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冬野つぐみのオコシカタ  作者: とは
第一章 木津ヒイラギの起こし方

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川の字

「毒が変化している?」


 指に付いたチョコを舐めながら、品子がつぐみへと尋ねてくる。


「はい。井出さんが、その可能性もあると」

「その毒がヒイラギと同調して、起こさないようにしていると?」

「えぇ、その可能性を考えています」


 アイスを大きく一口ほおばり、品子がソファーへと座る。


「むー、毒じゃなくなったのなら、起こしてくれればいいじゃん」

「……兄さんが起きたくないと願っている。だから、その毒は起こさない力を使ったということでしょうか」

「うわー、オカルトチックだねぇ。そうなったらもうお手上げじゃん。ちょっと方針を変えた方がいいかもなぁ」


 品子が顎に手を当て、考え込む様子を見せる。


「私が読んだ資料に、毒の変化という記述は無かった。冬野君も、白日の資料はあらかた読んでもらっている。これならばもう、資料室は明日にも閉鎖してもよさそうだな」

「そうですか。二条の方々には本当にお世話になりました。九重さんにも一度、直接お詫びを言いたいのです。明日は、来てくれるのでしょうか?」

「あぁ、来るはずだよ。私が明日、彼と話をする約束になっているから」

「では明日は、一緒に連れて行ってもらえますか?」

「もちろんいいよ。さて、そろそろ私はお風呂に行こうかなー」


 大きく伸びをして、品子が廊下へと出て行く。

 そろそろ寝る準備をと考えているつぐみに、シヤから声が掛かった。


「……あの、つぐみさん」


 いつになくシヤが、もじもじとしている。

 そんな彼女も可愛いらしいと思いながら、つぐみは尋ねる。


「シヤちゃんどうしたの?」

「あの。実は今日、惟之さんと井出さんが、この家に泊まるかもしれないと思ったのです。それで昼過ぎの短い時間ですが、お布団を二組干しておいたんです。でもそのまま帰られたので……」


 シヤの顔が、次第に赤く染まっていく。


「そ、それでせっかく干したのにしまうのももったいないので。そのお布団を、使おうと思い、……まして」

「うんうん、いいと思うよ。お日様の匂いの布団っていいよね。すっごくわかるよ」

「はい、なので、あの。……その布団を、つぐみさんの部屋に持っていって、一緒に寝ても、……良いでしょうか?」


 シヤの顔が真っ赤だ。


 何と可愛らしいことか。

 こんな誘いを、断れるはずがない。


「シヤちゃ……」

「いいに決まってるよー! そしてもう一つはもちろん、私が使うということだよね! シヤー!」


 廊下から光の速さで。

 ……いやこれは、光を超えんばかりの勢いでやってきた品子が、お約束の高速頬ずりをシヤへ始めている。


「せ、先生。お風呂はどうしたのですか?」

「もちろん入るよ! だってその後のアイスも食べなきゃいけないし!」

「あ、本当にアイスまた食べるのですね。お腹は、大丈夫ですか?」

「大丈夫っ! というわけで、お布団二つ冬野君の部屋に敷いておいてね、シヤ!」


 それだけ言うと、品子は廊下に戻っていく。

 ……忙しい人だ。

 改めてシヤの顔には。『いろんな意味でタイミングを失いました。もうどうしたらいいか分からない』と顔に長々と書いてある。

 とりあえずは、自分から話しかけた方がよさそうだ。


「シヤちゃん。先生が言った通り、お布団を二つ持っていこう。どこに置いてあるのかな?」

「……あ、はい。こちらです」


 シヤと一緒に、布団を運びながらつぐみは思う。

 品子は先程「冬野君の部屋」と言っていた。

 その一言が、つぐみをこの家に受け入れてくれているようで、とても嬉しかったのだ。

 おそらくつぐみがここに居られるのは夏休みの間。

 あるいはヒイラギが目を覚まし、この家に戻って来た時までだ。

 できれば後者であってほしい。

 そうつぐみは願うのだ。


 お風呂から上がった品子が再びアイスを食べた後、三つ並んだ布団で誰がどの位置で寝るかの話し合いが行われた。

 話は長引くかと思いきや、品子からの一声によりあっさりと位置は決まる。


「やはり身長でなぞらえた川の字だろう!」


 つぐみ達も賛成し、左に品子、真ん中にシヤをはさんだ川の字で寝ることになった。

 つぐみは右側から、大好きな二人を一度に見ることが出来る景色を楽しみながら。

 時に品子がシヤをぐいぐいと抱きしめて、それを無表情で受け入れているシヤの様子を見つめながら。

 眠りに落ちるその直前まで笑っていられるという、とても幸せな眠りにつくことが出来たのだった。

お読みいただきありがとうございます。

次話タイトルは「大人の力」

20歳越えたからって大人って訳でもないのですよねぇ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも感想ありがとうございます(*^^*) 正直…Twitterで交流少なくなったら、もう会えなくなるかなと思ったのでホッとしました。 まとめての感想になってしまうのですが… つぐみちゃ…
2021/08/28 20:36 退会済み
管理
[良い点] ヒイラギが起きるまでは随分苦労しそうですね。 まあそういう意味も含めての「オコシカタ」なんでしょうね。 しかしつぐみやシヤに品子が絡むだけでホント面白いです。 というか二回アイス食うのか、…
[気になる点] 光よりも早く動ける……ニュートリノレベル? あれ、ニュートリノってなんだっけ…… もしかするとこの世界で一番速い存在は先生…… [一言] 川の字、平和でいいですねえ(*´∀`*)
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