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030、タシュワ湖

ラリスアット国の首都キュラスをぐるりと囲む壁には、壁の外へと通じる門が四門ある、その中の一つ『タシュワ門』に向かった。

キュラビッツの真ん中にあるタシュワ湖、その目の前に出る門だ。


その門は、当然検問する門兵付きだが、冒険者登録をセミがしてくれたお陰でカードを見せたら、何事もなく出れた。

このカード、登録者の名前、ランク、従魔情報が書かれているが、ランクは何もしてないのに、4になっていた。

1から始まり最高は8で、リンは当然の8。

だが、『リンスラン ミニシッド』で『ランク8』は誰なのか明白過ぎて、悪目立ちするからと、特例でクオーサ王とジヒル国王の許可付きで、リン ミニエッドと名を替え、ランクも4に引き落とした。

元のカードは持ったまま、2枚目として。

なぜランクが4なのかと言うと、1から3までは、月にギルドから出される依頼を一定数こなさなきゃランク下げや停止もある。

4からは月にやるのは、生存確認も兼ねて3件でいいから、ランク4にしたらしい。

5以上は、待遇も変わってくるし、貴族などにも雇ってもらえるが、色々と制約も付くから、ランク4止めで生活する冒険者もいるので、人数が多くて紛れやすいようだ。

とは言っても特例なランクカードなので、ギルド依頼こなす必要ない特例措置付き。


そうそう、検問、出るよりも入る方が検閲が厳しくなる。

入る時はカード提示と検問鑑定本『ワカルンス』を使うようだ。

名前を見れば分かるようにアンのとうちゃんの作品。

実はネーミングセンス、俺よりないかもしれない。

アンも持っていたので試しにやらせて貰って、出てきた言葉を脳内自動翻訳が『無・問題』と翻訳したから笑ってしまった。

とっさに、ある芸人の映画を思い出したからだ。

絶対にアンのとうちゃんは、日本人のある一定層向けに受けを狙ったに違いない。

先に見といて良かった、検問でこれが出たら笑ってしまい確実に怪しまれただろう。

ちなみに、悪事を働いた者は『○○の疑い 要尋問』とか出て、悪事が晒されるようだ。

悪人は絶対に触りたくない鑑定本の一つだろう。

これは町中の治安兵の詰所にも常備されていて、事件事故の時には、重宝されているらしい。

名前はアレでも、中身は凄い鑑定本。


「これがタシュワ湖か」

門を出て、街道と砂浜を跨いだ奥に湖がある。

ふっと、親戚のいる県にある湖を思い出した。

幼い頃、唯一親切にしてくれたあの親戚のおじさんが連れていってくれた、湖となんとなく重なった。

湖というものをあれしか見たことないというのもあるだろうが。

「もしかして、これって、キュラビッツ一深いとか?」

「ああ、だが、正確な深さは分かっていない。この湖の中心部には不可侵領域があるんだ。漁業も出来るし、泳ぐことも出来るが、中心部には誰も近付けない」

あの湖は日本一の深さだったと記憶してる。

タシュワ湖……名前もちょっと似てる。

「へーっ、案外大精霊さんの家があったりして」

「真偽の程は分からないが長年そう言われている。タシュワ磁石もその中心部を指してるしな」

ジンケットからタシュワ磁石を取り出すと、タシュワ湖の真ん中を指し示している。

この世界には、凄いことに方位磁石ならぬタシュワ磁石なるものがある。

タシュワ湖の真ん中を常に指すものだ。

なので、それを頼りに旅をする。

地図を見るとタシュワはこっちと、必ず書いてあるのだ。

地球のようにS極N極の地場の流れとかではないのが、また異世界だ。

「じゃあ、愚痴の一つでも言っておこう」

「なにする気だ」

「まともに魔法使えるようにしろー」

中心部を見て、大声で叫びたいところを周囲の目があるから、小声で言ってみた。

「可愛らしい愚痴だな」

「大声で言いたかったけど、止めといた」

「止めてくれて良かったよ」

ピポグリフォルがいる時点で、ちょっと目立っているから、これ以上は避けときたい。

他にもピポグリフォルに乗っている人もいるが、対照的なピポグリフォル二匹と偉丈夫とモブの組み合わせは、人の目に付くようだ。

こいつがイケメン過ぎなせいもあるかも……そのせいだな。

熱い目線でリンを見てる人が何人かいる、男女問わず。

こいつのイケメン度ってやっぱスゲーな。

眼鏡効果でリンだとバレてないが……あっメガネ男子割増カッコいい説なのではないか、これは?

眼鏡取ったら、美女、イケメンなのは、度数が顔を隠してるからなのか?

だったら、ある意味、意味ないのでは!?

「どうした?」

眩しいデス、湖畔からの光が後光のようです!

「……いや何でもない、行こうぜ」

これ以上、門近くに陣取っては視線を集めるだけだ、ここは早めに移動する方がいいだろう。

「次は、こっちでいいんだっけ?」

タシュワ湖を見て右側を指差してみた。

「ああ、しばらくはこの街道を真っ直ぐ行くんだが……」

「どうした?」

「ユリランスは街道を行くより、地図では森を突き抜けた方が距離的には近いがどうする?」

「なら、そっち。早さ重視」

「初めから飛ばし過ぎにならないか?」

「疲れないし、いいんじゃね。あ、ラウとディラの休憩は適度にな、俺らに合わせたらヤバイ」

「そうだな、じゃあ行こうか」

そこでラウとディラに股がり、まずは街道を走る。

途中から森に入るルートがいいようだ。

次なる目的地は、ユリランス!


タシュワ湖の中心部、何人たりとも入ることが出来ない場所。

純白のローブに、プラチナ色の腰までのストレートヘアの男とも女とも言いがたい中性的な顔立ち、プラチナ色の瞳がそこから走り去る二人を追う。

空中にソファーがあるかのようにゆったりと座り、タシュワ湖に付けている足元からはピチャリピチャリと音が鳴る。

『クックック……魔法を使えるようにしろだと、精霊を拒んでいるのはお前だろうに』

誰に話しかけるでもなく呟き、視線から外れた二人の行方を他の精霊の目を通して見る。

『早く回れ、理が壊れてしまう前に、早く……』

表情は何も変わっていないが、雰囲気はどこか……

お目通し、ありがとうございます。

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