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13:利害の一致


お風呂も夕飯も済ませ、あとは寝るだけとなった時、先輩方に談話室に呼ばれた。


「オレと離れてからの、ことと次第をきっちりしゃべってもらおうか?」


「路地で話していたのはいったい誰だったのか詳しく聞かせてもらおう」



圧が、圧がすごい!そこから、2人から離れて合流するまでの間の出来事をかいつまんで離した。


「と言う事で、ギャングと言われる方たちと協力関係を結んでくることに成功しました」



あの後、僕はメルラさんにお願いして、カルラさんと話をすることに成功した。その時、僕の身分もウソ偽りなく明かした。



「おい!なんでそんな危ないことした!!」



ダン先輩の怒りはごもっともだったが、交渉ごとの時、絶対してはならないのは偽る事、図る事、欺くこと、人の本能を侮ってはならない。


「必要だと判断したからです。それに、僕だってバカではありません。ちゃんと人を見て大丈夫だと判断したから明かしました。それに、ちゃんと掛けには勝ちましたしね」



それは、カルラさん率いるチームの方たちに情報を持ってきてもらう事。危ない事、踏み込み過ぎることは禁止した。見返りは、ネルさんの居場所の特定。



「先輩、しばらくスラム側の敷地にゴミが投げられます。誹謗中傷付きで、事情を話した信頼のおける方に片づけるフリで回収して、僕の部屋に毎日届けてもらっていいですか?」



僕からの報酬はネルさんの居場所の特定で頷いてくれたのだが、領主子息に従う義理は無いと断られてしまった。でも、それでは困るので、こんな交渉をしてみた。



「ネルさんを無事救出した暁には、スカーレット・ガスタルバーグの名のもとに、ネルさんの後ろ盾及び、魔力の扱いを教えると約束してきちゃいました。事後報告ですけど、いいですよね?」



僕は、スラムは必要悪だと思っている。だが、今のファミリーのやり方は嫌いなので、上の連中もろとも退場いただこう。そして次の旗頭にはカルラさんが最適だ。あの人たちとの関係性は良好にしておくに越したことはないだろう。もちろん表立って接触はしない



「さぁ、材料はそろいそうですね。あとは、領主様が帰ってきてから話を詰めていきましょう。僕はもう眠たいので帰りますね」



おやすみなさいと、スピアを連れて僕は応接間を後にした。






朝、僕はいつも通り起床して、身支度を整え、食事をするため食堂へと足を運んだ。いつもと違ったのは、明らかに寝不足であろうダン先輩、同じくだろうがそれを微塵も感じさせない先輩。そして、2,30年ほど齢を重ね、貫禄と重厚さを兼ね備えた先輩そっくりな人が鎮座していた。



「おはようございます」


そう言って僕は席に着く。


「おはようクケルト。父上、先ほど話した後輩のクケルトです」


「お初にお目にかかります。フィリアム・クケルト男爵が子、モリアと申します」


「初めまして、ナダルグ・ガスタルバーグだ。直接話すのは初めてか、父君の事はお悔やみ申し上げる」


「ご丁寧にありがとうございます。そろそろ丸2年になりますので心の整理はついてます。お気遣い痛み入ります」


それから、僕の朝食が運ばれてくるわずかな時間で、先輩の父上と当たり障りのない言葉を交わした。


「さて、私はちょっと済ませなければならない仕事があるので、この辺で失礼させてもらう」


「支度が済みましたら、セバスを向かわせます」


何やら親子のやり取りがあったあと先輩の父は席を立って食堂を出て行った。




やはりどこか緊張していたのか、姿が見えなくなるとホッと体の力が抜けた。

「おまえでも緊張とかするんだな」



先ほどまで疲れた顔をしていたダン先輩が鬼の首を取ったかの如くにやにやしている


(うやま)わなくてはならない人の前では誰だって緊張するものですよ」



おい、それはいったいどういう意味だ!などという言葉を無視して朝食をいただくことにした


「朝からすまなかった。ちょうど今朝早く父上がお戻りになったものでな、スピアには伝えていたのだが・・・」



僕は実家にいた頃の癖で誰かに身支度を手伝ってもらう習慣がない。そのため、スピアには別の用事を頼んでいたため、食堂に足を運ぶまで当主が帰ってきている事を知らなかった



「僕が回収を頼みましたので、彼に落ち度はありません」


そう言うと分かっているという様に頷いてくれた。



「昨日の今日だが、早速来たのか?」


「募らせているモノが多いですからね。行動は早いと踏んでいした」


「食事が済んで確認が出来たら談話室集合で構わないだろうか?」


「もちろんです」


だがその前に、この美味しい朝食を堪能しない事には何も始まらないと食事を続けるのだった。






「スピア、どんな子が敷地に物を投げ入れたか見ましたか?」



朝、情報を回収に行ってもらったスピアに皆の前で尋ねる。


「はい、13歳程度の男の子でした」



ギャングチームにお願いしたのは、情報収集それから、おとりだ・・・


「その子、10日以内に来なくなると思われます。正確には、拉致されるでしょうね」


僕の言葉にそこに集まった、ダン先輩、先輩、スピアは驚いた表情をしたが、さすがに領主とセバスは表情を変えなかった。


「僕は、情報提供にあたり、配達する子に条件を付けました。まず、その子は一目でスラムの子だと分かるような子、自衛または回避に特化している子。助けを呼べる手段を持っている子、そして、ギャングたちとあまり表立って面識のない子ども、です。その男の子はエラ13歳。魚人族と人間のダブルで、ネルの秘密のお友達だったそうです」



魚人族には、ちょっとした特殊能力があるそうで、水源のそばで音を発すると聞き取る事が出来る。その特性のおかげで一人家で留守番をしていたネルはエラと言う友人を作る事が出来たらしい。しかし、1年前ぷっつりと交信が途絶えたことにより、いぶかしんだエラは、ひとりでネルを探していたそうだ。



「オレにその役目をさせてください」


カルラたちと話を詰めていた時、突然訪ねてきたエラに最初はみんな驚き、殺気を放っていた。エラは青ざめて顔をしていたが、震える足を叱咤しながらも逃げなかった。


とりあえず話を聞き、こちらの事情をある程度把握されている事、ダブルだったからなのか魚人族の性質は引いていたが、見た目はただの人間に見え好都合だったこともあり、彼にお願いすることで話が付いた。



「それでは、こちらのカードはある程度出しました。領主様、この街で起きているこの案件、どこまで把握されていたのですか?」


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