誤字報告に心をこめて
作中の作家さんであるNさんに事前にお見せして掲載許可をいただきました。
Nさんのお名前はわかる方にはバレバレかもしれませんが、伏せてくださいとのことなので、もしどなたか察しても内緒でお願いします。
本日、長年交流ある作家さんのNさんの作品が完結しました。完結、誠におめでとうございます。何十万文字もある大長編の御執筆お疲れ様でした。
Nさんとの出会いは、私が非常に取り乱しているときでした。以前書いた『再会の約束』というエッセイをお読みでいらっしゃる方には、そのときの私の取り乱しぶりがわかると思います(お読みにならなくても大丈夫です)。
その折、とても丁寧に対応していただきまして、大変優しい作家さんだと感動しました。その後、再びメッセージを送ったときも、私を覚えていてくださって嬉しかったです。
Nさんに再びメッセージを送った時期、私はだいぶ焦っていました。わけあってランキング上位を目指していたのです。でも私には私の作風があり、流行りの物語が書けるはずもなく、ランキング上位は無理なことでした。
そんなとき、ふとNさんの作品を読んだのです。失礼ながら、私が読んだことのある作家さんの中でも、群を抜いて誤字脱字・誤用が多い方でした。視点の変更も激しく、ときどき混乱してしまいます。ですが、そんなことは気にならないくらいものすごく面白い作品でした。
読んでいると、Nさんが心から楽しんで書いていることが文面から伝わってきます。気がついたら、私もNさんの「楽しい」という感情に巻き込まれていました。そう、私も無理してランキング上位を目指すのではなく、楽しんで書くという初心を思い出しました。
そして、私はこの楽しさをみなさまに広めたいと思い、レビューを書かせていただきました。レビューを書いた数日後──決して私のレビューのせいではありませんが──Nさんの作品が日間総合一位になったのです。
日間総合一位になると、それはもう多くの方が読んでくださいます。感想も書いてくださいます。目立つ作品の感想欄を、みなさまは覗いたことがおありでしょうか。好意的な感想もある反面、(たとえ的を射ていても)辛辣な感想も多く寄せられることもあります。
内容についても多数の感想がありましたが、当時は誤字報告機能がなかったものですから、Nさんの愛嬌でもある誤字についても厳しい意見がありました。確かに誤字はないに越したことはないのですが、それにしても厳しすぎるご意見を見て、必死に感想返信をしているNさんの助けになることはできないだろうかと私なりに考えました。
取り乱していた私に優しく接してくれ、さらに書く楽しさを思い出させてくれたNさんに、私が精一杯できること──あらかじめ私が誤字報告をすることです。
幸いといいますか、私は趣味で同人誌を作っている関係で、誤字には敏感なほうでした。文章校正ソフトも所持しています。Nさんとやり取りの末、投稿前のお話をメッセージで送っていただき、添削してお返しすることになりました。メッセージで近況も交えつつ、面白い作品を他の方より早く読ませていただき、Nさんに心をこめて一生懸命誤字報告をしました。
メッセージでの誤字報告の交流は、完結まで数年にわたって行われていました。私はその間に入院や旅行もあったのですが、事前に予定をお知らせして、前もって何話か先まで送っていただきました。週一回のNさんとのやり取りは、本当に楽しかったです。このたびの完結は我がことのように喜ばしいです(でも指摘が多すぎてごめんなさい)。
今は誤字報告機能もありますので、もう私の助けは必要ないでしょう。多く誤字指摘しながら、私も誤字報告をいただいたことがあります。自分では気づかなかった誤字でしたので、大変ありがたく受け取らせていただきました。今後ともよろしくお願いいたします。
もし、私から誤字報告が行ってしまった作家様へ。私の真心をこめた贈り物だと受け止めていただけますと嬉しいです。私からではなくても、誤字報告は作品を読みこんだ読者様から作家様へ宛てた、心のこもった温かいメッセージだと思っています。