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1人のファンと、1人のアイドル  作者: 五十嵐紅兎
1/1

1曲目 私と君の初まり

まずはじめに、この作品を開いて頂き誠にありがとうございます。


さて、題名に見覚えのある方はおそらくいらっしゃるのではないでしょうか?


短編として作っていたこちらの作品なのですが、続きが読みたいとの声を知人から数多く頂きまして、書いてみることにしました。(短編はプロローグだと思って頂ければ幸いです)


この作品が初めて読むと言う方は、まず、短編の方を読んで頂けると今後楽しく読んで頂けると思います。


この作品なのですが、主人公交代制になります。

女の子、男の子、女の子、男の子……と順番に1話1話進めて頂きますので、お楽しみくださいm(_ _)m


それでは─────

『1人のファンと、1人のアイドル』

はじまります。


時に交わり、時にすれ違う、2人の互いの心情。

ファンとアイドル。

どう言った恋愛を繰り広げていくのか、想像し存分に楽しんで行かれてください………




「……寒いなぁ」

仕事が終わり、重たい足を動かしながらただただ街をぶらぶらさまよっていた。

今年26歳になったはいいもの、趣味と呼べるものも、恋人と呼べるものもいない。

休みの日なんかは、家でずっとゴロゴロしているだけ。

そんな私でも、やはり癒しは欲しい。

仕事で疲れはててはいたが、なにかないかと街を散策していたのだ。

「なにもないなぁ……。あ、CDショップ。そう言えば、最近曲とか全然聴いてなかったっけ……」

たまたま通りかかった、あまり繁盛していなさそうな、CDショップに足を運んでみることにした。

こう言ってはあれだが、店内は古本屋みたいな、古びた作りになっていた。

品数はお世辞にも多いとは言えない。

(曲も古いのばっかり……。これなんて私の親世代だったと思うけど……。ん?)

そんな中、1つだけ真新しい物があり、思わず手に取ってしまった。

そこには、5人の男の人の写真が貼ってあり

SiCk(シック) 僕と君の初まり

と書いてあった。

どうやら、SiCkってのはグループ名で、僕と君の初まりと言うのは曲名らしい。

真新しいそれを、まじまじと見ていると、店の裏の方から青年が呟きながら出てくる。

「はぁ……。だりぃ……。売れねぇし、色々な意味で……」

男にしてはそれなりに長く、左目が隠れて、紺の髪色のその下の、深くどこか遠くをみる、くらい青色のその双眸にみとれてしまっていた。

「ん? うわっ! びっくりしたぁ……。こんなボロい店にくる物好きもいるんだな。あれ、反応ない……? おーい」

青色の双眸に見とれていると、青年が目の前に来て、私を覗き込む。思わずびっくりしてしまい、大きな声を出してしまい、その人は尻もちをつく。

「うおっ!?」

「 あ、すいません!! 大丈夫ですか?!」

咄嗟に我に戻り、手を差し出す。

「あ、ありがとう。……あっ!!!」

起こすと、青年は私の持ってるCDも見て、指差す。

「そ、そのグループ、好きだったりするの?!」

「え? あ、別にそう言うわけじゃなくて、1つだけ真新しいのがあったので、ちょっと気になって」

「え、あ、そうなのか……。わり、ちょっと知ってる人なのかと思ってテンション上がっちゃってさ」

彼はそう言ってはいたが、テンション上がったらしい時も、今も、傍から見れば表情は大差なかった。

「あ、やべ、もうこんな時間か……。悪いだけど、もう閉店なんだ……」

「あ、そうなんですか! すいません、帰りますね。あ、これ、ください。いくらですか?」

時刻は22時をさしており、内心そんなに経っていたのかと思い、退出しようと手に持っていたCDに興味があったので、購入したいと言う意思を彼に示したのだが……。

「あー、お金はいいよ。どうせここ、今日で店じまいだから。じいちゃんの店なんだけど、最近逝っちまってさ。俺は売れなくてもここ結構好きだから、残しておきたいんだけど、親父達が売っぱらうって聞かなくてさ。俺には抵抗出来なさそうだから、ちょっとした抵抗で今日来てくれたお客さんには、タダであげてんだ」

「そう……なんですか……」

おじいさんの話しをするその青年は、頭を掻きながら遠くを見据えていた。

その顔は、やはりあまり先程から変わらない表情だが、悲しんでいるとすぐにわかった。

すると、裏の方からまた声が聞こえてくるが、その声の主は表には出てこない。

『おーい! 翔、早く店閉めろー!!!』

「うっせー!! わかってるよ、クソ親父!!!」

『かーけーるーくーん!』

「やっべ! こっちくる! 悪いけど君、早く行っちゃって!」

「は、はい!」

彼に促され、急いで店をあとにする。

出てすぐに、お父さんが出てきたのか、こんなやり取りが聞こえてきた。

『てめー! クソ親父とはなんだ!!! クソ親父とは!!!』

『うるせぇって! クソだから、クソ親父つっただけだっての!!』

『また言いやがったな!!』

『イッテ!!! コノヤロー!!』

『そんなへぼパンチ、効かねーな!』

『無駄な筋肉がテメーは多いんだよ!』

そのやり取りを、こっそり外から見ていたら、青年とお父さんは、笑いながら、楽しそうにそんなやり取りをしていた。

私はどこか「あんな顔も出来るんだ。笑った顔可愛い」と、どこか微笑ましくなった。





「ただいまー」

「おかえりー」

出迎えてくれたのは、大学入学を控えた、8つ下の妹である。

今、私と妹の2人で吉祥寺で家賃7万円のアパートで暮らしている。

妹の通いたい学校が、こっちの方にあると言うことで丁度ここら辺にいた私の家に住むことになったのだ。


なんでも、妹は役者を目指してるらしく、名門校の桜ノ宮学園に入学したかったらしい。

けれど、親は全力でそれを否定。

それでも、やりたいと頑なに親の反対を否定し続け、粘った。

最終的に納得させる材料として出したのは、名門校の1年度主席になると言い見事目標を達成。そんな高い壁を越えた妹に対して、親は反論出来るわけもなく、姉の私と一緒に住むならと、許可が得た。

だが、桜ノ宮学園は全寮制。

しかし、主席と言う事もあってか、学園が指定した日程の時に寮にいればいいと言う事になった。

私が帰ってくるまで舞台の練習をしていたのか、妹の手には台本があり着ているのは、衣装だろうか?

男服が目立った。

「お姉ちゃん、今日は遅かったんだね~」

「うん。ちょっと寄り道」

「へー、珍しい。ん? そのCDなに?」

そんな妹が、さっきもらったCDに目を向ける。

「あ、これ? さっきもらったのよ。なんか、アイドルグループ? ぽいけど、知ってる?」

自分が知らなかったので妹にCDを差し出して、聞いてみる。

妹は「どれどれー」と小走りで近寄り、CDを手に取る。

私はCDを渡してすぐに靴を脱いで、リビングに座る。

「んー知らないかも。けど、みんなイケメンだね! 特に白髪のロングヘアの人!」

妹が指さしたその青年は白髪ロングに赤眼の双眸の高身長な人で、落ち着いた雰囲気だった。

名前はKiKyoと言うらしい。

「ねぇ、お姉ちゃんはどの人がいいと思う?」

妹は凄くノリノリでさも自分のCDかのように、見せてきた。

そんな妹が微笑ましく「どれどれ」と優しく笑みをこぼしながらCDを手に取り、見てみる。

そこには全員で5人写っており、見覚えのある顔がそこにあって少しの間、時がとまった。

「お姉ちゃん? どうしたの?」

「え、あ、ごめんね。私は……この紺髪の彼かな」

その青年はさっきのお店で出会った青年で、CDに写ってる事に驚き、その反動なのかそう答えてしまった。

名前はSyOuと書いてあり、SiCkのリーダーだそうだ。

「へぇ〜。お姉ちゃんはこういう人が好みなんだ〜」

「ち、ちがっ!」

「またまた〜。あ、MVあるっぽいよ! ちょっと見てみよ!」

ニヤニヤしながら揶揄う妹に対して、反論しようとするが遮られMVを見ることになる。

DVDデッキに入れてしばらくすると、映像が流れ始める。

それは、素人目の私が見ても分かるくらい、とても拙い映像だった。

そのことからすぐに、あまり知られていないのだという事に気付いた。

「な、なんか、この映像初々しいね……」

妹もすぐに気付いたらしい。

そして、急に色々とダメだしをし始めた。

「あ、カメラアングルそうじゃないよぉ……! 顔もぎこちないし……。こういうのは思いっきりカッコつけないと、曲に合わないって……」

役者を目指して色々な勉強をしたり、現場にもちょくちょく出ているから思う所があるのだろう。

しかしここまでくると、ある意味職業病とも言えるんじゃないかと思って、内心苦笑いしていた。

すると妹は急に黙り、暫くして再び口を開く。

「けど………けど、この曲凄いいい歌……」

そう言う妹の顔は凄い真面目で、凄く興奮していた。

私も耳をすませ、聴き入ってみる。

「ほんとだ……、凄い、いい曲……」

「曲なんて言うんだろ?!」

そういいながら、凄い勢いでDVDデッキの上に置いてあったCDケースを取りに行き、ボソッと呟く。

『僕と君の始まり』

それから私と妹は、何度も何度もその拙い映像を見終わっては、見直し、見終わっては、見直しを繰り返した。

確かに、色々とぎこちないしカッコついてもないけど、ものすごい気迫と努力は伝わってきた。

いつの間にか、何度もみたからか映像で失敗する所もわかり、思っても仕方がないのかもだけど、ずっと、心中で「ファイト!」と応援していた。

それから、私と妹は──────


SiCkのファンになった。

改めまして、お読み頂き誠にありがとうございますm(_ _)m


短編からの続編、楽しんで頂けたでしょうか?


最初は作る気はありませんでした。

ですが思いのほか続きを見たいと言って下さる方が多かったので、書かせて頂きました。


実際問題、いつもの事ながら面白く書けているかは不安な所です。

自分の中では面白い物を作らせては頂きましたが!


更新もやはり頻繁にとは行きませんが、ふらっと更新していきます。


この作品を楽しんで頂けたのなら幸いです。


それではまた次回でお会いしましょう。


ありがとうございました。

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