ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
「マリア〜!みてみてぇ、おれまた国に認めてもらえたんだよぉ〜!今回の発明はねぇ、国内だけじゃなくて国外にも人気でね!みんなの役に立てたんだよぉ〜!それでねそれでね!たくさんのお金がまたもらえたの!マリアにたくさん贅沢させてあげられるよ〜!」
「リュカ、おめでとう!発明頑張ってたもんね!リュカが認められて良かった!」
「えへへ〜。全部マリアのおかげだよぉ〜」
リュカが私に甘えて抱きついてくる。
私はそんなリュカを抱きしめ返す。
私とリュカは、最近知り合って結婚したばかり。
よくある政略結婚で、お互い打算ありき。リュカの実家はお金持ちのうちの持参金目当てで、うちの実家はリュカの家柄目当て。
でも、リュカはそんな状況でも私を大事にしてくれる。だから私は、そんなリュカの趣味を応援することにした。
「マリアはおれの発明、バカにしないでお金まで出して実用化する手助けしてくれたもんね」
「ふふ、リュカは周りには認められてなかったけど才能の塊だったもん。報われて良かった」
「マリア〜!愛してるよ〜!」
見た目はゆるふわで、性格も甘い綿菓子のような旦那様のリュカ。
でも、その発明の才能は本物。
リュカのおかげで国内は文明が一歩進んだと言っても過言じゃない。
「さあ、マリア!今日はもう遅いしそろそろ寝よっか」
「うん」
「今日も抱きしめて寝ていい?」
「いいよ」
リュカとの関係は良好で、遅くなって何もしない日でも抱きしめあって寝るほどラブラブ。
リュカと結婚できて良かった。
リュカと結婚する前の経緯を思うとまだ胸が痛いけど、リュカがそれを癒してくれる。
このまま、リュカとずっと一緒にいたいな。
「えへへ。マリア〜」
「なあに?リュカ」
「あのね、じゃん!今人気の舞台のチケットが入ったの!一緒にデートしよっ」
「…!」
「マリア、これ見たがってたもんね!」
ふわふわ笑って誘ってくれるリュカに、思わず目が潤む。
なんていい男なのか。
あのクソ野郎とは大違い…いや、あんなのと比べることすら失礼だな。
「リュカ…ありがとう。行こっか」
「うん!えへへ、マリア大好き〜」
リュカに癒されながら、デートに行く。
舞台を楽しんで、その後レストランで食事も楽しんだ。
最高の気分でリュカと過ごしていたのに、レストランを出たところで最悪の出会いがあった。
「…あ?マリアじゃん」
「え?マリアってあのセルに捨てられた女?」
「そーそー!泣いて縋ってきた時は惨めだったわぁ」
自分の血の気が引くのがわかる。
こんな男と婚約者だった過去をリュカに知られてしまった。
泣いて縋っていたのも知られた。
引かれる…いっそ、嫌われる…?
涙目になる私に、リュカは…。
「おい」
「あ?」
「おれの奥さんを泣かせたな?」
見たこともない怖い顔をして、元婚約者を魔法で縛り上げた。
泡を吹いて意識を飛ばす元婚約者。
隣にいた女は腰を抜かす。
「…お前もこうなりたいか?」
「ヒッ…ご、ごめんなさい!」
「チッ…安心しろよ、殺してないから。ただし、次にマリアを泣かせたら今度こそ殺す」
「は、はいぃっ…」
「ほら、目障りだからさっさと連れてけよ。引きずっていけるだろ」
女の人はセルを無理矢理引きずって逃げる。
遠巻きに見ていた通行人は、幸か不幸か知らんぷり。
仮にあとでセルに訴えられても、今のリュカなら色々揉み消せるとは思うけど…。
「あの、リュカ…」
「…」
ふわふわしたリュカしか知らない私はどうしたものかわからない…のだが。
「えへへ〜。ごめんね、マリア。びっくりさせちゃった?」
振り返ったリュカは、いつも通りで拍子抜けした。
「え、あ、うん。ちょっとだけ。でも、大丈夫。リュカこそ大丈夫?」
「うえ〜ん、年上のお兄さんと喧嘩するのはやっぱり怖いよぉ〜」
「うーん、喧嘩っていうより一方的だったけど…ま、いっか。怪我してないよね?よしよし」
「うえ〜ん。怖かったぁ〜。でも怪我はしてないよ〜」
「よかったよかった」
なんだ、私のために怒ってくれただけでやっぱり怖かったんだ。
やっぱりリュカはふわふわしてて優しい旦那様だ。
「ごめんね、リュカ。ありがとう」
「うう、マリアが謝ることないよ〜。また来たら今度こそおれが守るからね!」
「守ってくれたじゃん」
「でも泣かせちゃったもん!今度は絶対泣かせない!だってマリアは、おれの大事な大事な愛する人だもん!」
熱烈な愛の告白にむず痒くなる。
「ふふ。リュカこそ、私の大事な大事な愛する旦那様だよ」
「えへへ〜」
ぎゅっと抱きついてくるリュカを抱き締め返す。家に帰ったら、たっぷりイチャイチャした。
「ふふ、マリアよく寝てるな〜…可愛い〜」
マリアの寝顔につい笑顔になる。
「マリアはおれの愛おしい人なんだから、もう泣いちゃダメだよ〜?」
頬を撫でればくすぐったそうにするのも可愛い。
「…マリア、ちょっとだけごめんね〜」
少しの間だけ、とベッドから抜け出す。
部屋から出れば、使用人が現れた。
「旦那様、どうなさいました?」
「ごめんね〜、夜遅くにご苦労様。気を遣って出てきてくれてありがとう!」
「いえ」
「それでね〜」
使用人はおれの冷たい目に気付いて、あーあって顔をする。
何を言うかはわかってるみたい。
「あの男、潰しとけ」
「はい、旦那様」
「方法はお前たちに任せるからしっかりやれよ。おれは…んんっ、マリアに嫌われたくないもんっ!」
「はい。あくまでも我々奥様を慕う使用人の勝手にすること、ですから。奥様の耳に入っても大丈夫ですよ」
「うんっ!えへへ〜、本当にいつもありがとうね」
用が済んでベッドに戻れば、すやすやと眠るマリアに癒される。
抱きしめてキスをして、今度こそちゃんと寝た。
あの男のせいで異性を怖がるマリアを守るためなら、いくらでもゆるふわ男子を演じてやる。
幸い、この見た目だしね。
「マリア〜!おはよ〜!」
「おはよう、リュカ」
「良い朝だね〜!みてみて、実は昨日こっそりマリアのために可愛いカナリアを買ったんだ!」
「え、水晶で出来てるんだ」
「うん、でも魔法で動くカナリアだよ!死なないし、ペットにいいでしょう?」
リュカはいっつも私のことを考えてくれる。
私が忙しいリュカに寂しさを感じないようにくれたんだろう。
「ありがとう」
「愛してるよ、マリア〜」
「愛してるよ、リュカ」
ぎゅっと抱きしめあって、今日も穏やかな日が始まった。
【連載版】侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
という連載をしています。よかったら読んでいってください!