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19/56

19:上級生


その日は、昼食後1年生は全員、講堂に集まるように4限終了の時に教科担に指示されていた。それも、班ごとに分かれての集合。でも、事前に時間割には記載せず、急な招集にいったい何だろうと集まった1年はみんな騒めき立っている。



そして今、生徒会からの発表に講堂内は大盛り上がりだ。



「それでは、まず、この水晶に1年の魔力量登録から始めます。」



そう言ってステージにいる生徒会役員が示したのは、台座の上に固定されている水晶だった。これに名前順に触っていき、登録終了後、パートナーになる上級生の選出が行われる。



「これはあくまで、魔力量を測る品物です。多いからと言って凄いわけでもなければ、少ない、またはないからと言ってあなた方の価値が決まる訳でもありません。それでは、呼ばれた方から順に来てください」




何というか、想像と違った。水晶に触るたびに光ったり、なんだか、すごいことが起きると期待していたのだが、全くそんな事は無かった。魔力が多かろうが、少なかろうが、無かろうが、光も、音も、何も出ない。そして、別に両手で触る必要もない。なんだったら、指1本でつつくだけでもいい。


早速みんな飽きていた。


「あれ、魔道具らしいんだけど」


いつも、どこから仕入れてくるのか、クラスの情報屋、リズ・ベルトニーが内緒になっていない内緒話を始める。



「昔はね、魔力の量に対して光源を放っていたらしいんだけど、それによって貴族と平民に溝が出来ちゃったんだって」

「まぁ、今も、かわらんけどな」

「そうなんだけど、逆だった時のいじめが壮絶で、自死しちゃった先輩もいるらしくて――」

「あぁ、プライドが許せない~ってか?」

「それで、数代前の魔道具師長が今のを作ったって話だよ。」

「まぁ、すぐ終わるし、楽になったからいいんじゃねーの」



確かに、光ったりしなければ、終ればすぐ退場してくれる。職員や生徒会が一番喜んだかもしれない。そんなこんなしている間に、僕の番が迫ってきた。・・・はい、本当に一瞬でした。




「それでは、全員の集計が終わりましたので、班ごとに分かれて待機していてください。」



放送で流れたので、僕はベリルを探す。彼はとても特徴的な髪色をしているのでとても見つけやすい。そしてなぜか2人はいつもセットだ。



「モリア君、見つけた。いや~、1年だけとは言え、やはり今年は多いね」


ジルベルト君の言葉に引っかかりを覚えた僕はその事について尋ねてみた。


「今年は例年より人数が多いのか?」

「うん、何でも教会が平民に学習の門戸を開いたのが4年前。その一期生たちが入学したらしいよ」


字の読み書きだけでも、平民にとっては役に立つからね。教会もたまにはいいことするよね~なんて話していたが、また4年前――・・・どうも引っかかる。これは、近いうちに()()()に探りを入れてみるか。



そんな事を考えあぐねていると、こちらに近づいてくる人影が――、


「この班の担当になった、スカーレット・ガスタルバーグだ。よろしく頼む」


目が合った先輩の顔は外面用の顔をしていたが、瞳の奥が笑っている様な気がした。








他の班からのさまざまな視線に耐え、(ジルベルト君もベリルも上位貴族なので僕だけ集中砲火だった)場所を移動して、今は個別学習室の一室にいる。



「改めて、2年スカーレット・ガスタルバーグだ。短い期間だがよろしく頼む」

「1年、学級委員長をさせてもらってます。ジルベルト・バトラーです。先輩お久しぶりです」

「同じく、副のラズベリル・ピニックです。こうやって顔を合わせるのは新年会以来ですね」



なんだか3人はとても親しそうだ。すると先輩が、


「クケルト、すまない。この2人は幼少の頃からの知り合いなんだ。」

「そうでしたか。まったく知らない間柄より、いいのではないですか?」



そんな僕たちのやり取りを見た二人がなぜか驚いた顔をしていた。なぜ?


「では、さっそくで悪いが、日程が少ない。最終確認もかねて必要な物のチェックをしていこう」


去年、経験したであろう先輩を中心に4人での話し合いはさくさく進んだ。貴族とは言え、これは演習なので3日間サバイバルだ。先輩の助力があるとはいえ、調子に乗って準備を怠ると大変なことになる。ちなみにリタイアは・・・1か月、カタルフィー先生の所で魔植物のお世話だ。あッ、いいかも・・・なんて思っていたのがバレたのか、先輩から小声で、


「・・・クケルト、リタイアも悪くないな、とか思っていないか?もし手を抜いたりしたら、魔植物の世話の間、魔石は取り上げるからな」



魔石を取り上げられると言う事は、幻想圏同好会に出入りできなくなる!!そのペナルティーは重すぎる。僕は気を引き締めた。







演習前日、僕は今、王都の街に買い物に来ている。ベリルと二人で―――。なぜかと言うと、これは2時間前にさかのぼる。僕たちは3人集まって荷物の最終チェックをしていた。


「ベリル、そういえば発煙筒、予備まだあったよね?それと、発光石も!」

「あったと思うけど、ちょっと確認してくるね。」



この後、どちらも一つもなかった!と報告を受けるまで、あと20分―――




「ギリギリあって良かったね。」

「マジ、それな!」


キャラが違い過ぎて一瞬誰だかわからなくなるが、ベリルだ。


「これがないと、もし緊急事態が起きた時、助け呼べないから。焦ったー」

「・・・どうしてジルベルト君の前ではそっちで話さないの?」



突っ込んだことを、聞きすぎただろうか?だが、気になったのだから仕方ない。憶測でごちゃごちゃ考えるよりはいいだろう。これで関係がこじれたら、それまでだったと言う事だ。



「おまえだって、ガスタルバーグ先輩の前ではちょっと他と態度違うだろ?それみたいなもんだよ」


あれでちょっと?とは思ったが、これ以上は、聞いても何も答えてくれなかった。しかし、僕は他の人の時と先輩の時で、何が違うのだろう?


「でも、ガスタルバーグ先輩も、お前の前では他とちょっと違うな。この間、驚いた」



たぶん、学習室での話をしているのだろう。僕にとっては領地にお世話になっていた時に、当たり前に会話をしていたので、何があの時二人を驚かせたのかさっぱりだ?会話が進むにつれて、わからない事ばかりだな・・・。



モヤモヤはするが、このまま進めてもらちが明かないので、諦めて僕は明日から始まる演習の話をしながら、ベリルと寮への帰路についた。

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