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045、手紙 1(過去)。

次の聖地までひた走るが、そろそろ色々とセミに伝えないとと、昼近く町の近くを通りかかったついでに、そこの宿に宿泊手続きした。

そして、テーブルに着き、昼食を済ませると買ってきた紙とペンで手紙を書き中。

テントで机を出しても書けるが、あれは地べた飯用で全体的に低いので、町とかに通りかかったら宿に泊まって書くかとなったのだ。

リンは、日々の出来事を主に担当で、スラスラと筆を進めている。

「俺は何書きゃいいんだ?」

「セミエール様は心情などをと言っておられただろう」

「そうだけどさ。……そういや、お前セミの前だとセミって言うよな」

前にセミと言っていたし、タメ語も話していたはずだ。

「セミエール様にそう言われては、そう言うしかないだろう。尊敬する方だからな」

「魔法剣士だっけ?でもそんなに?」

「実は昔、兵役に就く前に、あの方の太刀筋を見たことがあってな。あの流れるような美しい太刀筋を見た時に、こう背中に雷が走った。あとからあれはセミエール様だったと聞いて納得したよ。それから尊敬というか、様々な書などを読んで勝手に師事してるんだ」

「まじ?なにあったん?」


そうだな。

まだ12歳だった俺は、辺りではちょっと有名になる位強かったから、自惚れていたんだ。

簡単に友人達を連れて森の奥まで行っていたんだ。

ある時、俺と一緒によく森に行っていた友人が、一人で森に入っていった。

その森のある箇所から急激に魔物の強さが変わる場所があって、そこは何となく友人達を連れて入るのは避けていた場所でもあるんだが、友人はそこに入ってしまったらしい。

友人の両親は冒険者にも依頼を出したが、俺はそれとは関係なく探しに森に入った。

俺一人なら何度かその場所も入ったことあるから、大体の魔物の強さも知ってたが、その時はいつもよりも強かったらしい、そこはあんまりハッキリとは覚えてないが。

俺は、友人の身が心配で、声を出して探し回ったよ。

俺の声に反応して、俺の周りには魔物が集まってきたが、それでも俺の敵になるものはいなかった。

だが、俺の声に反応したのは魔物だけじゃなくて、目当ての友人もだった。

俺が集めてしまった魔物に阻まれた場所にいて、気付いたときには、友人の頭上に魔物の手が伸びていて、俺はあの時、友人を一度殺した。

本当に殺した訳じゃない、助けるのに間に合わないと、友人の命を諦めたんだ。

だが、友人は生きていた。

……そう、そこでセミエール様が出てくる。

木の葉が落ちるようでいて、素早く美しい一太刀でその魔物は消滅した。

あとで調べたら、セミエール様が編み出した魔法剣の一つに、デリーティアと言う技がある。

切った魔物を跡形もなく消滅させる、頼もしいが恐ろしくもある技だ。

その技だけは、誰にも伝えていないらしい。

その技のお陰で友人の命は助かった。

俺は、友人をセミエール様に託し、その場の魔物を屠った。

そう時間はかからなかったが、全て終わったときには、友人の怪我の治療に先に行くと書かれた紙が置かれていたよ。

急いで街に戻ったが、セミエール様は入れ違いで森に入った後だった。

その少し前から、その場所の魔物が強くなっていることを調査しに来ていたらしい。

俺も行こうとしたが、友人に側に居てくれと言われて、後を追うことは出来なかった。


「その友人って男?」

「ああ、そうだが。どうした?」

「いやっ、何となく。んで?」

「いや、これで終り。あの太刀筋と己の不甲斐なさとかを痛感して兵役に就く決心させるキッカケでもあるって話だ」

「それセミに言った?」

「言える訳ないだろう、色々と幼過ぎて情けないしな。この話も誰かに話したのも初めてだ」

「ほぇー、そうなんだ」

「……コウ、何を書いてる」

「えっ?……この旅の心情とか?」

今聞いたことを掻い摘んで書いていたら、即座に見つかった。

「嘘付け、今の話を書いただろう」

「読むなよエッチ、あっエッチって通じないんだっけ?……スケベとか?」

「なんで、そうなる?」

「助平は通じんのかよ、創造神の設定ってよくわかんねー」

「その紙寄越せ」

「なんだよー、ケチンボ」

「ん?」

「創造神さんよー、全日本語をインポートしとくれー」

「また訳の分からないことを……書くなよ」

「いいじゃん、セミなら絶対喜ぶと思うぜ。あのときの子がってな」

「ぐっ、だが……」

「お前も優等生ばっかしてないで砕けろって、俺の前だけ砕けたって意味ねーぞ。あれだっ、ギャップ萌えすんだから、ギャップ出しとけ」

「説明してくれ」

「ギャップ?何ってんだ?えーっと……隙間?食い違い?……説明却下。考えんのめんどい」

「そう言えば、中途半端な辞書だな」

「現代語を全て網羅するにはネット検索するしかないってな、簡易辞書にそれは無理だ」

「お前のとこの言葉は多彩過ぎる」

「逆に外人さんの気持ちが少し分かったよ」


粗方書き終えた手紙を封筒に入れ古典的に蝋で封をする。

真っ赤な蝋燭を出し、炙り、垂らすとスタンプをペタンと押して型を付ける。

郵便屋さんに向かい、信書は個別に郵便鶏に託すのだそうだ。

「最機密信書ですね。でしたら先日、郵便鶏の最高峰と名高いレタクルーブを伝で手に入れたんですが、いかがですか?」

「へぇ、レタクルーブを扱ってるのか、それでお願いするよ」

「ありがとうございます。恥ずかしい話、なかなかそこまでの信書を出す方はおりませんので、宝の持ち腐れになっておりまして」

「なにそれ?」

「見た方が早いだろ、亭主お願いする」

「ええ、では、そちらの扉の前にお願いします。……ここをお願いできるかい?」

亭主さんは後ろで手伝いしている誰かに声をかけ、対面口から離れた。

その郵便屋の見た目は、建物に対面口がある昔ながらの煙草屋のような、宝くじ売り場のような感じの佇まい。

町中にポストのようなものはなく、その対面口で郵便物を渡したり、郵便物を受け取ったりするようになっているらしい。

配達はされるが、家にポストはあるが、日本の郵便書留みたいな対面授受が基本。

だから、留守時は不在票がポストに入れられ、その不在票を持って郵便屋に直接取りに来なくてはいけない、最終的にめんどくさい仕組みだ。

家ポストの存在意義が少し不透明でもある。

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