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Episode02:幼馴染みと会話後の現実離れ

どうも、香具師です。なんとか二話更新です。三話までは三日連続更新で行きたいと思ってます。それ以降は未定です。取りあえず頑張って書いたのでみてください。あとコメント頂いたヘロー天気様、本当にありがとうございました。


学校が終わり、俺は辰也と帰り道を歩いていた。ちなみに言うと、俺と辰也は部活をしていない。俺は生活の為にバイトをしなくちゃいけないからだ。辰也は自分の趣味を優先させたいからという理由らしい。今は二人とも予定が無いからゲーセンで時間を潰していた。ここでも周りの奴らは近付いて来ない。まあどうでもいいが。


「そういえば幸人、今日バイトは?」


「今日バイトは休みだ。バイト先のオッサンが偶には休めだとさ」


「へぇ、そうなんだ。じゃあアキバに付き合ってよ。今日は魔法少女ナナミのオープニング歌ってるグループのライブが遅くにあってさ……」


「断る」


行ってられるかそんなもん。


「まだ最後まで言ってないじゃんか〜」


頬を膨らませる辰也。非常に気持ち悪い。女子どもだったら喜ぶかもしれねえけど俺にとっては気持ち悪いだけだ。


「大体俺が行ったらライブが潰れかねんだろうが。歌ってる奴が俺を見て倒れたらどうする」


「あ、そだね」


「少しは気遣いってもんを知らねえのかテメエ」


睨んでやると



「怒んないでよー」などとへらへら笑っていた。


溜め息を一つ吐く。


もういい。コイツに何を言っても耳から耳に流れるだけだ。


っかコイツ、絶対俺で遊んでるだろ。



暫くゲーセンで時間を潰して俺たちは別れた。俺は家に、辰也はオタクの聖地アキバへと向かった。


余談だが軽くやったパンチングマシーンではその店で余裕の最高記録だった。ついでに言うと太鼓のなんちゃらは一度も間違えずにこれも最高記録で、周りや辰也に驚かれた。



**



家に帰り着くと、私服に着替えて、俺は取り敢えず机に向かった。俺の毎日の習慣だ。こんな外見だから教師には怖がられながらも目を付けられる。だから勉強だけは面倒だがしてるというわけだ。


今日の復習と先の予習をさっさと終わらせる。その間約二時間ほど。これだけやれば十分だ。もう予習は先に行き過ぎてるしな。


消しゴムやシャーペンを筆箱に放り込み、問題集を閉じてベッドに寝転がる。ああ、サイズはかなり大きいやつだから安心しろ。


取り敢えずアラームをセットして昼寝することにする。七時間授業はかなりダルい。


そうして睡魔に任せて惰眠を貪ろうとした時だった。


「ユキ、開けて〜」


何か聞こえた気がした。


いや、気のせいだ。どうせ近所の犬が鳴いてんだろう。今度睨んで黙らせるか……


俺は寝返りを打ってもう一度寝ようとしたが。


「おーぷんざうぃんどー」


なんかまた聞こえた。ついでに硝子を叩く音が聞こえる。


ったくこの辺通行量多いんだよ面倒くせぇ。


「あ、開けてよぅ……」


子犬みたいな声が聞こえる。硝子を叩く音が響く。


「うるせえな。分かった分かった。開けるっつの。」


黒のモノトーンなカーテンを開き、窓を開放すると、屋根の上にそいつはしゃがみ込んでいた。そして少し涙目。


Tシャツに短パンというラフな格好。背は百六十センチちょい。女子にしては高いほうだろう。


黒のセミロングの髪が風に(なびく。


「入るなら早く入れ。また閉められたいのか」


窓に手をかけ、閉めるフリをする。


「は、入る入るっ。」


そいつは子供みたいに急いで中に入ってきた。そしてバランスを崩して俺の部屋の床に倒れ込んだ。バカだコイツ。


俺はお約束の溜め息をついて窓を閉めた。



**



俺はベッドの縁に座り、そいつは部屋の真ん中にある丸い硝子の机の前のクッションに座っていた。ちなみに先ほどの転倒で無傷だったらしい。


名前は観奈(かんな


名字は二条(にじょう。二条観奈。俺の隣の家に住んでいる幼なじみだ。


こいつは俺が会話をする唯一の女子(姉さんは除く)。まあ幼なじみだからあんまり何も感じないからだと思う。


「で?何の用だ観奈?」


目の前の幼なじみに尋ねる。


「え?用が無かったら来ちゃダメなの?」


目元を潤ませて尋ねてくる。


「んなこと言ってねえだろ。ただ今日は寝ようとしてた時に丁度来たから聞いてみただけだ」


「そっかぁ。へへ、良かった」


机に突っ伏して顔だけ上げて満面の笑みを浮かべてくる。


コイツの動作や仕草や言動はどうも子供っぽい。見た目は大人っぽいのに噛み合ってない感じだ。


「ねぇユキ」


「何だ?」


「明日クラスに遊びに」


「駄目だ」


「何で何で何で〜」


「学校で喋りたくねえからだ」


ちなみにコイツは俺と同じ学校だが違うクラスだ。学校では関わるなと言っている。


「辰くんは喋ってるじゃん」


「あいつはいいんだよバカだから」


「うう……仲間外れだぁ」


クッションに顔を埋める観奈。


「お前な……」


「でも」


諭そうとするとクッションからパッチリとした目元から上だけを出した。


「心配、してくれてるんだよね」


トロンとした目で見てくる。何故だか少し心臓が早く活動した。なんだこれ。めんどくさい。


「……何のことだ」


心配?なんのギャグだ馬鹿馬鹿しい。横を向きながら言う。


「……ありがと」


その時の観奈は何故かとても可愛く見えた。男とか女とか関係なく。


「……違うってんだろ。俺は寝るから、帰りたくなったら帰れ」


ベッドに横になって毛布に入り込む。


少しだけ顔が熱かったのは気のせいだろう。多分な。



火照りを少し感じながら、俺は眠りについた。



**



目が覚めると、観奈はもう帰ったみたいで部屋には俺しかいなかった。そこでふと気付く。


(あれ?今何時だ?)


時計と外を見ると、もう夜だった。どうしようもなく夜だった。


ヤバいな。寝過ぎた。


仕方無い。今日は凝った夕食を作りたかったが時間が無い。簡単に作れる物でなんとかするか。


取り敢えず立ち上がり、部屋を出た。


スーパーに行かねぇと。観奈が来たときアラームを解除したのを少し後悔したのだった。



**



家を出てから約十分。そろそろスーパーに到着というところで自分の愚かさに気付いた。


諭吉さん野口さん一葉さんプラスα入れが無い。どうやら家に置いてきたらしい。寝起きでボケてたみてえだ。


一度溜め息をついてから百八十度方向転換。財布をとりに行くことにする。


そしてまさにその時。


ドンッ


一瞬だった。体に衝撃が走って俺は危うく地面に倒れこみそうになった。が、なんとか踏みとどまる。どうやら曲がり角を曲がった走っていた奴が後ろから衝突しらしい。


「何だ一体……」


後ろを振り返って姿を確認する。


目の前に現れたのは女だった。それは間違いなく俺の嫌いな、女だった。見たことねえような髪の色をしてやがる。最初目に入ったのは、闇夜の中で月光に照らされて光輝く美しい白銀の髪だった。一本一本が透き通るように月の光で眩く光り輝いていた。そして俺はふと思った。


(何で俺はこの女を不快に感じていない?)


シアンブルーの、海のような瞳。長く綺麗な睫毛。高く整った鼻。花弁のような薄桃色の唇。そして髪の色とはまた異なる、明るい雪のように白く艶やかな肌。


疑問に感じながら取り敢えず声をかける。



「……何だいきなり。危ねぇだろうが」


そもそも何で俺は女なんかに話しかけてんだ?



「…………」


銀髪の女は、小さく頭を下げただけだった。俺を見て逃げ出すと思ったが女はじっとそこに立っていた。一言も口を聞かなかったが。


(変な奴)


だがやはり妙だ。俺は女が嫌いで、見るのも触れるのも言葉を交わすことも吐き気がするほどだってのに。


(いや……んなハズはねえ)


目の前にいるコイツは間違いなく女。俺が嫌いな『オンナ』だ。


そう考えるとやはりいつも通り嫌悪感が現れた。


(ふん)


俺は銀髪女を避けて家に向かおうとした。そしてその時、前方に眩い光が広がった。


眩しいくらい明るかった。そしてそれは一瞬だった。


銀髪の女は俺の前に立ち、両手を前に出した。


轟!という凄まじい音が響いた。女の両掌からは魔法陣のようなものが現れて、その光――飛んで来る炎の弾を掻き消した。炎を掻き消すと、女はその細い両手を下に下げ、炎が飛んできた方に向かって鋭い視線を向ける。


俺は停止した。目の前の光景にただ立ち尽くした。目は見開かれたまま、閉じようとしない。だがそれを直す余裕は俺には無かった。


(ああ?んだ今のは?)


炎が宙を飛んで来ただと?んなことがあるわけねえだろ馬鹿馬鹿しい。それになんだこの女。両掌から何か出して炎を掻き消しやがった。炎に驚きもしねぇで。


映画の撮影……にしちゃリアル過ぎるな。カメラマンもいねぇし。


ん?ああ、そうか。まだ寝ぼけてんのか俺は。


取り敢えず目を擦ってみるが何か変わった様子は無い。銀髪の女は相変わらず俺の前で暗闇を睨んでいる。


その瞬間


鼓膜が震え、目は橙色の光が映った。さっきの火の塊が近付いてきたと、視覚と聴覚が俺に教えていた。


俺は目の前の光景を見て、右足で左足を思いっきり踏んでみた。


「痛ぇ……」


左足に痛みが走る。そして先程と同じように銀髪の女が炎を防ぐ。


……夢オチってのも無さそうだ。


目の前の光景は、紛れもない現実だった。



**



炎が飛んで来た方向から、足音が聞こえてきた。コンクリートの上と靴の擦れる音が、ただそれだけの音がやけに耳奥で響いた。


徐々に足音が大きくなり、暗闇の中から、徐々に姿を現した。


そしてとつっ立っている俺と両手を下げた銀髪女の、約三十メートル前で足音の源は止まった。


現れたのは男だった。少なくとも見た目は。実際に人間かどうかは分かんねぇ。そいつの手からは炎が顕現していたからだ。


見た目人間の男のそいつはスーツを着ていた。闇夜に紛れそうな黒い黒いスーツだ。


顔自体はキリっとしていて整っている感じ。見た目は人間にしか見えない。


男は俺達を見て薄く微笑んだ。


「やっと見つけましたよ。さあお嬢様、邸に帰りましょう。玄治(げんじ)様も心配しております」


丁寧な口調で言葉を発する男。炎は既に消えていた。


俺はその言葉を脳内で反芻(はんすう)してみる。


(お嬢様?)


確かにこの人間のように見える男はこの女をお嬢様と言った。そしてどうやらこのお嬢様とやらはこの男に探されていたらしい。


(それにしても……)


漫画やアニメやドラマで聞いたりはする単語だけど、正直馴染みが無い。いや、ある奴のほうが少ねぇだろう。


視線を銀髪女の方へ向ける。名も知らない銀髪女は黒スーツの男をキッと睨んでいた。


(おかしくねぇか?)


男は邸とやらに帰りましょうと言い、こいつをお嬢様と呼んだ。ということはこの男はこの女の家の執事か使用人とか言った立場なのだろう。


なら何故、この男はさっき炎で攻撃をしてきた?


あんなものが直撃すれば死は免れないだろう。それとも防げると確信してたから?確かに、この女は何らかの方法であの大きな炎弾を防いだ。だが、ただ連れ戻すだけなら攻撃なんてする必要性は無い。なら何故そんなことをしたか。


答えは簡単に出る。


こいつが連れ戻されるのを拒んでいるから力づくで連れ帰そうとしてる、てことだ。


「チッ」


一つ舌打ち。


炎もこの女も何もかも分からねぇことだらけだ。面倒くせぇことになる前にさっさと帰るか。厄介事に巻き込まれんのは御免だ。女がどうなったって俺には関係ねぇ。


勝手に連れ帰されとけ、家出女。


そうして背中を向けて家の方向に歩き出そうとしたその時。


「……早く、逃げて」


銀髪女が初めて声を出した。


(ふん)


逃げろ、ねぇ……


思わず女の方を振り返る。銀色の髪を靡かせて真っ直ぐ俺を見ていた。


お前が逃げろよ。帰りたくねえんだろうが。


「……逃げて」


「黙れ」


「……早く」


しきりに促す銀髪女。真っ直ぐな青色の瞳が俺を射抜く。


なんだコイツは?俺に命令する奴なんて何年ぶりだ?しかも


(まさか女にこんな強い視線を向けられるとは思わなかったぜ)


俺も負けずに睨んでやる。しかし女は全く動じない。


(おもしれぇ)


女は嫌いだ。男を助けることはあっても女を助けるなんて馬鹿な真似はしねぇ。


「おい聞け、女。」


(だが)


コイツはなかなか面白ぇ。今までこんな女はいなかった。


「俺は指図されんのが嫌いでな。」


放り出されていた女の手を握ってやる。


女が目を見開く。


あーあ、女なんかの手ぇ握っちまってるじゃねえかこの俺が。


(……まあいい)


「ついて来い。地獄に案内してやるよ」


なんせ月光の悪魔だからな俺は。


そしてそのまま、走り出す。


銀髪女は何も言わない。握った手を離そうとしていたが、力で勝てるはずもなく、そのまま俺についてきた。


後ろの男を振り返りもせず、ただ走る。走る。走る。



夜の闇に二つの影が混じって消えた。

まだ掴みだけですが徐々に物語に入っていきます。誤字脱字や文章の不明瞭な点などありましたらどんどんお願いします。

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