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冬野つぐみのオコシカタ  作者: とは
第一章 木津ヒイラギの起こし方

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ある部屋で

 白日内にある枕敷(まくらじ)きの八畳間の部屋。

 ここにいるのは、父親と息子の二人だけだ。

 そこから面した庭を眺める父親へ、息子が語りかけてくる。


「最近、獣が二匹ほどうろついていませんか?」


 円熟(えんじゅく)といった言葉が相応しい相貌(そうぼう)の父親は、淡々とそれに答える。


「あぁ。少々、(わずら)わしい奴らがいるみたいだな」


 こちらへと振り返った息子が、嬉しそうに続ける。


「だったら。邪魔なら早く、片付けた方がいいのでは?」

「……そうするにしても、理由が必要だ。下手に動けばその獣の庇護者(ひごしゃ)から噛みつかれる。それではただ、こちらにとって面倒になるだけ」

「噛みつくだけでなく、引っ掻かれそうですよね。庇護者さんの爪はさぞ痛いでしょうねぇ、ふふ」


 息子の口元は柔らかく微笑んでいる。

 だがその目尻は下がることなく、軽く曲げた自分の指の爪を見つめたまま。

 その右目尻の下にある泣きぼくろが、(うれ)いを帯びているように父親には映る。

 うつむいたその視線は、彼の言葉の真意を隠しているかのようだ。


『我が息子』ながら、くえない男だ。

 父親はそう思いながら口を開く。


「いらぬ波風を立てる必要は無い。今は(はら)いの延期といい、落ち着かない状況が続いている」


 父親の言葉に、息子は不満げに尋ねてくる。


「逃げ出していた(うるわ)しいあの方のご機嫌は、良くなったのですか?」

「こちらは約束を守った。機嫌が良かろうが悪かろうが関係ない」


 父親は不機嫌そうに呟く。


「与えられた仕事をこなす。それだけやっていればいいのだよ。使われる側はな」


 その言葉を受け、再び小さく口元に弧を描き、息子は返事を戻す。


「そうですよね、余計なことはしなくていいんですよ。彼らも大人しく利用されていればいい。それでうまく回っていくのですから、ね」

お読みいただきありがとうございます。

次話タイトルは「井出明日人は条件を出す」

果たしてつぐみはその条件をクリアできるのか?

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