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冬野つぐみのオコシカタ  作者: とは
第一章 木津ヒイラギの起こし方

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冬野つぐみは知りたがる

 資料の読み込みと品子達からの話により、つぐみは白日(はくじつ)のことを学び始めていた。


 白日は、大きく分けて四つの所属先がある。

 それぞれ一条(いちじょう)から四条(しじょう)までに分けられており、惟之は二条(にじょう)、品子と木津兄妹は三条さんじょう、そして明日人は四条に所属している。


 かつて白日には、発動者の痛みや反動を抑えることが出来る『マキエ』と呼ばれる人物がいた。

 だが十年前に起こったある事故により、惟之は片目と発動能力の一部を、そしてヒイラギ達は母親であるマキエを失ったのだという。


 おかしいではないか。

 マキエの子供であるヒイラギ達が、なぜ(しいた)げられねばならない。


「先生、ヒイラギ君達はなぜ、ひどい扱いを受けているのですか?」


 つぐみの問いかけに品子は、戸惑いの表情を見せてくる。

 惟之と出雲は本部に用事があり、今は仮二条資料室には二人しかいない。

 あまり触れて欲しくない話だとは理解しているが、今ならば品子も答えやすいのではないかという思いもある。


「君が意味も無く、こんな話をする人間ではないことは分かっているよ。だからそんな顔しなくていい」


 かなり情けない顔をしてしまっていたようだ。

 反省するつぐみの頭を、優しく撫でてから彼女は続ける。


「白日はマキエ様の浄化能力を手に入れたい他の組織から、ひどい妨害や嫌がらせを受けることが何度もあったんだ。あの方が亡くなったことによりそれまでの鬱憤(うっぷん)や不満、怒りが全てヒイラギ達に向けられてしまったんだよ。さらにマキエ様の後継者が十年たった今でも現れないことが、苛立ちの矛先(ほこさき)を、向かわせることになったのだと思う」

「そんな。でも、それは……」

「そう、彼らには何も非がない。でもやり場のない怒りは、どうしても弱者へと向かってしまう。悲しいことだけれど」


 ひどい話ではないか。

 だが同時に、つぐみの中に新たに芽生えるのは違和感だ。


「冬野君?」

「先生。まだ白日という組織を、あまり理解していない自分が言うのも変だとは思います。ですが何か、納得がいかないというか」

「うーん。私の知る限り君の感覚は、真実を見つけているものだけに気にはなるね。どうしたんだい?」

「まだ言葉に上手くできないというか。もう少し白日の知識が欲しいです。ですので一つ、お願いがあります」



◇◇◇◇◇



「失礼します。九重(ここのえ)入ります」

「あぁ、どうぞ入ってくれ」


 品子が入室するように促せば、扉が開き一人の少年が姿を現す。

 資料室へと呼びよせた九重ここのえ連太郎れんたろうを、品子は笑顔で迎え入れる。


 なぜ自分が呼ばれたのか。

 そう顔に書いてある少年に、品子はある頼みごとをしていく。

 不思議そうに聞いていた彼は最後まで聞き終わると「わかりました」と短く答えてくれる。


「では九重君、お願いするよ」

「はい、品子様。お任せください」

「普通に接してくれるだけでいい。彼女は今、このビルの入り口で先に待っているから」

「はい、では行って参ります」

「ごめんよ、君が高校生だと聞いてね。年が近い方がいいと思ってお願いしたけど、迷惑だったら断っていいんだよ?」


 九重は、真面目な表情を変えることなく品子を見つめてくる。


「とんでもないです。自分に出来ることでしたら、いつでもお手伝いさせてください」

「ありがとう、惟之にはこちらから言っておくから」

「はい、よろしくお願いします」


 九重が扉を閉めた後、しんとした部屋の中で品子は思う。


 ――さてさて。

 冬野君は彼から、何を引っ張り出してくるのだろうねぇ。

お読みいただきありがとうございます。

次話タイトルは「九重連太郎」

前作を読んでくださっていた方は、彼の存在を覚えているでしょうか? というくらいの存在感だった彼のお話です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『冬野君は彼から、何を引っ張り出してくるのだろうねぇ。』 かしこまらずねぇ口調の終わり方にワクワクしてしまう人間が一人ここにおります(単純)。ヒイラギ君たちの置かれた残酷な背景がつぐみおね…
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