表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬野つぐみのオコシカタ  作者: とは
第三章 冬野つぐみの出会い方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/340

変化

「さとみちゃん。ちょっといいかな?」

『どうした? 冬野』


 つぐみの呼びかけにさとみは、パタパタと足音を立てながらやってきた。

 ピンクのウサギの柄のパジャマは、とてもさとみに似合っている。

 さとみは自分の前で立ち止まると、ポケットに手を突っ込みながらこちらを見上げてきた。

 思わず抱きしめたい衝動(しょうどう)られる。

 ……だが、かろうじて理性を保つ。

 さもないと自分も台所(しまながし)になるからだ。


「あのね、さとみちゃんは私の体の中に入るんだよね。その時、私はどうしたらいいの?」

『やり方は、大きな私が言っていた。冬野は目をとじていればいい。あとは私がやる』

「そうなんだ。じゃあさっそく……、ってちょっと待てよ」


 自分の中に入るということ。

 某女の子の変身アニメのように、さとみの服が無くなる可能性があるのでは。

 それは男性も、なにより品子もいるここでは危険すぎる。


「ちょ、ちょっと私の部屋に行こう。そこでやり方を教えてくれる?」

『ん? べつにいいぞ。じゃあ冬野のへやに行こう』

「すみません。ちょっと私、さとみちゃんと体の中に入るかどうかの相談してきますね」


 つぐみの呼びかけに、惟之が返事をする。


「ん、あぁ。……そうか。そうだな、わかったよ。……あ、もうお茶が無いな。明日人はおかわりはいるか?」

「僕はまだありますから、大丈夫ですよ~」

 

 惟之からの返答は、心なしか戸惑い気味の声に聞こえる。


「用があったら呼んで下さい。では失礼しますね」

  

 惟之が台所に向かうのを見ながら、何となく声を掛ける。

 つぐみはさとみと手をつなぐと、部屋へ向かって歩き出した。



◇◇◇◇◇



 つぐみ達が去るのを見届け、惟之はふてくされている品子の隣にしゃがみ込む。 


「品子、話がある」

「何だよ。今、日本中で最も傷ついた心を持つ私に何か用か?」

「あぁ、大ありだ。しかもかなり込み入った話をするぞ」

「……ここで聞いても、大丈夫なのか?」

「あまり時間が無い。手短に話す。お前の力を借りるかもしれない」

「何だか穏やかじゃないね。……聞かせて」



◇◇◇◇◇


 自分の部屋に着いたつぐみは、さとみへと声を掛けていく。


「えっと、私は目を閉じていればいいんだよね?」


 つぐみの問いかけに、さとみはこくりとうなずく。


『うん、あとは私がやるから。こわくなかったら目を開けていてもいいって、大きな私が言ってたぞ』

「そうなんだ。でも、最初だからやっぱり目は閉じているよ」

『わかった、いくぞ。冬野』


 つぐみは目を閉じる。

 心臓の鼓動が、早くなっていくのが自分でも分かる。

 思わず胸に手を当て、待つこと数秒。

 

『できたぞ、冬野』


 突然、自分の体内から声が響いた。

 驚き目を開けば、パジャマがぺたりと床に落ちている。


 この部屋でやってよかった。

 妙な安心感を覚えながら、体の中から聞こえる声に返事をする。


「すごいね、さとみちゃん。これからもこうやって一緒に居られるの凄く嬉しいな!」

『そうか、冬野がうれしいならよかった!』

 

 さとみからも明るく弾んだ声がする。

 これは皆にも報告せねば。


「さとみちゃん。このままリビングに行くね」

『うん、わかった!』


 元気な声に微笑ましく思いながらリビングへと入る。

 最初に目に入ったシヤへと、つぐみは声を掛けた。


「シヤちゃーん。私たち一緒に居られるようにな……」


 つぐみの声を聞いた皆がこちらを見ている。

 だが、様子がおかしい。

 シヤの顔は真っ青だ。

 つぐみの顔を見て「だめ。……嘘だ」と呟いているのが聞こえる。


「シヤちゃん。一体どうし……」

「品子!」


 つぐみの声をかき消すように、惟之の鋭い声が響く。

 驚き彼へと視線を向ければ、サングラスを外し目を閉じたまま、つぐみの方を向く惟之の姿があった。

 

「靭さん? それは鷹の目を発動してい……」


 言葉は、途中で途絶えてしまう。

 台所にいた品子が、自分へと向かって来るのが見えたからだ。

 普段の朗らかさが消えた、厳しい表情につぐみは戸惑う。


 いつもと違う品子の姿に、怖れという感情が芽生えていく。

 つぐみは怯えながら、品子を見ることしか出来ない。

 

 「せんせ……?」


 真一文字に口をひきしめた品子が、右手でつぐみの目を(おお)った。

 痛みを感じる程の力を込められ、体がびくりと震えてしまう。


「ごめん、加減できない。少し、眠っていて」

「先生、……それほどのことを、私はしてしまったのですか?」


 品子の今までの発動は、指一本で行っていた。

 だが今は、手のひら全体を使っている。

 つまり相当な力をもって、発動を行うということだ。


 品子の声が響くと同時に、体の力が抜けていく。 

 自分は何をしてしまったのだろう。

 つぐみの目から、涙がこぼれる。

 それは悲しいからなのか、理由もわからず眠らされるからなのか。

 それすらもわからないまま、つぐみは意識を失った。

お読み頂きありがとうございます


次話タイトルは「人出品子は悩む」

大人になっても悩みは尽きぬものなのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 木津家の台所は江戸時代で言うところの、八丈島か何かなのかなぁと思っていたら急展開! つぐみにしてみたらワケが分からなくて怖いですし、なんならパラレルワールドにでも迷い込んだのかというくらいの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ