格好で、粗相をしたら困りますので、制服で行きます!」

「賢明な判断だ。ふふッ――、夫人はただ君に会ってみたいだけだ。領の窮地を救った恩人だと思っているのだから、取って食われたりなどしないよ。」





見事な秋晴れだった。つい最近お邪魔させてもらったような気がするのだが、あの時と庭の装いが変わっている気がした・・。緊張をほぐすために、窓の外を眺めていたのだが、馬車が止まった。


従者が到着を告げ、扉を開ける。僕の前に座っていた、ニック先輩は組んでいた長い足を外し、優雅に外に出た。それから、続いて僕が出ようとすると、外に立ちながら、手を差し出しているニック先輩がいた。



「・・・僕は、男ですよ?」

「手を貸すのに、男も女も関係ない。それに、王族の手を借りるなんて、今後の人生で2度目があるかわからないよ?」


そう言ってニック先輩は、いたずらっぽくウィンクした。確かに――、なんて納得しながら手を借りる僕も大概だと思ったが、ここは素直に手を置いて馬車を下りた。



「奥様と、お嬢様がお待ちでございます。」



そう言って出迎え案内してくれたのは、バロルだった。


人物が増えると、名前をど忘れしてしまう・・・。

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