第四話 親子の激突
ミナたち四人は、タクシーでリエの家に帰った。リビングに、集まって、いた。
「お母さん達は。リエ。」エリが聞いた。リエはコーヒーを、入れてきた。
「うん。今日は居る。て。言っていた。んだけど、居ないみたいね。もう直ぐ帰ってくるかも。」皆でコーヒーを飲んでいた。
「ミナ。頭の良いところで、良い考え。ある。」皆で注目する。
「うん。・・・正直に話す。・こうして、こうなって、出来ちゃった。・・・それで、突っ張るの。・・・だってさ。考えて、ごらん。・・・自分の事よ。将来の。・・・親達が、私達を、いつまで面倒、見れる。私達だって。いつまでも、親のすね。かじって、いられないの。よ。それにさ。皆、・・・百億を。超えるのよ。・・・これで。突っ張る。しか。無いでしょう。」
「そうよ。ただ、何所で、話し、する。」
「そうね。ミナ。ん家。空いてない。八人座れるところ。」
「何所の家も座れるでしょう。八人ぐらい。でもさ。お父さん達、居ると不味いよ。お父さん達。には、又、後で。・・・お母さん達と組んで話すのよ。ね。」
「あ。そうか。・・・その方が、良い。・・・やっぱりミナは、頭良い。」リエが。
「じゃ。私。家。に、する。此処で、明日、朝起きたら、私が話すから。」
「なんて話すの。」
「だから、今後。ずーと。四人で、共同で暮らすことに成った。て。・・・その理由を、お母さん達だけに、聞いてほしいから、此処で、八人で集まる。て。口説き落とすしか、無いのよ。」
「ミナ、頭良い。」リエが喜んだ。
「レストランじゃ、時間もかかるだろうから、迷惑かけるし、お客さんも居る。し。じゃ。リエに、頼む。」ことに、決まった。
「じゃ。お互い。お母さんを連れて、ここに来るのよ。でも、皆居るかしら、最近、交流が無いから、分からないの。ね。家の事。」でも、明日。此処に集まることに、決まって、解散した。
次の朝
※エリの家
「えり。起きた。」お母さんが呼んでいる。時計を見た。七時だ。
「あー。眠い。」起きてきた。顔洗って、テーブルに着いた。
「お父さんは。」
「うん。出張で居ないよ。九州とか、言っていた。から。」
「うーん。・・・あ。そうだ。今日ね。皆集まりたい。て、リエの家に、午後二時に、お母さん達、全員。」
「何よ。急に。」
「うん。将来の事。や任で決めたの。」
「何よ。将来の事。て。自分で此処で、話せば、良いじゃない。なんで人の家で。話すのよ。」
「あ。あー。違うの、よ。皆で、一緒の仕事を、するから。て。」
「えー。一緒の仕事・・・何。」
「いいから。とにかく、集まって。・・・ね。行くって。電話する事に、なっている。からね。」
「あー。良いわよ。・・・行くわよ。」
※リエの家
「リエ。出来たわよ。」
「あー。眠いー。」起きてきた。
「起きてくると。眠いー。て。頭。可笑しい。んじゃ、ない。」
「だって、眠い。んだもん。・・あ。お母さん。今日、此処に皆、集まる事になったの。急に。大丈夫でしょう。」
「えー。何でー。」
「うん。お母さん達。四人と、私達。将来の事。なんだ。」
「将来の事。・・・今、話せば良いじゃ、ない。なんで、よその人が、来るのよ。自分のことで。」
「あ。違うの。四人で、共同で仕事をする。の。だから。」
「一緒に。共同。・・・何の仕事。」
「ミナが、説明するから。良いでしょう。・・・決まった。」
「何時も。勝手に決めて。」
※エミの家
「エミ。起きてー。」
「あー。眠い。」起きてきた。
「顔洗った。の。」
「パン。」
「フランスパンよ。焼いてあげた。わよ。・・バターでている。でしょう。」
お母さんは、流しに居る。
「あ、おかあさん。話がある。」
「何よ、話って、」
「うん。急に決まったの。今日、リエの家に、お母さん達。と。八人で集まるの。」
「何よ。急に」
「だから、急に、て。言った。でしょう・・・将来の事」
「将来の事。此処で話せば良いじゃない。今。」
「うんー。違うの。四人で共同で、仕事するの、だから、お母さん達に、相談があるの。」
「共同。・・・何を考えているの。共同。て。」
「だから、ミナが、詳しく、話す。て。言っている。から。行こうね。・・・決まった・」
「何時も、勝手に決めて。・・・良いわよ。行く。わよ。」
「良かったー。リエに電話する。もしもし。リエ。私エミ。行くわよ・・・あとミナだけ。うん。じゃ。」
ミナの家
「ミナ。出来たわよ。・・・ご飯。」
ミナは起きていた。
「はーいっ。」トイレに入っていた。
「卵かけご飯よ。・・・これ美味しい、卵よ。地方から送って、いただいたの。」
「あ。お母さん。夕べ言うの。忘れていた。今日ね。リエの家に、集まって、もらいたいの。私達四人と、お母さん達四人、八人で。リエのリビングが、片付いているからって、急に決まったの。」
「何の話し。」
「うん。いろいろ面倒な話。なんだ。私が司会なの。」
「えー。何時も。お前が。なんだか知らない。けれど。最近皆さんと、会っていない。から、会っても良いけど。・・・又、変な話じゃ。ない。良いわよ。」
「良かった。電話する。・・・もしもし、リエ。私ミナ。行くわよ。・・・決まった。・・・全員。・・・うん。良かった。じゃ。後で。」
全員、集まる事になった。ミナは、寒気が走った。ご飯を食べて、少し休んだ。
そして。
次々と、リエの家に集まった。幸い、お父さん達には、知られなかった。全員集まったのは、十一時頃だ。席は、お母さん達と、対面に座った。皆でコーヒーを飲んでいた。ざわざわ話している。ミナが、立って、話した。
「今日は、お母さん達に、お知らせ。と。お願いが。あって。集まって、頂いたの。・・・実は。私達四人は。何時も一緒で、考え方も同じなの。そんな事から、ここ一ヶ月の間、さまざまな葛藤が、あって。・・・結果を話します。私達は、一人の男性を、四人で、好きになったの。だから、その人と結婚する事に、決めたの。・・・それを、お母さん達に、報告と、承諾を。頂く為に、集まって、頂いたの。」
ミナの母が
「え。ミナ。・・・なんて事、言うの。頭、可笑しく、なった。んじゃない。あんた達も。」ミナも座った、四人は、下を向いた儘。座って居た。リエの母が。
「リエ。まだまだやる事が、いっぱいある。でしょう。結婚なんて。しかも、四人一緒。て。想像もつかない事。どうしたのよ。・・・頭。」
エリの母が
「本当よ。皆、頭。可笑しく。なって。何か、変だな。とは。見ていた。のよ。そわそわして、家には、帰ってこない。し・・・そんな事、していた。とは。・・・あー。どうしよう。パパに。電話する。」
エミの母も。
「エミ。今、一番大事なとき。でしょう。大学院に行って、もっと、勉強して立派な、政治経済家に成りたい。て。何時も、言っていた。でしょう。あー。どうしよう。あー。」
お母さんたちは。泣き出した。皆、泣いている人、下を向いている人、子供達は、下を向いて、詫びる気持ちを表していた。
「どんな人か。も、分らない、でしょう。」母達が、立って、怒った。
でも、ここが勝負と、心の中は、真剣だった。リエが。
「お母さん。・・・私ね。ジャズ歌手に成る事を、決めたの、だから、九月にアメリカへ行く事に成ったの。そう決めたの。」リエは、立って、お母さん達に話した。実は、お母さんの進めていた事。だった。
「え。リエ。私に内緒で、どうして、先に相談して、くれなかったの。」
「うん。話そうと思った、けれど。急に決まって。・・・話す暇が、無かったの。本当よ。」お母さんは、驚いたような、嬉しいような。
「誰なの。その人。」
「うん。この前、話した。真田さん。て。言うの。」低い声で言った。すると、母はびっくりして。
「えー。真田さん。・・・えー。」すると、お母さん達が。
「誰。その人。」
「うん。暴力団の。ほら。・・・会長。赤坂に居た。・・・あー分からない。」ミナが言った。
「お母さん達。・・・ちょっと、座って。話を聞いて。・・・きち。と。話すから。」母達は、座った。ミナが。
「実は、三月に、卒業記念に。て。近くの山に登山に行った。でしょう。其処は、秋川渓谷って、武蔵五日市駅から、バスに乗って、桧原村って、あるの、その辺りの民宿を探そう。て。途中で降りて、山へ登ったの、あまり高くない山だから、夕方までは帰れると、判断して登ったの。頂上辺りまで、登ったら、道に迷って、二時間ぐらい、うろうろして、いたら、だんだん暗くなってきて、皆で泣きながら歩いていたの、そしたら、絵を描いている。おじさんみたいな人が居て、声をかけたら、山を下りるのに、一時間はかかる。て、五日市に行っても、民宿はないよ。て。言われて。・・・皆で困っていたら、その人が、泊めてくれる。て。言うので、その家に泊まった。の。
その人が、真田さん。て。言うの。あまり良い人。なんで、三泊も泊めてくれたの。そして、その時、いろんな話をしたの。ここは、別荘で、虎ノ門に自宅が有るって。話になって、私達も、赤坂、青山、六本木、西麻布に住んでいます。て。言ったら、何か、意気投合して、
資産とか財産とか、お金の話になって、四百億円も有る。んだが、それを誰かに、分与したい。て。十年も、探して居る。んだ。けれど、まだ見つからない。て。・・・・君達は、四人で、仲良しだから、君達なら私の財産を、分与しても、良いけれど。て。私達は、東京に帰ってからも、その話が気になって、四人で相談して、探ってみようか。と。考え、一人。づつ、別荘に行って、話しを聞いたら、本当に、私達に分与してくれる。て。決まったの。」
「そんな事。嘘でしょう。・・・あんた達。たら。」
「そうよ。嘘よ。」お母さん達は、立ち上がった。ミナがつづけた。
「もう。ちょっと。座って。まだ。終わらない。でしょう。・・・それから私達は、真剣になって、何回も話し合ったの、だって。この儘、四人は、離れたくないし、これが本当になったら、夢がかなうし、就職の事考えても、・・・まして、結婚のことなんか、特に、頼れる男性。なんか。この世に居ない。し。離婚の事なんか、何時も報道されて、うんざりよ。
景気だって、どんな風に、なるか、分らない。し。お金だって。そんなに稼げないでしょう。一人。百億よ。家も有る。し。土地も有る。し。そうして、話は、とんとん拍子に進んで。
昨日。虎ノ門の自宅に招かれて、金庫も見せられて、真田さんのお母さんにも、会って、今後の事。など。話したの。・・・だから。真田さんは、何時でも。お母さん達と会いたい。て。・・・早いほうが良い。って。これから手続きとか、あるから。て。・・・そう言う事なの。だから、是非。何時でも。真田さんと、会って、もらいたいの。」ミナは、涙ぐんで、話していた。
「リエも、こんな話はありえない話だと、思っていた。が。本当なの。お母さん。アメリカの、ドリス・ディーの家に、内弟子に行ける。のよ。私。本当よ。」
四人は。立って。
「お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。」頭を下げて、頼んだ。
お母さん達は、顔を見合わせた。
「うーん。・・・。本当。かしら。」
「ま。此処まで言う。んだから。・・・会って、みましょうか。」
「何か、狐に、騙されている。みたいだね。」
「じゃ。今日は、あんた達と、別れて、・・・お腹も空いたから。私達は、私達で食事に行きます。わ。」お母さん達と、別れて、外へ出た。何時ものレストランに行った。何時ものを頼んだ。
「あ。ミナ。あんたは、凄い。」
「共同で、仕事する。て。・・・あれが、利いた。のよ。」
「本当。将来の事。だったら、家で話せば。て。言われたとき。あー。と思ったの。その時。・・・そうだ。共同で仕事するから。て。・・・あれがね。」四人は、一安心だ。がや、がや、がや、食事をしていた。
次の朝ミナの家で、朝食中、母が、
「ミナ。あれから、お母さん達と。話し合ったの。心配、なんだけれど。リエのお母さんが、知っている。人。なんだ。て。今まで、変な噂は、聴いた事が無いから、大丈夫だと思うけど。て。だから、会って見る、必要がある。かもね。て。何所まで、進んでいるの、かも、確かめたい。し。て。決まった。から。・合う時間、知らせないと、皆に。」
「あ。本当。有難う。・・・流石、お母さん。」
朝、エリの家では、母が。
「エリ。あれから話し合ったの。心配よ。皆。貴方は、どうなるの。」
「え。私は、神田神保町に、八階建てのビルで、画廊とアトリエを経営するの。住まいも、そのビルの、八階よ。そのビルには。ミナと、半分にして、一緒に住むのよ。ミナは、出版社を経営するの、五、六、七階は、塾を経営する人に賃貸で貸して、利益は、ミナと、二分するの。そういう風に、真田さんが、考えてくれたの。・・・良いでしょう。」
「そう。そんなに進んでいる。の。だったら。会おう。て。」
「有難う。お母さん。」
朝、エミの家では。母が。
「エミ。あれから皆で話し合ったの、会っても良い。て。でも、貴方は、どうなるの。」
「うん。私は、着物が好きだから、着物着てする。仕事で、割烹を経営するの。真田さんの母が、赤坂のホテルの一階で、割烹屋を経営している。の。それを私が、受け継いで、行くの、住まいは、その二階に有る。の。」
「えー。あのホテルの。お父さん達が、利用している。店よ。・・・本当に。」
「良かった。・・・お母さん有難う。」
朝、リエの家、母が。
「リエ。お母さん達で、話し合ったの。本当なら、良いけれど。て。・・・家では、お父さんも、喜ぶよ。きっと。ただ。真田会長。って。言ったら。お父さんは、なんて言うか。それが、気になる。貴方達の言う事は、分るよ。今時の、若い男は、しっかりしている人は。ほんの一握り。だもんね。頼りない。て。言うか。・・・世の中も、悪いし。ね。ま。会って見ましょう。」
「ありがとう。お母さん。」リエは、お母さんに抱きついた。目には涙が滲んでいた。」リエは、母と、離れ離れになる。事も、想像していた。
早速四人は、連絡を取り合って、真田に電話を入れた。
そのころ。真田は。
何時もの、六時ごろ起きて。風呂を済まして、リビングのチェアーで、瞑想にふけっていた。うたた寝。していた。リリリリリリ。電話が鳴った。
「はい。真田です。お。ミナ。うん。うん。うん。分った。十一時ごろで良い。よ。お昼は、少し遅くなるけど、赤坂へ、行くから。電話入れて、おくよ。じゃ。待っている。」真田は、一瞬、汗ばんだ。お母さん達も来る。と言う。そして、支度をしに、二階に行った。何を着るか。迷った。薄青のワイシャツに、濃いグレーのスーツ。ネクタイは、濃い目の赤系統の。を、選んだ。支度をして、一階のリビングの椅子に、座って待つ事にした。三十分位、過ぎた。ピンポーン。ベルが鳴った。ドアーを開けた。ミナが。
「来た。わよ。」低い声で言った。
「さー。どうぞ、お入り、ください。」真田が。玄関の外へ出て皆を迎えた。ミナがリビングへ案内した。
「さあっ。どうぞ、どうぞ。」真田が椅子を出してあげた。全員座った。真田が正面。両脇に、子供達とお母さん達が、対面に座った。ミナが。
「私達のために、集まっていただき、ご苦労様です。・・・こちらが、真田さんです。・・・こちらが、お母さん達。真田に、近いほうから、ミナのお母さん、エリのお母さん、リエのお母さん、エミのお母さん。宜しくお願いします。全員立っていた。そして座った。真田が、挨拶した。
「私が、真田です。今日は、本当にご苦労様です。私のために、来ていただいて、本当に嬉しいです。お話は、概ね、聴いていると思いますが、私は、直接、親達の了承を受けなければこの話は、進む事が、出来ないと考えていた、しだいです。結論から申し上げますと。
私の今日までの、人生の中で、就労で残した、財産があります。現在、独り身なので。従って、私が死んだら、受け継ぐ人が、居なくなります。最終的には、税金滞納で国に、没収されてしまいます。ですから、この財産を誰かに、分与したい。それが、この話、なんです。けして、詐欺とか、手玉に取るとかじゃ有りません。あとで、証拠に、なるものを、お見せします。・・じゃ。なぜ、この子達なのか。・・・私の別荘の近くの山で、出会いました。そして、私の家に、三泊四日居ました。さまざまな世間話を、しました。そして、この子達の行動を、観察していました。
四人は、本当に仲良しで、お互い長所を褒める、短所をかばいあい、そしてお互いの心を見つめている。迷わない、礼儀正しい、海外ブランドを身に付けていない、・・・普通の女の子は、殆ど、お嬢さん気取りで、ちゃらちゃらぶら下げて気取っている。そういった、趣味が無い、私は、そういう人が好き。なんです。
親に、お金を貰って、高価なブランド品をちらつかせるような人は、私は、認めません。この子達はそれを、分っている。又、ミナと言う人を、お姉さんのように、慕っています。人生の中で、一人の人を、立てて、その人を中心に議論し、決断する。グループを維持して行くには、絶対不可欠です。人を立てることが、出来なくなったグループ、組織は、破滅します。どんぐりの、背比べじゃ、グループは必ず壊れます。この子達の行動は、胸にじんときました。
此の、堅個な、スクラムは、絶対壊れないと、私は、確信しました。・・・だから、この子たち。なんです。・・・あまりにも巨額な、財産です。使い始まったら、一年で、なくなります。・・・エミと言う素晴らしい。経済家が居ますので、鬼に金棒です。是非、この財産を、礎に、大きく羽ばたいて、資産を増やしていただければ、私も、天国からお祝いします。・・・私は、以上です。」
母達は、娘を褒められて、胸が熱くなって、満足した様子です。真田が続けた。
「ここ数年、探していた。んですが、中々ふさわしい人が、居なくて、困っていた。ところでした。何しろ、四百億円、他に賃貸ビル、マンション。ゴルフ場付きの、別荘もあります。から、支えて、継続していくには、しっかり前を見て、計画性を持った、人でないと、難しい。んです。この子たちに、初めて会った瞬間、心が動いたのです。
そして、再度、別荘まで会いに来て、親達の事、聞いたら、ご立派な親達で、尚更、この子達にと、問いただしました。ところ。引き受けてくれる。と言うので。誠に、勝手では御座いますが、親にも相談しないで、私一人で、心に決めていた。のです。が。親達の理解が得ない限り、進みません。・・・前妻の事は、はっきりして有ります。子供が一人、孫も一人居ます。外務省に勤める事から、私の籍が、引っかかりまして、やむなく、別れたのです。あの子達が、暮らして行く為の、資産は、十分あります。だから。そのことは、心配要りません。」と、言って、真田は立って歩いて、
「どうぞ。こちらへ来て下さい。」皆を呼んだ。そして、金庫のドアーを開けた。
「これが、書類と、お金と、純金、プラチナ、これが、一部上場の株券です。五十社は、あると思います。後で、エミさんに、見ていただければ、分ります。」と、言って。ドアーを閉じた。全員が、きょとんとして、声が出ません。そして、隣の部屋へ入った。
「ここに、絵が置いてあります。これは、自分の親父からの、譲り受けも、半分あります。二百枚は有ります。ただ、有名なものは、十何枚。ほどだと、思います。エリさんのお母さんなら、ご存知でしょう。・・後で、ゆっくり見てください。」
皆は、部屋を出て、リビングに、座った。ふぁー。ため息をついている。
真田も後から来て座った。
「皆さん、今、見ていただきました、他に、桧原村にある別荘と、伊豆に、ゴルフ場九ホール付きの、別荘が有ります。それで、私の資産、財産。全部です。これを全て、四人の、娘さんに分与します。それに。最後に。お願いと言いますか、・・・私の希望が有ります。私も、これだけの財産を残しておくには、子孫が欲しいのです。子孫に継がせたい。だから、娘さん達には、・・・私の、子供を作って、頂きたいのです。・・・消して遊びじゃない事を、分っていただきたい。私からのお願いです。どうか、ご理解と、ご協力を、お願いします。」
真田は、深く、テーブルに頭が着くくらい、頭を下げた儘、上げませんでした。
しばらくして、母さん達は、顔を見合わせて、納得した様子で。
「真田さん。真田さん。頭を上げてください。」
「分りましたから。真田さん。」四人のお母さん達が、揃って真田に言った。
真田も、ようやく頭を上げて。
「有難う御座います。有難う御座います。」涙を滲ませている。顔も赤くなっていた。すると、彼女達、四人は、真田へ抱きついて、
「パパ。パパ。・・・よかったね。よかったね。」抱きついて、泣いていた。そして、今度は、お母さん達に。
「有難う。有難う。」と、お礼を言って、泣いている。お母さん達も、嬉しいやら、悲しいやら、何がなんだか、分らないと、泣いていた。そんな一齣が。三十分位続いた。真田も。ほっと、した様子で、ハンカチをたたんで、真田が。
「お、見苦しいところを。見せて、申し訳ございません。これが、現在の、真田です。」と、女優の母のところへ来て、軽く頭を下げた。
「なに、言っています。の。・・・立派ですわ。よ。まだまだ、素敵よ。真田さん。素晴らしいわ。これが最後の決断。・・・貴方は、日本一の任侠道の男よ。命がけで築いた財産を、身の知らぬ他人に、全部上げる。なんて、誰も出来ないわ。よ。それをさらっと、決断する。感動しちゃった。本当の、任侠道。て。事ね。」真田は、下を向いて、聴いていた。冷やかされたような、褒められたような、複雑な、顔をしていた。
「皆さん。これから、赤坂の料亭に、一席。用意して有りますので、一緒に来て下さい。
・・・お化粧を、直して下さい。」冗談交じりに、話した。全員、にこ。と。しながら、洗面所へ行って、化粧を直してきた。真田は、玄関で靴を履いて、待っていた。そして皆、桜田通りに出た、タクシーに乗って、赤坂に向かった。
暫く走って、ホテルの前に着いた。真田が、先に下りた。皆後から着いて来た。そういえば、お昼抜きだった、皆、興奮していた。から、お腹がいっぱい。だった。ホテルへ着いたら、ふっきれたように、皆、明るくなった。安心感が、沸いたようだ。
真田の後ろをついていった。和風作りの通路の奥に、着物を着た、女性が、三人立って居た。・・・いらっしゃいませ。真田が皆を案内して、中に入った。朱塗りの長いテーブルに、九つのお膳が並べてある、掘り、こたつ式で、座り心地が良い、真田が正面、お母さん達と、子供たちは、対面に座った、真田は、テーブルのお膳を確認して、席を外した、皆は、待っていた。真田と女将が来た。女将は座って皆に挨拶した。
「幸介が、お世話になります。どうぞ宜しく、お願い申し上げます。」深々と、お辞儀をした。皆も、お辞儀をした。
「私は、これで失礼します。どうぞごゆっくり、くつろいで、帰ってください。」
と、言って、軽く会釈をして、帰った。着物姿が、板についている。料亭の女将に、うっとりして見ていた。料理が運ばれてきた。コンパニオンが、慣れた手つきで、てきぱきと動いている。真田が。
「さあ。揃ったようなので、お猪口に、お酒が入っていますので、お猪口を持って、乾杯しましょう。」皆で、お猪口を持っていた。真田が。
「私から、皆様の、将来の発展を、祈念いたしまして、乾杯。」
パチパチパチパチパチ。拍手をして、やっと、くつろいだ。真田は、お母さん達に、高級ワインを注いで回った、特別に取っておいたワインだ。真田は、特別の時だけのワインを常に、用意してある。誰が飲んでも、絶対美味しいワインだ。値段も高いし、誰でも、買えない。代物である。そして真田は、この店の流れを説明した。
「本日は、お忙しいところ、お疲れ様でした。この場は、私の、御持て成しです。ので、気がねしないで、ゆっくり飲んで下さい。時間は、たっぷりあります。
一応、この店は、本格会席料理で、(一汁最三菜)と、言う、流れを創っておりまして、一汁一菜。次に一汁二菜。一汁三菜。と、続きます。そして、箸洗がでます。ここで食事に区切りを付け、ここからは(八寸千鳥の盆)と、言って、酒宴に入ります。先に、八寸が出され、山の幸、海の幸が、大皿に盛られてきます。部屋の隅に、水屋を設けて、板前が一人居て、料理の配膳をしています。これをコンパニオンさんが、一人一人に、盛ってあげます。ここから、酒宴に入り、小さな杯が、お互い、あっち、こっちに動きます。これを、千鳥の杯と言っております。この千鳥の杯が、お互いの心を動かすのです。現在は、汚いといって、やらない店が多いです。でも、この店では、しきたりです。ですから話も弾みます。
ここで働くコンパニオンは、政治、経済、文化、芸能、雑学などなど、世の中の全ての話題に、事書きません。さまざまな事を、覚えます。近年、外人客も多くなり、益々賑やかですので、この子たち四人で助け合えば、現在の、女将さんより、益々繁栄するものと、私は確信しています。ですから、お母さん達も、応援してあげて下さい。」お母さん達四人も、感心して聞き入って居た。
「本格ね。お父さん達は、こういう所で、飲んでいる。ん。ですね。」
「本当ね。全然知らなかった。」
「これでは、会長、社長、大臣達は、辞められないわ。ね。」ほほほほ。と、笑っていた。貴方のお父さんの事よ。と。冗談も出た。子供たちは。コンパニオン達と、これからの仕事の事、料理の事、日本舞踊の事など、質問しながら、賑やかになった。真田は、ワインを持って、お母さん達の傍らへ座り込んで、話している。
「あ。そうそう。ここの食材は、米、野菜、山菜、果物は、全部、新潟、長野、山梨。海産物は、全国の漁港直送。なんです。市場通さない。ん。ですよ。議員さんの地元の、計らいで、議員さん達は地元の物、此処で、自慢話にしている。ん。ですよ。
お客さんを連れて行くから、俺。んとこの、魚を、用意してくれ。て、電話が入る。だから、大変。なんです。エミさんには、そんな事も覚えて頂いて。
この店は、メニューは無いんです。板長が好きなように作る。ただ、リクエストには答えます。そして、四季の移り変わりが、直ぐ分るように、板長が。苦労しています。日本酒も、議員の先生達の計らい。で、全国から、取り寄せます。ですから、世田谷に、大きな、低温倉庫があります。世界のワイン、ブランディー、殆どストックして有ります。在庫表を見ながら、板長が管理しています。」
「え。世田谷に。・・・低温倉庫。何時から有る。んですか。」
「うーん。親父が建てたから、昭和二十五年。頃、かな。この店、開店して、次の年に建てた。て。聞いている。」
「へー。真田さんの、お父さん。て。先見の目が合った。んですね。」
「そうですね。でも、周りの応援が、有った。からですよ。盛り上げて、頂いて。」
「あ。そう、そう。失礼ですが。真田さん。歳・・・いくつですか。」
「あ。はい。還暦です。」
「えー。若い。私より先輩。よ。」
「私は、時々、お会い、していました。・・・変わらないです。よ。・・・あの頃。と。」
「そうですか。」照れている。
「映画では、拝見しています。やっぱり若いですよ。女優さんは。」
「でも、引退して、寂しくないです。か。以前の方と。会う事は無い。ん。ですか。賑やかな世界から、良く決断、なされました。ね。難しい。ん。でしょう。あの、世界。」
「あー。そうです。難しいです。自分だけで、判断は、出来ないです。」
「あ。その話は、良いです。」皆、気を使った。
「あ。真田さん。これから、どうなさる。の。老後の。事」
「あ。それは、決めて、あります。この子達に、引継ぎを、終えたら、スペインのカナリア諸島に、移住する事。に、決めてあります。その島の町に、投資してある。んです。死ぬまで、暮らせるように、お金は、一切かかりません。家も有ります。その島で、死ぬまで、絵を描き続けます。それが、私の老後です。」
「へー。カナリア諸島。ロマンチック。ね。」
「皆さんも、遊びに来て、下さい。勿論、孫も連れて。其処は、常春と言って。涼しくて、過ごし易いです。」
「へえー。素敵ね。行きたいね。」
ミナのお母さんが、時計を見て。
「皆さん。そろそろ、じゃない。」真田は、
「まだ、十一時ですよ。」
「真田さん。私達は良いです。けれど、家で待っている。人が居ますの。で。」
「あ。そうですね。・それから。もう一つ。お願いが。あります。今日の事、お父さん達に、伝えて。ほしい。んですが。そして、私と、会って欲しい。んです。伊豆の別荘を、セッテングしますので。全員で、ゴルフでも、しながら、この子たちの、今後の事など、話したいのですが。」
「パパ達には、私達から、説得しますわ。」
お母さんの口は、重かった。
四人は、コンパニオンと、まだ話していたが、お母さん達が帰ると言うので、一緒に帰ることにした。四人は、物足りなそうな、雰囲気だ。真田は、今夜は、帰るように、説得して。全員帰った。真田は、母の居る、二階に行った。
「あ。こんな時間か。」十二時だ。母が、まだ起きて、いた。
「皆さん。きちっとした、方達ね。あの方達なら、維持できる。でしょう。でも、チーママには、出来るだけ長く勤めて頂く様に、幸介からも、頼んでおいて。私は、頼んだけれど、幸介からも言ってくれれば、チーママも、安心するでしょう。あの子達にも、その事も伝えて。」
「そうだな。チーママの顔で、持っているようなものだからな。俺からも、頼んでおくよ。ま。それなりの、お礼は、するよ。・・・あ。それから、板長の事。なんだが、家を建ててあげようかと、思う、んだ。下北沢の倉庫の隣に、銀行に付き合わされた土地が、百坪、有る。んだ。」
「そう。それは喜ぶでしょう。あの人の切り盛りで、此処まで、来たのよ、そうしてあげれば、私も心強いわよ。今まで、何もしてやらなかったから。お父さんが、いつも、言っていた。終わりよければ。全てよし。てね。」
「あー。それを、俺も、やっている。よ。」真田は、疲れていた。二人は、休んだ。
次の朝、九時、調理場に、電話した。
「もしもしっ。幸介だが。お早うっ。板長っ。二階に来て欲しいんだ。今すぐ、お袋と、待っている。から。」
「あっ。はいっ。分りました。直ぐ行きます。」板長は、いつも、六時には調理場に来ている。
「お早う御座います。・・」板長が来た。
「あ。どうぞ、入って。」二人の前に座った。
女将は、お茶を出した。
「あ。楽にして。板長。俺達と、何年になりますかねっ。初めて会った時の事。・・・かすかに覚えている。よ。・・・三、四歳かな。・・・・あれから五十年余り・・・経つかな。長かったなー。ご子息まで、来てくれて。息子さんは二十年、経ちますかね。本当にご苦労様です。それで、お袋と二人で、板長に家を建ててあげよう。て。・・・・下北沢の倉庫の東側に、空いている土地。有るでしょう。あれは、俺の土地。なんだよ。百坪有る。其処に、孫と一緒に住める、家を、建ててあげます。俺達の気持ち、だから。受け取ってください。」
「えー。そんな。・・・私らは、板前が好きで、遣っている、だけですから。それに、何回もテレビに出して、もらった。り。議員さんとか、会長、社長、俳優さん達からも、身に余る、応援を頂いておりますので、楽しく遣っています。から、今の儘で、充分です。」
「板長。本当は、もっと早く、考えて遣らなければ、いけなかった。んです。身辺の決断が、遅れた為に、今になってしまった。ん、です。これからは、ゆっくり静養して、ほしいし、息子さんにも、この店と倉庫の管理を受け継いで、行ってもらいたいし。又、二代目の、女将の指導も頼みたい。し。面倒も掛ける。し。そんな事から、御礼をしたい。ので。お袋と俺の気持ちを受け取ってください。・・・神田に、ビルを、建てる。んで、明日、設計者と会う。んで、一緒に、板長の家も頼みます。ので、青写真が出来たら、届けますから、息子さんと検討してください。」
板長は、目頭を熱くしていた。
「有難う御座います。女将さん。会長。」深々と。お辞儀をした。
「良い。んですよ。板長。皆で、良くなって欲しいですから。これからは、若い世代になって、二代目の女将と、二代目の板長で、暖簾を守って行って、欲しいから。ね。お願いします。」女将も、喜んでいた。
「はい。分りました。息子にも、直ぐ知らせます。・・・世田谷に住めるなんて、夢見たいです。息子も喜びます。・・・私は、これで、板場に行きます。・・・失礼します。」涙を浮かべていた。
真田は、ほ。と。した。様子で、虎ノ門に帰った。一時を回っていた。ソファーに横になって、うとうとしていた。リリリリリ。電話が鳴った。薄暗くなっていた。電話に出た。ミナだ。四人で今すぐ、来ると言う。鍵を開けて置いた。暫くして、わいわいがやがや。四人が入って来た。
「電話。出ないから。」と言って、四人が、抱きついてきた。
「パパ。パパ。」キスの嵐を、浴びている。
「おー。苦しい。・・・やめて。」四人は離れた。
「あー。殺される。今まで赤坂に居て、板長と話していた。んだよ。今後のエミの事。等を。・・・板長に、頼んでおいた。から。」
「うん。有難う。」エミは、喜んでいる。すると、四人はニコニコしている。
「どうした。気持ち悪い。」と、真田が言うと。
「パパ。お母さん達が、全員、納得。」
「ただ。お父さん達を、どうやって、説得するか、頭が痛い。て。迷っている。の。」
「それに、私達、昨日、コンパニオンと、話していた。ら。毎日、稽古している。んだって、二階で、だから、私達も、料亭で働きたい。の。ずーと。学校に通いながら、リエは、学校が無い。から、毎日行けるわよ。パパ。女将さんに、頼んで。それから。皆で、此処に引っ越すの。お母さん達に、許可を頂いた。のよ。しっかり頑張りなさい。て。」エリとミナは、張り切って言った。真田は、びっくりした。
「真田は。それは不味いよ。お父さん達の、承諾を貰わないと。・・・それは、男として、恥を掻く事に、なる。・・・それが筋だ。」真田は、直感で分った。女達の漠然とした判断力だ、ちょっとの事で。油断する。女の本能だ。今までが、水の泡になってしまう。
「店で働くのは、良いが、此処から通うのは、駄目だ。又、引っ越してくるのも、駄目だ。これは、俺からの、お願いだ。」
「うーん。そんな。」
「でも、今日は泊まる。」
「今日も、帰りなさい。そうそう。明日、エリとミナは、設計者と会うから、朝の十時まで、此処へ着てくれ。」
「はい。分りました。・・・皆。パパの言う通りに、しよう。」ミナが、三人を説得した。真田は一安心だ。
「よし。決まった。・・・すし屋へ行くか。」直ぐ電話して、予約を取った。一時間待って。と。言う。
「一時間待ちだ。て。」
「え。この前の、おすし屋さん。」皆喜んでいる。時間が来たので、虎ノ門を出た。すし屋へ着いた。
「おーす。」真田が入った。四人も続いて入った。
「らっしゃい。」奥へ案内された。この前と違う部屋だ。ちょっと広い感じ。
「この前と違うね。部屋。」
「あー。此処は、特別室だから。造りも違うだろう。・・・今日は、親父を、ちゃんと。紹介するから。今来るよ。」親父が、お絞りを持ってきた。
「あ。これ。・・・シャガール。」エリは直ぐに分った。二枚下げてある。
「あ。親父も、入って。」
「良い。んですか。・・・こんな綺麗な女性の傍に。」
「あー。紹介するよ。・・・この前は、忙しそうだったから。紹介、しなかった。んだよ。この子達、四人は、俺の後継者になった。んです。よ。エミと言う子が、赤坂を継いでくれる。リエ。ミナ。で。・・・エリは、あそこの画廊の娘だよ。今後とも、宜しく。ね。」真田が、紹介すると。
「あれ。そう言えば。エリさん。・・・どっかで、見たこと、有る。と。思ったら。画廊の。私を、知っている。でしょう。・・・この絵買った時。居た。でしょう。」
「あ。本当だ。・・・・思い出した。失礼しました。」エリは。お辞儀をした。
「お。この絵。知っていて。ちょうど良かった。ね。じゃ。親父も参加して、乾杯だ。」
「乾杯。」パチパチ。
「幸ちゃんは、いつも、綺麗な女性に、囲まれて、羨ましいよ。今日は、四人も、」料理が来た。親父が並べて、くれた。
「さー。食べて。」真田が、皆に箸を上げた。
「美味しそう。」四人は、食べは始めた。真田は、親父と話している。
「赤坂の事。なんだが、お袋も、歳が歳だから、止めたい。て、言っていた。んですよ。丁度この子達と、巡り会ってね。・・・俺が居なくなったら、アドバイスを、頼むよ。・・・お袋は、跡継ぎが出来たら、伊豆の戸田に、有る。老人ホームに、入る。て。自分で、買っていた。らしいです。海が好きだから、海を眺めて、暮らす。て。私の知り合いの、漁師も居るから、丁度良かった。けれど。」
「あー。漁師の○○さんね。知っています。よ。ゴルフに行った。とき。私は今も、女房と二人で、月、二回、行っています。よ。ゴルフに。三泊四日で。それが楽しみだから。混んでないし、ゆったり、していて、最高ですよ。・・・幸ちゃんのお陰だよ。」
「うん。いつも、いつも、お世話になって、います。」真田は。お礼を言った。
「エミさん。・・・何か有ったら、何時でも、おいでよ。」
「はい。宜しくお願いします。」お辞儀をした。真田は、エリを頼んだ。親父は。
「皆さんね。私は、幸ちゃんの親父の時代からの、付き合い。なんだ。五十年ぐらいかな。この店も、幸ちゃんの、お父さんが、探してくれた。ん、だ。幸ちゃんは、子供のころから、此処へ来ている。んだよ。お父さんが、いつも、つれて歩く・んだよ。つりは、入らないよ。て。お父さんが言うと、駄目だよ、それなら僕にくれよ。て。いつも、私が、幸ちゃんに返した。んだよ。」
「えー。可愛いー。賢い。パパは、小さい時から。賢かった。んだ。」
「そう。なんです。よ。だから、寿司屋へ行こう。寿司屋へいこう。て。煩かった。らしいですよ。それも、四歳のころ、だよ。」
「へえー。子供のころから。お金儲け、していた。んだ。」
「うーん。そうだな。親父に、金くれ。て。言った事、無いね。此処へ来ると、バックマージンが、貰える。し。ま。お袋も居た。からだけれど。でも、俺は、大学までは、金は、殆ど。使わなかった。な、大学になって、部活の連中には。奢って、やった。よ。親父が、全部出してくれた。けれど。」
「空手部。でしょう。部長だし、強かった。し、皆に、奢る。し、それじゃ。誰でも付いて来ますよ。」
「そう。空手部に入ると、部長が、何でも食わして、くれる。て。評判だった。ぐらい、ですから。」四人は、二人の話に、のめりこんで。いた。エミが。
「このお店。て。失礼ですけど。高い。んで、しょう。・・・そんな気がして。さっきから見ている。と、・・・今までのお寿司と、全然、違いますよ。」
「はい。高いです。他の店の、約四倍、五倍。・・・でもね、仕入れが違う。ん。ですよ。本当に、仕入れ値を、見せれば、直ぐ分りますよ。幸ちゃんは、全部。お見通しです。よ。全部。分って、います。ね。」
「あー。いつも。この親父には、頭。上がらない。んだよ。子供のころから、バックマージン、貰っている。から。・・・ハハハ。」
「上には上が。有る。て。本当。」ミナも、ビックして聞いて。いる。四人は、突然、立って。
「親父さん。宜しくお願いします。」深々と、頭を下げた。
「おい、おい。そんなに。頭を下げられては。ハハハ。」と、親父も、喜んでいた。賑やかに楽しかった。五人は、店を出た。真田は四人と、銀座で別れた。人目を避けるように、タクシーを拾って帰った。
次の朝
六時に起きた。風呂に入って、スッキリした。チェアーで、瞑想していた。二人が来るのを待っていた。九時ごろきた。
「おはようー。」入って来た。
「おー。早かった。ね。」・・・コーヒーを出した。設計士に電話した。すると。
「設計事務所に、資料がいっぱい有るから、事務所へ行こう」と言って、タクシーで設計事務所に向かった。事務所は、阿佐ヶ谷だ。
「お早うー。」真田が、ドアーを開けた。二人も入った。
「いらっしゃいませ。会長。久しぶりです。ご無沙汰して。います。」
「いや。・・・私こそ。・・・社長。紹介するよ。エリ。と、ミナ。です。この子達が、住む。んで。」二人は、立って。
「宜しくお願いします。」深々と、お辞儀をした。
「こちらこそ。長いお付き合いをさせて、頂きます。」事務員が、お茶を運んできた。三人は、お茶を頂いていた。社長が。カタログやらサンプルを、いっぱい持ってきた。
「これを見て、いて。ください。」二人に差し出した。二人は、いっぱいのカタログを広げて、見ている。
「先日、会長に。おおよそのなしを聞いて、私なりに考えた、設計です。三十坪、八階建て、地下一階、地下は防災室と言うことで、書いてみました。」
真田は、真剣な顔して図面を見ている。
「うん。社長。地下室の壁とスラブは、厚さ、六十センチにして、水を、十トンぐらい、入れられるように。大きくしてください。・・・俺からは、それくらいかな。」と、二人に、図面を渡した。でも、ただ、漠然と見ているだけだ。
「パパ。見ても、分らない。」
「あ。そうか。・・・でも、階数は、分るでしょう。八階建、広さは、坪じゃ、分らないから、十五メートル×十八メートルと、覚えておいて。十八メートルは、道路沿い、と、覚えて。」
「えー。広い。」
「そして、この図面だと、七、八階が、住宅に、なっている。半分。づつ。だから、自分の希望を、社長に言って、相談すると良い。」すると、社長が、
「はい。では、私から、説明させて頂きます。一階の右側が、画材店。二階が画廊。三階が、アトリエ。左側、一階が出版社書庫販売部。二階が、印刷部。三階が、校正室。四、五、六階が全部、予備校に賃貸。七、八階が住宅になっています。内装については、時間が有りますので、カタログを見ながら、ゆっくり考えてください。住宅のプランも、自分達で考えてください。分らない事があれば、いつでも、相談してください。」二人は、びっくりして、頷くだけである。
「どう。分った。」真田は、にこっと、して聞いた。二人は、首をひねって。
「うん。」あいまいな、返事だ。
「この図面を貰って、後で、二人でゆっくり、見なさい、自分達の住まいは、自分で考えて、イラストを作れば。完成まで、一年。かかる。から。余裕は、あるよ。・・・現地を見ながら、神田で、お昼にしよう。社長も。」皆で、現地に行った。暫くして現地に着いた。
「此処だ。」皆降りた。板が張ってある。人通りが多くて、絶好の場所である。
「此処なら、将来性は、有る。だろう。」真田は、皆に言った。
「そうです。ね。考えとしては、良いと思います。ただ、何の商売でも、経営者。しだい、アイディア。しだい、ですから。何と言っても、人が集まるから。」
「うん。この子達。頑張りやさんだから。大丈夫でしょう。蕎麦を食べようっ。裏へ入ると、上手い蕎麦屋さんが有る。ほらっ、あそこだ、並んでいる。しようが無い。並ぼう。」四人で並んだ。三十分位で、入った。真田が、注文した。
「社長とも。・・・長いね。・・・学生時代からだから。」
「えー。じゃ。・・・四十年。」二人は、びっくりしている。
「あー。そうだ。ね。会長には、助けられ。ぱなし。で。何の恩返しも、出来ないで、今まで。面倒見が、良いから。後輩からも、慕われて居ました。よ。」
「恩返し。て・・・別に良い、んだよ。・・・あ。それに。下北沢に有る。土地に、八十坪の、二階建ての家を造りたいんだ。家の、板長の家、二世帯住宅で、一階の南東に、板長の部屋。三LDKで、風呂、トイレ。二階に、夫婦、子供二人の、三LDKを、設計は任せるよ。土地を見て、設計しておいて。」
「あ。・・・はい。・・・分ります。井の頭通りの。直ぐに、見てきます。」
「頼むよ。そうだな。図面が出来たら。赤坂の店で飲もうか。良い。コンパニオンが、居るから、楽しいよ。」
「はい。出来たら。電話します。」蕎麦と天ぷらがきた。
「さー。食べよう。」四人は、そばを食べた。
「美味しい。」皆一斉に、つるつるつる。真田は、ここ十年、一人暮らしで、居た。から、いつも、楽しく振舞っている、エリとミナを見て、大勢で入るのは、楽しいな。と、感じていた。
真田は、支払いを済まして、社長と別れた。真田たちは、虎ノ門に帰った。
「パパ。下北沢に、家を建てるの。」
「あ。板長が住む。んだよ。井の頭通り沿いに、有る。んだよ。赤坂から近い。し。其処には、食材の低温倉庫が有る。から、エミにも、其処を、知って。もらわないと、上棟の時、行きましょう。皆で。」
「うーん。・・・大変ね。パパ。」
「うん。まーね。でも、設計士が全部、やって、くれる、から、大丈夫だ。よ。」
「うーん。お金よ。パパ。」
「あー。お金か。・・・ハハハ。十億円は、かかる。よ。神田ビルと板長の家と二軒で。」
「え。十億。」二人はびっくり、していた。
「あまり。びっくり、しないで。・・・昼ねしよう。か。」真田は、二階に上がった。二人は、疲れたようだ。ソファーに、横になった。
「ブー。ブー。」門の、ブザーが、鳴った。ミナが起きて、門を開けた。
「もう。さっきから。鳴らしていた。のに。」リエとエミだった。
家に入った。
「エリ。ミナ。・・・大変よ。」
「何よ。そんなに、慌てて。落ち着いてよ。」リエがため息を飲んで。
「お父さん達が、私たちの、ことで、朝、出て行った。きり、帰ってこない。し、連絡も無いのよ。」
「それが。・・・どうしたの。」ミナは、落ち着いていた。
「焦る事。ないでしょう。・・・じっくり、話して、いる、のよ。・・・帰るの、待つしかないわ。よ。お母さん達に、連絡無い。の。」
「うん。それが無い。の。よ。連絡入ったら、ここに居る。て。言ってきた、けれど。心配で。四人で、一緒に居ない。と。」四人は、応接室で、がやがやしている。真田が、二階から下りて来た。
「何か、騒々しいと思ったら、全員集合。か。」
「あ。パパ。・・・お父さん達が、朝から集まって、居るの。」
「おー。そうです。か。・・・理解してくれる。と、良い。んだが。」
「お母さん達には、ここに居る。から。て。言って有る。から。」
「そうか。じゃ。待っていれば、良いじゃ、ない、コーヒー飲んで。・・・少し、落ち着きましょう。」真田は、コーヒーを入れた。五人は、コーヒーを飲んでいる。真田は、目を閉じていた。
一方。
お父さん達は、久しぶりに、銀座に出よう。て。十一時に、リエの父の、行きつけの店の、レストランで、待ち合わせた。
「どうも、どうも。お早う御座います。久しぶりです。」皆で握手した。
「一年ぶり、ですか。ね。こうして集まる。の。」誰となく話す。気兼ねしない、四人で、気取らない人達だ。本来は、酒を飲む。んだが。今日は、コーヒーを、飲んでいる。ミナの父が。
「本題に入りますか。・・・その、真田って。男。皆さん。ご存知、なんです。か。」
エリの父は。
「私は、絵を買って頂いた事が、有ります。ので、会えば、分ると思います。・・・そのお父さん。て。人は。家の上客で、親父の代、から付き合って。いました。」
リエの父は。
「私は、パーティーの席で。何回も会っています。話した事も、あります。でも、個人的には、付き合いは、ありません。ヨーロッパに、行っている。と言う、噂は、聞いていました。でも、日本に居た。んですね。」
エミの父は。
「私も、顔は、知っています。やはり、いろんな、パーティーで、会っています。話したことは、ありますが。個人的に、付き合いは、ありません。・・・だから、向こうも私を知らないと、思います。」
ミナの父は。
「私も、企業のパーティーで、顔は見ています。話したことは、ありませんが。情報は、沢山、聞いています。株主総会屋を、学生のころから遣っていた。人だから、情報では、怖い人だと、聞いています。」と、言ったように、知らない人は、居ないようだ。誰となく話す。
「今日の話は、大変な事に、巻き込まれた。と。言っては、真田さんには、失礼だけれど、でも、私達。親としては、これしか、言いようが無い。と、思います。(明日は我が身)と、言う、言葉がありますが。我が身が、現実となった。今。放っておけない。何か、良い方法が、有れば、でも、今、流行の、出来ちゃった婚、て、なんと申し上げたら。良いか。・・・」
「彼も、六十歳。と。言っていた。が、我々と同じ歳で、・・・話を聞くと、財産を上げるから、子供を生んで、娘達に、育てて欲しい。・・・正に、やくざ的な、発想としか、思えないが。」
「私も、其処が、引っかかり。ます。真田会長と、しては、代わりに、一人、百億の現金と資産を、分与する。・・・本当に、そんなに有るのか。・・・子供が生まれた、のを、確認して、名義変更を済まして、どこか、スペインに行くと言う、シナリオ。みたい、だが。」
「うん。その事、だが、知人の、番記者に聞いた。んだが、現金、ゴルフ場会員権、株式証券、賃貸ビル、マンション。などなど。あわせれば、何百億でしょう。て。言っていた。だから、本当らしい。よ。」
「彼は、確かに切れ者だ。会長下ろし、社長下ろし、大手企業相手に、インテリーやくざとして、知名度も挙げた。そして、総会屋、学生をフル活用し、長髪でスーツを着こなして、表向きは、やくざに見えない、頭脳集団を作った人。だと。言う。噂だ。一般人には、迷惑をかけない、いつも、スーツを着こなして、真田会長は、偉い。と言う、噂は、しょっちゅう、聞きました。ね。」
「そう。さっきの話だが、会長下ろし。なんか、周りをがっちり固めて、会長の入る隙間をなくす。完璧の根回しを、する。・・・名刺を、切り札に、シャンシャン解決。今度の、娘達のことを見ると、そうでしょう。女房たちまで、がっちり固めてから、一番大事な、我々。主は、最後になる。・・・ここまで、決められた。ら。我々も断る。訳には行かない。でしょう。・・・増して、大金が、目を狂わしている。から。」
「そうですよ、我々の相手になる。人じゃない、ですよ。・・・我が身に、ぶっか、駆るとは、・・・他人事、とは。笑えない。ね。・・・皆さん。ここまで、追い詰められては、どうする事も。出来ないでしょう。・・・皆さん。私の考えですが。ここで、折れると言うと、悔しいから。協力と言う形で、シャンシャンと、ならざるを、得ないです。かね。・・・そんな感じがします。」
「まあ、しいて、言えば。大金か。・・・子供たちも、これから、億の金を稼ぐ、には。難しいでしょうから。・・・今、流行の、離婚して来たと、思えば、何となく、・・・ぐうたらな男と、結婚でもされたら、これもまた、大変ですから。ね。この辺りで。・・・スペインに永住すると、言っている。から、日本には居ない。んです。よ。」
「そうか。・・・それじゃ。皆さんと、親子になって、十六人家族で、老後を、楽しく、生きましょう。か。」
「この辺りで、どうでしょうか。・・・時間も、時間だ、し。」時間は、五時を回っていた。リエの父が、立って、ホステスに、ビールとワインと、つまみを頼んできた。
「今、飲み物が来ます。ので。・・・」直ぐに、運ばれてきた。とりあえず、ビールを注いで。リエの父が。
「それでは、今後の、親戚の・親子の・兄弟の、上手く言えない。が。身内になることは確かで、その事を。祝福して、乾杯。」
パチパチパチ。時間は、六時を回っていた。
「ま。孫が出来て、十六人家族になる。し。楽しい。ん。じゃない。かな。なんて思います。ハハハ。」
「私も、同様な事、考えていた。んです。けれど、中々口に出せなくって。俳優さんは、演技として、喋れるから、良いです。ねっ。ハハハ。」
「そうか。・・・真田さんの子供だから、会長の二代目の、立派なやくざに。育てますか。ハハハ。・・・冗談だ。よ。」
「今日は、銀座を、飲み明かそうか。・・・四人で。」
「あっ女房達に、連絡しなきゃ。」ミナのお父さんが、電話をした。
そのころ、虎ノ門では、五人で、疲れた様子で、うとうとしていた。
リリリリリリ。リリリリリリ。電話が鳴った。ミナが飛び起きて、受話器を取った。
「もしもし。ミナよ。・・・うん。・・・うん。・・・うん。本当。・・・有難う。有難う。」受話器を、置いた。四人の頭が、電話の前で、ぶつかっていた。
「わー。パパ。パパ。」四人で、真田に抱きついてきた。
「お父さん達。OKよ。・・・賛成してくれた。て。」
「良かった。良かったね。パパ。」真田と、四人は、抱きついて、泣いて、喜んでいる。真田も、涙を滲ませていた。
「うん。良かった。」
「それで、ね。お父さん達は、銀座で、飲み明かそう。て。言っていた。て。」
お父さん達は、レストランから、出た。七時だ、手始め、にカウンターバーに入った。そして、九時頃、クラブに入った。ママが来た。
「あら。今日は、四人、お揃いで。」行きつけのクラブだから、四人を知っている。
「なにか。有ったの、楽しい事。でも。」
「あー。大有りだよ。・・・とにかく、乾杯しよう。」ママが、作ってくれた。水割りで、乾杯した。
「ママっ。今夜は、朝まで、飲もう。・・・お祝い、だから。」俳優の、お父さんが話した。
「そうそう。ママ。飲み明かす。よ。」
「どうぞ、どうぞっ。・・・でも、女の子は、帰るよ。」
「あー。良いよ。ママだけ、居れば。」朝まで飲む事に、決めた。
零時を回って。四人とも。大分、酔ってきたようだ。愚痴も出て、きた。
「皆さん。大分、お疲れのようです。ね。何か、変わった事。有った見たい。ね。」
「あー。大有りだよ。ママ。」
「あら、あら。四人とも、兄弟みたいに、何時も仲良しです。もの。私が入ったら、まずいみたいね。」四人は、朝の二時過ぎに、クラブを出て、サウナに、行って、其の儘、泊まった。その日の午前中は、サウナに、何回も浸かって、お昼を済まして、午後二時ごろ、サウナを出た。家に電話をかけた。ミナの家に、お母さん達が、集まって居ると、言うので、お父さん達、四人も、行く事に、決まった。
「あーら。・・・お帰りなさい。・・・赤い顔。して。」
「うん。・・・暫くぶりに、サウナに、泊まった。よ。・・・頭痛だよ。」
「何度も、入ったから。直ぐ、醒めるでしょう。」
「ねー。パパたち。・・・今ね。真田さんから、電話が、あって、伊豆の別荘で、大げさかも知れないが、結納。と言う。形で、自分の気持ちを伝えたい。ので、受けて欲しい。と、言って、います。・・・日時が決まったら、知らせて欲しい。と、言っています。ので、パパ達に、お願いします。」
「えー。早い。真田会長の事。だから。・・・俺も、六月に入ったら、総会の準備で、忙しいから。」
「皆は、どうですか。・・・俺達は会社じゃない。から、何時でも。」
「それじゃ。六月上旬。・・・第一土曜日。で、どうでしょうか。」
「あと一週間か。・・・まっ。良い。ん。じゃない。」と、決まった。
真田たちは、赤坂の店から、出前をしてもらい。お祝いをした。そして、伊豆に行く、日時の返事が、来るのを待っていた。
リリリリリリ。リエが、パッと、取った。
「もしもし。リエです。はい。・・・はい。・・・はい。・・・分りました。有難う。」
皆、注目している。
「パパ。六月第一、土曜日です。・・・わ。嬉しい。」
四人は、抱き合って、喜んでいる。真田も。
「おー。そうか。・・・後一週間だな。・・・別荘に電話して、漁師に電話して、ハイヤーに電話して、・・・あ。お前達は、それまでに、各自、家で、過ごしなさい。そして、俺は、二日前に、伊豆へ行っている。から。・・・ハイヤーの事務所は、場所が、分っている。から大丈夫だよ。マイクロサロンバス。て。ゆったりしているのを。頼む。から。」
女の子達を、返した。四人は、つまらなそうな顔して、帰った。
真田は、何時も、纏めるのが早い、善は、急げ。主義だ。そして、自分のペースに乗せる。早速、車の手配をした。二十人乗りの、リムジン。事務所は、伊豆の場所は、知っている。何度も行っている。から。真田は、ミナに、電話をかけた。
「えーと。麻布の、日の丸観光に、頼んであるから。土曜日の朝、七時に、日の丸観光に行ってください。」と言って、日の丸観光の、電話番号を、教えた。
真田は、赤坂の店に行った。板長が、一段落して、休んでいた。
「おーす。板長。いる。」板長が出てきた。
「はい。あ。会長。この前は、有難うございました。」と、頭を下げた。
「うん。・・・。空いている。」
「はい。今丁度、一服して、いました。」
「そうか。良かった。・・・今晩。付き合って。・・・外に出よう。」と言って、待っていた。時計を見た。六時だ。丁度いい時間だ。板長は何時も、板場で、したごしらいをして、メニューを組んで、帰る。それが六時で終わる。板長は、着替えてきた。
「お待ち同様。」
「お。行こうか。」店を出て、タクシーで、銀座に向かった。下りた。
「おーす。」真田が、入った。板長も後から入った。
「いらっしゃい。」親父が来た。
「会長、・・・あ。板長も一緒。ですか。珍しく。」
「あ。カウンターで。良いよ。」二人は、奥のカウンターに座った。ワインが出てきた。
「とりあえず。乾杯。」二人でグラスを、合わせた。
「会長。有難う御座います。」
「あー。良いよ、良いよ。・・・二三日。したら、設計士が、店に図面を持って来るから。その時、色々注文したほうが、良いよ。庭木も、任せてあるから、自分の好きな、木を、注文すれば。」寿司屋の親父が、聞いていた。
「家を建てる。んですか。」
「あ。・・・板長の。ね。下北沢に、土地百坪有る。から、ゆったり。できるでしょう。」親父が。
「えー。百坪。・・・あ。」口を押さえた。すると、低い声で。
「下北沢。百坪。・・・ですか。近いし、良いですね。会長は、太っ腹ですから。板長も、長いですから。ね。この店と同じぐらいでしょう。」板長が。
「そうです。ね。会長の親父さん。と。店造っているとき、此処へきて、開店したばかり、と、言っていました。から。」
「そうか。もう、五十年。俺達も、八十だよ。・・・板長も、私も、引退だよな。」真田が。
「うん。そう。なんだよ。・・・そう思って。ね。板長には、ゆっくり休んで、もらいたい。伊豆の別荘も、自由に使えるように、しておくよ。」
「うん。でも、板場で死にたい。です。ね。仕事しながら。」
「それは、駄目だよ。・・・お客さんが居る。し。」
「いや。会長。・・・それは、冗談です。職人。てーのは、のんびりできない。すよ。動いて居るほうが、落ち着く。んですよ。」親父が。
「そうだな。俺なだって、ここに立ってないと、生きた心地。しないす。よ。」
「そうかな。職人は。でも、息子さんが、一生懸命、頑張ってくれている。から、俺も安心。なんですよ。コンパニオンの子達も、皆、褒めています。よ。謙虚で、律儀で、良い男だ。て。」真田が、褒めた。
「有難う御座います。これも、会長の親父さんから、厳しく教えられたからです。それを、息子にも、教えて、代々伝えて行くように、しています。」
「そうだな。俺の親父は、自分に厳しいから、子分を持てなかった。一本気で、律儀で、周りの人は、何時も、二三歩、離れて歩いていた。から。・・・何時、拳が飛んでくるか分らない。・・・俺は、それを見て、育ったから、そうすることが、自然でしたから、学校でも先生に、褒められました。よ。」すると、親父が。
「そうな。一緒に来た、若い連中は、外で待っていた。もんね。・・・今、そんな事。したら、若い衆が居なくなっちまうよ。・・・それに・・・最近、この辺りも、真田会長が居なくなってから、大分変わりました。よ。」真田も。
「あー。でもね。親父。時代の流れは、一人じゃ、変えられない。です。よ。自分のことだけで、精いっぱいで、上下関係は無くなる。し。・・・そう言う面では、俺達は苦労したよ。上から抑えられ、下から、ぶら下がられる。し。・・・必死だった、けれど、良い人生だったな。・・・遣る事は、全部遣った。し。もう何も、入らない。人生、引き際が、大事だから、俺の親父は、何時も言っていた。(終わりよければ全てよし)・・・俺もそうしようかと。財産を全部、後継者に分与して上げる。これが俺の、最後の決断だ。」
「そうですか。だから、板長のこと、店のこと、ビルのことで、最近忙しい。んだ。・・・真田会長は偉い。流石だ。」
「あ。全部決めた。来週の土曜日が、決着の日だ。でもね、親父。金は、使ってなんぼだよ。貯めてなんぼ。じゃない。」
「会長は、今までも、使ってなんぼ。でした。よ。・・・でも、いっぱい貯めた。・・・これから、どう成されます。」
「うん。スペインが好きだから、其処で暮らす。」
「スペイン。」
「うん。段取りは、就けて有る。」すると、板長は、寂しそうに。
「会長。・・・そろそろ、上がりましょう。か。」
「う。あ。そうか。」
二人は、店を出て、タクシーを拾った。真田は、虎ノ門で下りた。
次の日、九時ごろ起きた。コーヒーを飲みながら、将来の事など、静かに、目を閉じて、考えていた。うとうと、寝てしまった。十二時頃、目が覚めた。そして、久しぶりに、計理士を呼んで、将来の社会の動向、自分のこれからの事など話して居たら、薄暗くなった。
「あ。もうこんな時間か。・・・先生。何処か。飯食いに行こうか。」
二人は、銀座で、フランス料理を食べて、クラブを、二、三件梯子して、別れた。
次の日、取引銀行に電話して、店長と、赤坂の店で、三時に会う事にした。真田は、母に用事が有ったので、昼頃から行っていた。店から、電話があって、下へ降りた。店長が居た。
「おー。店長。・・・暫く。」
「あ。会長。お久しぶりです。・・・何時も、御贔屓頂いて、おります。・・・ワイン持参で、来ました。」紙袋から、ワイン、二本出した。
「流石。店長。私の好きなの。覚えていてくれて。」さっそく開けた。二人は、乾杯した。
「おー。旨い。・・・旨い。」
「あー。良かった。会長の喜ぶ顔。久しぶりです。」
真田は昨日、計理士と話した事と、同じ話しをした。真田の何時もの手である。
そして、自分の考えが、誰と、合っている。かを、比べる。・・・二人は、零時に別れた。真田は、母の処へ泊まった。