ミコト、壊れる。
病ンデレ?注意。
この作品まともなヒロインが居ない気がするのは気のせい?
『決まったぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!
第四回戦は、帝国の騎士団長グラド・レクセウス選手の勝利だあぁぁぁぁぁぁっ!!!』
「「「「「うおおおおおお!!!!」」」」」
「すげぇ!見たかよあの剣術!」
「速すぎだろぉ!あのアレクが全く歯が立たなかったぜ!」
「流石グラドだぁぁっ!」
「団長様こっち向いてぇぇっ!!」
「パパぁ!グラドさんかっこいいね!!僕もあんな強くなりたい!」
「優勝はウランフかグラドか変態か.......楽しみだなぁ!」
『流石は帝国最強と呼ばれるだけの実力者なのである。それにしても圧倒的な戦いが続いているな。今回の参加者はレベルが高いのである』
満足そうな顔でふんふんと頷くゴリゴリ。
アレク様あっさりやられ過ぎた。
『今日の予定はここまでですぅっ!
明日の予定はこっちらぁっ!!』
バッ!とカミラちゃんの指さす先にはいつものパネルが。
準決勝
第一回戦 ミコト VS ウランフ
第二回戦 グラド VS マスクドM
『本戦を圧倒的な力で勝ち抜いた四人によるトーナメント!
準決勝一回戦はバーサク美少女ミコト対怪力イケメンウランフだぁぁぁぁぁっ!!』
「「「「うおおおおおおっ!!」」」」
「ミコトちゃんがんばれええええ!!」
「ウランフ様すきいいいいいっ!!」
「儂は三角筋が好きじゃあああっっ!!!」
「俺はバキバキに割れた腹筋がすきだぁぁ!!」
「ミコトちゃん、俺をぶんなぐってぇぇぇ!!」
『そしてぇぇぇぇ、二回戦はっ!
帝国最強のイケメン騎士グラド・レクセウス対ミジンコ狂いの化け物魔導師マスクドMだぁぁぁぁっ!!!』
「グラド様ぁ、かっこよすぎるのぉぉぉぉ!」
「俺はマスクドMに賭けるぞぉぉぉぉっ!!」
「ミジンコ万歳!マスクドM万歳!!」
「グラドぉっ!絶対勝てえぇぇぇぇっ!」
「ミジンコしゅごいのぉぉぉぉぉぉ!!」
会場が割れんばかりの歓声に包まれて、大会二日目は幕を閉じたのだった。
「――と、いうわけですよ」
「ふーん、って嫁ってどういう事ですかっ!?
タツキ君は何してるんですか!?意味が分かりませんっ!」
ダンッ!とテーブルに両手を叩きつけて大声を出すミコト。
あれからタツキの話をするために、ミラ達は会場の外にある喫茶店まで来ていたのだ。
「な、なんだなんだ?」
「本人不在の修羅場って.....」
「恋人の浮気がバレて片方が片方に詰め寄ってるって感じか?」
「ってあの子、大会に出てたミコトって子じゃないか?」
「うわぁ.......浮気した男、大変だなぁ。絶対死ぬ奴じゃん........」
周りの客達も美少女達のただ事じゃない雰囲気に、なんだ?なんだ?とちらちらと様子を窺ってくる。
別に浮気してた訳じゃないんですけどねぇ........。
「そんな訳でタツキの嫁(仮)のミラだよ!」
「同じく嫁(仮)のブランシュです」
「タツキの、嫁(仮)、に、なりたいけど.............子供扱いしか、されなくて、不満な、クロエ.............」
「そ、そんな..........」
三人の再びの自己紹介にプルプルと震えだしてしまうミコト。
クロエの自己紹介だけなんか不憫だ.........。
「ま、まあそんな事があったならタツキも少しは変わるだろうなぁ。ほら、なんかミラさん?とか押し強かったみたいだし?」
「もちろん!押しに押しまくって陥落させたからね!」
「お、おう」
リュウガがミコトのフォローをしようとしたが、ミラの勢いにたじたじになる。
ミコトほどでは無いが、リュウガも相当動揺しているみたいだ。
「へぇ~、あのタツキ君がハーレムねぇ.........。
ボクっ娘にクール美少女、ケモロリ........。
くふっ、くふふふっ、良いネタになりそう........」
「ゆ、ユイカもなぁ.......少し落ち着かせてくれよ......」
「ユイカさん!またあんな破廉恥な絵を描くつもりですか!」
「え?ダメ?」
「はぁ.........」
ユイカは良いネタを見つけると偶に暴走する。
暴走するとどうなるのか?
具体的には破廉恥な二次絵を描く。描きまくる。
しかもプロ並みに上手いので、もう目も当てられないモノになってしまうのだ。
「アレを.....こうして.....くふっ、くふふふふっ」
「ホント、落ち着けって.........」
残念な状態になってしまった彼女に悲しい目を向けるリュウガ。
オタク同士でもレベルが違うのだよ!レベルが!
「あ、あの、ミコトちゃん?」
「タツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクンタツキクン」
「あ、あのイオリちゃん?ミコトちゃんが........」
「あー、ミラさん。完全にキャパオーバーしちゃって壊れたみたいだから少しほっとけば直るよ」
「大丈夫なのかなぁ........僕は心配だよ........?」
壊れてしまったミコトに先程のリュウガの様な悲しい目を向けるミラとイオリ。
ずっと想い続けて、一度は死んだと思って、傷つきながらも捜し続けていた人にもうすぐ再会出来ると思ったら嫁が二人と妹?が増えてましたなんて意味不明すぎる。
ミコトはあまりの急展開に壊れてしまったのだ。
「うふふふ、くんくん..........。
タツキ君好きぃ♡好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きぃ♡」
「ひええぇぇぇ...........完全に病んでるよぉ......」
「はぁ、いつの間に持ち出してたのやら.......」
挙げ句の果てに、ミコトはいつ持ち出したのかわからないが、タツキがクリンドルの王城の部屋に残してきた物の中にあったハンカチを懐から取り出して、くんくん♡ぺろぺろ♡ぷはぁ♡とやり始めた。
ミラも流石にこれにはドン引きである。
「そういえばタツキはまだ来ないのか?一応連絡して呼んでるんだろ?」
リュウガは未だに姿を見せない親友が気になる様で、少しそわそわしている。
「ええ、連絡はしましたし返事も来たのですが今少し取り込み中の様で、もう少しすれば来ると思いますよ」
「そうか!それなら良かった。それにしても生きてたとは.........流石はタツキだな! それにあんなに強くなりやがって!!
まあ、あのミジンコマスクは意味不明だったが.......」
親友が生きていてくれたのは嬉しい。
だが、あの奇妙な格好と謎の奇声を発しながら戦うのは如何なものか。
ミラ曰く、闘技大会を頭のおかしいミジンコ男に優勝させることで台無しにしてやりたくてやった、とのことだった。
だが、久々の再会がミジンコマスクだとは.............。
「はぁ.......タイミング悪いよなぁ.......」
「ん?ミジンコ、可愛いよ?」
「ハハハ、クロエちゃんは割と平気なんだねぇ」
魂の抜けた顔で笑うリュウガ。
それをクロエは不思議そうな顔で眺めている。
「流石にあのミジンコマスクはキモかったからなぁ」
「おい、誰のミジンコマスクがキモかっただと?
ミジンコに謝れ! ミジンコはキモカワなんだ!」
「うっわ!?いきなりどっから出てきたお前!??」
「た、タツキ君!?」
「ちょっ!いきなりびっくりさせないでよ!」
「タツキ君、ハァハァ........」
突然現れたタツキに気付かなかったミコト以外のリュウガ達三人はひっくり返りそうになる。
「お、おう。お前ってこんなミジンコ好きだったっけ?」
「冗談だよ。久しぶりだな、リュウガ」
「冗談に聞こえなかったんだが.........。
ああ、久し振りだな、タツキ。本当にお前なんだな..........ずっと捜してたんだぜ?」
「中々会いに行けなくてごめん。
正直どう会いに行くべきか悩んでたところだったんだ」
タツキは流石に自分が普通に会いに行っても、自分は死んだと思われていて、偽者としか思われないと思っていた。
だからどうすれば本物の自分だとハッキリさせて会いに行けるか考えていたのだ。
「こうして会えて正解だったと思うよ」
「まあ、お前が生きてくれててなによりだったよ」
「ところでリュウガ。アレはどういう状態なんだ?」
リュウガと話していたタツキはスッと壊れているミコトを指さす。
「タツキ君の匂いがするのぉ..........くんくん♡ハァハァ♡スンスン...........ぷはぁ♡
タツキくんタツキくんタツキくんタツキくん♡
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きぃ♡」
「..............」
「.................」
「..........リュウガ?」
「.................」
リュウガに話しかけるが、反応が無い。
哀しい目だ................。
「..........あの、ミコト?大丈夫か?」
「あはははぁ、何かタツキ君みたいな声がするぅ。
まだ来てないはずなのに幻聴かなぁ?うふふふ」
「おーい、ミコト?本当にだいじょ――」
「ひゃああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
やっとタツキが来ていることに気づいたミコトは顔を真っ青にしたかと思うと今度は真っ赤になってテーブルに突っ伏す。
「あ.........えと..........?」
「見られた.......聞かれた.......幻滅されるぅぅ........」
我に返ったミコトはあまりの羞恥と後悔にぷるぷると震える。
イオリも哀しそうな目でミコトを見ている...........。
ヤバいなこれ、フォローしなきゃ。
「だ、大丈夫だよ。そんなんで嫌いになったりなんてしないって」
「本当に?」
耳まで赤くなったミコトが少し顔を上げて、上目遣いで此方を見上げる。
「だって、俺のこと心配してくれてただけなんだろ?そんなんで嫌いになったりなんてしないよ」
「ホントに? 私がタツキ君のハンカチだけじゃなくて制服も筆記用具もタツキ君の持ち物全部回収して毎日愛用してたって聞いても嫌いになったりしない? 」
「.......えっ?」
「くんくんぺろぺろすぅすぅはぁはぁして毎日のようにタツキ君成分を補給してたって言っても引いたりしない?」
「えっ、あっ、ああ!うん、引いたりなんてしないよ!」
おぉぅ、ナンテコッタ。
あの頃の純粋で正に清純派ヒロインといった感じのミコトは何処へ?
いや、流石にどうしてこうなったのか見当は付いているから余計に申し訳ない。
「ホントの、ホントに?」
半分涙目になったミコトが懇願するように迫ってくる。
「あ、ああ、嫌ったりなんてするわけないよ。
それに.......好かれてたのは悪い気はしないっていうか..........うん、嬉しかったよ」
「ホント!?」
ミコトの顔がぱぁっ!と嬉しそうになる。
普通にしてれば凄い可愛いと思うんだけどなぁ.......。
本当になんかもう、申し訳ない。
「じゃ、じゃあ私と付き合ってくれる?」
「えっ、それは..........その...........」
ミラとブランシュにちらっと視線を向けると、ミコトの顔は哀しそうになる。
ごめん.......俺、今ハーレムクズ野郎なんだ..........。
「ごめん、俺はミコトの気持ちに答えられない。二人を幸せにするって約束したんだ。だから――」
「タツキ?」
「み、ミラさん?」
「少し、ミコトちゃんと話しても良いかな?」
ミラはそう言うとさっ、とミコトの手を取って席を離れていく。
しばらくすると二人は戻ってきた。
そして、
「タツキ、受け入れよう」
「...........えっ?」
「だからミコトもタツキの嫁候補にするの。僕が許可したから」
「え、でもミラとブランシュはそれでいいのか?
ミコトだってこんな形でなんて納得いかないんじゃ」
「僕はね、タツキの事を好きな女の子が悲しむのを見たくないんだ。僕もタツキの事が大好きだからね」
「ミラ........ミコト.............」
正直な所、ハーレムへの抵抗は不自然と言って良いぐらいに無くなっている。
だが、ミコトはそれで良いのかと思ってしまう。
ミコトが随分前から自分のことが好きだったのは理解したが、自分自身どうしても軽い様に感じてしまうのだ。
「タツキ君。わ、私は、タツキ君が好きです.....。タツキ君がどう思ってるのかはわからないけど、私は、た、タツキ君と一緒に..........い、居れれば――」
そこまで言ってミコトは真っ赤になった顔を下に向けて固まってしまう。
「タツキ。タツキの事だからきっと『こんな関係は軽すぎる』とか『ミコトちゃんはこんなんでいいのか』なんて考えてるでしょ?
でも、ミコトちゃんは真剣なんだよ。タツキの事が本当に好きだからここまで捜してきたんじゃないの?」
「それは........そうだけど........」
ぐっ、と唇を噛みしめて思考を巡らす。
自分は、どうするべきなんだろう?
また、逃げるのか..........?
「............ミコト」
「...........はい」
じっ、と彼女の目を見つめて向き合う。
ミコトの事は友人としては好きだ。
一緒に居て楽しいし気の置けない仲だったと思っている。
だから、彼女に正面から向き合う。
それが、今俺に出来る精一杯の誠意。
「俺は、まだミコトの事が好きになるかなんてわからない。だけど友人としてのミコトは好きだった。だから、ミコト。俺で良いのなら宜しく頼む」
「タツキ、くん.........」
感極まったミコトの目にじわっと涙が滲み始める。
「おおー、何か良く分かんないけど纏まったみたいだな」
「ちょっとリュウガ!空気読みなさいよ!」
ゴンッ!とユイカに頭を殴られるリュウガ。
あたたたた.......と頭を押さえる彼に場の空気も緩み始めた。
「うん.........!これからまた宜しくね、タツキ君!絶対好きになって貰うからね!!」
「ああ、此方こそ、宜しく!」
満面の笑みで宣言したミコト。
あの頃の四人に戻ることの出来た瞬間だった。
そして、また新たな関係へと変わっていく瞬間でもあった。




