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016、発明品

「何かあった?」

特定の人のみが開けることが出来る客室、通称『リフの間』にリンを招き入れて、おはようも言わずに言われた。

ちなみに、リフの間のリフはリフスナーの略と単純な命名。

「なっなんで?」

「なんとなく。……おはよう、コウ」

「あ、ああ、おはよ」

「セミ、おはよう。アンゼルフ様の様子は?」

昨日のを思い出してしまい、簡単に目線を合わせれないが、それを考慮してか、リンの視線はセミに向けられた。

「おはようございます。ありがとうございます。一先ず脱しましたのでご安心ください。今は陛下のもとに」

「良かった。コウ、それは俺が選んだ服だね、似合ってるよ。それで、何かあった?」

「えっ、聞く?そのままスルーだろ、そこは」

と、顔を上げたら、ニッコリ顔のリンと目が合う。

「スルー、この場合は聞き流しになるのかな?そんなことはしないよ。それによく眠れたみたいだね。あとなんだか、泣いたあとみたいにスッキリした感じがするね」

目元が少し赤くなってると、アンがちょちょいと消してくれたのに、分かるはずはないと思ったが、なぜかバレている。

「エスパーか!?……あ、こっちの人はみんなエスパーか!」

「おっ、また新しい言葉」

「あ、あーとっ超能力者のことだけど、えーっと普通の人が持ってない能力がある人のことなんだけど、こっちの人はみんな魔法が使えるから説明がしにくいな……」

エスパーの説明へと移行し、話していると気恥ずかしさは薄れていった。

これがリンの手腕なら、やっぱりこいつはエスパーだ。

「……読心術とは違うのか?」

「違う、いや、同じか?詳しくは分からん。スマホがあれば調べられるけど、繋がってないから無理だな。そもそも、俺、何も持たずにこっちに来たし」

まさに裸一貫というやつだ、服は着てたけど。

こっちに喚ばれたのは、仕事へ向かうために部屋を出る瞬間だった。

背には、ショルダーバッグを片方だけ肩にかけていたはずだったが、こっちに来てからそんなものは見ていない。

「そうでした!コウタさん、すいません。説明するはずでしたが、アンのせいですっかり忘れておりました」

珍しく慌てた様子のセミに顔を向けると、少しお待ちくださいと隣の部屋に向かっていく。

「……セミが慌てた、なんかおもろっ」

「やっぱり、何かあっただろ」

そちらに話が戻り、色々話してスッキリしたなんて言えないから、ニヤリと歌いながら返してやった。

「教えてあげないよっ、ジャン♪」

なんだっけ?このフレーズ?お菓子?

いやはや、本当にこっちに来てから、今まで使われてなかった頭が活動しまくってる、これぞ活性化してるって感じ。

「ほーっ……このあと……」

「お待たせしました」

ちらりと物騒なフレーズが聞こえたような聞こえないような気がしたが、そこは安定のスルーで。

手に本などを持ったセミが現れ、それらをテーブルに乗せていく。

「昨日行うはずだった事柄を今、行っても?」

「何々?」

リンは隣の席に座り、お茶を飲みながら見学。

「まずは、今のコウタさんの状態を知りたいので、こちらの本に手を置いて貰えますか?」

「鑑定本か」

「えっ?本?ウィンドウがピコンっ的なのじゃないの?」

「うぃ、んどう?」

「あー、説明はまた今度」

新しい言葉に一々反応してくる、いつもなら懇切丁寧に教えてやるが、今はそれよりも目の前のものへの興味が勝つ。

「それを目指したけど、安定させることは出来なかったと言っていましたよ」

セミの言う通りに、焦げ茶のハードカバー型の本に手を置くと、じんわりと手のひらが温かくなり、チンっと音が鳴った。

「これはおとうさまの大発明の一つ簡易鑑定本レンチンです」

「うわー、まんま。こっちにレンチン持ってくるか!でも、そういうの好きだな」

「大発明家ルナミナー様がおとうさま?」

「そうそう、アンのとうさんで先代の聖女だったんだって」

「えっ?」

「ちなみにアンの親父さんは先代の勇聖者らしいよ」

「……コウ、君は知らないから仕方ないが、ルナミナー様とアザリスト様も数々の功績を残されている方だ。しかも、ルナミナー様は300年前に突如現れた大発明家で、彼が生活水準を底上げした偉大な方なんだ」

「へぇー。日本からの転生者で、俺より二年前から来たんだってさ……ん?300っ年前?……セミ、アンって何歳?」

「188歳ですよ」

「188!!!あれで!?……えっ?何歳の時の子?」

「おとうさまが142歳と記憶してます」

「えーっと、こっちの方はみんなそんなにご長寿?」

「一般平均寿命は80辺りです。ですがその平均からエルフ族は省かれているのです。純粋なハイエルフは300歳と長寿ですので。おとうさまはハイエルフ、親父さまはエルフなので、アンも長寿の口です。ちなみに私も母がハイエルフなので今年で120歳ですよ」

にこやかに微笑むおじさまはどう見ても50か60、執事服を着ないと50より前としか見えないのが、120とは。

「リン、これはノーマル?」

「いや、これはレアな方だ」

「……早くも使いこなすのかよ。まあ、その方が俺が楽か。そっかー、人は見かけによらないってこれかー。しかも142歳で子供作るのか……すげーな」

「発明に入れ込み過ぎて、子育てを後回しにしてしまったと笑っていました」

「後回しし過ぎでしょ」


ちなみに、レンチンが終わった鑑定本を開いてみると次のことが書かれていた。

『幸多 立花 31歳 セイジョ』


「なんでカタカナ?」

「えっ?コウにはカタカナに見えるのか?俺にはキュラビッツ語に見えるぞ」

日本には文字が三種類あるとは教えている、他の国はまた他の国で文字を持っているとも。

「キュラビッツ語で合ってる、けど自動翻訳で『セイジョ』が漢字変換してないでカタカナ」

「それはどういうことだ?それに、この鑑定結果だけなのは初めて見たな」

「そうなのか?」

「普通なら体力とかの数値が出てくるのだが、俺にもやらせてくれ」


『リンスラン ミニシッド 38歳 ユウセイシャ』


「あー、あれだ。別枠扱いだ、それにユウセイシャはカタカナ、何だこれ?」

「お貸し頂けますか。……そのようですね、聖女と勇聖者の数値は計れないようです、私のはちゃんと出ましたので」


チラリと見せてもらった数字の羅列に、リンが驚いていた。

勇者と判明した時の数値よりも上だったらしい。

リンは自分より高い数値を見たのは初めてだと、何やら嬉しそう。

ちなみに、リンは最上級冒険者の二倍強の数値を出した上に、更に勇者と鑑定されてしまったことで、大騒ぎになり、それ以来の鑑定していないから、今の数値は未知数。

そんなリンは置いといて、元魔法剣士殿は剣を置いても120歳でも凄いのは変わりなかったということか分かった。

お目通し、ありがとうございます。

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