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地底の魔物達

 


「はぁ........戻れるかな...........」


 しばらくすると俺はぼんやりと明るい洞窟へと降り立っていた。

 穴を落ちている途中で何らかの魔法を掛けられたのか穴そのものに何らかの魔法が掛けられていたらしく、何事もなく底に降り立ったので死を覚悟していたのになんだか拍子抜けしてしまった。


 地竜に関しては降りてから戦闘になるかと思っていたが何故か普通に地面に叩きつけられて死んでいた。

 『人間しか生きて通さない』とかそういう類の穴だったんだろうか。

 とりあえず地竜の死体はアイテムボックスに回収しておいた。

 鑑定をかけてみたらそれなりに使えそうだった(主に食料とか)。


 地底の洞窟はコケやキノコの様な形の発光する植物のおかげで十分に明るい。

 真っ暗な穴を落ちている間に『夜目』というスキルを手に入れたがあまり必要無さそうだ。

 先程の穴での体験から普通に登って戻ることは『聖力』の光の壁を足場にして何度か試してみたが何回やっても見えない何かに身体を掴まれて地面に引きずり戻され出来そうになかったので、まずは洞窟を探索してみることにしてその場から移動を始めた。

 昔から動じない性格ではあったが、自分でも呆れるくらい冷静でいられるものだと思う。

 普通だったらこんなの発狂するよなぁ、なんて思いながら洞窟の中を歩いた。





 しばらく歩くと魔物を発見した。

 一匹だけではないので岩場に隠れて様子を窺う。

 鳥っぽい魔物が一匹で三匹の狼っぽい魔物と対峙している。

 鳥っぽい魔物はニワトリの様な身体にインコのそれを大きくしたようなクチバシ。

 頭には触角のような三本のトサカが立っている。

 全体的に見て、古代生物のディアトリマに似てなくもない。


 一方の狼っぽい魔物は胴体は普通の狼なのだが頭の形がキモかった。

 口が四方向に開くようになっていてかなりグロいことになっている。


 しばらく様子見合っていた四匹だったが狼の方が二匹、鳥に向かって襲いかかる。

 が、鳥は華麗なバックステップを決めて攻撃を避けると目にも止まらぬ速さで二度蹴り?(速すぎてよく見えなかった)を繰り出すと二匹の狼は吹っ飛んで壁に当たると動かなくなる。

 残った狼は文字通り尻尾を丸めて逃げ出し、鳥は勝利の雄叫びを上げた。


「ピヨォォォオオォォォォ!!!!!」

 (ブッフォォォ!!!)


 思わず吹き出しそうになってしまった。

 危ない危ない。

 まさか鳴き声が完全にヒヨコだったとは、完全に不意打ちだった。


 しかし、どうやって俺はあの魔物達を倒そう?

 確実に此処の魔物は上に居た奴等よりも強い、聖力で動きを封じられるだろうか?

 手持ちのナイフは通用するだろうか?

 ........まぁ、今は保留にしておこう。

 おそらく此処もダンジョンなのだから、何か有用なアイテムや武器が手にはいるかもしれない。

 そう考えて俺は更に下の層へと進んでいった。










「グア..........?」


 何かを察知したのかキョロキョロと周りを見回すエルダーマッドウルフ。

 この個体はまだ群れから出たばかりの若い個体の様で、一匹で行動している。

 ヒクヒクと鼻を動かし周りを探る。


――バチンッ!


「ギャウン!??」


 エルダーマッドウルフの右前脚に半透明のトラバサミが突然噛みついた。

 それと同時に光の壁が現れてエルダーマッドウルフの身体を押さえつける。


「...........!!」


「ギャウッ!グギャァァアッ!」


 押さえつけられて身動きの取れなくなったエルダーマッドウルフに、音を立てずに忍び寄ってきた黒い影が覆い被さりその首のあたりを滅多刺しにした。


―――ザシュッ!ザクッ!グチャッ!ドスッ!


「.............」


「ガッ!ギャァァ!アギャ.........ァ.......」


 ボトリ、と首から先を落としたエルダーマッドウルフ。

 死体の断面からはドクドクと血が流れ続けている。


「ふぅ........緊張した」


 その死体に跨がっていたタツキは顔に付いた血をぐいっ、と拭う。

 ステータスを見れば、またレベルが上がっていた。


 あれから三日程たっただろうか。

 進んだ階層は三層、予想していた通りにいくら探してもその層に上へと登る通路は存在しなかったので下へと降りて最下層にあるという転移陣で戻ることを選択したのだ。

 新しい武器も手に入れた、ミスリルで作られたロングソードだ。

 二層目で白骨化していた冒険者の遺体が持っていた物だ。

 正直墓場泥棒みたいで罪悪感が凄いが、今持っている武器の中で唯一この洞窟の魔物に傷を与えられた(と、言ってもまだ狼だけだが)ので大事に使わせて貰うことにした。

 聖力での足止めは一体につき三秒が限界(これもまだ狼にしか試せていないが)だったが、五回連続で足止めし続ければ、ミスリルソードで倒しきれるので特に問題は起きていない。

 すぐに壊されてしまうのでMP消費が尋常じゃなく、体力的にかなりきつかったが。

 それに、狼を倒している内にレベルもかなり上がった。




 日向達樹 人族 16才 ♂

 天職:勇者・軽業師

 Lv.84

 HP2074/2074

 MP3120/3120

 攻撃3200

 防御2960

 速度3700

 魔術3500

 スキル:聖力Lv.8 拳法Lv.9 鑑定Lv.- 痛覚耐性Lv.MAX 夜目Lv.-

 剣術Lv.7 暗器術Lv.8 隠密Lv.MAX 身体強化Lv.6 アクロバットLv.-

 称号:勇者・■■■の担い手




 聖力は14枚までの壁が同時発動可能になり、遂に回復魔法も使えるようになった。

 レーザーも撃てるようになってレベルを上げた甲斐があるというものだ。

 新しく覚えたスキルも中々重宝している。

 

 隠密:気配を遮断する。レベルを最大まで上げると完全に透明になることが出来るようになる。


 身体強化:全身の能力を上昇させる。レベルを上げるほど効果は高くなる。


 アクロバット:スキル『身体強化』の効果を更に上げる。


 特に隠密は使えば魔物に見つかることはまず無い。戦っている魔物の正面から逃げることさえ楽々である。


「そろそろ狼以外の魔物にも挑戦してみようか.....。」


 狼(一応エルダーマッドウルフという名前がある)ばかり狩っていても自分の実力は確かめられないだろう。

 と、いうことで俺は例の鳥の魔物を捜しに行くことにした。




 (お、いたいた。)


 例の鳥は5メートルはあろうかという巨大な熊と対峙していた。鳥の高さは140センチ程。

  (流石にこれは勝てないだろうなぁ.......)


 そう思い、その場を離れようとしたその時。

 クマが後ずさった。


 (あれ?今のってもしかしてフラグ.......?!)


「ピヨォォオオォオォォォォ!!!!!」


 鳥の魔物は例のヒヨコ声を発しながらクマとの距離を縮地を使って一瞬で詰める!!


「グォォオオオォォォ!!!」


 クマはいきなり目の前に現れた鳥に一瞬驚きを見せるがすぐに右腕に風を纏わせて爪を振り下ろす。

 鳥はその攻撃を斜めにジャンプして避け、更に振り下ろして伸びきった腕に向けて空中で回転し踵落としを打ち込む!


 ――――ゴシャッ


「グオォォオオォォォ!!??」


 クマの右腕が一撃で吹き飛んだ。

 折れたのではなく当たったところから切れて飛んでいったのだ。

 なんて脚力だろう、あんなの喰らったら一溜まりもないぞ。

 鳥は攻撃の手を緩めることなく『空』を蹴って移動するとクマの全身の至る所に攻撃を加えて行き、最後に後ろに回り込むと無防備な背中に向けて


「ピヨォオォッッ!!!」


 重い蹴りを一撃!!

 おそらく今の一撃でクマの内蔵はズタズタになった事だろう。

 クマは全身から血を噴き出しながら力を失い倒れた。


「ピヨオオォォォォォォォォォォォ!!!!!」


 勝利の雄叫び!!

 トリ強っっ!!!

 思わず鳥に向けて鑑定をかけると




 エンシェントキングコルックス ♂ 

 ランク:B+

 Lv.142

 HP4700/4700

 MP1100/1100

 攻撃3700

 防御2900

 速度3900

 魔術1600

 スキル:身体強化Lv.8 脚撃Lv.MAX 天歩Lv.-

 称号:脚撃王



 脚撃王:足技を極めた者に贈られる称号。スキル『脚撃』による攻撃のダメージは全て防御を無視する。



 (コレ勝てんのかな..........。)


 トリが熊や狼を差し置いて生態系の頂点だった件。

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