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054、朝日でロス考察。

まだ空が暗い内からリンに起こされた。

昨日の夕日よりも朝日の方が絶景なのだという。

なんとなく欠伸をしてみたが、昔のように眠くて欠伸しているとは違った感覚、ただ変な深呼吸しただけ。

「んっ?」

「どうした?」

「今、欠伸したんだが、変な深呼吸したとしか思えない。でもやったのは、何でだろうと思って」

「……それは、コウにとってある種の習慣なんじゃないか?」

「起きたら欠伸するってことが?」

「そう、体に染み付いた習慣であり癖だよ。よくやってるだろう、何かを終えたら伸びをするのと一緒だよ」

「あー、なるっ」

前は起きたら眠いし、仕事終わりは疲れていたが、ここに来てから眠くないし、疲れないのにやってるのは、31年間の長きに渡ってこの体に染み付いたものか。


こちらに来ての新しい日課は、朝の着替えた衣類をイムリンの前に置く。

プニプニと動いて服を洗濯する、乾燥機もいらない、現代人が一番欲しい洗濯機だ。

畳んで置けば、そのままの形で汚れも臭いも取れるスグレモノ。

パジャマ代わりのスエットは、二、三日は着てた俺が、毎日イムリンに頼んでいるのは『洗濯、干す、畳む、しまう』の4工程がないからに他ならない。

家事の内、料理は金銭的にキツくはなるが、コンビニとかで済ませれるが、洗濯と掃除は省くことが出来ないもの。

汚部屋でも、衣類が臭っても気にしない性格なら省けるだろうが、実は俺はそうではない。

部屋の中は殺風景な位がいいし、衣類が臭うのは好きではない。

濃い柔軟剤の匂いは特に嫌いで、赤ちゃんでも大丈夫と銘打ってるほぼ匂いのない柔軟剤を使っていた。

たまに汗をかいた時に自分が匂うのも嫌で、加齢臭防止のボディーソープやシャンプーなどを使っていた。

俺があっちに帰って一番困るのは、イムリンロスなんじゃないかとさえ思ってしまう。

「イムリン、俺が帰るときに一緒に地球に行かない?」

リンに聞かれたら、色々と言われそうなので、イムリンだけに聞こえるようにそっと呟いてみるが、イムリンは返事もなくゆらゆらしている。

「なんか言えよ」

「どうかしたのか?」

「イムリンが返事しないー」

「スライムに返事を貰おうとするなんて、コウくらいだぞ。ほらそろそろだから出てこいよ」

「あっ、まじで行く行く」

テントから顔を出すと、朝日が昇る前の不思議なコントラストの空と森が目に入ってきた。

地平線の近くは赤くその上は、紫のような色でその上は青、その上が紺色。

そして、森もその色を反映しているかのようなコントラストになっているー。

「……すごっ」

「ああ、今日は雲が少ないが、これに雲の多さでまた違ったものが見れるんだ」

視線をそのままに、昨日食事していた場所に座ると、手を取られ、コップを握らされた。

「おっ、サンキュ」

「それはありがとうって意味だったよな」

「そうそう、英語っていう俺の世界の共通語に近いやつのありがとうが、サンクスユー、テンキューの方が通じるみたいだけど、でそれを短くしたのがサンキュッ」

「そこでも短くするのか?」

「おおーっ、すげーっ!日本人同士が分かればそれでいいんだって、本場の人に言ったりはしないから」

新しいコントラストが出来上がっては変わりの繰り返しで、もう少しで朝日も望めそうだ。

「他国の言葉まで変換する、凄いな日本人ってのは」

「なっ、他の文化を吸収して改造して独自の文化を作ってきた国だからな、何でもありってやつだ。ご来光降臨ん~ん~、あっ拝んどこ。でも、リスペクト……尊敬してるからこそ吸収していくんだぞ」

初めて見るご来光に、手を合わせてしまうのは日本人だからとしか思えない。

無宗教なのに正月には神社に行き、他宗教のイベントをこなす、八百万の神の国、それが日本であり日本人。

「なぜ祈りか?……尊敬か」

「日本人の習慣、日光も神様扱いの国だから。そうそうそれっ尊敬!すげーっと思うから、真似て、肉付けしてより良いものに変えていく。すると作ることに慣れて、ものを作りやすくなる。あれには何かが足りない、ないなら作ってしまおうってな。発明家の多い国でもあるんだよ」

「なるほど。なら、言葉が最たるものだな」

「んっ?」

「他国の言葉も取り入れて、自国の言葉を改造して独自の言葉を作っていく。言葉の発明家が絶えずいるってことだろう。前に新しい言葉が作られては消えていくって言ってたじゃないか」

「おっおおー。そうだな。そっか、それもそうなるのか、うっ、まぶしっ」

日は昇り、辺りを明るく照らすと、同時に日の熱も感じるようになってきた。

「あれだな、自然ってすげーな」

「ああ」

「また教えてくれよ」

「ああ、それに二人で見つけよう。この先、俺のまだ行ってない場所も行くだろうからな」

「……そうな」

握ったままのお茶を飲むと、少し甘く、朝食前の胃に染み渡る丁度いい温かさ。

さすがスパダリと頭に過ったが、俺んじゃない。

そもそも、スパダリって他人に使ってもいいものなのか、定義が分からないから、スパダリ候補にしとこう。


その後朝食にして、いつもよりは少し早い時間帯に野営地を出た。

そして次の休憩で、さすがのスパダリ候補、スパ候。

いつもならラウ達の休憩だけで終わらせる休憩に、軽く摘まめるものを出してきた。

確かに少しは減ったが、昼食までいいやと思っていたのに、意外と減っていたようで、ブランチのようでブランチではない、言い方としてはおやつになるのだろうか、ペロリと平らげた。

コッペパンよりも少し固いパンに味の付いた肉とレタスのような野菜が挟まっているサンドイッチのようなやつで、旨かった。

「ごっそーさん」

「口に合って良かったよ」

さらりとそんなことを言える男はそういないだろう。

その時、少し考えた。

俺が帰ったら、この飯も食えなくなることに。

毎回、旨いと思えるものが出てくるのだ。

コンビニ弁当も旨くなってはいるが、ここまで自分好みの味付けなんて、そうない。

チラリとイムリンを見て、リンも見た。

ある意味、この二人、おっと、一人と一匹を失うことは、ロスになりそう。


昔、○○ロスをよく聞くようになった時に、調べたことがある。

ロスだけだと損失や無駄と言う意味らしい。

それに○○ロスと付けるとそれを失って悲しいなどの意味を持つことになったが、その最初はペットだった。

ペットロス症候群、ペットを何らかの理由で失った飼い主が精神疾患などになってしまうことが由来になっているらしい。

精神疾患までにはならないが、失くなって悲しい、辛いなどを引っくるめたのを○○ロスで表しているらしい。

言い得て妙、確かにそうだ。

地球帰ってロスなりそう。

あっ、もう一個あった。

ジンケットロスとイムリンロス、それに……リンの作った飯ロスに。

リンロスではなく、リンの作った飯ロスの方。

もう一度言うリンロスではない。


そんなことを考えながら、またラウに乗って旅路を走る。

次は第五?四?分からなくなるから、今度メモっとこう。

次の聖地に向かって、走った。

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