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冬野つぐみのオコシカタ  作者: とは
第三章 冬野つぐみの出会い方

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観測者は問いかける

「冬野さん、あなたは一般人ですか? ……それとも発動者ですか?」


 この質問はなかなかに意地悪であり、答えが難しい質問だ。

 そんなつぐみの考えなど知らないとばかりに、観測者は続ける。


「実はですね。私、この部屋の入口のドアにある仕掛けをしておいたのです。奥戸の店の扉と同じもの。つまりは、白日の発動者は入れないようにする障壁(しょうへき)を施しておきました」


 そんな仕掛けがしてあるとはつぐみは気付かなかった。

 部屋に入る際に、違和感などは全くなかったからだ。

 だが、これで分かったことが一つある。

 品子が教えてくれた「変化」はさとみが居ない、今のつぐみに影響が無かったということだ。

 今の自分は一般人になるらしい。

 ほっとしたような、少し寂しいような不思議な感情を抱え、つぐみは返事をする。


「ならば私は、発動者ではないということになりませんか? 観測者さんがご覧になっていた通り、私はここのドアを普通に開けて入りましたよ」

「そうなんですよね。だけどあなたからは一般人にはない、そうですねぇ。不思議な『何か』を感じます。そのことについて、あなた自身は自覚はありますか?」

「自覚ですか? ……そうですね」


 思い起こしているそぶりをしながら、どう答えるべきかつぐみは目まぐるしく頭を働かせる。


「私としてはうまく言えませんが。その奥戸さんの事件で私の体に、何か変化が起こったのかもしれないという思いはあります。先日、知らない女性に不思議な雰囲気を持っている、と言われましたから」


 つぐみの頭の中で、誘拐された倉庫での女性からの言葉が蘇る。


『何だか、とても不思議な雰囲気を持っているから。だから気になってしまって、つい連れて来てしまった』


 あの時の女性の言葉と、観測者の今の言葉。

 それによりつぐみは、倉庫にいた女性が落月の発動者ではないかと推測する。

 だがそれを聞いたところで、観測者が素直に答えてくれるとは思えない。


 それならばこちらから答えが聞けるように促してみればいい。

 そう考えたつぐみは、観測者に問いかけてみる。


「観測者さん。落月のあの発動者さんは、あなたと同じ何かを私に感じたということですね?」

「へぇ、察しがいいですね。……って、おっと! ……ふーん。これからはちょっとあなたに対する発言を、気を付けていかなければいけないなぁ」


 相手からの言葉に、つぐみは女性が落月の発動者だったと確信する。


「その発言からするに彼女との会話で、何か気付いたことがありますね? わぁ、気になってきちゃうなぁ。知りたいなぁ! 冬野さん、なぜあなたが彼女が落月だと気付いたのか、教えてもらえませんか?」


 はしゃいだ声を出す観測者に対し、つぐみは答えていく。


「観測者さんとその女性のお二人から共通して私から『不思議な』何かを感じたと言われました。これはつまり発動者にしか分からない感覚なのではないかと。なのでそう聞かせて頂きました」

「なるほどなるほど。でもそれだけじゃないですよねぇ? あなたの聞き方はずるいですよ。普通に『倉庫に居た彼女は発動者ですか? 落月の発動者ですか?』って聞いてきたら、私が答えないって思ったんでしょう? だからあえてあんな聞き方をしてきた。私もつい油断をして、うっかりと答えてしまいましたけど。はは、意外に悔しいものですねぇ。人に誘導されるというのは」


 言葉に反し、つぐみに聞こえてくるのは実に嬉し気な声。

 相手の気分は、今はすこぶる良いようだ。

 このまま機嫌を維持していけるように心がけていけばいい。

 この会話でリードをしてこちらがペースを握っていけば、思わず口を滑らせるということもありそうだ。

 相手に考える暇を与えぬよう、やつぎばやにつぐみは相手に話しかける。


「そうですか? ですが私には観測者さんの声は嬉しそうに聞こえていますけれども? うーん、そうですね。普段にない体験をして、心がうずうずしているという雰囲気が感じられます」

「わかりますか? さすが冬野さんですね! 私は今、悔しいし嬉しいのですよ。あぁ、そうそう。教えて頂いたお礼をしなければね。あなたがお会いした、その倉庫の発動者と一般人の男性二人。彼らは、全員もう生きてはいません。白日の方できっと行方を捜していたでしょう? 何なら教えてあげてはいかがですか?」


 その言葉に惟之の顔が浮かぶが、つぐみは首を横に振る。


「いえ。白日の方々には申し訳ないのですが、それはしません。観測者さんと会っていたことを口外しない、という約束に反しますから」

「なんとまぁ! あなたといい、室さん達といい皆さん律儀というか。……いい人達ですねぇ」


 呆れたような声の後、沈黙が訪れる。

 思わずつぐみは声を掛けていく。


「あの、どうされました? ひょっとして具合でも悪いのですか? もしそうなら無理をせずに」

「あぁ、すみません冬野さん。違いますよ。そうではないのでどうぞご心配なく。そうですねぇ、うーん」

「……何か言おうか言うまいかと、悩んでいると言った所ですか?」

「ふふ、さすがですね。あなたの勘は本当に鋭いですね。さて、冬野さん。私はあなたとあなたが大切に思っている一部の白日の方々にとって、今後とても影響があるであろう話を一つ持っています。当然ながらあなたとしては、聞いておきたいですよね?」


『一部の白日の方々』

 それはつまり品子やヒイラギ達のことであろう。

 そう考えたつぐみはうなずき、観測者からの言葉を待つ。


「こちらの都合もありますので、具体的な言葉ではお伝え出来ません。ですが聞いておけば、あなたもその方達の未来も、確実に変わるものだと思いますよ」


 落月という相手からの情報。

 これは自分や品子達に、身の危険があるということではないか。

 動揺を抑えきれずつぐみは叫ぶ。


「お、教えてくださいっ! お願いします!」

「ならば私にもお話を。私が知りえない面白いお話を。そうしたらこちらも喜んでお話ししましょう。さぁ、どうなさいますか?」

お読みいただきありがとうございます。


次話タイトルは「観測者は伝える」

未来を知る。それは幸か不幸か。

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― 新着の感想 ―
[一言] つぐみ優勢でこのまま進むのかと思いきや、不利な形勢を相手の欲しがる情報をチラつかせて逆転するとは、なかなか一筋縄ではいきませんね。 しかもそれは、つぐみにとっては絶対に欲しい情報。 これは…
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