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冬野つぐみのオコシカタ  作者: とは
第三章 冬野つぐみの出会い方

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冬野つぐみは心を探る

「お疲れですね。靭さん」


 台所に来たつぐみは、惟之に声を掛けながら隣に座る。

 

「そうだ、よかったらシヤちゃんもスイーツピザ食べてみて!」


 シヤを笑顔で見上げながら、つぐみは声をかける。

 つぐみの提案に彼女は穏やかな笑みを浮かべ、リビングにあるホットプレートの方へと歩いていった。


 これで惟之と二人だけで話が出来るようになった。

 今気づいたというふりをして、つぐみは惟之に声をかける。


「靭さん! そういえばこうやって、二人だけでお話するという機会はなかったですね」

「あぁ、そうだね。いつもはだいたいあちらのやつらが、ぎゃあぎゃあ言っているからね」


 横目でちらりと、惟之の顔をうかがう。

 その賑やかな人達を見て、彼は嬉しそうに目を細めている。


「最近はそんなに、お疲れになるようなお仕事を抱えているのですか? あぁ、そう言えば。昨日も先生とここで、打ち合わせをしていたようですし」

「いや、昨日の件は……。仕事では、ないかな。奥戸の事件も終わり、俺個人としては今はそんなに忙しいわけではないんだ」

「そうですか。では、その仕事ではない件でのお疲れだったんですね? 何か、私に出来ることがあれば。……そうだ! それこそ私の観察眼で、そのお手伝いは出来ませんか?」


 つぐみは、惟之の顔を見て微笑む。

 その行動に、彼は誘われるように静かに笑いかけてくれる。


「ありがとう。そうやって君に言ってもらえるだけでも、嬉しいものだな」

「……言ってもらえるだけでは、いけませんよ。私だって、……役に立ちたいのですから」


 少し悲しげな表情を見せて今一度、つぐみは惟之の顔を見つめ、その後に微笑んでみる。


 だが、これは本当のつぐみの気持ちだ。

 抱え込まないで、自分にも手助けさせてほしいと願っているのだから。


 つぐみの憂いの表情を見て、心配をかけていることに心を痛めたのだろう。

 惟之は、少し上ずった声で話し始める。


「そうか、……そうだなぁ。まぁ、たとえばなんだが。ずっと疑問に思っていたことがあったとして、そのヒントがようやく見つかりつつある。そんな時の動き方について考えているんだ。以前はそれで大きな失敗をしてしまっていてね。だから次こそは、そうならないようにしたい。……だがそうすると、そのヒントを逃してしまいそうだ。そう、焦ってしまうんだ」


 惟之はサングラスに触れながら、ゆっくりと話す。

 言葉を選んでいる。

 まずそれが感じ取れた。

 以前にあった出来事を調べなおしている。

 あるいはそれについて、何かしらの進展が最近あったのだろう。

 そしてこれは、たとえ話ではないだろうとつぐみは推測する。


「つまりその問題を今、靭さんと先生は二人で抱えているわけですね。せっかく見つけたヒントというのなら、逃がしてはもったいないですね。……そうですね、私だったらですよ」


 つぐみは自分を指差しながら続ける。


「以前にはなかった協力してくれる方がいるのであれば、その方に力を借りるということを考えます。うーん。例えば、私とかどうです? そのヒントを探すのに結構、適しているような気がしますよ。あ、でも私。まだそのヒントすら知りませんが」


 くすくすと笑いながら、改めて惟之の顔を見据える。

 ……ここですぐに、話してもらえるとは思ってはいない。

 だが、『何かあれば話そうか』という印象は与えられたはず。


「……ありがとう。その際には君に、助言を求めるかもしれないな」

「はい、いつでもどうぞ! 冬野つぐみ。二十四時間対応で、受け付けていますから! その際にはぜひ!」


 どんと胸を叩いて、つぐみは席を立つ。

 あまり追及し過ぎても警戒される。

 今日は、ここまでにしておいたほうがいいだろう。


 さて、次は……。

 部屋を見渡す。

 明日人がホットプレートの前で、一人でいるのが見える。

 シヤは、品子とヒイラギの三人で話をしている様だ。

 さとみは、……なんだか少し眠そうに見える。

 つぐみは明日人に近づき、声を掛けた。


「井出さん。さとみちゃんが眠たそうなので、私の部屋に彼女を連れて来てもらってもいいですか? 先に私、お布団を準備してきますから」 


 その言葉に、明日人はにこりと笑う。


「もちろんいいよ! あ、歯磨きとかもさせておいた方がいいね。少し待たせるかも。おーい、さとみちゃーん。こっちにおいで。歯磨きしようか」


 手をつなぎ、明日人は彼女を洗面台へ連れて行く。

 それを見届けてからつぐみは部屋へ向かい、布団を敷いて二人が来るのを待つ。

 しばらくして明日人は、さとみを抱きかかえて部屋に入って来た。

 

「ごめんね。歯磨きの途中で、さとみちゃん力尽きちゃって……」


 申し訳なさそうに謝っている明日人に、つぐみは思わず笑ってしまう。

 明日人はそっと、眠っているさとみを布団に寝かせた。

 そうして優しくさとみの頭を撫でてから、布団を掛け直している。


「こちらこそ、お願いしてしまってすみませんでした。そう言えば井出さんは、お仕事とか大変ではないですか? 今日も時間に無理をして来ていただいてる、なんてことがないといいのですが」


 申し訳無さそうに話すつぐみとは対照的に、明日人からはのんびりとしたいつもの口調で返事をされる。


「大丈夫~。僕の所属の四条は、今は『祓い』の待機中だから。だから今は、お仕事は受けていないからね」

「そうなんですね。ではその『祓い』が終わると、忙しくなるのでしょうか?」

「どうかなぁ? 基本的に僕は、公の仕事に出ないからなぁ。そういった意味では奥戸の事件の時は、珍しい依頼だったわけなんだけどね」

「なるほど。井出さんは普段は公の仕事にはいかな、……っといけない! お仕事の話は、さすがに聞いてはいけなかったですね!」


 今度はつぐみが謝る。

 そんな自分に明日人は、にこにこと笑いながら続ける。

 

「ううん、気にしないでね。ごめんね。逆に気を遣わせちゃった」

「そんな! こちらこそ、立ち入ったことを聞いてしまいました」


 以前、明日人自身の発動能力の話になった際は、話をしてくれていたが今回は、はぐらかされてしまった。

 自身のことならば話せるが、仕事は話せないということなのだろう。

 公の仕事はあまり受けない。

 つまりは、例の『いなくなる』の対象からは外れてくれるのかもしれない。


「あっ! ごめーん。ちょっと、電話かかってきちゃったみたい!」


 明日人はスマホを手に、部屋を出ようとしている。

 彼とは、他の皆と違って会える頻度が少ない。

 先の予定を聞いて、もう少し行動を把握しておきたいところだ。


「井出さん。よかったら第二回のタルト会の話をしたいんですが……」

「そうなの? わかったよ〜! 電話が終わったらもう一度、ここに戻るようにするね! 少し待っててね!」


 とっさの話を疑うことなく、明日人は部屋から出ていく。

 彼が戻ってきたら、タルト会を口実に今後の予定を聞いておかねば。

 治療班である明日人は、『少し動きすぎる』という対象には入れなくてもよさそうではある。

 さとみの頭を撫でながらつぐみが考えをまとめていると、電話が終わったであろう明日人が再び部屋に戻って来た。


「ごめんね。ちょっと取り急ぎの用件だったから。……えーと、それでね」


 彼は何だか話しづらそうに、視線をさまよわせている。

 先程までの快活な様子との違いに、つぐみは思わず戸惑ってしまう。

 先程の電話で、何かあったのだろうか。

 そう考えていると明日人は目を閉じ、小さく息を吐く。

 

「井出さん?」

 

 問いかける声に再び目を開くと、真面目な表情でつぐみを見てくる。

 ゆっくりと明日人は、つぐみへと問う。


「つぐみさん。あのね、違ってたらごめんね。……今、何か困っているの?」

お読みいただきありがとうございます。


次話タイトルは「井出明日人は相談に乗る」

最近、存在感が薄かった明日人が活動開始です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 惟之さんは相変わらず良い人過ぎて、つぐみにコロッと騙されている印象が(笑) 対照的に井出さんはやはり一筋縄ではいかないのかなと感じました。所属が白日なので観測者ほど厄介ではないのですが、ず…
[良い点] 明日人キターーーーーー(≧▽≦)! 物語が動きますね! こいつは!!
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