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第八話 男の過去

真田幸介、苦渋の決断に迫られる。

東京唯一の、老舗の任侠道。江戸一家代行。真田幸正の長男として、昭和十五年五月十二日誕生。

母。キクは、赤坂のホテルの一角に、料亭を経営。赤坂の一流店として、有名である。母は、何時も、忙しく働いている。住まいは、神谷町に有る。若いお兄さん達が、何時も忙しく出入りしている。幸介は、何時も、お兄さん達と遊んでいた。そして、小学校に入り、周りの人の目を、気にするようになり、友達にも、警戒されるようになった。母は、学校の先生に、相談した。すると、小学生からの、野外活動をしている、団体が有る。と言うので。訪ねてみた。誰でも参加できる。と言うので、幸介をその団体に入れた。幸介も、喜んで参加した。

休みの日は、殆ど、海、山、農家の家へ、行った。り。伸び伸びと、遊んでいた。お母さんも、手が掛からなくて、すくすく育った。幸介は、身体も大きくなり、学年で一番大きくなった。

戦争が終わり、東京に戻った幸介は、焼け野原に成った、東京を見て、泣いていた。学校も、家も、友達も居ない。幸い。父母は、地下の防空壕に入って居て、助かった。大人も、子供も、戦後の復興に参加した。親父の器量で、神谷町に、家を立てた。だんだん生徒も増えてきた。商店も立ち並び、銀座、赤坂は急速に立ち直った。幸介も、野外活動に、勉強に励み、身長も百六十センチを超えた。

中学に成り、柔道部に入った。野外活動も、上級になり、活動も激しくなった。

お父さんも、忙しくなり、帰ってこなくなった。母と二人で居る事が、多かった。そして、日比谷高校に入学した。幸介は、勉学に励んだ。社会、数学は、一番だった。絵を描くのも好きで、暇さえあれば、絵を描いて居た。高校一年の、正月。親父が、帰ってきた。鞄にお金が沢山入っていた。のを、見た。そして、俺に、空手を習え。と言って、サンドバックを、買ってきた。庭に、屋根をかけて、造ってくれた。二百キロ有る。

それからは、空手を習うようになり、近所の道場に通い、高校二年の時、空手のできる先生が赴任してきて。空手部を造った。真田が部長に選ばれた。真田は、空手に、勉学に励んだ。夏休み、祭りの夜、友達と街に出かけた。新橋で、若い大人が、喧嘩をしていた。一人を五人で、袋たたきにしている。血まみれになっている。誰も助けないで、見ている。真田は、見るに見かねて。止めに入った。一発叩かれた。この野郎と、空手を使った。五分も経たないで、五人を倒した。拍手が沸いた。三人重症だ。真田と友達は、走って逃げた。これが、真田の初めての喧嘩だった。二人は、家に入り、冷たい、ジュースを飲みながら、笑って話して居た。

「ちょろい、もんだ。・・・あれ。・・・やくざか。な。」

「あー。そうかも。・・・親父の若いやつらでない。だろうな。・・・腰抜け野郎が。ハハハハハハハ。」二人は、笑っていた。友達は、真田の家に、泊まった。そして、暮れには、親父が、帰ってきた。

「幸介。・・・大きく成ったな。筋肉も付いて。サンドバックは、良いだろう。練習するのに。相手が居なくても、出来るから。」

「うん。・・・でも。・・・相手が居た、ほうが、良いよ。」

「あー。・・それは。そうでしょう。でも、筋肉を鍛えるには、これが、良い。んだよ。・・・強く成らないと、生きていけない。よ。・・・頭もだ、勉強している。か。」

「あー。・・・している。よ。」

「うん。それなら良い。・・・これからは、大学だ。大学を出ないと、相手にされない。日本は。必ず。勝つ。復興する・・・それだけは、覚えて、おけ。」

「うん。お父さん。・・・・おれ。頑張る。よ。」

「うん。その調子だ。金は、心配するな。お母さんに、渡してある。から。・・・正月そうそう。店の開店だから、忙しくなる。な。・・・これからは、お母さんも、あのホテルの、一角で、店を構えるから、楽になる。よ。板前も、腕の良い。の。そうだ。お前も、知っている。だろう。家へよく来て、いた。健。だよ。やくざに成らない。で。板前に成った。俺が、紹介した店で。な。」

「へえー。健、兄さんですか。・・・知っている。・・・良かった。」

「あー。奴は、今では、赤坂一と、言われている。板前だ。」

「幸介。先生も、褒めていた。よ。数学と社会は、ピカ一。だ。て。欲を言えば。国語も、だ。な。」

「うん。俺も。国語も、大事だと、思って、いる。」

「良いじゃない。気楽に。やれば。」お母さんが、見てやれない、ので、厳しく言わないのである。

年明け、赤坂も忙しく、慌しく動き始めた。七草も過ぎ。八日。店の開店である。親父の器量で、千人もの人達が、お祝いに駆けつけてくれた。三日間続いた。大成功だ。お母さんは、忙しくなり、店に止まる事が、多くなった。幸介も、高校三年に成り。一人で居る事が多くなった。でも、勉強と空手は、しっかりやっている。大学入試も控えていた。

※昭和三十三年。正月も終わり。少し、落ち着いた。一月末日、店も二年目に入り。お母さんも。慣れたようで、家から通えるように、なった。今日は、店も暫くぶりの、休みで、親父が来ると言うので、母は、朝から、そわそわしながら、手作り料理を作って、テーブルに、並べた。幸介も、手伝っていた。

「これで、終わりね。」午後から、ちらほら、雪が降り始めた、四時だというのに、暗くなった。雪は大降りになった。

「五時だから、来る頃。ね。・・・四時頃。帰る。て。電話があった。のよ。」

「うん。・・・・俺。見てくる。」幸介は、玄関を開けっぱなしにして、傘も差さずに。門まで歩いて行った。

「凄い降りだな。・・・うー。・・・誰か。・・・倒れている。・・・もしか。・・・まさか。・・・親父だ。親父。親父。」幸介は、親父を抱えて、玄関まで、連れて、きた。

「母さん。母さん。大変だー。親父が。親父が。」

「幸介。どうした。あー。あんた。あんた。幸介。直ぐ親分。とこ。電話してー。あんた。貴方。」

幸介は。直ぐ電話をした。母は、狂ったように、震いて、わめいて、いる。

若い衆が、飛んで来た。

「代行。代行」聞こえている。ようだ。送ってきた、若い者も、居た。

「雪が降っている。から、此処で良い。て。門の前で別れた。んです。よ。ワー。代行。・・・誰だー。ちきしょうー。」

親分も、来た。幹部も、大勢来た。部屋が、いっぱいに、なった。入れない人も、居る。外は雪が降り続く。外にも、大勢居る。親分が。

「医者と、警察に電話しろ。・・・おおよそ、見当は、付く。でも、はっきりするまでは、動くな。」幸介も母も居た。親分が。

「姉さん。幸ちゃん。しっかりして、下さい。・・・若いもん、が、気が緩んだ。んです。・・・申し訳有りません。謝ります。」親分は。両手を突いて。畳に、頭をつけて。母と幸介に。謝っていた。

「後始末は、一家が遣ります。ので、堪えて、ください。・・・申し訳、有りません。」

泣いていた。母も、幸介も、ワンワン泣いていた。幸介は、悔しくて、涙が止まらない。警察と医者が来た。そして、息を引き取った。医者は、手を合わせて、いた。母と幸介は、抱き合って、泣いて、いる。

一家は、都内のお寺を手配した。今夜は、家で、三人で過ごして、明日朝、お寺に、安置する事にした。三日後に、葬式が執り行われた。

受付は、組織の方と、一般の方とに、分けて、用意された。総勢、二千人が、ご焼香に来てくれた。一般の人が多かった。幸介と母は、深く頭を下げて、御礼を、言った。

七日目は、家で、執り行った。親分と三人だけだ。幸介は。

「親分。俺。・・・親父と同じ道を行きます。明日から、一家に入れて、ください。・・・親分。お願い、します。」

「幸介。母さんを、一人にする。の。」母は、泣いて、いた。でも、幸介は、決めた。

「母さん。・・・俺は、昨夜、決心した。んだ。必ず。親父の仇を。取る。て。」

「幸介。家に来ても、良いが、大学は出ろ。よ。・・・お父さんが、自慢していた。んだから。息子を大学に、行かせる。て。口癖のように、言っていた。よ。」

「はい。大学は、行きます。・・・でも、江戸一家に、就職します。・・・だから、明日から、事務所当番。します。」

「姉さん。幸介が、こう、言っています。どうなる事か。来てみて、ください。駄目なら、止めれば、良い事。ですから。俺に任せてください。」

「そうね。この子は、言ったら、聞かないから。お願いします。」

母は、投げやりに、言った。でも、幸介は、本気だ。次の日から、朝早く、事務所に、行った。若い衆が、居た。

「お。坊ちゃん。・・・どうした。何か、あった。」

「いいえ。・・・親分に、用事が有って。」気合が、入っていた。

「あ。そうか。・・・入って、良いよ。」幸介は、玄関を開けて、入った。

「お早う御座います。幸介です。」親分が、居た。

「おー。お早う。・・・もう、来たのか。」

「はい。・・・宜しく、お願いします。」深々と、頭を下げた。

「お前も、勝気。だな。・・・お父さんの、若い頃に、そっくり。だよ。・・・行け、行け。だった。から。・・・でも、四十歳の頃から、落ち着いて、ね。紳士に、なった。よ。・・・しっかり、遣れ。」と、言ってくれた。真田は、荷物を置いて、座った。丁度、朝食だ。此処では、朝は、親分と一緒に、朝食を、取るのが、習わしだ。

「皆。紹介するよ。真田の息子だ。幸介。て。言う。んだ。頼むよ。」

「幸介と言います。・・・よろしくお願いします。」と、頭を下げた。そして、皆と、朝食を食べた。

幸介は、若い衆部屋に、入り、皆と寝起きを、共にした。掃除、洗濯の、毎日だ。次の若いのが、来るまでは、掃除選択が、当番だ。それが嫌なら、自分で、代わりの若い者を、連れてくれば、良い。それが決まりだ。幸介も、段々馴れて、落ち着いた。勉学に、空手に、事務所当番。忙しかった。そして、大学の入学試験日が来た。家に帰り、筆記用具を、片手に、大学に、行った。友達も、来ていた。次の日、発表が有る。この日は、家に泊まった。母も居た。

「あら。事務所は。」

「うん。今日は、帰って良い。て。・・・明日、発表だから。」

「そう。では、ゆっくり。ね。」お母さんは、手料理を作ってくれた。

次の日。発表。

幸介は。門の、掲示板の、受験番号を、探した。友達も居た。二人で探して、いる。

「有った。・・・ほら。」二人で見た。

「お前は。あ。あ。有ったー。」二人で、抱き合った。お互いの両手を、握った。幸介は、直ぐ家に、帰った。

「母さん。・・・受かった。・・・受かったよ。」

「本当。良かったわ。ね。おめでとう。ほら。仏壇に。」

「うん。・・・親父。受かった。よ。大学へ行くよ。」嬉しく、報告した。

幸介は、入学式に出た。式が終わって、直ぐ、空手部に行って。入部の手続きを済まして、帰ってきた。母が居た。

「母さん。空手部に、入って、きた、よ。・・・今日から、事務所に、行く。」と、言って、幸介は、家を出た。母が、見送った。事務所に行った。親分が居た。

「おー。真田。どうだった。」

「あ。親分。・・・・受かりました。」

「おー。やっぱり。・・・当たると、思っていた。よ。・・・これ。少しだ。ご祝儀袋だ。」手渡して貰った。

「受かると、思って、用意して、おいた。んだ。よ。」

「はい。・・・有難う御座います。・・・頂きます。」真田は、素直に、貰った。

「あー。忘れていた。・・・真田。明日から、若いのが、入って来る。から、掃除、事務所、当番は、遣らなくて、済む。よ。」親分は、ニコ。と、した。幸介も、ニコ。と。した。

「真田。明日からは、一家で、何もなければ、一週間に、一度、事務所に、顔、出すだけで、良い。んだ。よ。・・・月曜日なら、月曜日と、決めれば、良い。」

「はい。・・・有難う御座います。・・・月曜日に、します。」真田は、喜んだ。次の日から家に帰った。お母さんも。喜んだ。

「幸介。頑張った。ね。・・・事務所当番。辛かった。でしょう。」

「あー。・・・でも、決まったこと。だけ。遣れば、済むこと。だから。・・・どう。て事。無かった。よ。・・・でも、気楽に成った、ことは、確かだ。ハハハ。」

お母さんも、嬉しかった。

翌日から、勉強、空手と忙しかった。自分の、活動サイクルを作り、その通りに動いた。当面は、大学を中心に、活動した。とにかく、友達を増やした。トラブルも、起きた。でも、真田は、その日に、解決をした。翌日になると。しこりが残る。からだ。そんなこんなで。二年になった。空手部の、部長に抜擢された。

「えー。三年、四年、居る。じゃ。ない。」すると、先輩は。

「三年、四年は、退部者が、多い。んだよ。・・・就職試験で。今までも、そうだ。二年で、しっかりした者が、適している。そのほうが、部として、は。伸びる、んだよ。それがお前だ。・・・しっかり。やれ。・・・お前なら。出来る。」

「おーす。・・・・遣ります。先輩。有難う。」それからは、部員を集めた。今までに無い。二十名になった。真田も、力が入った。いよいよ、大学選抜大会だ。団体では、三位。個人では、真田が優勝。その名を轟かせた。そして、三年の時も、団体、優勝。個人、真田、優勝。

そして、一家の事務所も、真田を、称えた。空手の真田。と、その名は、都内の組織に、名を連ねた。手も足も出ない。若武者と、呼ばれた。真田もその気になって。いた。三年の冬休み、暮れの頃、真田は、事務所に泊まり、連日、繁華街を、飲み歩いて、いた。酒、女、喧嘩に、明け暮れて、いた。夜の街でも、真田の名前は、都内中に、知れ渡った。そして、学長室へ呼ばれた。

「真田。お前。・・・学生。て。忘れて、居る。ん、じゃない。お前が、悪いことすれば、この学校に、傷が付く。て。事。知っている。だろう。優等生のお前が、やくざの看板下げて、恥ずかしいと。思わんかね。学校も、企業。なんだよ。学生が、入ってこなかったら、商売にならん。だろう。が。商業を勉強した。なら。分かるだろう。・・・今回は、一回だから、見逃す。・・・二回目は、処分する。後。半年だ。我慢。せい。・・・終わり。帰って良い。」ラクビー出身の学長で、学校では、怖物である。真田も、なんとなく、分かったようだ。でも、世間が俺を、そんなに、知っているとは、思わなかった。少し、自重することにした。内面は、真面目である。其の儘、事務所に行った。

「おー。若武者。・・・良いとこ。来た。・・・昨日、夜、遣られた。んだよ。池袋で、・・・学生らしい。空手部。らしい。」

「だから、これから、仕返しに行こう。かと、準備していた。ところ。だよ。」

皆で木刀を持っていた。でも、真田は、今、学長に、注意されて来た。ばかりだ。迷った。考えた。迷った。真田も。

「よし。行こうか。」真田は、若い衆の前では、嫌とは、言えなかった。夜の十時ごろ、池袋へ行った。

「若。・・・あの野郎達。です。よ。・・・いた。・・・行こうぜ。」一人が出て行った。

「お。こら。昨日の、借り。・・・返すぜ。」

「なに。「五人が居た。相手が、構えた。周りは暗い。真田が、出て行った。

「よー。お前ら。学生か。・・・組織と喧嘩して、勝てると、思っている。のか。俺の顔に免じて、謝れ。そしたら、許してやる。」相手は、酒を飲んでいる。みたいだ。真田は、一滴も飲んで、いない。酒飲んでいる。と。焦点が合わない。真田は、一人で勝てると判断した。

「なにー。謝れだ、と。ざけん、じゃ、ねえー。」と、かかって、きた。真田は、一瞬。バチバチ。真田の拳が飛んだ。倒れて動けない。今度は、三人で、来た。真田の、回し蹴り。拳。蹴りの三発で、倒れた。後は逃げた。若い衆たちは

きょとん、としていた。十分も、かからない。・・・警察が、来た。皆。逃げた。真田は、逮捕された。若い衆は、親分に言った。真田のお母さん。にも、分かった。大事に成った。母は、国会議員。弁護士。いろんな人に、助けを。求めた。学長も、怒った。

結果は、有段者、剥奪。自宅謹慎。幸介は、かたくなに、守った。退学処分に、ならなかった事が、不幸中の、幸いだ。お母さんも、一安心した。

お世話になった、人達に、母と二人で、お礼の、挨拶に回った。お母さんは。

「幸介。これからは、絶対、だめ、よ。・・・喧嘩しない。て。約束よ。」

「はい。・・・分かった。よ。・・・母さん。」真田も、今回は。答えたようだ。

二月。謹慎が、解け。自由の身と成った。そして、学校へ行った。皆、待っていた。空手部も、待っていた。四月には、大会があるので、練習に励んだ。友達も、待っていた。

「真田。大変だった。な。皆で、お祝いしてやる。よ。」と。言って。喫茶店に入った。十人居た。真田も、時々来た。店だ。学校から近い。ママが来た。

「貴方が、真田さん。・・・新聞に、出て、有名に、なった。ね。」真田も、苦笑い、していた。皆、同級生で、体育系の、部長達だ。

「真田の、謹慎解除の、お祝いを、祝福して、乾杯。」ビールを、用意してあった。就職の話になった。三年の正月頃から、就職活動を、する。

「皆。就活している。」

「まだ、決まらね。え。よ。・・・俺も、相撲部の、連中は、可愛そう、だよ。でかいから。面接で、落とされちゃう。て。」

「あー。奴らは、深刻。だよな。」真田は、人事。ながら、心配していた。

「真田は、良い、よな。就職先、決まっている。から。」

「あら。真田さん。・・・就職。決まっている。の。・・・商社、銀行、それとも、外資系。」

「ハハハ。・・・そんな、んじゃ、ねえーよ。・・・内緒。」

「教えてくれたって。良い、じゃない。」

「ママに、教える会社。じゃ。ないよ。・・・そのうち、分かるよ。」

「まー。」

「皆。そんなに焦る事じゃ。ないだろう。始まったばかり。だろう。」真田が、元気付けた。応援団長が、入って来た。

「お。こっちだ。」

「真田。良かった。ジャン。」握手した。

「あー。良かった。よ。・・・暫く、だな。・・・何か良い、話。有りそうな、顔して。

「真田は、察しが、良い、からな。・・・分かった。んだ。・・・俺の顔。見て。」

「分かるよ。・・・顔に書いて有る。じゃ、ないか。・・・ハハハハ。冗談だよ。」

「それが、有る。んだ、よ。・・・真田。・・・」ひそひそ。話した。低い声で。

「六月末。株主総会。と言うのが、始まる。んだよ。企業、各社。それの、邪魔を、する。んだよ。」

「うん。総会は、分かるけど。・・・どうする。んだ、よ。」

「結局、議事録に、賛成した。り。反対した。り。成立させない。ようにする。んだよ。」

「うん。・・・それで。」真田は、身を、乗り出した。

「それで。社長が困る。議事録が、長引くと、一般の株主達が。会社が、纏まって、いない。倒産の恐れが有る。と。新聞が騒ぐ。すると、株が売れなくなる。し。倒産しかねない。事になる。企業にとっては。マイナスになる。すると、会長、社長、部長、重役の、首が、吹っ飛ぶ事に。なる。だから、我々を、止めに、来る。・・・金で。」

「おー。」真田は、興奮した。

「真田。・・・声が」団長が、口に、指を当てた。

「本当か。・・・」真田は、突っ込んだ。

「本当だよ。真田。・・・俺には、出来ない。金も無い。し。人集め。も。出来ない。し。・・・真田。お前なら、出来る。金も有る。だろう。し。人も、集められる。し。・・・待っていた。んだよ。出てくる。の。」団長は、汗ばんでいる。

「あ。遣ってみる、価値は。あるな。・・・どうする。かだ。」

皆、興奮して、ビールを、飲んでいる。ひとまず、店を出て、団長と、二人で、作戦を練る事にした。皆で金を、出してくれた。真田は、おごられた。真田と団長は、別の、喫茶店で、話していた。

「うん。皆、ふらふらしている。から。集まると、思う。んだ。」

「処で、何人。」

「うん。・・・多いほど、良い。百人以上だ。」

「え。・・・百人。」真田も、バック、した。

「し。声が。・・・だから、今、バイトが、一人、一日、三百円だから、・・・五百円。出せば、どうかな。」

「うん。今、サラリーマンの、給料は、いくらだ。一万五千円。うんー。日割りだと、サラリーマンと、同じか。・・・高いけど、人を集めるには、仕方ないか。・・・」

「何とか成らないか、よ。・・・真田。・・・俺を誘った、奴も、金が無い、から、出来ない。て。・・・真田。」

「うん。用意する。金は、五万円。か。・・・二〇〇人で、一〇万円か。大変だな。」真田も、頭を抱えた。

「よし。先ずは、金だ。・・・明日、二時に、ママの、喫茶店で会うか。何時も、二時ごろは、空いていた、から、誰も居ない、よ。」

「分かった。調べた、企業のリストを、持ってくる。よ。」二人は、別れた。真田は、金の工面を、考えた。母さんしか居ない。心配だった。でも、話して見た。

「かあさん。・・・頼みが、ある。んだ。」

「え。・・・何よ。・・・改まって。」

「うん。友達の親父が、会社を成立するのに、見せ金を、通帳に入れておかないと、会社を創れない。て。後、十万円。足りない。らしい、んだ。二ヶ月で、一割払うから。貸してくれる人、居ないかな。って。俺に相談して、きた、んだ。良い奴、でね。応援団長、なんだ。嘘じゃない。んだ。・・・何とか、ならない、かな。」

「そう。あの子ね。何時も、応援、頑張っている。ものね。・・・今、会社設立が、激しい、のよ。世間話は、聞いている。けれど。・・・良いわ。よ。お父さんが、貴方の名義で、百万円、積んである。のよ。何か、あったら、渡す、つもりでいた。から。・・・通帳と、印鑑。上げるよ。」母は、立って引き出しから、通帳と印鑑を出して、幸介に渡した。

「はい。無駄遣いしない。ように。ね。お父さんに、似ている、から、几帳面だと思うけれど。・・・それを、増やす事。考えて使う。の。よ。後は、無い。からね。」

「うん。分かった。・・・親父。母さん。有難う。」仏壇に、手を合わせていた。早速。真田は、喫茶店に行った。まだ、早かった。一時だ。

「おーす。」入ったら。団長も、来ていた。

「お。真田。」手を上げた。

「あ。やっと、出来た。よ。金の、工面。」

「本当。・・・いくらだ。」

「うん。十万円。・・・家の親分。からだ。・・・十、一だ。」

「えー。十、一。・・・て。十日で、一割。」

「し。声が。あ。そうだ。・・・なんとか、なる。よ。」

「あ。やっぱり、真田だ。頭が下がる。よ。」

「あ。ママ。何か作ってくれ、腹減った。よ。・・・二人分。」

「よし。真田。・・・俺も、身体、張るよ。・・・これが、リストだ。二十社。有る。この中から、ターゲットを絞る。六月二十日頃から。二週間ぐらい遣るから、先ずは、一社を。絞って、成功すれば、続けられる。俺の判断で、A社に、しよう。」

「うん。・・・じゃ。広報部へ行って、バイトの募集だ。百人。空手部、柔道部、相撲部、ラクビー部の、連中に声かけよう。広報部の女を、使おう。」真田と団長は、知っている、人を全部、誘った。百五十人集まった。真田も、びっくり、した。

時は来た。

朝八時に集合した。入場は、八時半だ。一番前から順に席を、取った。おおよそ、半分は、真田組である。団長が。

「真田。この会社は、大手で、一般株主も、安心、しきって居る。から。総会に来ない。んだよ。がら空き。だ。」総会は、出席者の、多数決に、委ねる事に。なって。いる。

皆には指示してある。団長が立ったら、全員立つ。団長が反対したら、全員反対する。とにかく、団長と同じ行動を取る事にしてある。

総会が、始まった。色々と、議事録毎に、賛否を問う。

「反対。」「反対。」前列全員、百五十人、立って、全て、反対だ。議事。中断。休憩。真田達は、全員、動かなかった。社員らしき人が来て、代表は誰かと、尋ねてきた。真田のところへ来た。

「失礼ですが。会長が、会いたい。と。言っています。が、会って、頂けない、でしょうか。」

「え。・・・僕、ですか。・・・」わざと、下手に、出た。

「はい。そうです。・・・案内します。」団長が、手で合図した。真田は、言う通りに、した。部屋へ通された。社員は出て、二人だけになった。

「どうぞ、お掛け、下さい。」真田は、勝負の目を、光らせた。会長らしき人は、真田の目を、見る事が出来ないで、居る。真田は、隙を見た。・・・すると、小切手と、封筒を出した。

「今日は、これで、引き取って、頂け、ませんか。何卒。お願いします。」

真田は、チラッと、見た。百万円だ。

「封筒は、後で、呼んでください。」真田は、潔く。

「分かりました。・・・全員。退場させます。」真田は、団長を使って、退場させた。バイト料は、直ぐ、友達に、払わせて、解散した。真田と団長は、タクシーで、喫茶店に行った。

「あー。緊張した。・・・水。」二人は、水を飲んだ。

「あ。・・・団長。はい。・・・十万円。」真田は、小切手は、見せなかった。自分の金を渡した。三十万円、持って来た、ので、丁度良かった。

団長が、何か、言って来るかな。と。思ったが。

「真田。こんなに、貰って。・・・自分は。」

「あ。親分に返す。分は、取って、ある。」わざと、親分の名前を出した。

此処で、食事をして、明日、二時に、会う事にして、別れた。

真田は、家に帰って、封筒を開けた。会長の、自筆だ。

「来週の、日曜日に、軽井沢に来てください。今後の話を、したい。」と、書いてある。やはり、警戒は、していた様だ。

真田は、勘が動いた。

これからは、総会を揺るがせば、金になる。・・・待てよ。・・・助けるのも、ある。・・・邪魔する、愚連隊が出てくる。・可能性は大だ。・・・そこで、俺を呼ぶ。

真田は、団長と喫茶店で会った。

「あら。貴方達。今日も、一緒。」

「うん。いろいろ就職の、事で。」

「真田。次は、これだ。・・・赤坂の会社だ。」

「うん。・・・大手だ。」

「あ。誰もが、知っている。」

「何時だ。」

「あー。・・・来週の。土曜日。だ。」

「良い。だろう。準備するか。・・・この前と、同じで、良いだろう。」

二人は、軽く食事を済ませて、準備に取り掛かった。今度は、二百人集まった。人集めは、それ程難しくは、無かった。でも、一人、五百円だからでしょう。

日曜だ。

真田は、六時に家を出て、軽井沢に向かった。住所の通り尋ねた。着いたのは、九時過ぎた。門のチャイムを押した。家は、見えない。お手伝いさんらしき、人が、出てきた。

「真田さん。ですか。」

「はい。」

「どうぞ。」後から、ついて行った。大きな別荘だ。玄関を開けて、入った。

この前の、会長だ。もう一人居た。

「どうも、どうも。お疲れ様。でした。・・・かけて、ください。」真田は、軽く、頭を下げて、椅子に、座った。

「真田さん。・・・でした。ね。」

「はい。」静かに、返事した。

「今日は、遠いところ。ご苦労様でした。ざっくばらんに、お話を、したい。んだが。真田さんも、そのつもりで、話して、下さい。・・・真田さんの、身上を、お聞かせ、頂ければ。」真田は。

「はい。私は、赤坂の、真田幸正の長男です。幸介と申します。現在は、○○大学、経済学部の四期生です。卒業したら、江戸一家に、身を置きます。高校時代から、事務所当番をしています。空手、四段ですが、池袋でつまらん喧嘩を、して、剥奪。されました。趣味は、絵を描くことです。勿論、鑑賞も好きです。母は、赤坂の、ホテルの、一角で、料亭を経営して居ます。」

「は。あのホテルの。一階の。・・・私ども、も、利用させて、頂いて、います。・・・・それに、江戸一家の、代行していた。・・・そうですか。・・・それじゃー。話は早い。」

「有難う御座います。母が、お世話になって。」

「いや、こちらこそ。・・・そうですか。実は、総会のこと。なんだが。ご存知かも知れませんが。私達も、今年から、会長、社長に就任いたしまして。三年の任期に成ります。何もなければ、次の椅子にも、座れます。ですから、真田さんに、お願いして、シャンシャン総会で、解散させたい。ん、です。これからは、愚連隊が、横行すると、思います。何とか、阻止して、いただきたい。・・・御礼は、充分、させて頂きます。安心してください。」真田は、鼓動が鳴った。

「失礼ですが。・・・トイレを・・・」

「あ。出て、左です。」

「はい。失礼します。」真田は、頭を冷やしに、出た。

「あー。どうやら。機動に乗る。予感が、する。」真田は、ため息を、ついた。

「どうも、失礼しました。」

「どうぞ、どうぞ。・・・さっきの話。ですが、引き受けて、頂ける。でしょうか。」

「えー。・・・私で良かったら。・・・身体を、張って、受けさせて、頂きます。」

「おー。さようで御座います。か。じゃ。宜しく、お願いします。」

「これ。少しですが。お納め、下さい。」

「は。はい。」

「良い。んです。どうぞ。会社の接待、ですから。」

「有難う御座います。・・・頑張ります。」

「ところで。連絡先を、宜しければ。教えて、いただきたい。ですが。」

真田は、自宅と、喫茶店を、教えた。

「あ。遅れました。これは、私達二人の、名刺です。」二枚。会長、社長。

「有難う御座います。・・・・今日は、ごゆっくりして頂いて、・・・」パチパチ。

お手伝いさんが来た。料理を運ぶように言った。すると、板前が、料理を次々と運んできて、テーブルに、並べた。

「さあ。真田さん。一献。お近づきの、印に。」真田は、盃を、受け取った。

「乾杯。」パチパチ。三人で、握手した。

「これで、一安心だ。・・・処で失礼ですが、代行さんは、何年になりますか。」

「あ。親父か。・・・四年目ですね。」

「あー。そうですか。四年か。私らも、ご焼香させて、頂きました。・・・寒くてね。・・・お世話に、なりました。よ。代行には。銀座、赤坂は。・・・三国人を、追い出すのに、頑張って、いました。から。・・・後。お母さんの店。外人客も、多いらしい。ですね。英語が話せる、お姉さん達が居る。と、噂ですよ。」

「有難う御座います。」真田は、笑みを浮かべた。

「真田さんも、早く。親分に、なって。銀座、赤坂を、守って欲しい。ですね。」

「そうすると。鬼に、金棒だ。」

「有難う御座います。」

「あ。それから、余計な事かも、知れませんが、私ども、も、心配します。・・・あまり。喧嘩は、控えた、ほうが、良い。ですよ。・・・新聞沙汰にされて、マスコミの、餌食になりかね、ません。企業相手に、インテリーの、ほうが。楽しい、です。よ。・・・喧嘩は、若い者に任せて。これから、日本は、どんどん成長します。から。正確な、情報を、掴んだ人が、勝ち残り、ます。よ。・・・真田さん。」

「はい。わたくしも、まだまだ、未熟者です。ご指導のほど。宜しくお願い致します。力

を貸して下さい。・・・お願いします。」頭を下げた。

「真田さん。分かりました。お互い、百パーセントの、確立を、目指して、頑張りましょう。あくまでも。成功報酬。として。考えて、ください。・・・これは。約束です。」

「はい。ご尤もです。」

真田は、一歩下がった態度で、対応した。その、謙虚さを、買われ。二人を、引き付けた様である。話は、尽きない。

「真田さん。これから、どう、なされ、ます。・・・私らは、此処へ、泊って、明日、県知事と会う事に、成っている。んで。泊まる。ん、でしたら、遠慮なく。」

「はい。わたくしも、明日早く、用事が有りますので。帰ります。」

「あ。そうですか。じゃ。タクシー呼びます。」真田は、タクシーを呼んでもらい、帰った。東京へ着いたのは、十一時頃だった。家には、誰も居ない。真田は一人で、コーヒーを飲みながら、札束を見ていた。二百万円。

次の朝。団長に電話した。喫茶店で、二時に会う、ことにした。

「おーす。・・・来ていた。・・・早いね。団長。」

「うん。俺は、待つのも嫌だし、待たせるのも嫌だ。時間を守るのが、基本だよ。お互いに。な。」

「あ。そうだよ。俺達は、時間に、厳しい、から、な。・・・処で、今度は二百人だから。纏め役を、四人に、しよう。二年で、しっかり物が、居る、から。奴を、使おう。」真田は、二年の空手部から、四人選んだ。

「よし。この体勢で、行こう。」真田は、決断は早い、お手の物だ。

そして。土曜日。

B社の前だ。他社は、開場を借りるのだが。この会社は、自社のホールが、開場だ。真田らは、三十分前に、集合して居た。玄関が開いて、皆入った。前と同じく、前から、順に、詰めて座った。大きな開場だ。五百人は、入れる。

開催のベルが鳴った。議事録を読み始めた。延々と、一時間。十分間、休憩。舞台の執行部の連中が、ひそひそ話している。真田が、わざと立って、後ろを見て、人の出入りを、確かめた。がらがらだ。A社と同じだ。開催のベルが鳴った。全員、席に着いた。司会者が、項目毎に、賛否を問う事になった。十二項目も有る。団長は、最後の、五項目に、反対する事に、なって、いた。十一時半だ。

「反対。反対。」

「独裁者。社長。株主を、甘く。・・・見るなー。」二百人立った。

会議は、中断となった。丁度、お昼だ。社員が、昼食券を配って、いた。開場は、ざわめいた。真田組は、受け取らないで、座った、儘だ。幹部らしきものが、真田に寄って来た。

「代表の方。おりますでしょうか。」丁寧に、来た。真田は、わざと。

「あー。俺。だ。」

「失礼ですが。会長が、会いたい、と、言っております。ので。ご足労かけますが。事務所まで、来て、頂けない、でしょうか。」

「俺。・・・」とぼけた。

「はい。こちらへ。」真田は、一緒に着いて行った。会長らしき人が居た。

「君達。・・・目的は、何ですか。」強い不調で、言って来た。真田も、引かなかった。振るえている。のが、分かった。真田は、にらみを利かした。とっさに、落ちると、判断した。目をそらして、机に座った。真田は、立った儘だ。

「今日は、これで、引き上げてくれ。」と。小切手を出した。百万円。と。記してあった。そして、名刺を出して、

「三日後に、電話くれ。貴方の名前は。」と。聞いてきた。

「はい。真田幸介と。言います。・・・三日後に電話します。」と言って、事務所を出た。真田は、団長に、全員退場するように言った。団長が、解散命令を、出して、退場した。皆に、バイト料を払って、解散した。団長と真田は、喫茶店に行った。

「お早う。」

「あー。腹へった。ママ。何か作って、くれ。二人分。大もりで。」

二人は、水を飲んでいた。

「団長。・・・これ。・・・」真田は、現金。十万円を渡した。

「お。良いのか、よ。・・・何時も、こんなに。・・・お前の。は。」

「あ。良い、よ。この前のと、合わせて、親分に、今日。返すよ。・・・利子。付けて。・・・早く返せば、又、貸してくれる。かも。」

「そうさ。人間。だもの。そのほうが、良いよ。真田。ハハハ。」団長は、嬉しそうだ。

「あら。・・・楽しそうね。・・・お二人さん。はい。私の手料理よ。・・・メニューに、無い。のよ。」

「本当。・・・お。美味しそう。」二人は、がつがつ、食べていた。

「あー。ママ。・・・生きている、感じ。」

「良かった。」ママも、嬉しそうだ。食べ終わって。真田が。

「団長。・・・もう。止めよう。・・・やばい、ぜ。今日の会長。大分。ブルって、いて、よ。俺が、学生だ。て。分かっていない。から、今、退け時。だよ。」

俺も、今度ばれたら、退学だ。元も幸も、無くなる。・・・来年から、は。・・・本格的に、堂々と出来るよ。・・・な。団長。」

「あ。俺も、やばいな。とは、思っていた。よ。・・・退学なった。ん、じゃ。て。分かった。二回で、二十万円。か。・・・悪くねえ、や。サラリーマンの、二年分。だ。二日で」団長は、喜んでいた。真田が。

「団長。来年は、もっと、勉強して、よ。総会屋を、立ち上げる。んだ。よ。二人でよ。・・・よし。俺のおごりで。銀座で、飲もう。」

「真田は、良いよ、な。親父の、七光りで、銀座、赤坂で、飲める。んだ、もん。・・

俺なんか、田舎。もんでよ。金は、ねえ。し。行くとこ。ない。すよ。」

「団長。俺と組めば、大丈夫、だよ。・・・大学で、初めて、喧嘩した。中じゃないか。・・・まだ、決着は、付いてないけど、よ。・・ハハハ。」気が合う、二人だ。真田は続けた。

「団長。二人で、俺達の時代を、創る。んだ。お互い。良い、ところを、利用すれば、うまくいくよ。・・・俺も、銀座の、親分に成る。のが、夢だ。・・・協力してくれ。よ。今日は、俺、ん。家に、泊まれ。よ。」

「本当。良いよ。な。真田、ん。家。は、門が、あって。庭が、あって。」

「だから、頑張れば。大丈夫だ。よ。」

二人は、七時ごろ、銀座へ、繰り出した。そして、朝まで飲んで、真田の家に、泊った。二人は、十二時ごろ、起きた。水を、がふがぶ。飲んで、いた。

「お袋は、泊まりだった。んだ。」真田は、一人呟いて、いた。二日酔いで、ふらふらしていた。

「団長。六本木の、サウナへ、行こう。」と。二人は、サウナへは行って、夜まで居た。青山で、夕食を食べて、別れた。

真田は、家で一人、金を、数えていた。小切手が、二百万円。現金が二百万円。自分の預金が、七十万円。閉めて。四百七十万円。だ。悪くは、無い、な。呟いた。

「よし。明日は、B者の、社長に、電話して見よう。」真田は、寝た。次の日。早く起きた。母が、居るようだ。まだ寝ている。真田は、朝食の、用意を、していた。

「あら。何。している。の。」母が、起きてきた。

「あ。母さん。卵焼き、作っているよ。母さんの、分も、作った。よ。味噌汁も、ね。」

「そう。有難う、何処で、覚えたの。」

「あ。事務所だよ。若い者が、作る事に、成っている。んだよ。そして、朝は、親分と、一緒に、いろいろ話をして、食べる。んだよ。」

「えー。美味しい、ね。」二人は、普通の母子の家庭だ。

真田は、食事を済ませ、大学に行った。空手部に、顔を出した。人汗流して、喫茶店に、一人で、行った。お客は、誰も、居ない。B社の会長に、電話した。会長が出た。俺を調べたようだ。母の店で、夜、会う事に、決まった。

「ママ。・・・これ。上げる。よ。」真田は、封筒に、二万円入れて、ママに、手渡した。

「なに。・・・」

「うん。二万円。入っている。何時も、此処使って、仕事して、いた。んです。よ。・・・誰にも、内緒だよ。・・・閉まって。」ママは、慌てて、胸のポケットに入れた。

「後ね。俺の知人に、ここの電話を、教えた。んです。よ。俺の事。聞かれたら。上手く取り計らって、貰いたい。んだ。・・・かけてきた人を、メモって。頼むよ。」

「そう。・・・良いわよ。」ママは、嬉しそうに答えた。

真田は、母の店に行った。二階に居室があるので、二階に行った。

「おーす。」開けた。

「あら。・・・どうしたの。」

「うんっ。此処の店に、指定された。んですよ。・・・有る人に。」

「えー。少し前。電話。有った。のよ・・・六時に行く。て。三人。頼む。て。・・・

その人かしら。B社の、会長よ。」

「そう。・・・知っている。の。」

「知っています。わよ。」真田は、時間なので、部屋へ。行った。開けた。

「失礼します。」頭を下げた。二人居た。

「お。・・・いらっしゃい。前日は、ご苦労様さん。軽井沢まで。ご足労かけました。」

「いいえ。こちらこそ。ご無礼しました。」B社の会長と、もう一人、知らない人が居た。

「真田さん。こちらへ、座って下さい。」二人の対面に座った。

「あ。紹介します。・・笹本正夫。・・・我々企業の、情報を、纏めてくれて、頂いて、いる。関東一円の、情報を持っている人です。それに、株の動き、上場にも、詳しい人です。真田さんも、笹本さんと二人で、今後の発展に、力を貸して、頂きたい。」すると。

「笹本です。・・・私は、・・・真田君と。・・・呼びますので。宜しく。お願いします。」

「はい。私も、そのほうが、宜しいです。まだまだ。未熟者、ですから。」

「早速。真田君。今回の、一件は。君が、始めてだ。・・・しかし、これからは、増えてくると。予測する。増えてくれば、当然。ガード、しなければ、なりません。それが、今日の席だ。・・・又、今回と同じ事を遣って、もらう、企業が、山のように有る。私は、真田君みたいな、人を探していた。あれを、考案したのは、貴方です。か。」

「いいえ。私の、友達です。」

「ほー。その人を誘える。かね。」

「はい。誘えます。」

「お。それは、良い。その人は、使える。・・・あ。お父さんの事。残念でした。私も、ご焼香させて、頂きました。」手を合わせた。

「はい。・・・そうですか。有難う御座います。」真田は、頭を下げた。

「お父さんは、戦後復興に、尽力を尽くした、人だ。三国人を、追い払って、銀座、赤坂、六本木、新橋、渋谷、この界隈。または都内全域。任侠道の人達、貴方のお父さんが、先頭になって、身体を張って、くれた、御蔭。ですよ。政府、警察なんか、何も出来やしなかった。強盗。強姦。何人泣いた人が居たか。それは、市民が、知っています。

真田君。これから、本格的に動き出す。政府、警察なんか相手にしている、暇は、無い。ですよ。だから、警察の餌食になる。行動は、若い者に任せて、私と組めば、必ず、頂点に、立てる。とにかく、その道の、トップに、なる事だ。・・・今日は、この辺で。・・・私のところへは。毎朝、九時に電話を入れて貰いたい。・・・あ。会長。あれ。・・・」

「はい。これです。真田君。受け取って下さい。」と。会長に、紙袋を渡された。ずっしり重い。

「真田君。運転資金。だ。くれぐれも。無駄ずかい。は、しない、様に。頼む。よ。」

「は。はい。有難う御座います。頂きます。」真田は、逆らわず、その通りにした。笹本正夫。どう言う。人物なのだ。真田の、鼓動が。鳴った。

笹本が、立って、女将を、呼びに行った。 

「まあまあ。会長。・・・どうなっている、事。やら。・・・聞かないほうが。宜しいようで。・・・幸介。皆さんに、ご迷惑、かけない、ように。しっかり、遣るのよ。言う事を、聞いてね。」

「はい。頑張ります。・・・宜しくお願いします。」深々と、頭を下げた。

「じゃ。女将さん。用意して、もらおう。か。」

「はい。只今。」チーママと、コンパニオン三人が。

料理を、運んできた。ビール、ワイン、酒、ブランディー。

「あら。・・・幸介さん。・・・」チーママが、びっくりした。真田は、軽く挨拶した。

「真田君。何を飲みますか。」

「ブランディーを、水割りで、頂きます。」グラスに注いで。笹本会長が。

「真田君の、トップになる事を、祈念、いたしまして。乾杯。」三人でグラスを合わせた。チーママが。

「幸介さん。就職活動。ですか。」すると、会長が。

「あ。そうそう。・・・今、決まった、ところだ、よ。」

「良かった。ですね。幸介さん。会長。私からも、よろしくお願いします。」チーママは、正社員だと思っている。チーママは、愛嬌たっぷりの。女性だから、お客には、好かれている。真田は、一時間ぐらい居た。

「会長。笹本会長。私は、この辺で、失礼、します。」

「あ。・・・もう帰る。・・・じゃ。明日の朝。電話くれ。」

「失礼します。」真田は、頭を下げて、紙袋を持って、出た。ずっしり、重い。家路を急いだ。家に入り、早速開けてみた。五百万円。真田は、震えた。ソファーに横に、なった。頭が重い。夜中に、目が覚めた。真田は、コーヒーを飲んで、自分の今後を、イメージしていた。ベッドに、寝た。

朝八時に、目を覚ました。コーヒーと、パンを二枚、焼いて食べた。

九時だ。電話した。

「もしもし。お早う御座います。真田です。昨日は、身に余る好意。恐縮しています。有難うございました。」

「あ。・・・お早う。・・・処で、来週の土曜日。身体。空いています。かね。」

「はい。・・・空いて、います。」

「良かった。・・・伊豆の韮山に、私の別荘が、有る。其処に、一人で、来て、ほしい。んだが。」

「はい。・・・韮山ですか。」

「そう。韮山。伊豆長岡駅から、タクシーで直ぐ、ですよ。」

「分かりました。お邪魔させて、頂きます。」

「うん。伊豆長岡駅に、着いて。タクシーを見つけたら。駅前に電話があるから。運転手と変わってくれ。道を教えるから。・・・伊豆の電話番号を教えます。」と。言って。番号を控えた。

今日は、金曜日か。もう七月か。真田は、学校へ行った。空手部に、顔を出した。

「おーす。」真田のところへ、皆、集まってきた。

「お。元気のようだ。な。皆。夏の合宿は、何人行く。・・・ほう。全員か。・・・頑張っている。な。・・・これ持って行け。」五万円、封筒に入れて、副部長に、渡した。部員達も見ていた。

「ごっつ。あんです。」

毎年、夏の大会に向け、七月に入ると、一週間。合宿に行く。場所は、副部長が決める。真田は、団長に、連絡を取った。真田は、暫くぶりに、学生食堂に、入った。いっぱい居た。バイトに来た連中も居た。皆、挨拶に来た。

「ご苦労さん、だったな。皆。来年は、もっと、遣る。から。頼むよ。」

「おーす。ごっつ、あんです。」

真田は、大学を出て。神田の本屋街をぶらぶらしていた。ママの、実家を、探した。有った。此処だ。入って見た。なるほど、この本じゃ、見る人は、少ないと思った。本屋を出て、喫茶店に行った。団長が、来ていた。

「おーす。」何時もの、奥の席にいた。ママが、コーヒーを持ってきた。

「ママ。実家へ、行ってきたよ。・・・俺の見る本は、無かった。」

「でしょう。・・・こんな分厚い、本。ばっかり。」笑っていた。

「団長。就職。決まった。」

「決まらね。えよ。・・・真田。どっか。無いか、よ。」

「うん。今日は、その事で。話が有る。んだよ。」

「本当。すか。」

「あー。本当だ。よ。・・・俺。ん、とこ。・・・来い、よ。・・・勿論。給料は、決める。よ。・・・団長だったら。・・・三万円。月。・・・どうだ。」

「冗談、言わないで、よ。真田。」

「本当だよ。・・・後は、成功報酬だ。」団長は。目の色が、変わった。

「よし。真田を、信じる。・・・だけど田舎の親に。・・・なんて言う。んだよ。」

「大丈夫だよ。ビルに、事務所を借りる。から。社名、付けて。其処で。・・・まだ、有る。んだよ。・・・人を、集めてくれ。俺を混ぜて、八人。・・・だから。後。六人。」すると。

「あ。・・・居るよ。」

「じゃ。集めてくれ。・・・二人。・・・後の四人は。俺の目ぼしいのが。居る。」真田は、直感で、自分の脇を、固める、作戦だ。自分の見方として、四人に、する団長らが、三人。真田が四人だ。自分が居ないときの、話し合いが、纏まるように、する。四対三に、なる。

笹本会長が、聞いてくる。はずだ。その時に、組織の体制の話が、出来る。と。考えた。

「来週の金曜日に、此処へ連れて来てくれ。細かい事、説明するから。頼むよ。」

二人は、食事をして、店を出た。そして別れた。

そして、金曜日の日。皆、集まった。

真田が、大田、上田、宮田、須藤。掘、団長が、山本、佐藤。

全員。

「おーす。ご苦労さん。今日の会費は、俺が持つ。」真田が、言った。

皆座った。

それぞれ、話は、聞いて、知っている。と思う、んで、細かいことは、抜きにして、インテリー集団を、作りたい。ので、集まって。もらった。

皆も知っている、通り、俺は、江戸一家に、身体を預ける。事に成った。だから、江戸一家を、振る活用する。仕事は、企業相手だから、頭は使う。でも、皆で遣る、から、押し付けた。り。は、しない。ただ。努力は、して貰いたい。揉め事の。決は。俺が、取る。行けると、思ったら、誰だろうと。引き下がらない。事。・質問は、あるか。」

「給料は、いくらだ。」

「決めは、月給制。月、三万円。・・・仕事での、交通費、事務所での経費、食事は。俺が持つ。支払いは、末日。四月末日が、初任給とする。質問は。」

「長く続くのか。どうか。だ。」

「うん。其処が、ポイントだ。・・・続かなかったら。俺も潰れる。俺は、身体を張って、遣る。覚悟だ。背水の陣で。ぶつかる。」

「給料は、良いが。・・・長く。続くのかが。・・・問題、だな。」団長が。

「でもよ。・・・ここに居る連中。悪いけど。就職口は、ないよ。だって、よ。身体はでかいし。飯は食うし。ごつい顔。している。し。サラリーマン、じゃ。勤まらない。ですよ。・

・・俺は。真田を頼る。」

「おー。有難う。」真田は、一人決まった。と。思った。

「そう。だな。団長の言うのは、分かる。よ。・・・」

「うん。俺も。考えた、んだが。・・・団長が、一緒なら、真田に、就いて、行くよ。」

「じゃ。皆。決めよう。真田組に。就いて、行こう。」

「オース。」

「よし。・・・決まった。・・・俺に任して、くれ。・・・今から、此処を貸しきって、お祝いしよう。」真田は、ママに、交渉した。オーケイだ。皆で、テーブルを、並べ替えた。ママは、惣菜屋、肉屋、すし屋に電話して、配達してもらう事に。した。この人達の、食べる量は、半端じゃない。ママは、分かっている。

酒屋は、目の前だから、直ぐ、取りに行った。時間は、四時だ。とりあえず、ビールで乾杯。真田が。皆に注いだ。

「それでは。東京頭脳集団。結成。乾杯。」パチパチパチパチ。

お惣菜屋、さん、が、来た。鳥の唐揚げ。豚カツ。サラダ。生ハム。テーブル一杯。並んだ。肉屋さんも来た。牛、豚。厚切りステーキ用。ママが、焼いてくれる。見る見るうちに、ビールが、一ケース。無くなった。酒屋が来た。ウイスキー。日本酒。焼酎。氷。山ほど来た。肉も焼けた。

「旨そうだ。・・ステーキ。」

「こらこら。今、焼けるから。」ママが、笑っていた。寿司が来た。一番大きい桶が、四個だ。寿司は、まだ、カウンターに置いた。

「これは、超。豪華だ。・・・真田。大丈夫か。」

「大丈夫だ。どんどん、やってくれ。・・・時間は、有る、から。」一時間過ぎた。誰も酔わない。お互い、一年の時は、喧嘩した仲だ。誰が一番かは、不明である。       

だから、お互い、気心が分かる。全員、涙もろい、情けに、弱い連中だ。

でも、勝負は、ピカ一。だ。全員、全国大会に出ている。勉強も、中の上だ。

勉強も、堀川と大田は、上位だ。

二時間が過ぎた。何時も歌うのが、同期の桜だ。外は、まだ明るい。全員で、大きな声で、同期の桜を、歌っている。外で、眺めている。人も居た。

全員、百八十センチ以上ある、人達ばかりだ。佐藤は、百二十キロも有る。ママは、時々、貸しきる。お客さんも居る。ので、気にしなかった。

皆、真田を、慕った。

「真田は、偉いよ。東京に住んで、いてよ。銀座、赤坂で、飲める。しよ。金も、持っている。しよ。色男。しよ。」

確かに、痩せている。のは、真田だけだ、二時間が、過ぎた。ふらふらしている。人も出てきた。宴会は、九時ごろまで、続いた。皆、寝てしまった。

真田は、少しふらついて、いたが、又来ると言って、帰った。ママは、目が覚めるのを、片付けながら、待っていた。

次の日、真田は。六時に起きた。伊豆に行く支度をした。地図を出して見た。

東海道本線、三島で乗り換え、伊豆箱根鉄道。伊豆長岡駅で、下りる。

真田は、家を出た。東京駅で、八時発に乗った。三島駅で乗り換え。伊豆長岡駅に着いたのは、十一時を、回っていた。駅前に、タクシーが居たので、運転手に話し、公衆電話へ、行って、真田が電話した。

「もしもし真田ですが、お早う御座います。・・・今、運転手と変わります。」運転手が出た。分かったようだ。タクシーは走った。高級な家が、ぽつぽつ立っている。坂道を上がる。頂上だ。タクシーが止まった。清算して、真田は下りた。門はあるが、家は見えない。門のブザーを押した。お手伝いさんが出てきた。

「真田さんですか。」

「はい。そうです。」

扉を開けて、案内された。坂を上る。家が、チラッと見えた。門から大分歩いた。大きな家が見えた。和風造りで、二階建て。玄関に着いた。お手伝いさんがドアーを開けた。中に入った。広いホールだ。六畳ぐらいだ。ドアーを開けた。

「お早う御座います。・・・失礼します。」軽く会釈をして、入った。

「おー。お早う。遠いところ、ご苦労さん。・・・其処に座って。」真田は、対面に座った。すると。

「ま。・・・屋敷を案内しましょうか。」と。会長が案内した。南向きで、中央にリビング、二十畳、西側が、十二畳の、応接室。八畳の客室、三部屋。内風呂。西側に、露天風呂。露天風呂からは、富士山が、一望。二階は、全部、会長の部屋で、上がれない。敷地面積。二千坪。南側の庭は、日本庭園。池があり、橋が架かって、いて、橋を渡ると、銅版葺きの、屋根だけの、建物がある。十五畳は有る。大きな丸い、ティーブルが、あり、其処に座った。駿河湾が、一望。

「どうですか。・・・こう言う、別荘は。」

「はい。素晴らしい、です。・・・自分も、和風が、好きです。」リビングに、戻った。

「応接間へ、行こうか。」二人は、応接間へ入った。お手伝いさんが、コーヒーを出してくれた。

「真田君。コーヒーは、好き、かね。」

「はい。好きです。毎日、五、六杯、飲みます。」

「ほう。私も、好きで、ね。都内で、人と会っている、と、十杯位、飲みますね。・・・飲みすぎは、良くない、んだが、つい。飲んじゃう。・・・ここで待っていて、くれ。」

会長は、部屋から出て行った。

真田は、くっきり浮かんで見える、富士山を見て、胸が熱くなった。

「うん。・・・初めて、だ。こんな大きな、富士山。子供の頃、何回も登った。が、此処から見える富士山は。素晴らしい。こんな場所が有る。んだ。・・・よし。俺も、富士山のように成ろう。」真田は、闘志を、燃やした。

「あー。待たせたな。」

「いいえ。」

会長は、鞄を下げてきた。テーブルに置き、分厚いノートを出した。

「本題に入る前に、自己紹介。しよう。昭和一年五月生まれ。三十一歳。二十二年、三月、国立大学卒業。四月、○○商事に、入社。二十九年、○○商事退社。

経営コンサルタント会社設立。まだ二年目。・・・でも、商社マンと、しては。十年だ。

入社当事は、真田君もご存知の通り、戦後復興で、殺るか。殺られるかだから。必死だった。んだよ。全国。・・・私は、ラクビーをしていた。から。体力には、自信があった。幸い。やり手の部長に就いたから、叱られたけど、仕事は直ぐ、覚えた。部長は、結核に罹って、死にましてね。それからは、部長が担当していた。お得意さんを、私が担当になって。

その御蔭で。二十九歳で。部長になった。部長になると。お客が違う。企業の社長が殆どだ。だから、関東一円の、情報が入る。顔も広くなる。ただ。頭が良くても、駄目だ。度胸もいるし、戦い方を知らないと。勤まらん。スポーツと同じだ。グランドが。会社に変わっただけだ。部長に成ると、部下も増える。

前も、話したが、真田君の、お父さん達とは、大分、張り合った。それに、愚連隊。・・・この頃から。マスコミは、任侠道を。暴力団と、言い始めた。私は、親分達と、会っていたせいか、任侠道と、呼んでいた。

私の、同級生。友達は、学徒出陣で、多数死んでいる。私は、親父が、病気で寝ていたから。行かなくて済んだ。でも、友達は、俺を恨んでいるよ。・・・皆で、国の為に、死のうと、言ってきた、から。・・・だから俺は、何時、死んでも良い、そう思って遣っている。

恐れるものは、無い。んだよ。」少し休んで。

「そんなこんなで、年度末の、定例会議が終わり。宴会になり。・・・社長が、あまり日本を、悪く言う、から。・・・・戦争の事。・・・私は友達も、死んでいる。し、堪らなくなって。ぶん殴った。次の日、首になる。前に、朝一番で、辞表を出した。

家に帰って、休んでいたら。電話が、一日中、かかって来て。あの場は、社長が悪い。貴方が、正しかった。てね。・・・嬉しかった。

次の日は、都内中、噂になった。・・・そして、有る大臣と、会って。バックアップするから。コンサルタントを創れ。と。言われて。創った。その頃は、企業も、株主も、私に聞かないと、先が見えなかった。其処まで私は、のめり込んでいた。だから、皆、私を、必要としていた。其処で、私が取ったのは、隠れ蓑の様に、表に出ない。

影武者的に、なって、現在に至る。ですから。真田君。私は。何時。殺されるか、分からない。狙われているのは。確かだ。今に分かる。だから。私が死ぬ前に。真田君が覚えてくれれば。有りがたい。・・・」長くなった。自己紹介で。

「はあー。そうですか。・・・話を聞いてみないと。分からないです。ね。凄いです。尊敬します。自分も燃えてきました。」

「おー。そうです。か。・・・その息だ。」にこっと、笑った。そして。

「じゃ。本題に入る。日本は、必ず、成長する。今、東京で、オリンピックを、開催しようと、計画が進んでいる。昭和三十九年、後半に成るだろう。と。おおよそ、分かっている。公式発表は、分からない。・・・この計画も、誰もが知っている。わけではない。此処だけだ。外では、絶対。喋らないように。

「はい。分かりました。」真田は、びっくりした。

「オリンピックが終わると、日本全体が、スポーツ振興に、力を入れる。各企業は、スポーツ施設に、投資する。体力づくりと、称して。金を使う。グランド、テニスコート。更に、ゴルフ場建設。又、ここ数年、子供の出生率が、伸びている。これが起爆剤となり。高度成長期に、入る。勿論、学校も足りなくなる。大学校も、だ。都内近郊に、移転が、始まる。又、地方にも、進出する大学校。又、キリスト教系の、短期大学が、増える。そして、外国の要人が大勢、日本にやってくる。各企業も、税金逃れの。子会社を設立する。株式上場も増える。・・・現在の国会議員と各省庁は、経済に対応する法律作成が。追いつけない。特に、金融、株券は。甘い。後、二十年は、大丈夫だ。

従って、代議士、公務員、企業の社長、会長達は。交際費を、我が物のように使う。・・・女に弱い。酒好き。金は交際費。この三点を、上手く、使い分けるのが、真田君の、器量だ。幸いに、真田君は、お母さんが、料亭を遣っている。から、一つクリアだ。二つ目は、女だ。

外国からの要人を、専門に接待する。これをコンパニオンと言う。そのコンパニオンを集める。三百人。・・・これからは、三百人単位で要人が。来る。但し、英語を基本に、スペイン語。フランス語。イタリア語を話せる、二十七歳以下の、女性。背は、百六十センチ以上。体重、五十キロ前後。これが条件だ。

第三は、若い衆を、百人以上を持つこと。幹事長に、なること。すなわち、一家の中枢に成る事。来年の、株主総会は、いざと言う時は、四百人ぐらい、集めて貰いたい。

大筋は、このくらいだ。

又、私と真田君と会う時は、堂々としている事。私に、ぺこぺこする、必要は無い。私も、人前では、真田さんと呼ぶ。そして、毎週、月曜日の、八時から九時の間、私に電話をくれる事。必ず。

東京へ、帰ったら、芸能界ボス。と言われる、女社長に合わせる。これからは、地方巡業が増えるので、ボディ・ガードを、探している。らしい。・・・その仕事も有る。

処で、真田君は、江戸一家の身内になって、何年かねっ。」

「はいっ。・・・五年です。」

「ほう。五年。・・・あと五年で、幹事長になれる。な。」

「それは。無理です。」

「うん。・・・真田くん。・・・今の。言葉。は。駄目だ。慎め。それは、弱音だ。・・・人間。特に真田君が、歩こうとしている道は。絶対。弱音は。禁物だ。・・・必ず。出来る。成る。遣る。・・・任侠道の基本だ。」

「あ。はい。自分が、間違っていました。」と。立って。謝った。

「うん。分かってくれれば、良いよ。真田君も、スポーツ遣っていた。んだから、分かっている筈だ。なぜか。・・・私に。おどおどしている。からだ。ず張りでしょう。こんご。気をつけないと、真田君が、これから会う人は、全て、初対面だ。その時、今の態度では、当てに、成らなく成る。必ず。やり遂げます。と。自信を持って、話す。」

「はい。良く。分かりました。」真田は、自分が、情けなく思い、悔しかった。

笹本会長は、鞄から出したノートを、見せた。国会議員、各企業の会長、社長。各省庁の所管の局長の名簿だ。自宅の写真、奥さんの名前、自宅の電話番号、出身地、卒業校、趣味、年収。何時も行くクラブ、飲食店、料亭。若い時にしていたスポーツ、二号さん。人柄、乗っている。車。ナンバー。ハイヤー社名。そして、真ん中に、全身の写真。

「そのノートは。日本広しと、言え。ども。私、しか。持っていません。代替わりをすれば、其の都度、書き替える。一度作れば、一部変える、だけだから、簡単だ。商社に居た時、作った。んだ。四季報より、凄い、だろう。これに載っている。連中は、私からは、逃げられない。ハハハ。真田君、いずれは、これ、上げる。よ。表紙が、革だから、絶対破けない。」真田は、びっくりした。

「真田君。まだ、びっくりしちゃ、いけない、よ。まだ有る。」鞄から出した。

やはり革の表紙で作った。ノートだ。今度は、会長自身が、開いて見せた。

「えー。凄い。」

「これは、二号さん。三号さん。の。住んでいる。家、顔写真、住所、小遣い、車、ナンバー。・・・此処まで遣らない。と。本物じゃない。よ。」と。鞄にしまった。

「真田君。ノートを返して」

「あ。はい。」真田はノートを、返した。

「これは、其の都度、コピーして、貴方に渡す。・・・でも、誰にも見せては、いけない。そして、あくまでも、自分が調べた事に。する。

若い連中に、・・・流石。・・・と。言わせる為だ。私の所へ来れば、殆ど分かる。」

「はー。」真田は、ため息を、ついた。恐ろしい、人だ。

「おー。こんな時間だ。」四時だ。四時間も話した。会長は、立って、真田に風呂を案内した。真田が、風呂に入って居るうちに、宴会の用意を、指示して、いた。  

芸者を六人呼んだ。魚屋へ電話した。直ぐ来るそうだ。飲み物は全部ある。

日本酒、ワイン、ブランディー、ビール、真田は風呂から上がって、着替えた。ブランドのジャージが、用意してあった。少し派手なようだ。テーブルには、料理が用意してあった。凄い。大きな鯛だ。八十センチはある。魚尽くしのようだ。会長も二階で風呂入って、着替えて来た。

「少し派手、かな。・・・真田君、服。合いました。」真田は、立って見せた。

「おーっ。丁度合いますね。スマートだから、かっこ良いな。・・・俺は、太りすぎだから、・・・背丈は、俺より、ちょっと大きい。かな。」

「百八十三センチです。」

「おー。俺は、百八十だ。呼び名は、真田。会長で。良いよな。今日は、俺を、立ててよ。」二人は、向き合って、座って居た。芸者が来た。

「お早う御座います。」

「あら。会長。ひさしぶり。」

「遅い、よ。・・・早く座って。」

「あら。お客様。」ビールを、皆に注いで、会長が。

「真田幸介の、今後の発展のために、乾杯。」パチパチパチパチ。

「あら。こちらの方。芸能関係、ですか。」

「そう。見える。・・・当たり。」真田も、冗談に、合わせた。

「今度、度々来るから。サービスして、おいたほうが、良いよ。」会長が、言った。

「本当。・・・私。なぎさ、すみれ、あや、みえ、さくら、さやか。宜しく。」    

宴会は、十時過ぎまで、続いた。会長も、真田も疲れたようだ。

「もう。中締めにして、・・・寝ようか。」会長は、今晩泊まる、芸者を、決めてあった。二人は、帰った。真田。この二人、連れてって良いよ。と。会長は、別の二人を連れて、二階に上がった。

「真田さん。参りましょう。」露天風呂、のある。部屋へ、三人で入った。真田は、少し飲みすぎたようだ。温めの風呂に入った。芸者二人も、入って来た。

「二人で、開放してあげる。」浅くて、温い風呂だから、三人でもつれながら、入っていた。真田も、元気が、出てきた。

「あら。・・・元気ね。お布団に、戻りましょう。」二人は、真田をバスタオルで、拭いてくれた。隣が、寝室になっているので、直ぐ、布団に横になった。真田は、女二人に。戸惑っていた。お姉さん達は。プロだ。真田を、二人で、自由に操っている。真田もその儘。身体を任せた。一時間続いた。若い真田も、お姉さん達には、勝てなかった。ぐったりして寝た。三人で、抱き合って寝ていた。

次の朝。真田は、八時ごろ目が覚めて、風呂に入っていた。一人の芸者が入って来た。

「あら。お風呂に居た、のね。私も、入って良い。」と。入って来た。いきなり、真田に、抱きついてきた。

「昨夜。私と、行かなかった。のよ。」と。攻めてくる。真田も、その気に、なって。元気を出した。三十分位で、頂点に達した。

「あー。・・・若い人は、良いね。・・・久しぶりに、本気に成っちゃった。」

芸者は、本気で、喜んでいた。真田は、リビングに行った。一人で、コーヒーを入れて、飲んでいた。十時だ。会長は、起きて来ない。新聞を見ていた。芸者二人も、起きてきた。

「あら。コーヒー、飲んでいる。」ふたりも、コーヒーを入れて、真田の傍へ、座った。

「会長は、十二時ごろよ。起きるの。」三人は、世間話をしていた。会長が起きてきた。

「お早う。・・・もう起きてきた。・・・あー。二人はきつい、な。・・・どうだったー

真田。」

「はい。・・・充分です。でも、二人は。・・・」

「あー。初めて、か。・・・二輪車。そうだな。・・・慣れないと、どっちから、食べて良いか、分からない、な。ハハハ。でも、楽しいだろう。」

「あ。はい。」真田は、戸惑いながら、話していた。芸者達は、真田を見て、ニヤニヤしていた。

「女は、魔物だから。気をつけないと、怪我する。よ。・・・俺は、その場その場で、区切りを付ける。其のほうが良い。女を抱えて、家を建ててくれて、子供を作ったら、煩わしさが。残るだけだ。仕事にも、負担が、かかる。し。周りから、見放される。カッコ良い様だが。笑われて、居る。そんな親分は。居ない、だろう。そう言う人は、女に負けて、自分にも負けた。ことになる。全部とは、言えないが。・・・暮れ暮れも、女には、気をつけるように。」芸者達は。笑っていた。

そして、会長は、芸者達に、金を払って、帰した。二人で、朝食を食べて、応接室へ行った。

「昨日の続きで。これからは、ゴルフ場開発が、全国的に広がる兆しが、見えてきた。特に、東京近郊は、何百と成る。頭に入れておいて。会員券で。儲かる。・・・それから、これを渡しておく。五百万円。入って、いる。」会長は、紙袋から、五百万円を鷲摑みに出して、真田に、渡した。

「は。・・・はい。」手が震えている。

「真田君。これは。上げる、んじゃない。よ。・・・預けておく。この金は、設備投資だ。先ずは、人集めだ。無駄遣いは、しないように。」

「はっ。分かりました。」真田は、深々と、頭を下げた。

「それから、卒業するまでは、絶対、警察沙汰は、起こさないように。気をつけてくれ。これからは、学歴だ。学歴が物を言う。・・・そんな時代になる。卒業しなかったら水の泡だ。」

「はい。気を、つけます。」

「うん。明日から、勉強に専念して、関東周辺の、組事務所。親分を、全て把握しておく事。そして、卒業証書を、貰った。次の日から、動く。真田は、警察とマスコミに、狙われている。て。・・・情報が、入っている。真田担当の、警察。記者を。構成した。」

「えー。・・・分かりました。」真田は、自分を、見失っていた事。に。気が、ついた。

「本日は、これまで。タクシー。呼んで遣るよ。」タクシーに電話した。真田は、着替えて待っていた。タクシーが来た。会長が。

「月曜日の朝、八時から、九時の間。必ず、電話暮れ。連絡は、密に、取るように。」

「はい。分かりました。」真田は、タクシーに乗って、駅に向かった。駅に着いた。まだ時間が有る。真田は、ベンチに持たれて、目を閉じていた。

電車が来た。乗った。家に着いたのは、五時ごろだ。コーヒーを飲んで、落ちついた。含めを開けて、現金五百万円を眺めていた。無駄使いは、絶対しないことを自分に、誓った。

次の日、月曜日だ。学校へ行った。暫くぶりだ。皆寄って来た。

「暫く、だな。真田。あまり、派手に遣らない、ほうが、良いです。よ。情報入っています。よ。・・・噂は、何十倍になって、流れている。よ。ま。真面目に遣ろう。真田。もう直ぐ、夏休みだ。」

「教えてくれて。有難うっ。」真田は、皆に、お礼を言った。真田は、そんな予感はしていた。会長の言う通り。卒業しない事には。・・・金は、心配入らない。

夢のようだ。自分を、必要としている人が。いる。・・・・自重しよう。と。真剣に考えた。

食堂で、堀と会い、三時に喫茶店で会うことにした。真田は、ママに、支払いがあるので、一足先に行った。ドアーを開けた。

「あら。今日は一人。」

「あ。この前の、いくら。」

「宴会の。・・・良いわ。よ。・・・前に頂いたの。有る。から。」

「それは、それ、だよ。・・・じゃ。一万円。払うよ。」真田は、かっこつけた。

「あんた。・・・学生でしょう。・・・何処から、そんなお金。持って来る。のよ。」

ママは、真田の噂を、聞いて、知っていた。

「今。卒業控えて、学則に、触れるような事。したら。留学か、退学よ。後輩に、笑われる。わよ。」真田は、黙った。噂は、聞いている。と。思った。からだ。

「うん。ちょっと、遣りすぎた。かも。今日も皆に、言われた。んだ。勉強もおぼつかなくて、帰ってきた。ん、だ。」

「そう。・・・反省している。なら、良い。んじゃない。・・・頂いておく。わ。男として。引っ込めない。でしょうから。」ママは、仕方なく、取った。

反面。真田は、ほ。と。した。堀が来た。

「オース。・・・コーヒー。」真田と対面に座った。

「皆どうして、いる。」

「あー。六人か。真面目に、やっている、よ。」真田は、低い声で。

「掘よ。皆に言って欲しい。んだ。・・・必ず卒業するように。て。」

「ハハハ。・・・大丈夫だ。よ。皆。真面目だから。」

「あ。そうか。・・・それなら安心だ。・・・皆に、言われたから。さ。噂になって、いる。て。俺も、掘。も、調子に乗った。かも、よ。」

「うん。・・・俺も、そう。思っている。よ。・・・だから、自重している。よ。」

「良かった。これからは、学歴が。物を言う。時代になる。て。有る社長に、言われた。んだ。な。掘。卒業するまでは、勉強と部活に、専念しよう。・・・金は、間に合うだろう」

「あ。余っている。よ。」掘も真田も、大分反省、している、ようだ。

「此処、出るか。」二人は、店を出て、暫く歩いた。五時過ぎた。

「掘。・・・金座の寿司屋へ、行こう。」タクシーに乗って、銀座へ行った。

「お。幸ちゃん。暫く。何ヶ月ぶり、じゃない。」

「うん。・・・二人。」

「奥。空いている。よ。・・・たまに、顔出さなきゃ。こっちのほうが、心配する。よ。幸ちゃん。一人ぐらい。大丈夫だから。」親父は、金のことを、言って、いた。

ビール、刺身、寿司を頼んだ。

「掘。・・・卒業式。何日。だっけ。正確に。」 

「二月二十日。かな。・・・でも、三月中は、在籍中だから。何も出来ないよ。」

「うーん。・・・そうかー。」ビールとつまみが来た。二人は、グラスをあわせて、飲みながら、話している。

「何考えている。んだよ。・・・真田。」

「うーん。・・・事務所を、借りるのに。」

「事務所。」

「し。声が。・・・うん。真田グループの、事務所。だよ。」

「金。・・・有る。のかよ。」真田は、口に、指を当てて、低い声で。

「親父が。俺に。て。金を。残してくれて。いた。んだ。・・・昨日。お袋が。江戸一家に行く、んなら。小遣いも、要るだろう。し、何か事業でも、遣るように。て。お父さんが。残して、くれたのよ。五百万円。」て。

「え。五百万。」

「し。声が、高い、よ。・・・そう。なんだよ。だから。金は、心配、するな。」

「お。・・・分かった。・・・皆に、言っておく。よ。」掘も、安心したようだ。真田も、皆を安心させる事が。運営の為だと、考えた。掘に、伝えておけば、自然と、皆に伝わる。会長の事は、誰にも話さない。掘も、安心して。

「真田。此処の寿司は、旨い。・・・高いだろう。」低い声で、言った。

「あ。高いよ。・・・一人前。千円ぐらい。かな。」

「え。千円。」掘は、真田を益々、金の有る人だと思った。

「俺、行くところは、三百円だよ。一人前。」二人は、店を出た。

「真田。・・・今、金。払った。の。」

「あ。・・・あ。お袋から、貰う。て。親父が。」

「良いな。真田は、お袋も、金持ち、なんだ。」掘は、羨ましがって居た。

二人は、分かれた。真田は家に帰り、休んだ。大分疲れた。そして、夏休みに入り、八人は、それぞれ、部活に専念していた。たまに集まって、海に行ったり、実家へ、帰ったり。大学最後の夏を、楽しんでいた。二学期も始まり、秋の、全国体育大会が、開かれた。真田も、空手で参加していた。都内で、団体優勝。個人、真田優勝。三年連続。空手部創設以来、初めてだ。

真田は、学校から、表彰された。そして、全国大会。団体、三位。個人、真田優勝。学生チャンピオン。三年連続。其の名を、轟かせた。一方。事務所の当番も、積極的に勤め。親分にも、褒めらて、いた。笹本会長との、連絡も欠かさずしていた。そして、事務所当番をしながら。会長が、言った。関東一円の、組み事務所。親分。組長などの、情報も、殆ど、把握した。

十二月に入り、一家の事務所も。暮れ、正月の準備で、忙しくなった。お飾りの届けが、一〇〇〇件も有る。若い衆が、手分けして、部品を買って、組み立てて、それぞれ、届ける。二十七日までに、終わらせる。大変だ。真田も手伝った。

それが終わると、親分の家に、挨拶に来る、親分集の接待役を。真田が。抜擢された。他の親分集に、顔を売るチャンスである。親分になる第一歩だ。・・・

四人居る。其の仲の責任者に。真田が選ばれた。春から縁起が良い、話である。

又、笹本会長とも、蜜に、連絡を取っていた。

※一月八日。伊豆の別荘で、会うことになった。暮れから。別荘に行っている。そうだ。年も明け。親分の世話も、無事努めた。真田は、家に帰り、五、六、七日と、母と二人。ゆっくり過ごした。

赤坂の店も、七草まで休むのが、恒例だ。八日。朝早く出た。伊豆に、十一時に着いた。

「あけまして、おめでとう御座います。」挨拶して、座った。

「おめでとう。今年も、宜しく。」大島紬を羽織っていた。

「真田。この着物。知っている。かね。」

「はい。大島紬です。・・・家の親分も、着ています。」

「そうか。・・・でもね。俺の、は。ちょっと違う。透かし織り。て。胸と袖のところが。ほら。・・・普通の大島の、倍だ。」真田は、なるほど。親分のものとは、ちょっと違う。

「どうですか。・・・人材は。」

「はいっ。集まりました。自分を入れて、八人で、体制を組みました。」

「八人。・・・何か。意味有る。んですか。八人とは。」会長は、知っていた。

「はい。東条英機の、本を、詠みました。」

「お。分かった。・・・言わなくても。」分かっていた。

「そうか。真田は。・・・勉強している。じゃないか。・・・其の調子だ。」

会長も、東条英機のように。部下を褒めて使う。真田は。ぴんと。来た。

「はい。有難う御座います。・・・正月は、親分の家で。挨拶に来る。お客さんの。接待責任者に抜擢され。無事。勤めました。」

「ほう。それは。大した、もんだ。他の親分集が、大勢来た、でしょう。・・・じゃ。大分。顔が売れた。な。真田。良かった。今年は、良い事、起こりそうだな。」

「はい。自分も、そう思っています。」リビングで、話して居た。そして、応接室へ入った。

「真田。今日も、富士山が、雲一つ、被ってないぞ。真田が来る時は、何時も、スッキリ、している。よ。」会長と真田は、富士山を、見ている。四時だ。

「もう直ぐ。芸者と料理が来る。芸者は、この前と、同じメンバーだ。

この置屋も、二十七が、定年だから。次々と、若い女を、抱ける。よ。女は、三十

になると、大人ぶって、恥ずかしがりや、に。成る。又、逃げを、覚える。

だから、遊ぶには、面白く。無くなる。その点、二十七歳の頃は、遊びと、割り切っているから。なんでもする。から。面白い。遊びだから。」

「はい。・・・自分も、あれから、なんとなく、思いました。」真田は、会長と同じ考えであることを。アピールした。会長も、指示通り、動いて居ることを、確認した。ようだ。

「お待ちどう。さん。」魚屋が来た。料理を運んできた。和室に並べた。芸者達も来た。この前と、同じメンバーだ。

「今晩はー。明けまして、おめでとう御座います。・・・あら。又、会いました。」

「真田さん。・・・て。」皆覚えていた。

「えー。覚えていて、くれました。・・・お手柔らかに、お願いします。」

真田も、この場は、頭を下げた、ほうが、利口だと思った。

会長は、見ていた。真田も少し、成長したようだ。遊びは、女に、鼻を持たせたほうが、楽しくなる事を知った。

「はい。はい。・・・こちらこそ、宜しく。」芸者が、ビールを、注いでくれた。会長が

「今夜の、真田君の、ご健闘を、祝って、乾杯。」パチパチパチ。

「会長。・・・なによ。・・・健闘って。」ハハハハハ。

宴会は、楽しく、始まった。ビール、ブランディー、ワイン、日本酒、魚料理。

「今日は、寿司も、来るから。ゆっくり遣ろう。・・・時間も有る。し。」

芸者は、宴会の席では、食べてはいけない事に成っているが。此処だけは、違う。

だから、芸者達は。

「会長。とこは。食べられるから、・・・良いよ。ね。」

「今日は、私達。すきっ腹で、来たの。会長の席だ。と、分かった、から。」

「あー。どんどん食べて。どんどん。サービスして。」芸者達は。食べて、飲んで。お酌して。大はしゃぎだ。宴会は。八時ごろまで、続いた。

中締めをして、会長達。三人は、二階に行った。真田たちも、露天風呂つきの、部屋へ行った。この前と同じ部屋だ。三人で、風呂に入った。今日は、二度目だから、真田も、自信ありげに、絡み合っている。でも、二人は、プロだ。真田も、若いとは、行っても、テクニックは、まだまだのようだ。二人に、煽られている。直ぐ、頂点に達した。

「あら。お若いのねー。」

笑われていた。真田も、どうしようも無い。修行が、足りない。少し、休んだ。

風呂を上がって、布団に行って。仰向けに寝ていた。芸者達も、上がってきた。

「あら。・・・真田さん。元気。取り戻した、見たい。ね。」

二人は、真田を、サンドイッチにした。上下から。攻められている。我慢したが、駄目だった。

「あー。・・・」どんどん。攻めてくる。真田も、飲んだせいか。疲れているようだ。そのまま寝た。真田は、六時ごろ、目が覚めた。風呂に入った。外は、うっすらと、雪が積もっていた。五センチは、あるか。

露天風呂で、外を眺めていた。会長は、何時も、十二時ごろまで、起きないと聞いていたので、まだ、時間が有るので。寝室へ行った。芸者二人は。丸裸で、抱き合って、寝ていた。

真田は、其処へ割り込もうとした。二人は、気付いた。そして、一人が、風呂へ入りたいと、出て行った。真田と、二人になった、昨夜の続きが始まった。真田も慣れてきたようだ。リードした。女は、大分責められて、何回も、燃えている。風呂から、帰ってきても、まだ終わらない。じっと眺めている。・・要約。終わった。

「真田さん。随分。技術向上。したわ。ね。」ニヤニヤして、言われた。

でもぐったりしている。相手も、起きられないで居た。

「真田さん。今度は、私が、相手する。」

「あー。もう駄目だ。・・・元気。ない。・・・ほら。」

「大丈夫よ。私が。元気にして上げるから。」真田も、つまらない、意地を張った。でも、ふらふらだ。この女は、凄い女だ。真田も、振り回されて、居る。それぞれ違うとは、聞いていたが、真田は、実感した。長く続いた。前の女は、起きて、風呂へ行った。二人は、まだ、燃えている。・・・ようやく終わった。真田は、ぐったり。だ。女は、あまり疲れていないようだ。にやっと、笑った。十一時半。真田達は。起きて、リビングで、コーヒーを飲んで、セックスの話で、盛り上がっていた。真田も、恥かいても、しょうがないと、諦めていた。会長達も、降りてきた。そして、芸者達が、朝食の用意をしてくれると言うので、待っていた。十二時だ。皆で、朝食を済まして。女達は、帰った。会長と真田は、話していた。

「其の内、芸能界のボス。と言う、社長と会おう。俺が会う事に、成っているから。真田を、紹介するよ。・・・お母さんの店、でね。」

「はい。・・・分かりました。宜しくお願いします。」

「昨夜は、早く寝たから。起きるのが、早かった。よ。・・・あ。四月からは、忙しくなるから。其のつもりで。それから。バイトの手配。四、五百人。頼むよ。・・・タクシーよぶかっ。」電話をして、タクシーを呼んだ。真田は、支度をして待った。直ぐ来た。一時だ。真田は、夕方、東京に着いた。家で一人。瞑想に、慕っていた。

その儘寝たようだ。起きたら、八時だ。喫茶店のママが、気になった。電話した。でた。

「あら。珍しいわ。ね。・・・どうしました。」

「うん。・・・電話したくなって。・・・あっ。明けまして、おめでとうっ。」

「はい、おめでとう。今年も、宜しく。ね。」

「あ。・・・あのさ。・・・ジャズでも、聞きに、行かない。」

「え。急に。・・・うん。・・・良いわ、よ。」

「有楽町駅で会おう。九時ごろ。」真田は、昨日の、セックスを、思い出し、遊びでない。ほれた女と。無性に。セックスをしたくなった。でも。落ちなかった。ら。断られたら。頭を過ぎった。ぶつかって、みる事に、した。真田は、まだ、袖を通したことがない、英国製のスーツと、ワイシャツとネクタイだ。鏡を見た。

「うん。中々だ。」自分で褒めた。

真田は、タクシーで、有楽町に行った。ママは、駅前で、立っていた。

「待った。」

「うーん。五分ぐらい。・・・かっこ良い。じゃん。・・・スーツ姿。」

「うん。今日初めて、袖。通す。んだ。よ。行こうか。」真田は、浮き浮きしていた。

二人は、ジャズクラブに、入った。

「今日は、外人だ。」アメリカの、バンドだ。流石に、音が違う。一時間ぐらい居た。クラブを出て、バーに、入った。いろいろ話した。

「十五日に、大物社長と、会う。んだ。仕事がある。らしい。・・・それから。国会議員とも、会う。んだ。この人も、仕事がある。らしい。店の、お客さんで。母の紹介、なんだよ。・・・コンパニオンの。派遣業を、遣らない。か。て。」

「コンパニオン。」

「あー。これからは、日本に。外国の、要人が。大勢来る。ようになる。から。

パーティーの席で。接待。お世話をする。仕事。なんだ。話し相手、お酌、ホテルの案内。

だから、英語を喋れる。女性を四百人。ぐらい。集められない。か。て。話が、きている。んだ。歳は、二十歳から二十七歳まで。なんだ。」

「へー。そんな仕事ある。んだ。・・・・私は、英語、話せるよ。でも。今は、話せる人、居るでしょう。学生なら。英会話。居ますよ。」

「本当。・・・ママ。遣らないか。・・・とりあえず。百人。集めて。」

「うーん。面白そうね。・・・遣りたいね。」

「本当。・・・実は、俺は、遣りたい。んだ。まだ、はっきり、分からないけれど。

国から依頼される。から、支払いは、国だ。現在は、当たり、ばったり。で、誰が責任者か分って、いない。し。もし、事件が起きたら、大変な事に、なりかねない。ので。て。」

「へえー。外国の要人。相手。・・・やらして。・・・私に。」

「本当。良かった。・・・ママに断られたら、どうしよう。かと、悩んで、いた。んだ。他に、知っている、女性は、居ない。し。・・・良かった。乾杯しよう。」

二人は、ワインで、乾杯した。嬉しそうだ。ママは、帰ろうと、言わない。真田は、チャンスかな。心で考えていた。十一時を回った。真田は。

「ママ。・・・俺に。手を、貸して、くれ。」

「え。・・・なに。」真田は、ママの手を握って。

「結婚してくれ。・・・何か、俺には、頼れるような。気がする。店に来る人。達と、仕事をする。事に、なっている。し。ママなら、皆を、知っている。し、皆も、ママを、好きだ。た。んだ。・・・だから。」

「私も。・・・貴男を。私が支えてあげない。と、駄目になる。かも。と。考えていたの。

本当よ。・・・良いじゃない。考えている、事が、同じだから。・・・良いわ。よ。私。」

二人は考えている事が、一緒だった。二人は、店を出た。ママは、何処か、ホテルを探そう。今夜は、一緒に居たい。と言った。少し、酔っていた。二人は、タクシーに乗って、運転手に聞いた。開いている。ホテルが有る。と言うので、新宿に行った。十二時。チェックイン。二人は、朝まで。燃えていた。十時に、チェックアウトして。最上階のレストランに、入った。

「今日から、真理。て。呼んで。」

「う。あー。分らなかった。よ。名前。・・・上は。」

「え。上も知らなかった。の。・・・岡田真理。・・・宜しく。ハハハ。」

二人は、笑っていた。

「でも、早いね。・・・貴方達が、一年の時に、開店したの。よ。」

「そうだった。のか。ずーと、長く遣っている。人に見えた。よ。」

「うん。バイト遣っていた。から。店の雰囲気は、分っていた。から。」

「うーん。」

「親の後を継ぐのに、就職しなかった。の。じゃ。喫茶店。遣りたい。て。言ったら。此処。借りてくれた。の。」

「親達は、優しい、んだ。ね。」

「うん。一人っ子。だから。・・・戦争に巻き込まれて、二人、死んだ。の。弟と、妹、

疎開しなかった。の。私達。ずーと、神田に、居たの。怖かったよ。」

「うーん。俺は、長野に、疎開していた。から。・・・これから、二人で頑張れば、大丈夫だよ。・・・俺も、親父が、殺されて。・・・何時までも、悩んでも、どうする、ことも、出来ない。し。強く生きよう。て。誓った。んだ。よ。」

「そうね。悩んで、いても。・・・宜しくお願いします。弟のように、可愛がってあげますよ。」真理は、一つ年上だ。真田は、強く感じた。

二人は、新宿でぶらぶらしながら、買い物をしていた。真田は、早速。インゲージリングを、買ってやると、デパートに入った。三カラットのダイヤに、立て爪のリングを注文した。

「えー。大丈夫。」

「大丈夫だ。よ。・・・任せなさい。」値段は、教えなかった。一週間後に、取りに来てください。と言われた。二人は、夕食を済まして、分かれた。

真田は、十五日、昼。母の店に行った。今日は、会長と、社長が来る事を、話した。母も、知っていた。夕方まで、待っていた。

五時ごろ、会長が来た。真田は、出て行った。

「お早う御座います。」

「あ。お早う。・・・まだ。来ていない。・・・社長。」

二人は、社長が来るのを待っていた。直ぐ来た。

「お早う。明けまして、おめでとう御座います。・・・会長。」社長が来た。

「おめでとう御座います。ご無沙汰。しております。」会長は、社長の手を取って、両手で、握手した。

「社長。紹介します。・・・真田幸介と、言います。・・・先日話した。」

「あ。はい。分りました。将来、有望な方。ね。・・どうぞ。座って。」

「真田と言います。宜しくお願いします。」真田は、対面に座った。会長と社長は、並んで座った。真田は、名刺を貰った。

「うーん。中々。勇敢な、方じゃない。この人なら、大丈夫でしょう。」

「はい。有難う御座います。・・・実は、社長。この人は、この店の女将さんの、ご子息です。○○大学、経済学部。今春卒業です。空手四段。趣味は、絵を描くこと。高校三年から、江戸一家で事務所当番を、していまして、三月からは、自分の組を。立ち上げます。」

「ほうー。そうですか。・・・女将さんの。・・・江戸一家。名門です。な。任侠道も、インテリーの、時代に、入る。んですか。・・・スーツが、似合います。ね。・・・安心した。わ。会長。」

「おー。良かった。真田君。社長に褒められた。よ。」

「はい。有難う御座います。」真田は、深々と、頭を下げた。

「それで、社長。空き事務所の件、ですが。」

「あ。そうそう。有ります。赤坂の高台で、八階建ての、最上階。赤坂一望できる場所。よ。三十坪。玄関が、二つ有るから。仕切って使える。これが、現地の案内書と鍵。」

「はい。有難う御座います。・・・家賃は。いくらですか。」

「うん。家賃は、良いです。よ。家の建物だから。仕事で埋め合わせて。頂ければ。総会もある。し。関東全域に、ゴルフ場建設も、計画している。し、今、三箇所。模索している。の。場所が決まれば、会長に、連絡します。其のときは。宜しく。」

「はい。有難う御座います。事務所は、明日。見に行きます。」会長と真田は。お礼を言った。会長が席を立って、チーママと話して、いた。少し経って、料理が運ばれてきた。大きな鯛。中央に。今日も魚料理だ。テーブル一杯。料理が並んだ。ビール、ブランディー。ワイン、日本酒が、並んだ。会長が。

「○○開発社。発展を祈念いたしまして、乾杯。」パチパチパチパチ。

「さ。どうぞ。真田君。・・・頼みますよ。」社長から。お酌を受けた。真田は、座りなおして。

「こちらこそ。若輩者ですが。確実な、仕事を全うします。ので、宜しくお願いします。」と。言って盃を受けた。会長は、嬉しそうだった。二時間ぐらい、同席した、真田は、明日、赤坂の事務所を見に行くことにして、会長から、鍵をもらって、失礼した。

女将が来た。

「あ。今。ご子息が、帰った、ばかりだよ。」

「あら。そうですか。・・・社長。お世話に成ります。・・・若いから。厳しく、躾つけて下さい。今、お客さんが来ていた、から。抜け出せなくて。ごめんね。」

「あー。良い。んだよ。忙しくて、何よりです。よ。今度、先生達と、此処で会うことになっている。」

「そうですか。宜しくお願いします。」社長達は、十一時頃帰った。真田は、家で直ぐ寝た。

真田は、最近。慣れない緊張感で疲れる。でも。若いから、次の日。シャキっと。直る。空手で鍛えた。身体だ。親父に。感謝している。

次の日、十時ごろ。事務所のあるところを探した。有った。家から。歩いて、三十分位だ。真田は、エレベーターで、八階に行った。右側と突き当たりに。ドアーがあった。開けて入った。広い。真理の事務所と俺達の事務所に。分けられる。

ちょうど良かった。TBSの、北西で、高台だから。眺めが良い。真田は、闘志を燃やしていた。早速、会長に電話した。

「もしもし。真田です。今。赤坂の事務所に。きています。・・・はい。はい。・・・申し訳ないです。最高の立地です。有難う御座います。はい。頑張ります。失礼します。」電話を切った。真田は、喫茶店に行った。

「お早うー。」

「あら。お早う。今日は、早いですね。・・・この前は、有難う。・・・あ。この子。今度。何かと、忙しくなる。と、思って、来て頂いた。の。・・・友達の妹。よ。喫茶店、遣りたいって。バイトしていた。から。任しても、一人で出来る。から、ね。」

「よろしく。」

「この人ね。結婚する人。・・・カッコ良い。で、しょう。」

「えー。素敵な方。ね。」

「有難う。」ママは、コーヒーを入れた。真田はスーツを、着ていた。

「あ。真理。今、借りた事務所を、見てきた。んだ。良い所。だよ。早速見て。貰おうかと。思って。・・・彼女が居るなら。行ってみようか。」

「うん。・・・そうね。良いわ。よ。まだ時間も有る。し。」

二人は、店を出た。タクシーで、赤坂に行った。ビルに入った。ドアーを開けて。

「わ。広い。・・・外の景色も、良いじゃない。」

「良いだろう。・・・此処を仕切って。真理の事務所と俺の事務所を、分ける。から。」

「え。貴方達も、来るの。」

「うん。あのメンバー。・・・大丈夫だ。よ。防音で仕切るから。・・・あの連中は、声が大きいから。な。」真理は、嬉しそうに、帰った。

真田は、早速事務所造りに、取り掛かった。汗かきが多いから、シャワー室を造った。トイレも、広くして、大小、別にした。全員、大柄だから、机も椅子も、広めの物を揃えた。隣は、真理に任せた。二月中旬頃。事務所は完成した。事務所開きは。四月一日頃に、予定した。そして、江戸一家に、案内状を頼んだ。

二月末。皆を事務所に集めた。八人。全員来た。

「真田。・・・凄い、な。」皆、びっくりした。新品の机。トイレも広いし。シャワー室も有って。広い。し。眺めも、良い、し。

「どう。良いだろう。・・・みんな。席を決めよう。正面が俺。右側から、掘、佐藤、上田。左から、大田、宮田、須藤、山本。」皆座った。

「あ。良いですね。・・・丁度です。」皆、嬉しそうだ。

「事務所の、責任者は、大田。会議の纏め役は、掘。庶務会計は、上田、掘、大田。を。中心に。団結して、貰いたい。」

「おーす。」

「一応。こんな体勢で、出発。したい。仕事は、いろいろ有るので。自分に合う、仕事を軸に、人の仕事も、お互い、助け合いながら進める。もし。話し合いがつかない時。トラブル。などが。発生する前に、必ず。俺に。報告を、してほしい。人間だから、食い違いは、有る。・・・それだけは、頼む。進行は、掘に頼む。」

今から。掘に変わった。

「掘です。宜しく。・・・じゃ。真田を代表と呼ぶ。・・・同志は。大田は、室長。掘は、議長。上田は会計。後は、佐藤。宮田。須藤。山本。で。良いじゃないかな。皆、どうだ。」

「おーす。」そして、真田が言った。

「じゃ。決まった。事務所開きは。四月一日。十一時。執行。バイトで良いから。百人集めてくれ。・・・一人で、二十人ぐらい。後。江戸一家に。げそ、つけたい、人は。事務所開きまで。俺に直接。言って、くれ。一日でも早い。方が、先輩になる。でも、此処では、入る人は、一緒に、登録する。それがベターだ。

それに、自分の信頼できる、若い者を。一人五人以上、登録してほしい。これは、直ぐでなくて良い。」シーン。と成った。

「事務所の名前は、「真田グループ。」電話と名刺は、三月二十五日に入る。番号は。三三三―五五五五。人材集めの費用として、一万円。づつ、渡しておく。無駄使い、しないように。」真田は、財布を出して皆に渡した。バイト代は、一人、五百円を払う。皆は。・・・きょとん。・・・としていた。普通。二百円だから。

真田達は、分かれた。そして、それぞれ。バイト集めに動いた。

卒業式も、終わって、三月二十五日。赤坂に、集合した。八人。

「おーす。」それぞれ机に座った。

「ごくろうさん。・・・みんなの動きを聞かせて、くれ。」真田は、上田にメモを取らせた。全員。江戸一家に、身を置く。更に、掘・大田が八人。佐藤・上田が四人。宮田・須藤

山本が三人。真田が十人。合計。二十五人。幹部八人で。三十三人。が。真田グループと

して。江戸一家を名乗る。

「皆。・・・頑張ったな。・・・有難う。」そして皆で、応接室へ入った。十人分一人用の、ソファーがおいて有る。広い部屋だ。突き当たりに、代表の机が。置いてある。お客が居ない時は、ここで寛いでも、良い。

「此処は。良いな。」皆、楽にしている。

「代表。これ。事務所、開きの人数。」

「おー。二百人。・・・うん。張った。り。かけられる。か。良いね。」

真田は、バイト料として、十万円を、上田に渡した。

「皆。バイトには、なるべく、スーツを、着てくるように、言ってくれ。」

「おーす。」

「それから、終わり次第。親分と幹部達と、一献。交わす。ので。銀座のクラブを、借りてある。何人になるかは、分らない。・・・スーツとネクタイが、正装だから。・・・皆。スーツある。よな。」

「おーす。」

「司会は、誰が良い、かな。・・・宮田、遣ってくれるか。」

「はい。遣ります。」

「クラブでは。山本。」

「はい。遣ります。」真田は、議事、次第を、渡した。

「これで今日は、解散だ。当日は、此処に、八時。集合。」

「おーす。」真田は、上田に、今日の食事代を渡して、帰った。真理に電話して。新宿に、指輪を取りに行きながら、食事をする事に、した。デパートで会った。指輪を、はめた。真理は、喜んでいた。

「わ。大きい。」指からはみ出るような、指輪だ。ホテルのレストランに行った。

「俺達は、四月一日に、事務所開きをするから。・・・お前の方は、どうなって、いる。」

「え。各大学の広報に載せてあるの。写真、学歴、学科、年齢を送ってもらう。私書箱を作って、送ってもらう。千代田私書箱。なんとなく、信頼感があるでしょう。・・・もう。二百人。ぐらい、来ている。四月三日頃。赤坂の事務所で。面接を遣ろうかな。と。準備している。・・・貴方達の、事務所開きが終わらないと。」

「それも、そうだ。な。・・どう。中、見ていない。けれど。」

「うん。綺麗になった。でも、半分。空いている。」

「あ。そう。・・・後で使い道。ある。だろう。」二人は、順調に進んでいるようで安心した。今日はホテルに泊まる。真田は、予約をした。三時には入れる。まだ一時間ある。デパートでぶらぶらしていた。

「俺達全員。卒業したから。良かった。よ。・・・ほ。とした。よ。」

「そうね。・・・私も、心配した。のよ。」

「うん。あの時、お前の。一言が。胸に刺さった。よ。」

「そう。・・・良かった。ね。」

真理は、身長百六十八センチ。体重五十キロ。バストDカップ、八十三。ウエスト六十。ヒップ九十。グラマーな、プロポーションだ。

○○女子大。文学部、主席で卒業。作家を志していたが。諦めた。神田生まれ。神田育ち。友達も多い。何事にも動じない。べらんめぇー。である。お金の苦労は、したことがない。父母も健在で、本屋街で、本屋を経営している。四代目と言う。

三時を回った。二人は、ホテルをチェックインした。最上階を取った。

「わ。素晴らしい、眺め。」真理は、即。服を脱いでシャワー室へ入った。真田も後から入った。二人は、シャワーを浴びながら。キスを交わしていた。真田は、真理をバスタオルに包み。寝室へ炊き抱えて行った。二人は、抱き合って、ムードを高めた。真田は、伊豆の芸者とは、感覚が違う事に気づく。好きな女との、セックスは、心の中まで燃える。汗がでるのが、分る。二人は、何回も、頂点に達する。真理の目は嬉しい涙で、一杯だ。真田もため息が大きくなり。真理の顔もピンクに染まる。真田は頬をつけた。熱く燃える。真理の初心な顔に、又燃える。一時間ほど燃えた。二人は、幸せそうに、目を閉じていた。

次の日、十時ごろ起きた。ホテルのレストランで食事をして、それぞれ、別れた。真田は、家に戻り、金の、帳尻を合わせた。

一千四百七十万円。

事務所改造費、三十万円。真理の指輪二十万円。バイト集め十七万円。真田の小遣い十万円。残一千三百九三万円。真田は、四十三万円を財布に入れ。残一千三百五十万円を金庫に入れた。

※昭和三十七年 四月一日。結成。

いよいよ。一日だ。真田は六時に起きて。シャワーを浴びて、支度をして、赤坂の事務所に行った。誰も来てない。一人。部屋でコーヒーを。飲んでいた。

「おーす。」皆、一緒に来た。

「おーす。ご苦労さん。」真田は、皆にコーヒーを入れた。そして、今日の打ち合わせをしていた。バイトは、十時まで来る。十時半だ。上田達四人は、下りた。バイト達が着ていた。点呼を取った。スーツを着ている人を前列に並べた。百八十人来た。スーが、百人ちょっと居たから。真田は、ほ。とした。

十一時だ。親分達。十人が来た。

「おーす。ご苦労様です。」全員一緒に声を出した。親分は、びっくり、していた。エレベーターで上がった。事務所のドアーの前に、佐藤が居た。

「おーす。ご苦労様です。」ドアーを開けてくれた。部屋には。真田を真ん中に、掘。大田。宮田が座って、いた。全員立って。

「おーす。ご苦労様です。」一礼して、宮田が、コーヒーを入れた。

「真田。」親分が呼んだ。

「はい。」緊張して、傍へ寄った。親分が、内ポケットから。祝儀袋を出して、真田に渡した。

「これは、一家、全員からの、お祝いだ。・・・後で礼を。言っといて。くれ。」

「はい。有難う御座います。」真田は、受け取った。

「真田。中々、良いじゃ。ない。か。若いもん。にして。は、見事だ。褒める。よ。」

「はい。有難う御座います。」

「あ。まだまだ。お客さんが来るから。俺が招待状を、回しておいた。からな。」

「何人だった。」親分は、幹部達に聞いた。親分衆、十三人。来る。と言う。

「真田、他に、待合室。無い。のか。」

「あ。はい。・・・有ります。」隣の、真理の事務所を開けた。

親分が残って、幹部達は、隣へ行った。

次々と、都内の、親分衆が、入って来た。

「お疲れ様です。ご苦労様です。」と。挨拶が、飛び交っていた。

親分と真田は、並んで座って居た。

「真田。今度。若い者、俺の、ボディーガードに、きてくれない。か。・・・三人。ぐらい。」

「はい。喜んで、行きます。」すると親分が。

「親父も凄かった。が。お前のほうが、やり手。だな。親父は一本気で、現代には馴染めなかった。から。・・・お前お母さん似。かな。」

「はい。皆に、言われます。」

「うん。・・・下に居る。若い連中。・・・何人残るか。・・・楽しみだ。な。応援するから、頑張れよ。・・・無駄な喧嘩は、するな。」

「はい。・・・分りました。」一時過ぎまで続いた。招待状を渡してあるので、お客さん、全員。銀座の、クラブに、来てもらった。二時から始まった。


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