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チャラおっさんとお祭り

「おーい!今着たとこ.........って、これ何?」


 ミコト達が来たみたいだ。

 リュウガが俺たちに気付いてこっちにやってきたのだが..............。

 足下でビクンビクンと白眼を剥いて痙攣し続けるモザイクたっぷりのチャラ男二人にリュウガの表情が強ばる。


「おまたせーって、ひっ!?」


「な、何コレっっ!?」


「うわわっ!」


 続いてミコト、イオリ、ユイカもびくっとなる。

 青くなった顔から嫌な汗がじわっ、と出て来る。


 流石にこんなもん見せられたら誰だってこうなる。俺だってこうなる。


「あっ........あ゛っ、あ゛っ、」


「お゛、お゛お゛..........おあ゛っ」


 タツキは哀しい顔で気絶している二人を見る。

 いくらなんでもやりすぎだと思う。

 そして、ミラとブランシュをちらっと見る。

 おまわりさん、こいつらですよ。


「あー、なんだ。何というか、まあミラとブランシュがやらかしちゃいました。みたいな?」


 足元で白眼を剥いて泡を吹き、呻き声をあげているチャラ男達を再び一瞥したタツキはリュウガ達の方を見ると、凄く微妙な顔でそう言った。


「いや.........ちょっと、意味が........」


「ああ、わかる........わかるよリュウガ........。そして俺は泣いても良いだろうか..........」


 哀しい顔をして頷きあうタツキとリュウガ。

 ミコト達はどん引きして固まっている。

 と、そこへ、


「ウェェェェイ!!!そこなボーイ、ちょっと良いかなぁ?!!」


「「!??誰だお前!?」」


「オオオォォォゥ!見てたよ見てたよォ↑↑!!

 美少女二人もここまで凹すとかマジ卍ぃ。

 所でそこのお二人引き取ってもウィーかなっ!??」


 突如現れたパツキンにピアスで派手なグラサン、そしてギラッギラの腕輪から更にストラップをジャラジャラ言わせたオッサンは足下でビクンビクンしている二人を指さすと「ウェェェェェイ!」とチャラいポーズをとってみせる。

 生理的にチャラ男系が受け入れられないタツキにとって天敵とも言っていいチャラおっさんだ。


「え、あ、そこのお二人はお連れさんですか?」


「ノンノン。俺っちはそこなお二人ぃぃーを弟子に取りたいわけよ」


「で、弟子ですか」


 「チッチッチッ」と指を一本立てて横に振るチャラおっさん。

 彼の登場にギャラリーも再びざわざわしはじめる。


「お、おい。あれってチャライネさんじゃないか?」

「ああ、『道を指し示す者(ウェイの伝道者)』チャライネさんだ」

「マジか、本物かよ!??」

「あの微妙なチャラさ加減。チャライネさんで間違いないぜ」

「くそっ!ギラギラの後光が眩しすぎるぜ!」

「ピピリンゲボーボー!」


 有名人なんだろうか?

 ギャラリーがどんどん盛り上がる。


「彼等。もーティンティン無いっしょ?っつーことはもう『チャラ()』じゃあ無い訳よ。そんでもって女でもないっしょ?つまりそれってもう純粋な『チャラ』をめざせるってことっしょー!!

 テンションブチアゲーーーッッ!!!」


「えっ?ああ、はい」


 またも「ウェェェェェイ!」とポーズを取るチャライネ氏。

 どうやら彼ら二人が雄でも雌でもなくなった事がリアルガチにやばたんピーナッツらしい(意味不明)。

 話によれば、息子も娘も付いていない彼らは純粋な『チャラ』なる者をめざせるとのこと。

 所で彼のチャラ語が日本のそれの一昔前のものなのは気のせいだろうか?


「んで?貰っちゃってもおけおけなカンジ?」


「あっ、どーぞどーぞ」


 一歩引いてダチョ○倶楽部ばりの「どうぞどうぞ」をするタツキ。

 早く終わらせて離れたい一心である。


「んじゃっ、『ヒール(ウェェェェイ)』!」


 チャライネ氏の手からキラキラとした回復魔法の光が流れ、二人のチャラ男を回復させる。

 彼らの息子は...........復活しなかった.............。


「それじゃっ!二人は貰ってくね、バイビー!」


 彼は気絶しているチャラ男二人を小脇に抱えるとそのまま走り去っていった。


「な、なんだったんだ?」


「衛兵さん呼ばなくても良かったんだろうか........」


 リュウガもタツキもあまりの展開に唖然としていたのだった。












「へー、それでミラさん達はあの二人をあそこまでボコボコにしちゃったと」


「ああ。正直言って滅茶苦茶怖かった」


「ぱっと見は非力そうな女の子なのになぁ.......」


 チラッとリュウガはミラ達の方に視線を向ける。


「んん、もうちょい.........はぁっ!!」


「ちょっ、ミラちゃん勢いつけ過ぎっ、ポイが破れちゃうって!」


「あちゃー、またやっちゃったぁ。ミコトは今何匹?」


「今二匹ですけど........ブランちゃんの方が凄いですよ?」


「ふっ! ふふふ、私はこれで6匹目です!」


「ブランさん凄いですね」


「イオリさん教えましょうか?」


「是非とも!」


 ミラやミコト、イオリ達女子組は金魚すくいに熱中している。


 この世界の金魚は赤ではなくて本当に金色をしている。

 しかし名前は『金魚』ではなくて、正式名称『ザハブペラヒーム』という3センチ程の小さな魚だ。


 さて、そんなミラ達だが先ほどまでチャラ男の股間をデストロイしていた少女には見えないほどきゃっきゃと金魚すくい等の屋台を楽しんでいる。


「ご主人、見て、たくさんとれた」


 着物の袖をくいくいと引っ張ってタツキを見上げるクロエ。

 きらきらと目を輝かせた彼女の手には持ち手付きの透明な箱があり、その中を4匹の金魚たちがすいすいと泳いでいる。


「4匹もとるなんて凄いぞクロエ」


「えへへへ」


 頭を撫でて誉めると、クロエはふにゃりと笑顔になる。

 すると横から鋭い視線が、


「なぁ、お前ってロリコンなのか?」


「よし、リュウガ。それは戦争ってことで良いな?」


「じょ、冗談に御座いますっ!タツキ殿っ!!」


 冷たい笑顔を見せるタツキに、ビシッ!と敬礼の姿勢をとるリュウガ。

 この世界に召喚される前からもだが、今のタツキとやり合うなんて自爆もいいところである。

 リュウガは地球に居たときの達樹無双を知っている数少ない内の一人なのだ。(達樹無双についてはまた後程。)


「クロエは、ご主人の事、好きだよ?」


「お兄さんorお父さん的な?」


「??たぶん、違う?」


 こてん、と首を傾げるクロエ。

 この前は「お嫁さんになる」なんて言っていたが正直達樹の見立てでは、クロエは家族の愛に飢えていただけだと思う。

 「お嫁さんになる」ことで、ミラやブランシュと同じ立場に居たかったのかもしれない。

 元々早くに両親を亡くして愛を知らない子だ。

 そういった愛の違いについてはこれから学んでいけば良い。


「クロエは、そのままで良いんだよ」


「ん?む、わかった、ご主人」


 そう言ってまた彼女の頭をふにふに撫で撫でする。

 手に伝わるさらさらの髪の感触が心地良い。

 クロエも気持ちよさそうに「ふしゅぅぅぅ」と顔を緩めている。


「ねぇねぇ!タツキもやろー!」


「リュウガもやってみてよ!」


 いつの間にか自分の分を終わらせたミラとユイカが俺たちの方を向いて手を引いてくる。


「ん、ご主人も金魚すくい」


「ハハハ........飼うところ考えなきゃなぁ。リュウガもやろうぜ」


「もちろん!『縁日の魔王』と呼ばれた俺の実力を見せてやろう!」


 勇者なリュウガ君は縁日では魔王だったらしい。

 「ふはははは!!!!」と笑う姿は正に魔王だ。

 絶対リュウガは魔王の方が向いてるって........。


 まあ、そんな事言いつつ金魚すくいはやるわけで、俺とリュウガはポイを片手に、そしてもう片方の手にお碗を構えて金魚を狙う。


「なんつーか..........こういうのって無言になってくるよな.........」


「ああ.............」


「..............」


「................」


 ガチモードに突入して無言になる二人。

 日本男児たるもの遊びでも真剣なのだ!!


「う、おおお.........完全にガチモードだ.......」


「二人とも集中してるね...........」


 ミラ達女子組は男子組の金魚すくいへの凄まじい集中に半ば呆れて、半ば感心する。


 静かに時間が過ぎる..........。


「..............」


「...............!はっ!!」


――パシャッ!


 先に動いたのはリュウガ。

 水に切るように差し込まれたポイが金魚を掠めて上へと上げられる。

 同時にポイを掠めた金魚は水面に飛び上がり、吸い込まれるようにお椀へと入っていった。


「一匹........」


 呟くリュウガ。

 その目には尽きることのない闘志が宿っている。

 後、最低でも6匹はイケる。

 『縁日の魔王』としての矜持なのだ。


「............ふっ!」


 続いてタツキもポイを水に差し込む。

 面の部分が水の抵抗を殆ど受けないように差し込まれたポイは、一瞬若干斜めに向けられ水面近くまで来ていた金魚をサッとすくい上げる。

 すばやく、かつ繊細に動かされたポイに、金魚はじたばたともがく暇もなくお椀の中に落とされる。


「フッ、達樹よ、衰えてはいないようだな」


「お前こそ。また腕を上げたんじゃないか?リュウガ」


 互いに賞賛しあうタツキとリュウガ。

 正にスポーツマンシップの鑑。

 金魚すくいはスポーツなのだ。

 

「............せいっ!」

「...............ふっ!」

「............はあっ!」

「....................はっ!」

「...........ふんっ!」

「............ふっ!」

「.....................はぁっ!」


 互いに一歩も譲ることなく金魚をすくい続ける二人。

 金魚すくいのおじちゃんの顔がどんどん青くなっていく。


「お互いもう8匹目か、そろそろきついんじゃないか?」


「『縁日の魔王』がここで終わるとでも?」


「.............随分とやる気じゃないか」


「惚れた女の前じゃあ遊びでも負けるわけにはいかんのだよ!」


 また一匹、金魚が宙を舞いリュウガのお椀に吸い込まれる。

 同時におじちゃんの顔も更に青くなる。


 高校生、だったんだよなぁ.........。

 こうして遊んでるとあのころに戻ってきたみたいだ。


「あっ」


 ポイが破れてしまった。

 穴のあいたポイをすいすいと金魚たちが泳いでいく。


「お?タツキはもう終わりか」


「まあこれだけとれれば充分でしょ」


「それもそうだなっ!と」


 ひゅーん、とまた金魚が宙を舞う。

 おじちゃんの顔が青くなる、というかもう白い。

 リュウガのお椀の中は金魚でいっぱいだ。


「リュウガは.........まだまだ余裕そうだな」


 結局リュウガは金魚14匹まですくった。

 屋台のおっちゃんは燃え尽きて白くなった。 

いつも読んで下さりありがとうございます。


感想欄にも気になる点などありましたらどんどん書き込んで下さい。割と自分の頭の中で考えていたことと、実際に書いた内容がズレてることが多いので指摘していただければ調整可能な範囲で随時書き直して行きたいと思います。

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