第十四話 真田幸介 日本脱出
「真田さん。・・・今後は。・・やっぱり。スペインに。行く。んです。か。」
「えー。・・・七月末。に。・・・日本を離れます。・・・」
「何故。スペインの、カナリア諸島。なんです。か。」
「えー。大使館の人と、知り合って。教えられた。んです。・・・カナリア諸島は。外国人の受け入れ体制が。しっかり、していまして。ね。・・・私も、投資をして。置いたんですよ。・・・其の島へ行けば。一生暮らせる事に、して、在る。んです。土地も。家も。お金も。仕事も。レジャー用ボート、も。車も。全て。調えて、有る。・・・
島の。市長に、任せてある。んです。・・・この前。電話したら。一番良い場所を。用意してある。て。言って、いました。・・・何時でも、いらっしゃい。て。」
「へえー。・・・そんな事。出来る。んです。か。」お父さん達は。羨ましがっている。ようだ。
「落ち着いたら。遊びに行きたい。ですね。」
「あー。そうですね。何時でも来て、下さい。・・・皆で。カナリア諸島は、幸福の島と呼ばれて、中でも、テネリフェ島の旧市街地は、ユネスコ世界遺産に指定されていて。島の人達は、古い物を、凄く大事にしていて、一九六十年代の車が。至る所で見られる。世界一の町。なんです。よ。」
「へえー。・・・島は、幾つ。有る。んですか。」
「えー。島は。七個在る。私が住む所は。テネリフェ島と言って。西側に在る。一年中
温暖な気候で、過ごし易い。世界中から。移り住んでいる。人が居る。クルージングも、出来る。し。食べ物は、パンが、主食で。・・・日本料理は無い。けれど、魚が豊富に取れるから。困らない。と。思う。・・・ほら。見て、ごらん。」真田は。パンフレットを、皆に見せた。彼女達は。
「えー。パパの話を、聞いている。と。一緒に、行きたく、なったー。」
「うーん。・・・寂しく、なっちゃう。」
「何時。行くのー。・・・」彼女たちは。寂しさが、募る。
「今月末か。・・・来月始め。だ。」
「うんー。・・・寂しいー。」
「あー。・・・俺も、だ。・・・でも、決めたこと、だし。始めから。皆に言っていた。事だ。し。お父さん、お母さん達にも、話していた。事だから。・・・分って、欲しい。」
「そうです。よ。・・・それは。寂しい、けれど。真田さんには。真田さんの考えが、あっての、事だから。初めから、そう言って。いた。し。・・・君達は。此処で、遣らなければ成らない事。が。沢山有る。じゃない。・・・皆で頑張らな、きゃ 。・・・その為に。真田さんだって。相続して、くれた。んだから。・・・しっかり、しなくちゃ 。」
と。お父さん達が。言った。真田も。目頭が、熱くなって、言った。
「そうだ。よ。・・・お父さん達と、助け合って。頑張って、くれ。元気で、いれば。スペインにだって、何時でも、来れる。じゃ、ないか。」
「うんー。・・・でも。」
「お父さん、お母さん達。にも、お願いします。お孫さんたち。を。宜しく。お願いします。私も。・・・見捨てた、訳では、有りません。何時も。日本を、忘れません。・・・何時日か。皆で、会える、日を。心待ち。しております。ので。何卒、お願いします。」真田は。立って。頭を下げて頼んだ。皆で。目頭を抑えて。下を向いていた。
「あ。それから。この。虎ノ門の家は。リエさんが、住むように。登記して有ります。・・・お父さん。リエさんが、帰ってくるまで。管理を。お願いします。」
「あー。・・・はい。・・・分りました。」
「それから。後。二週間しか、ないので。お父さん、お母さんたち。とは。会う機会が、無いと思う。んで。今日、銀座の寿司屋で。お別れ会を。するように。予約して、あります。これから。タクシーで。寿司屋へ行きましょう。」
「あー。・・・・はい。」お父さん達は。ぎこちない、返事をした。そして、直ぐ。タクシーで、寿司屋へ行った。真田が。先に入った。
「おーす。」
「らっしゃい。・・・あ。・・・用意して、あります。・・・こちらへ。」
「おー。・・・今日は、腕を振るって、くれたね。・・・親父。」
「えー。今日は、全部。活けもの。だよ。」大きな、鯛の、活け作りが。中央に置いてあった。八人座った。真田が皆にワインを注いであげた。
「お互いの。隆盛を、祝って。・・・乾杯。」真田の音頭で、始まった。
「このワイン。美味しい。」皆で。美味しい。と。言っていた。真田は。
「分ります。か。・・・このワインは。ね。四十年もの。なんです。よ。何か有った時にと。ここに預けて、置いた。んです。まだ、五本。有ります。あ。親父も。一緒に。参加して。・・・今日は、お別れ。なんだ。」親父が来た。
「えー。本当」真田は。注いであげた。親父も参加した。
「美味しいー。・・・本当。」美味しい。美味しい。と。飲んで食べていた。
真田は、お父さん達が。喜んで食べて、くれている。のを、見て、嬉しかった 。
彼女達は。何と無く。落ちつきが、ない。真田は。親父に、注いで上げていた。すると。親父は。涙を、ぼろぼろ、流して。飲んでいた。
「有難う。有難うー。・・・幸ちゃん 。」
「俺の人生は、この寿司屋で。始まって。この寿司屋で終わり。だ。・・・親父。良い思い出ばっかり。だった。・・・親父には。感謝する。よ。」
「本当に。・・・スペインに。・・・行く。んですか。」
「うん。親父。其の話は。決まった。んだ。・・・あ。それから、エミさん。虎ノ門の中身を、全部調べて、四人で均等に、分けてください。・・・揉める事の。無い、ように。お父さん達。にも、立ち会って、貰えば。・・・なんだかんだで。五百億円。は。有る。でしょう。・・ただ。株券とゴルフ会員権。の。上がり様では。もっと増える。かも。・・・・三十年前の。ものだから。ね。・・・それから、NTTの株式証券は。父母達に、全て上げますので。・・・二十億円以上に成る。と思います。何故か。昭和七十二年。に成らないと。引き出せない契約を。してあるからです。」
「えー。」お父さん達は。びっくり。している。
「それは。私が居なくなってから。に。してください。リエにも、連絡はして有ります。ので。・・・金で、争いは。絶対しない。ように。・・・約束です。」真田は。止めを、刺した。普通は。金で揉める。それが。気がかり。だった。から。
「色々と。気を配って。頂いて。本当に。恐縮です。本当に。有難う。」お母さんたちは。揃って。改まって、お礼を、言った。
「こんな。夢にも、見られない。ことが。起きて、しまって。・・・金庫の話。」
「あ。エミさんが。しっかり者。だから。大丈夫。ですよ。・・・税金に、持って行かれるような。事は。しません。よ。・・・ね。エリさん。」真田は褒めた。
「え。・・パパに、言われて。色々、研究しています。から。」
「ほら。・・・お母さん。大丈夫。ですよ。」皆で。寂しさは。残ったようだ。
そして。真田は。父母達に。別れを告げて解散した。十一時だ。彼女達三人は、虎ノ門に泊まった。次の日。十時ご頃。四人で、赤坂の店に行った。女将が居た。
「おーす」真田が開けた。
「あら。皆。一緒。」
「あ。母さん。大体、終った。よ。・・・母さんも、元気で、な。」
「えー。エミさんも、出きる様に、なった。し。・・・老人ホームに、でも。入ろうかと、考えて居た。の。・・・貴方も、居なくなる。し。」
「うん。其のほうが。良い。・・・何時でも、入れるように、なっている。ん。でしょう。」
「え。そうよ。お金は。三千万円。積んで有る。し。資産も。そこ、そこ有る。し。十分です。」
「エミ。・・・今。聞いた通り。女将さんが。そう。言っています。ので。後は。任せますよ。・・・伊豆の修善寺だから。別荘にゴルフに行った時。立ち寄って、くれれば。喜ぶよ。」
「はい。分りました。・・・パパの。期待に沿う。ように。きっと、頑張ります。ミナも、エリも、居る。し。・・・ね。」
「そうよ。パパ。・・・女将さん。必ず。頑張ります。見ていて、下さい。」
「あ。其処に、老人ホームの。パンフレットが。有る。よ。」真田は、出して、見せた。
「はい。・・・見ておきます。」
「これで。全部。終わりだ。」
「良く頑張った。ね。・・・幸介。・・・私も悔いは、無い。わ。お父さんが。死んで、気も落とさずに。頑張って。大学卒業して。お父さんの念願を。叶えて、あげて。私も。感謝しています。よ。・・・幸介。」女将さんは。涙を、浮かべて、いた
(人生終わりよければ全てよし)と。心を落ち着かせた。
そして。日本を離れる朝。誰にも会わない。見送りも居ない。静かに。虎ノ門に別れを惜しみ、一人で。タクシーに乗って。成田へ向かった。
一人で。飛び立った。
真田は。水平飛行に入った。飛行機の中で。
人間生まれた時も一人。死ぬ時も一人。知人たちには。死に顔は見せたくない。
子供の頃の、野外活動。高校になって、空手と、勉強。親父の死。大学一年の時の喧嘩の時代。そして、友達。仲間達との友情。そして、八人で頭脳集団結束。そして、政治。経済。芸能。スポーツ。あらゆる難問に、ぶつかり、全て、解決して来た。最後までやり遂げた。金も決して、独り占めには、しなかった。均等に、割り当てた。
それが、甲と、成し。皆、遣る気を起こした。そして、金は、使って初めて、金の勝ちが分る。其の事は、何時も話して、いた。寿司屋の親父の事は、何時も思い出す。・・・最後まで。意地と見栄は。捨て切れ、なかった。自分に。・・・でも努力はした、じゃないか。最後の決断だって。資産だって。間違いは。なかった。と。自分に言い聞かせた。又。スペインでの。出会いを楽しみに。
老後の。余生を想像しながら。眠った。
完結
著者 鈴木 こういち
プロヒィール
昭和二十三年五月十二日生まれ 七十五才 無職
福島県相馬郡鹿島町立。鹿島中学校 卒業
本名 鈴木幸一(ペンネーム。鈴木こういち)
あとがき
人生。様々な生き方が有る。真田幸介も、任侠道の家庭に生まれ。親に育てられ。子供の頃から、親父の生き方は、好きでは無かった。ある日突然の不幸が、襲った。所謂。任侠道の宿命と、いう出来事が起きた。幸介は、親父の無残な死に。憤りを感じ。親父の仇を討つ。決心で。親父の後を継いだ。
遺言通り勉強して大学を卒業した。そして、親父の居た組織に入り。任侠道の修業をした。友達思いの真田に、同級生は、着いて来た。真田グループと言う。頭脳集団。「インテリーやくざ。」と言う、レッテルを張られた。その名の如く、今までに、無い。凌ぎを、稼いだ。みるみる、台風の如く膨れ上がり。東京一の組織にのし上がった。しかし、世間は甘く無かった。五〇才にして。解散に追い込まれた。
しかし莫大な資産は残った。前妻とも離婚した。一人ぼっちに成り。資産を、まざまざ、国に、没収されるのは、拒んだ。誰か、受け継いでくれる人は、居ないか。一〇年が過ぎたある日。四人の。女子大生と、遭遇した。奇跡と感じた、その出会いが。功と成し。この四人に賭けた。親たちをも、説得して、真田の計画通りに進んだ。現金。四百億円。資産は、おおよそ三百億円は有る。と。見込んでいる。此の女子大生たちに、全てを託し。自分は。日本に居たのでは。何となく。気がかりに成る事を、ためらい。カナリア諸島に、移住した。
又、女子大生たちは。現代の若者たち。と、家庭を持って、生活するのは。無理が有るように感じていた。ところに、舞い降りた。莫大な資産。自分たちのモノに成るならば。と。真田幸介の、本音を探り。嘘でない事を、知り。本気で、受け継ごうと。五〇才の男と。の。成り行きに任せた。僅か、三年間で。莫大な、資産財産を、手に入れた。
しかし。運。と言う。か。・・・出会い。と。言うか。著者と、しても、コウノトリが舞い降りたに違いない。と。感ずる次第で、ある。
人生。出会いが、運を、変える。・・・対人関係は。何時の時代も、有難う。と。言う。言葉を大事にして、利用した。り。利用された。り。相手を憂える心が。寛容かな。
様々な事件が、起こる。が。・・・事件にしない。表に出さない。のが。真田の、手腕だった。
巷では、公人が。物欲に負けて、私物化し。事件を起こし。ペコペコ頭を下げて。マスコミの餌食に成り。生き場を失う。・・・犬死に、には。成りたくないもの。です。
「人生終わりよければ。全てよし。」
鈴木こういち