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010、更なる登場人物

最後以外は、健全に普通な街探索だったのに、最後がぁ。

とは言っても、気持ちよくさせて貰ったのはこちら。

もっとハッキリと嫌だったのであれば、嫌だと言えたが、流れ……イヤ、気持ち良過ぎた、嫌とか思う前に良かった、ヤッバイくらい気持ち良かったのが問題だ。

快楽に弱い……男なら誰しもそうだろう。

だがしかし、相手は、年上で上背もガタイも更に顔も上の“オトコ”だ。

俺にそっちの毛は生えてなかったのに、ここに来て生えた?

リンはどう考えてもイケメンだが、だからと言ってそこは寛容したちゃいけないとこなのに、なのに……。

あー、しかもこれが最後までとなれば、体格差を考慮してもしなくても俺は入れられる方な感じなのでは?

それは、困る……困るだけ?あれ?おかしい。

そちらの世界に足を踏み入れ……もう片足は入っているのか?だとしても、入れられるのは、色々と違う気がする。


などと、ごちゃごちゃと考えていたら、セミさんの話を聞きそびれていた。

「タチバナ様、聞いておりますか?」

「あ、聞いてない、全く、はい」

「いいえ。では、もう一度、この度は私事で役目を離れ、申し訳ありませんでした」

「なっ、いや、そう謝られても……」

謝罪されてるのに、あんなことを考えていたことに恥ずかしくなる。

「おかげでコウと仲良くなれたので、問題ありませんよ」

「お前が言うのかよ」

しらっとのたまったリンに突っ込みを入れてしまってから、ニヤニヤのリンにやられたと気付く。

実は、帰りの道中、恥ずかしさなどの色々で会話なく帰ってきた。

この場は仕方がないと、色々なそれらは片隅に追いやる。

「それよりも、アンさんは?」

「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」

「あ、リンには言っちゃってて」

「ええ、構いません。伴侶の守りを施しましたので、もう数時間寝ていれば、問題はないでしょうが……」

「わしも謁見に参加するぞ」

後ろから、最初にセミさんが出てきたドアから、ホワイト校長先生が先程は持っていなかった長い杖を突きながら出てきた。

「陛下はお許しになられるのに、どうして」

「わしの責じゃ。コウタ殿を呼び寄せたのはわしじゃからな」

「年を追うごとに強情に……あっ、お二方の前で失礼しました」

俺らがいることも一瞬忘れたセミさんが、アンさんを守ろうとしているのがヒシヒシと伝わってくる。

「あのー、俺、何が出来るか分からないけど、その聖女ってやつをやろうかなぁーなんて……」

こんな二人の前で、帰ると言えるだけのものは持っていない。

こんな俺でも出来ることらしいし、それに俺一人ではなくチート勇者のリンもいる。

「入るぞ……コウタ殿、よくぞ申してくれた」

実の軽い決意を述べたら、登場人物が増えた。

入り口のドアを開け、入ってくるのは、リンの三、四十年あとの姿だろうと思われる人物。

椅子に座っていたリンも、セミさんも片膝突きの、いかにもな姿になる。

「あっ、だよね、えーっと……」

俺も真似ないとと椅子から下りようとすると王様が近付き、肩に手を置く。

「いや、そのままで構わぬよ。セミエールも立て。そして、そなたは聖愛の勇者リンスランか?」

「はっ、ジヒル国勇者リンスラン ミニシッドにございます」

「直接顔を見るのは初めてだな。この部屋では畏まる必要はない。さあ、立って噂の顔を見せてくれないか?」

噂は王様にもしっかり届いていたようだが、顔を上げたリンに首をかしげる。

「んっ?眼鏡?似ているようには見えないぞ。それをとってくれ、……ああ、これは若き日の自分だな。戻りたいようで戻ってはダメな頃の顔だ」

色々な過去を思い浮かべているだろう王様に、そう言われてもリンは苦笑するしかない。

「眼鏡一つでこうも変わるのだな」

「申し上げます。これはタチバナ様の案でございます」

セミさんがさらっと暴露してしまい、移っていた視線がまたこちらに戻ってきてしまった。

「ほう。さすがだ。老いた眼などで使う眼鏡をこう使うとは」

「いや、俺の……世界ではよくあって……」

「だとしても、そなたが言ってくれなくては、リンスランはこうも素直に顔を上げてくれなかっただろう。この国に来るときは常に冑を被っていたのでな」

この王様は、そのリンに冑を取れと命令する王様でもなかった訳だ、また王様株は上がった。

なんとなくだが、この王様は大丈夫な人だと、まともないい召喚の方だと不思議な確信のような感覚が増えていく。

「それに先程、扉の向こうで聞こえたが、聖女を引き受けてくれるのであろう。コウタ殿、このクオーサ ラリスアット、キュラビッツを代表して感謝を申し上げる」

王様が、椅子に座っている俺の横に跪き、俺の手を取るとおでこに付けた。

「えっちょっと……えっ?えーっ」

こんな展開になったら、誰かが『王よ、そのようなこと……』なはずなのに、セミさんもアンさんも王様と一緒に入ってきた三人のお偉いさんみたいな人達、更にリンまでもを片膝突き頭を垂れている。

「いや、あの……そういうのは……。俺、ただの一般人、あの庶民であのー……」

そんなどもりで伝わったのだろう、王様が手をそっと離し、下げていた頭を上げ立ち上がると、他の人も倣って立ち上がる。

「コウタ殿がそう言うならそうしよう。だが、わしらの感謝は伝えきれぬものなのだと覚えておいてくれ。帰還の際は国を挙げて尽力させてもらうからの」

コクコクと頭を上下しながら、顔を赤くしてしまったのは、リンの壮年版の顔が近くて、先程のリンとの行為をなぜか思い出してしまったのだとは思いたくなかったが、思い出してしまったのだから仕方がない。

「して、コウタ殿はおいくつかな?」

「あ、31です」

「なんと、まだ十代か二十そこそこかと思ったぞ」

「それはないと。俺の種族?日本人って他の国の人から若く見えるけど、それはないかなーと」

「ふむ、神秘的な黒髪に黒い瞳に、高過ぎない鼻に小さめな唇。この世界にいるものと比べると愛らしい容姿をしておるな」

「愛……らしい……それはまた……」

なんだーこの展開?これはあれか?モテ期か?男ばかりに?モブで壁な俺なのに?

「もう少し幼かったら、乳母車に入れてつれ回していたわい」

「乳母……」

「ワッハハッハ、失礼した。可愛らしい顔をしていたのでちょっとからかいたくなったまでだ」

「あははー……」

豪快に笑う王様に、苦笑しながらホッと息を吐いたのは、からかって貰っていなかったら、赤い顔の説明が危うかったからに他ならない。

にっこりと笑み、ウインクしてくる王様になんだか、秘密を知られたような謎な感覚が沸き上がったがそこはスルーしておくことにする。

お目通し、ありがとうございます。

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