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033、初野営 2(風呂)

夕食を食べながら、ユニットバスの話を熱心に聞いていたリン。

食べ終わると風呂を作るかと小川の横に魔法で穴を掘り、土魔法で表面を固めて、簡易風呂を作ってしまった。

「お湯はどうするんだ?」

「溜めてからファイアで温める」

「それだと冷めちゃうし、使ったら足りなくなるじゃん!掛け流し温泉的なの出来ないかな?」

こちらでも、温泉があることは聞いているから、考え付くアイデアを伝えるとリンが少し考える素振り。

「……なら、ここを通ると魔法で温まってから流れるようにするのはどうだろう?」

小川と風呂の間に魔法で溝を掘り、そこに火の魔法を置いた。

「多分だけど、これって普通出来ないよな」

溝の中間辺りに炎が浮かび、小川から流れ込んでくる水は、炎の下を通るとお湯になり湯気を出している。

「俺は松明とかの替わりに使っているんだが、他に使っている者を見たことないな。少し熱いな、もう少し弱めるか」

風呂に入って行くお湯の温度を触って確かめながら、炎の大きさを調整。

「じゃあさ、風呂の脇を一段高くして体洗ったお湯が入らないようにして……」

あーだこーだと簡易風呂なのに、色々とアイデアを出し、出来ました!

結局簡易じゃなくなった、簡易風呂!


「おーっ、温泉できたー」

「これを毎回作ることは出来ないからな」

「はぃよー」

早速服を脱ぎ、先ずは温度を確かめてから、体を洗ってしまう。

「あっ、リンは入らないのか?」

「これを片付け終わってからにするよ」

「あ、忘れてた。やらせっぱなしだな、次は俺やるよ」

夕食直後に風呂作りしてしまったために食器やらはそのままなのをリンが集めていた。

それを見ながら、壮大な露天風呂に入ってしまう。

「じゃあ、次はお願いするよ」

「おーっ、気持ちいいー!そういやぁー、こっちってスライムは有効活用されてる?」

「スライム?クリンスライムのことか?あっ、そう言えば、すっかり忘れてた……」

食器を置き、ジンケットを取り出すと瓶を一本取り出した。

キュポンっと瓶の蓋を開けると逆さにして中を出そうとしても出てこないので、小川の水を入れてみたりしている。

「もしかして、それスライム?」

「何かの時に貰ったんだが、今の今まで忘れていたんだが、生きてるだろうか?」

小川の水を入れた瓶を下に向けると、ニュルっと細い口から出たドロリとした塊がボトッと落ちると、シュルッと動き、俺の方に向かってきた。

「うおっ……」

驚く俺の横を通り、ボチャンっと簡易風呂に浮かぶのは、滴型ではない透明なスライム。

聖地のあの塊を大分小さくしたらこうなるだろう形のスライムは簡易風呂に浸かり?浮かび、なんとなくご満悦な雰囲気。

「大丈夫……みたいだな」

「こいつ、どれだけあの中いたん?」

「……しばらく」

「覚えてないのかよ、よく生きてたな」

「何かのお礼に貰ったんだが、それが何時かは思い出せない。ジンケットに生き物入れるのはダメなのに……なぜ入れのか……」

「まじで!?こいつ生きてるよな?」

「今の動きは生きてるだろうが……」

プカリと気持ち良さそうに浮かんでいるスライムを、興味本位でツンっと突付いてみた。

そのまま俺と反対に進み、浴槽の端にぶつかって戻ってきた。

「おもろっ」

何度かツンツンして、戻ってくるを楽しんだり、異世界待望の触れるスライムを堪能していると、いつの間にか片付けに戻り、片付け終わったリンが服を脱いでいた。

「こいつって、従魔?」

「いやっ貰ったままだから従魔登録してない。クリンスライムもピポグリフォンみたいな、どこかの改良品種だったと思う。けど、何故今まで思い出さなかったんだろか……」

そんなリンの疑問よりも目の前の待望の生き物。

「スライムに触れるなんてまじ嬉しいー、長年の夢が叶ったー、そう長年でもねぇのか、いやスライム歴は長いから長年でもいいか、ぐるみでもソフビでもないプニプニ~」

捏ねくりまわして、プニプニを堪能していると少し呆れ顔のリンが体を洗いながら聞いてくる。

「そんなに触りたかったのか?」

「だって、スライムだぜ。おっ、そうか。えーっとだな、俺がガキの時からある一番好きなゲームの一番最初に出てくるよわっちぃ敵キャラなんだけど、めちゃくちゃ可愛い感じで、グッズとかあって、ゲーセンとかでぬいぐるみとか見かけると欲しくなるくらいでだな。まあ、スライムは単なる敵キャラじゃない位置にいるわけだ。でっだな、最近の小説とか漫画とかでは、主人公がスライムになったり、スライムを従魔にしたりするのが王道的になってんだよ。でっ、この愛らしいフォルムを持つ魔物がまさにここにいるんだぜ、アガるわー」

プニプニしながら、スライム熱を語っていると、水面がグラッと揺れて、リンが入ってきた。

「俺が知ってる限り一番いい顔してる」

「だって、生スライムだぜ。動くし、触れるし、生きてんだぞ」

「スライムに嫉妬する時が来るとは思わなかった」

「んっ?どうしっ……っっ」

小さな呟きを聞き返しながら、リンを見るとその顔を捕まれキスされた、初っぱなから熱烈なやつ。

「リンっ、風呂で……と逆上せるっっ」

「大丈夫じゃないか?」

「あっ、そっかっ。イムリンちょっと待っててな」

「イムリン?」

「他で使ってない名前だから、イムリン、あっ俺が付けちった」

「それでいい、もう黙れっ」

「なんか、余裕がないリンっていいな。早くこいって」

そのまま腰を強く引かれる。

聖女仕様なこの体でしか出来ない芸当だが、今はそれでいい。

俺を欲しいと言うやつを待たせちゃいけない。


チャプン、チャプンっと湯が波打つのに合わせて、イムリンもユラユラと漂い続ける。

二人から排出された白濁を見付けたイムリンは、そこに近付き、それを口を開けるでもなくスッと取り込んだ。

そしてまた、波打ちに任せて、ユラユラと漂う。

逆上せも知らない二人から出されたものは、全てイムリンに食べられたが、二人は気が付くことなく没頭した。

お目通し、ありがとうございます。

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