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20:3日間サバイバル、スタート

長い長い、学園長の話からやっと解放され、いよいよ校外実習初日がスタートした。とはいっても、まだ学園の敷地内だ。これから転移陣を通って各自、森へと移動する手はずだ。ちなみに、森の場所は極秘事項に含まれており、正確な場所は教師陣でもごく一部しか知らないらしい。



「いよいよだね。」


実は一番ワクワクしているのがジルベルト君だった。どうも彼tは今まで結構な箱入りだったらしく、今回の演習が初外泊。いやいや、初の外泊が野宿って、とは思ったがそこは何も言うまい。水を差すのも野暮だしね。



「それでは、次の組、どうぞ。全員しっかり手をつないで、陣の中央に行ってください。手を離してしまうと、思わぬところへ行ってしまうこともあるので、注意してください」



係の先生に言われたので、片方をベリルと、片方を先輩とつなぎ、陣の中央に入った。


「最後にこれだけ、リタイアは決して恥ずかしい事ではありません。自分の限界を見極めるのも授業の一環です。それだけは忘れない様に!それでは、有意義な3日間になるように、いってらっしゃい」



そう言って先生は陣を発動し送り出してくれた。手はしっかり握っていたが、眩しさに目を閉た。光は一瞬で収まり、次に目を開けると、深い森の中だった。



「さぁ、ついた。俺はあくまで付き添いだから、聞かれたら助言ぐらいはするが、それ以外はきみたち自身の力で乗り越えてくれ」



そう言って、先輩は少し離れた大木に寄りかかり、傍観の姿勢を取った。学校で幾度となく、今日の話し合いを重ねても、実際この状況に置かれると、入り込んだこともないほどの森の奥。嗅いだことのない濃い緑の匂い。ベリルと、ジルベルト君を見ると、さすが上位貴族、表には動揺を出さない様に訓練されているだけはある。・・・だが、握りこんだ拳が物語っていた。



深い自然に対しての恐怖――・・・そう、僕たち人間なんて、所詮深い木々や動物たちにしてみたら、貴族だろうが平民だろうが、関係ない。森に放り出されて、自分という存在がいかにちっぽけかを学ぶ、そのための授業。っとニック先輩が言っていた。



〝あぁいった状況に陥った時、貴族なんて実は全然役に立たないんだ。それよりも、今まで馬鹿にしていた平民の人たちの方が、生きていく術を良く知ってる。僕は、国とは平民あってのものなんだと、あの授業で心から理解したんだよ。あッ、僕は平民をバカにしていたわけじゃないからね!バカにしていた貴族たちが、打ちひしがれて帰ってきている様子を見てただけだから!サリーが初めに嫌っていた理由は、これじゃないからね!〟



と、もの凄い勢いで弁明された。



「それじゃ、この後は計画通りでいいんですか?リーダー?」


先ほどまでちょっとビビっていたのに、回復したのか、早速、茶化すように僕にそう言ってきたのはベリルだった。そう、なんとこの班のリーダーは、僕。公平にじゃんけんで決めたのだが、全敗・・・。



「うん、まずは拠点づくり。水辺の側だとありがたい。ここは知らない森だから、手分けしてではなく、団体で行動すること。それか二人一組は絶対。いいね?」



そう言って僕は背負ってきたリュックから方位磁針を取り出した。今回の授業、持ってきてはいけないものが記載されていた。


・容量圧縮カバン(見た目以上に物が入る)

・保存食以外の食料(基本食事は現地調達)

・魔術に関連するもの一式(書籍、陣、杖、ほうきetc.)

・メイドや執事



いや、最後のものじゃないし、そもそも記載されていると言う事は、過去にいたのだろう・・・、と言う訳で、記載されていないもので必要だと思ったものを最低限でそろえてきた。



「なんで、編み上げ式の靴を履いて来いなんて、言われたのかと思ったけど、やっぱりモリア君がリーダーで正解だったね。」



そう言って後ろを歩いているジルベルト君に、僕はもう少しゆっくり歩くよう指示した。一番いいのは、自分の足幅と同じ幅で歩くこと



「今は、心も体も、ハイになっている状態なんだ。森での過ごし方で大事なのは、前半より後半の事を考えながら動くこと」



初めは1時間経たないうちにちょこちょこ休憩を入れた。あれから半日ほどだろうか?かすかに水の音がする――・・・



「あッ!水の音がする。モリア――、「しぃー」」


森歩きに疲れてきたのだろう。ベリルが興奮気味に話す言葉をさえぎった。


「ごめんね。森の中は音が木霊して響くから、僕がちょっと見てくるから、先輩、2人をお願いできますか?」


「・・・先ほど、クケルト自身が、単独行動禁止だと言った側から破るのか?」



だが、この2人をここに置いて行くのも心配だ。どうする・・・


「モリア、先輩を連れて行け。ジルは僕がちゃんと守る。最悪、幻獣を呼んで対処する。わかったら早く行って帰ってこい」


膝で横モモをド突かれた。地味に痛いヤツ――。


「わかった。なるだけ早く帰ってくる。それまでお願いね、ベリル」


任せろ!そう言っている後ろで、ジルベルト君が俺も同じ年だし、留守番ぐらいできるよ~と言っているが、信用ならない。実はここに来るまでも大変だった。主にベリルが・・・、ジルベルト君が何かを見つけるとあっちへフラフラ、こっちへフラフラ―――、ベリルはそれを連れ戻すのにへとへとだった。



それでは、ベリルに安心して休息を取らせるため、拠点を早めに作ろう。そのために、まずは水場の偵察に行く。




「では先輩、行きましょう」






そこには思い描いていた通り、ちょっとした沢があり、ちょうどイノシシが水を飲みに来ていた。僕と先輩の居る場所がちょうど風下になっていたため、まだ気づいていない様子だ。だが、僕は罠などで獲物を捕まえることはできるが、直接は無理だ。そう思った時、先輩が僕にぐっと体を寄せ、耳元で尋ねてきた。



「あれを狩るのか?」


近い、クソ、顔がいい

「・・・いえ、僕の技量では無理です。先輩、出来ますか?」


半ば投げやりに言ってみたのだが、

「わかった」



そう言って、茂みから出て行ってすぐ、こちらに気づいたイノシシが先輩に向かって突進してきた。それを軽くいなし、持っていたダガーナイフであっという間に仕留めてしまった。わー凄い!!なんて感心している場合ではない。僕もすぐに茂みから出て、仕留めたイノシシの側に寄ると、若いメスだった。



背負ってきたリュックを下ろし、中から薄手の衣類を羽織る。ナイフが首に入っていたので、足側の血管を切り、通り道を作ったあと、持ってきていたロープで縛り、木に吊るした。もちろん一人で吊るすのは無理だったので手伝ってもらった。



「血が抜けるのに30分かかります。この間に2人を呼びに行きましょう」


「獲物はこのままでいいのか?」


先輩がそう言ったタイミングで、僕の足元に何かがすり寄ってきた。モアだ。また勝手に出て来たみたいだ。先輩の顔を見ればわかる。それなら、モアに頼もう。


「モア、僕たちが戻って来るまで、ここにいてコレを見ててもらってもいい?」


僕がそうお願いするとキューと鳴いて、しっぽをふりふりしていた。かわいい、先輩は諦めて、僕と残りの2人を呼びにまた森の奥に入った。



黙々と歩いている最中、先輩からこんなことを聞かれた。


「クケルト、聞いてもいいか?答えたくないなら構わない。森歩きといい、先ほどの手際といい、いったいどこで習ったんだ?」


そう聞かれて、思い出した昔の記憶に思わず、ふふっと笑ってしまった。


「うちの母親、とてもスパルタなんです。僕が幼少の頃から、ずいぶん様々な事を叩き込まれました。次の長期休みの時は、先輩が僕の領地に来ればいいですよ。何もないところですが、強くなりたいのならおススメです」



話しているとあっという間だった。向こう側で手を振っているジルベルト君が見えた。


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