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11:お忍び

休息を取ったため、先ほどまであった、今にも切れてしまいそうな緊張感は多少緩和された。だが、問題がなくなったわけでは決してない。いったいどうしたものか・・・


そう考えあぐねている時、


「先輩、先輩のお父様はいつ戻る予定なのですか?」


「あと2,3日のうちには戻るはずだが、それがどうした?」


「それなら、戻るまで何もしないことを提案します」



そう言ったクケルトにダンが頭に血を昇らせ勢い良く立ち上がるのを視界の端に捕らえた。だが、俺はまず彼の真意を知りたく話を聞くことにした。



「よく考えてください。これだけの領地を治めている、切れ者と噂のガスタルバーグ領主ですよ?これが敵を泳がせている作戦なのだとしたら、ここで僕らが動いてバレると最悪以外の何ものでもありません。そして、もし領主様が気づいていなかったとしたら、こんな作戦を個人のカンパニーが単独でしているとは考えにくい。相手も情報戦や侵入に長けた手練れです。学生の僕たちにはお手上げです」



確かに正論だ。だが、何もせずもんもんと待つなど・・・



「そこで提案なのですが、先輩方、かわいい後輩を観光案内していただけませんか?もちろん、お忍びで」






理不尽だ。絶対、先輩やダン先輩のほうが街に出た時、目立つと踏んでいたのに、僕が一番浮き彫りになっているようだった。



「なんで2人の方が自然なんですか?おかしい、絶対何かおかしい」


「おい、おい、おい、ここは海の街だぜ?オレ達の故郷、溶け込むなんて朝飯前だ」


「俺たちの色彩はむしろこちら側では普通だからな。黒の方が珍しい」


じりじりと焼く日差しに確かに明るい髪色は理にかなっていると納得してしまった。暑い―――


「ほら、日よけのフードを被っておきなさい」


日差しの強さに僕はもうクラクラ来そうなのに2人はケロリとしている。これで今日の目的は達成することが出来るのだろうか?




話は前日に戻る。

僕の突然の観光提案に一瞬ポカンとしていたが、いち早く立ち直った先輩は、いったいどこへ行くつもりか尋ねてきた



「とりあえず、賑わっているところに行きたいです」



そうしてやってきました。中心街〝ココルク〟早朝から朝市が立ち並び、海の幸が盛りだくさん。朝市が引くと、同じ場所で今度は屋台が立ち並ぶ。お土産なども充実しており、キョロキョロしている人達が観光客だとすぐにバレてしまうな。あっ、ちなみにニック先輩はお留守番を選択しました。



そんな僕自身も例にもれず、


「あの古語で書かれている本、欲しいです!あッ、あっちにも何か珍しい本が、あれ、ドラグーンの書籍じゃないですか?欲しい!!」


「おい、モリア!ちょろちょろするんじゃねー」


そう言ってダン先輩に首根っこをつかまれ、俵の様に担がれてしまった。


「あぁ~、これはこれで楽、はっはっは、人が・・・うじゃうじゃいる」



僕は自慢じゃないが、人混みが苦手だ。目まぐるしさに酔い、匂いに酔い、今まで夢中になっていたので気にならなかったものが一気にやってきて―――



「き”もち”・・わ”るい”――・・・吐く」


わぁー!!!待て待てとダン先輩が大慌てで人通りから外れた路地の影に入った。その際、僕は気づかなかったのだが、ガスタルバーグ先輩とはぐれたらしい。



「ちょっとは落ち着いたか?」


ぐったりしながらも、先ほどよりはだいぶましになってきたので、頷くことでダン先輩に状況を伝える


「あ”ー、お前をここに置いとくのも心配だが、スカーも探さないとな――・・・」


「ふぅ~、僕はここで大人しく待ってますので、いってきてください」


「すぐ戻って来るから、動くなよ。飲み物もついでに買ってきてやる」


そう言ってダン先輩はすぐに表の人ごみの中に姿を消していった。口は悪いけど、兄貴肌ですごく面倒見がいい――脳筋だけど

しばらくグルグル回る視界と戦いながら、なんとか落ち着きを取り戻したその時、通路の表側からではなく、後ろ側から数人の足音が響いてきた――。



「アニキ、ガキ落ちてますぜ」

誰がガキだ。しゃがみ込んだ体制から見上げる形なので確かに大きいように見えるが、その顔にはどこか幼さが残っているように見える。思っているより若い?どうやら4人組らしい僕のことをガキ呼ばわりしたピアスじゃらじゃらスキンヘッド、



「マジだ。あれ?こいつ顔悪くね?」

くすんだ金髪の超ロング。こいつも口の端にピアス、痛そう。てか、この2人両極端すぎるだろう。とくに頭髪が!そして誰が顔が悪いだと?



「バカか?落ちてんじゃねぇ、休んでんだろう。それに、悪いのは顔色だろうが」

ドレッドスタイルを後ろで束ねている一番常識人っぽそうな人が前2人に突っ込みを入れていた。でも、この暗い中でサングラスはいらないと思う。



黙っていると、アニキと呼ばれていたリーダー?がそばでしゃがみ込み、顎をつかまれ顔を上げさせられた。まぁ、痛くはないが


「・・・連れてくか」



ぼそりとつぶやいた後、スキンヘッドに指示を出したらしく僕はまた担ぎ上げられたのだが、揺れる揺れる。せっかく納まっていた気持ち悪さが再発し僕の意識はそこでフェードアウトした・・・。


拙い文章につき合ってもらって感謝感謝

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