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五月の雨


 五月の雨に打たれる桜。

 街の中。鉄筋コンクリートの影。滴の垂れる枝の先に、かつての広場の面影は無い。陽の届かないビルの隙間で、枯れた桜は涙を流した。

 桃色の花で青空を覆う夢。夏の風に千切れる青葉。僅かに染み込む冷たい雨も乾いた幹を潤さない。枯れた桜は人知れず、暗い影に佇んだ。


 五月の雨に流される蜂。

 家の前。溝の隙間の浅い土。泥の水に抵抗する蜂に、眩い太陽は顔を見せない。暗いドブの壁の内で、濡れた蜂は悲鳴を上げた。

 白い綿毛と共に青空を飛ぶ夢。秋の風に枯れる花。僅かに覗く空の雲から冷たい雨が降り注ぐ。濡れた蜂は人知れず、暗い水に沈んだ。


 五月の雨に震える猫。

 団地の奥。破れた袋の山。縮れた黒い毛の奥の、無数のダニに平穏は訪れない。黒い飛沫の散るゴミ捨て場で、禿げた猫はお腹を鳴らした。

 黒い瞳で青空を眺める夢。冬の風に凍える我が子。僅かに漏れる暖かい息が消えてゆく。禿げた猫は人知れず、暗い目を閉じた。


 五月の雨に憂う人。

 ビルの上。灰色の雨の街。絶え間なく響く水の音に、安らかな風の声は混じらない。固い屋上の水溜りで、老いた人は目を瞑った。

 若い足で青空を駆けた夢。春の風を想う冬。僅かに見える遠くの山に一筋の陽が差している。老いた人は静かに、暗い階段を下りた。

 

 

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