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009、聖愛の勇者

こんにゃくの説明をするには、ネコ型ロボットの前に、まずロボットから説明しなきゃいけないという、めんどくさい説明。 でも、なんだかんだと楽しみながら、引き続き街を探索する。


「もそろそろ17刻になるな」

「そういや、刻って言うんだ」

「コウのところは違うのか?」

「時間。1日24時間」

「なるほど、時間というのか。こちらは24刻だ。鐘が時を教えてくれる。日の出の朝の5刻から鐘が鳴り、夜は21刻までしか鳴らないから気を付けて」

「時計……持ち運びできるやつないの?」

「時計はあるが、高額だから金持ちの嗜好品になる。俺も持ってはいるが、町にいる間は鐘の音を頼りにするよ」

「もしかして、当たったやつ?」

「半分だけ当たりだ。さっき拾って届けたらクジの半分を貰うことになったと言ったろう、あれをそのまま教会に寄付したら、神父様にお古だけどと貰ったんだ」

チラリと見せるのは懐中時計型、大っぴらに見せないのはそれが高額なのだからだろう。

「やっぱり寄付したか」

「やっぱり?」

「聖愛の勇者様だろう。そういうのしてそうな二つ名じゃん。愛され過ぎとかもあるかもだけど、なんとなくリンの性格からも言われてそうな気がし……んっ?どうした?」

隣で歩いていたリンが立ち止まったのが、実はずっと繋いでいた手から伝わり、横を向くと、リンが目を見開いていた。

「どっどうした?」

すぐにキョロキョロと辺りを見回し、無言で歩き出すから、引っ張られるように歩き出す。


歩いていたのが大通りだとすると、そこから一本中に入った裏路地、大通りの喧騒は聞こえるが人がいない道に連れ込まれる。

「リン?どうしっ!!」

次に気付いた時には、壁を背にリンに抱き込まれた。

「なっっっ」

しかも、離そうにも離れない、腕力の差が歴然。

「コウ、同意も得ずにすまない。押さえることができなかった」

リンの声が、先程まで聞いていた落ち着いた声音ではなく、焦りとかを含んだ緊張感のある声に、こちらが焦ってしまう。

「俺、何かやらかした?」

「……ハハっ、そうだな。やらかしたな。俺を本気にさせた」

俺がそう言うと、痛い程キツく抱き締められた腕が少し弱まり、少し落ち着いたような声に戻り、何故か安堵した。

「なんで?」

「俺は、精霊に愛され過ぎているのだとずっと揶揄されてきた。何をやってもだ。だからそういうモノなのだと、俺自身が諦めていた。だが、コウはまだ会って間もない俺を肯定してくれたんだ。こんな嬉しいことが、こんな出会いがあるなんて思ってもいなかったよ」

先程とは違い、力強く抱き締められても、痛くも苦しくもないのは、リンに少し余裕が生まれたからだろうが、さてこれはどうしたらいいのだろう。

思い付いたことを言っていたら、リンの何かを刺激してしまったらしい。

今、上をリンを見たらいけない気がして、どうにか目をそらす。

「なっ、それはっ」

「なぜだ?このままでは辛いだろう」

「だけど、ここ……」

「ああ、そうか。大丈夫だ。ここには人が来ない」

大通りを一本入っただけの裏路地、人が来ないことはあり得ないだろう。

「くるって」

「俺は誰だ?」

「リンだろう。待てって」

「俺は聖愛の勇者。精霊に愛され過ぎている勇者だ。俺がそう思えばここには人が来ないんだ」

「なんだよっそれっ」




「なっ、飲んだ?えっ?飲んだ!?」

ゴクリと嚥下する音がハッキリと聞こえた。

「ああ、全部。こんなに旨いものだったんだな」

跪いていた身体を起こし、フワフワしてる俺を抱き締めながら、そんな感想を投下してくる。

「ないだろ。それは不味いの代表格。………じゃなくて、何してんだよ」

何故か怒りとかは湧いてこない、戸惑い、気恥ずかしさ、むず痒さで一杯だ。

「最初に謝っただろう。押さえることが出来なかった」

チラリと顔を見ると素敵としか言いようのないイケメン笑顔が、優しくても熱く俺を見下している。

「聞いたけど、あっここっ……えっ?」

改めて周りを恐る恐る見てみるが、誰もいない。

夕食の買い物や帰宅などが始まるこの時間帯。

大通りから一本入ったただの裏路地に、誰もいないのは、明らかにおかしい。

「言ったろう、俺は精霊に愛され過ぎている勇者だ。俺に不都合なことは起こらない」

「なっ、なんだよ、それ」

「だから大丈夫だと確信を持って言えるんだ」

リンに付いている精霊の力は、ガチチートだった。


「異世界に来て、これかぁ……あー……」

しばらく抱き締められたまま呆けていると17刻の鐘が鳴り、ようやく意識が戻り、腕から逃げ出したが、リンにすぐに手を掴まれた。

はじめての街探索はそうして終わり、手を繋いだまま城へと戻った。

これがデートなら、会ったその日にAB的な……

あ、会ったその日にAなしのBCまでやったことある俺。

あー、これも死語……だろうな、多分。

っていうか、久し振りにABCなんて思い出しちゃったよ。

異世界に来て、頭が活性化してるんだろうか。

お目通し、ありがとうございます。

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