ちがうばしょで
それはつぐみがいる所から離れた。
遠い遠い場所。
そこである人物が、独り言をつぶやいていた。
「これは何というのでしょう。こんなに面白いものをみたのはどれくらい前でしたっけ?」
ここ最近の面白いことは皆、一人の女性が軸になって起こっている。
何と楽しい観察対象か。
「汐田君の印を付けられた発動能力を持たないお嬢さん。えぇと名前は、……冬野つぐみさんでしたね。とても可愛い姿とお名前だ」
だがこの冬鳥のお嬢さんを一般人と呼ぶのは、少し違うような気がする。
「室さんの中にいる黒蝶のお嬢さんも、この冬野さんがきっかけで覚醒したと聞きましたし。冬野さんとは一度ゆっくりと話をしてみたいものですね」
こんな面白い出来事を引き起こすのだ。
彼女との会話は、一体どんな話が出来るだろう。
どれだけの刺激を、新しい楽しみを自分に与えてくれるだろうか。
「……あぁ、我慢できませんね。さて、どうしたら実現が出来ますかね?」
きっと、とても楽しい企画になるだろう。
今は、別に誰に何も頼まれていないのだから。
「いや、そういえば頼まれていましたね。しかし、あの室さんから『頼み事』をされるとは」
そのきっかけを作ったのは、冬野つぐみ。
やはり話をしてみたい。
「あ、でも汐田君には内密の方がよさそうですね。この間はついうっかり口が滑り、怒らせてしまいましたから」
それに白日の人間に、自分と彼女が話しているのを知られるのも面倒となりそうだ。
とはいえ、彼女にはいつも白日の誰かしらがついている。
彼女とだけで、話をするとするのならば……。
「うん、少し考えてみますか。冬野さんと楽しい時間を過ごせるために」
小さな含み笑いが、するりと空へ溶けていった。
お読みいただきありがとうございます。
このお話にて第一章終了とさせていただきます。
次話より第二章として始まりますお話は、10年前のお話となります。
品子、惟之の過去編になります。
次話タイトルは「10年前の昔話 その1」です。




