クラスカースト底辺の陰キャ、実は人気カフェレストランのカリスマイケメン店員!隠してたのにしびれを切らした幼馴染みの罠にはまる。
思いつきです。
よろしくおねがいします!
クラスカースト、それは学校で発生する理不尽な階級制度。
例えば勉強が出来てもクラスに馴染めなければ底辺に落とされ、逆に正真正銘のバカでもクラスに馴染めばトップに躍り出る。
トップカーストであれば、理想的な楽しい七色スクールライフ。
底辺なら灰色で地獄のようなスクールライフ。
どちらにも染まらないカースト中位という存在を除けばその格差は明白だ。
だがクラスカーストが全てではない。
クラス以外でトップカーストであれば、地獄では無くなるのだから。
「放課後どこ行くー?」
「ゲーセン行かね?」
「部活行こー。」
「先輩もう来てるかな?」
とある高校の放課後、生徒たちはそれぞれの青春を謳歌する中、教室の端の席では一人の男子生徒が黙々と教科書を鞄にしまい、帰宅準備をしていた。
「なぁ隼也、このプリント束代わりに持って行ってくれないか?俺達部活だから。」
クラスの陽キャ、宮部大輝がこちらに自分の仕事を押し付けてきた。
しかし当の本人、立原隼也はというと。
「もうバイトに行かなきゃだから無理。」
即答した。
「別にいいだろ、職員室に向かうぐらいすぐだから。」
大輝は若干イラつきながらも再び押し付けようとする。
「だったらそっちだって同じじゃん。」
再び即答、そして鞄を背負って足早に教室を立ち去った。
「チッ!なんだよ陰キャの癖に。」
「どうせバイトだって嘘だよ。」
「私、前に帰るところ見かけたけど、普通に帰ってる様子だったよ?」
大輝の仲間が愚痴をこぼす中、そこから少し離れた席では、高校のマドンナである水樹絵里奈も鞄を背負い、教室を立ち去ろうとした。
それに気づいた大輝は絵里奈に駆け寄り恒例のアタックを始める。
「絵里奈さん、俺達のマネージャーの事考えてくれた?」
大輝が絵里奈の事を狙ってるのは周知の事実であり、周りも彼氏最有力候補としてそれを応援しているのだが、
「申し訳ないけど前にも断ったわよね?」
「そ、それはまだ俺達のサッカーを見てないから分からないだろ?一回見てもらえれば…。」
「興味ないし時間の無駄。」
この通りの冷たさである。
絵里奈もそのまま教室を立ち去った。
「さすが(氷姫)。」
「でもどうしたらくっつけられるんだろ。」
しかし大輝はというと、
「大丈夫だ。あれはただの照れ隠しだろうし。今度の文化祭で正式に告白するつもりだよ。」
「お、ついに?」
「あぁ、必ず成功させる。」
ポジティブでしか無かった。
隼也は家で洗顔を終えると鏡台に向き合い、長いボサボサ髪をセットし、後ろ髪をヘアゴムで纏め、耳にはシンプルなマグネットピアスを着ける。
制服からカジュアルな服装に着替えたらそこにいたのは高校とは真逆の誰からもモテそうなイケメン男子に早変わりした。
「いつもながらクラスメイトには一番見せたくない姿だよな…」
そんな愚痴をこぼしながら玄関を出て庭に停めていたクロスバイクで、自宅を出るとバイト先へ向かった。
カフェレストラン(Crescent)
その料理とサービスの品質からあらゆるメディアに取り上げられており、休日は行列必至の人気店だ。
「お疲れ様です。」
「お、来てくれたか(王子)!」
「いつも言いますけど(王子)じゃないですよ。」
店の裏口から入ったところに副店長にして、ウェイターのリーダーを務めてる勝治さんが缶コーヒー片手に気さくに手を掲げてきた。
「今日はお客さんはどんな感じですか?」
「それなりにはいるぜ。今日はディナー終了までか?」
「はい、それじゃあ準備してきます。」
「おう、頑張ってくれ!」
隼也は更衣室で手早くウェイターの服装に着替えて、他の店員に挨拶を交わしつつ、店内のフロアに出た。
「隼也君、2番テーブルにパンケーキセット、オムライスセットをサーブして!」
「分かりました!」
調理スタッフからのオーダーが入りそれぞれ料理を運ぶ。
「お待たせいたしました、こちらパンケーキセットとオムライスセットとなります。お熱いのでお気をつけて。」
「あ、ありがとうございます!」
「かっこいい…!」
料理を注文した女子高生二人組は料理よりもこちらを見つめ笑顔になっていた。
「ごゆっくりどうぞ。」
手を胸に添え会釈だけして、次のサーブに向かうべくカウンター近くに向かう。
女子高生二人組は顔を赤くしてほんの少し隼也を目で追っていた。
それからも注文をとったり料理をサーブしたり(たまに連絡先交換を断ったり)していたら閉店時間になった。
最後の客が退店し、フロアの清掃に取り掛かってると、横腹に痛烈な肘打ちをかましてくるキッチンスタッフがムスッとした顔を向けてきた。
「今日も私より人気だったじゃない。」
「いや、学校のマドンナさんが何を言ってるんだ。あとまぁまぁ痛いからそれやめて。」
高校のマドンナにして(Crescent)では腕利きのキッチンスタッフ(バイト)、そして隼也の幼馴染みでもある水樹絵里奈。
違う仕事内容の筈なのに料理と人柄という意味でライバル視してくる。
「だったらせめて高校でもそのスタイルでいなさいよ。私のメンツが立たないじゃない。」
「いやどういうメンツだよ。」
絵里奈は高校でもバイトでも本来のマドンナと言われるだけのスタイルで振る舞ってるが隼也はバイトでのみ本来のスタイルで振る舞い、高校では地味な陰キャとして振る舞ってる。
理由はただ一つ。高校位は平穏かつ自由に過ごしたいから。
「高校で絵里奈みたいな陽キャスタイルで過ごしたら絶対面倒事しか起こらないじゃん。高校ではスローライフに勤しみたいんだから。」
「今、私の事さり気なくディスらなかった?」
もう一発肘打ち→クリティカルヒット。
「〜〜〜っ!!」
思わず蹲る隼也を横目に絵里奈はため息を吐きながら聞こえない声でボソッとつぶやく。
「だから公表しようにも出来ないのよ……」
そんなやり取りをしていると店の奥から勝治さんの呼び声がした。
「悪い、少し行ってくる。」
そう言って隼也はスタッフルームに引っ込んでいった。
「まぁそのスローライフももうすぐ終了だけど。」
ひとり悪い笑みを浮かべる絵里奈を偶然見かけた他のウェイターはスタッフルームに向かって密かに手を合わせた。
「イベントの出店ですか?」
「おう、依頼が入ってな。そこには是非隼也も入ってほしいって事だ。だがこの日は高校の文化祭だったろ?だから無理にとは…」
「入ります。」
「即答かい。」
隼也の文化祭での役割は事前の設営準備のみで、当日は何もすることは無い。(加えて成績の単位も無い。)
加えて、高校では陰キャである隼也にとって賑やかやイベントになる文化祭は高校で参加したくない行事第二位になる程(一位は体育祭)なのだ。
「正直、文化祭に行かなくて済むのですから最高なので。」
「高校生が言うセリフじゃねえなそれ。」
そう言って苦笑しながらも何やら書類を記入して、隼也に差し出した。
「当日の書類だ。会場は公共の施設でここに集合して俺の車で向かう。いつも通り私服で来てくれ。」
「分かりました。ところで公共の施設といのは?」
書類には公共の施設としか書いておらず地図も無かった。
「それは悪いが向こうさんとの折り合いでな。怪しいところでは無いから安心してくれ。」
「?…とりあえず分かりました。」
不思議に思いながらも一先ず書類に目を通す隼也の隣で勝治はというと…
(すまん隼也、商売繁盛の為犠牲になってくれ。)
心の中で土下座しているのであった。
イベント出店&文化祭当日。
クラスや絵里奈に対してはいつも通りしていたお陰で怪しまれる事は無かった。
高校には事前に休む事を連絡している。
普段の制服&ボサ毛ではなく、しっかりバイトでのイケメン男子になった隼也は意気揚々とクロスバイクで集合場所に到着。
「お待たせしました。」
既に勝治さん他、数人のウェイターと調理スタッフが集まっていた。
「おし、これで全員だな。今回のイベント出店はかなりの客が見込まれる。くれぐれもしっかりな。」
「「はい!!」」
「特に隼也、お前はうちの看板ウェイターだ。しっかり心を掴んでくれよ!」
「心を掴むはともかく……精一杯頑張ります!」
「よし!ほんじゃ全員乗り込めー!」
そうして車に乗り込み、目的地に向けて出発した。
車に揺られる事30分……
目的地である自分の通う高校に到着した。
「……………………………は?」
絶賛開催中の文化祭では生徒や色んな人々で賑わい、校内や体育館では外からでも盛り上がっていた。
「よしっ早速準備に取り掛かるぞー。」
「待ってください勝治さん!?」
しばらく硬直していたがさすがに止める。
「公共の施設でのイベント出店じゃなかったのですか!?」
「色んな奴が学んでるから立派な公共の施設だろ?」
「意味合いが違いすぎますよ!?」
「ハハハ!まぁ悪い事をした。何せ高校とうちのマドンナに秘密裏に進めるように言われてたからな。」
「そのマドンナってまさか……」
その時不意に肩を叩かれ恐る恐る振り向く。
そこには頬を指ツンする水樹絵里奈…否
悪魔が悪い笑みを浮かべていた。
「お前かー!!」
「ようやく本来のあんたを高校に引きずり出せたわ。勝治さん、協力ありがとうございます!」
「これでまた客を増やせるのだからお安い御用だ。」
ハイタッチを交す絵里奈と勝治を横目に既に何人かの生徒に注目されている隼也は逃亡の手段を早くも模索しだしてるが……
ピーンポーンパーンポーン
『これより30分後に今話題のカフェレストラン(Crescent)のイベント出店を開催します。(Crescent)の看板ウェイターにして我が校生徒、立原隼也よりメッセージです…』
それはイベント用に事前に勝治さんによって録音された隼也のセリフだった。
「あんたが逃げようとすることも想定済みよ。じゃ、私も調理に取り掛かるからよろしく、看板ウェイターさん?」
そう言って絵里奈も調理スタッフとして混ざった。
勝治さんもいつの間にか担当者と打ち合わせを始めていた。
「……嵌められた……。」
結局隼也は陰キャを通してきた高校でバイトのカリスマイケメン店員として振る舞う事になった出店大成功し、絶大な宣伝効果を得た。
そして閉店後に絵里奈に連行される形でクラスに戻った隼也を待ち構えていたのは……。
「隼也、お前すごい有名人だったのかよ!?」
「なんでいつもはあんな陰キャなんだよ!?」
「隼也君すごいイケメンだった!」
「今度、私とデートしよっ!!」
掌返しの称賛の雨嵐だった。
(さよなら……マイスローライフ……)
称賛に応えながら心の中で号泣していると大輝が現れ、絵里奈に話しかけてきた。
「絵里奈さん、君に伝えたいことがあるんだ。屋上に来てくれないか?」
「ごめんなさい、生理的に無理。」
大輝の一世一代の告白は告白すら出来ず玉砕した。
「それに私は隼也と付き合ってるの。」
「ちょ絵里奈!?それは周りには秘密って!」
その爆弾発言に教室は一気に騒ぎの渦と化した。
実は隼也と絵里奈は中学2年生の時から交際しており、今回の出店もそろそろ自慢の彼氏として公にしたいと沸を切らした事で提案したという。
「そういう訳だから隼也、これからもよろしく!」
そう言ってクラスメイトが見てる中で堂々とキスをしてくる絵里奈。
(……完全に嵌められた……)
クラスメイトがさらに騒がしくなる中、隼也はそんな事を思いながらも大人しくキスを受け容れるのであった。
後日、告白以前に玉砕した大輝だったが滅気ずにしつこく絵里奈にアプローチした挙げ句、隼也に「お前と絵里奈は釣り合わないから別れろ!」と言った事でクラスから目の敵にされ始め、最終的に隼也と大輝のクラスカーストが逆転したのだった。
「いや、俺の陰キャスローライフを返して!!」
by立原隼也
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