VS イルセス・マーティン
『だ、第二回戦はヤヴィン伯爵家の長男、ウランフ・ヤヴィンの勝利だぁぁぁぁっっ!!!!!』
控え室に備え付けてある魔道具のスピーカーから二回戦の結果が聞こえてくる。
この控え室に居た参加者『マスクドM』は、遂に出番が来たと立ち上がって伸びをした。
現在のステータスはこんな感じだ。
日向達樹 人族? 16才 ♂
天職:勇者・軽業師
Lv.51
HP630000/630000
MP596000/596000
攻撃174000
防御137000
速度165000
魔術160000
スキル:全属性魔法Lv.MAX 聖力Lv.MAX 拳法Lv.MAX アクロバットLv.- 身体強化Lv.MAX 暗殺術の極意Lv.- 天歩Lv.- 剣術Lv.MAX 鑑定Lv.- 痛覚耐性Lv.MAX 絵画Lv.6
称号:勇者・神装具の担い手・エースキラー・邪神殺し
邪神殺し:邪神クラスの敵を倒した者に送られる称号。邪神に連なるモノや邪神に通常時の5倍のダメージを与える。
ミラの封印が二段階解かれた事により『神装具の担い手』の効果があったのか、かなりのステータス上昇が見られた。
よほどの相手ではなければこのステータスのタツキには掠り傷を与えることさえ困難だろう。
――コンコン
ノックがされるとドアが開かれて、会場のスタッフが顔を出した。
「『マスクドM』さん、次の試合ですので入場口までお願いします」
「うむ、我もすぐに向かう」
小さく礼をしてスタッフが去っていった後、タツキは『アイテムボックス』から『軍刀・不知火』を取り出して装備する。
「っと、それじゃあ行きますか」
ミジンコこそ至高マントを翻し、眩しい光差し込む選手入場口へと歩みを進めるタツキ。
「あのキザ貴族野郎、ミジンコの本気を見せてやる」
静かに怒るタツキのオーラに合わせるようにマントがゆらゆらと怪しく揺らめいた。
『三回戦はマーティン侯爵家のイルセス・マーティン選手対、ミジンコキ○ガイのダークホース、マスクドM選手の対戦となりますっ!!
ゴリゴリさんっ!見所を教えて下さいっっ!』
『うむ、この戦いの見所といえばやはりイルセス選手がどう攻めるかだろうな。本来なら前衛対後衛だとどうしても速さとパワーのある前衛の方に軍配が上がるだろう。だが、マスクドM選手は短時間であれだけの強力な魔法を連発出来る一流の中でも一流の魔導師。こうなるとどうしても遠距離攻撃の乏しいイルセス選手では戦いにくくなってしまうからな。そこをどう克服して戦っていくかが見所であろう』
『お、おおー...........。珍しくゴリゴリさんが筋肉筋肉言わないまともな解説でした。これは期待が持てそうですねぇ』
『ちなみに俺の見たところではマスクドM選手もなかなかに良い筋肉をしている筈ですぞ』
『おっ?それはちょっと見てみたいですねぇ。
マスクの下がイケメンならなお良しですぅ。
おっ、準備が出来たみたいですねぇ!』
司会と解説の2人が話している内にフィールドの修復も終わったようだ。
先程まで居た魔導師や鍛冶師、錬成師のスタッフ達がもう出て行っている。
『それでは!両選手の入場でーーーーっす!!!!!』
バッと右手を挙げてポーズを取るカミラ。
それと同時に二つの選手入場口から『イルセス・マーティン』と『マスクドM』が入ってくる。
フィールドに立ち、向かい合う二人。
「オイ、そのふざけた格好は俺を馬鹿にしてるのか!」
「んん? 何を言っているのかよくわからないな?
君とは初対面の筈だが?」
マスクドMを指さして怒るイルセスにしらばっくれてみせるタツキ。
「くっ、もういい! おい、タツキ・ヒューガ!
俺はここで必ずおまえに勝つ!覚悟しろ!!!」
『おおおーーっ!?これは因縁の対決勃発かーっ!??なんだか燃えてきましたよーーっ!!!』
『熱い展開は嫌いじゃないぞ!』
「「「おおおおおおっっ!!!!」」」
イルセスとマスクドMの男と男の戦いに盛り上がる観衆と解説席の二人。
『それでは選手のお二人の準備は宜しいですか?
では............第三回戦、始めッッッ!!!』
――ドォォォォォォン!!!
「先手必勝!『一閃』!!」
開始の合図と共にイルセスは凄まじい速度で斬りかかってくる。
だが我らがミジンコ男にそんな攻撃は効く訳が無いのだ。
「遅いぞ、『聖鎧』」
カッ!とマスクドMの身体の表面に光り輝く膜が現れてイルセスの攻撃を完全に防ぎきる。
「どうした?全く効いてないぞ?」
「なっ!はっ!?」
自信の渾身の一撃をあっさりと防がれたイルセスは動揺の色を露わにする。
もちろんマスクドMがそれを見逃すわけが無く、イルセスに向かって力を抑えた蹴りを入れる。
「がふっ!??」
脇腹に蹴りを喰らったイルセスはフィールドの反対側まで吹っ飛ばされたが、何とか持ちこたえる。
「どうしたぴぎょ?お前の力はそんなものか?」
「ぐっ、かはっ。く、クソ、てめぇっ」
ふらつきながら立ち上がったイルセスはマスクドMに向けて憎々しげな視線を送るが、当の本人はどこ吹く風。
鼻歌交じりに自分の周囲に色々な色のミジンコを作り出す。
「次は全属性ミジンコだぴぎょ。生き残って見せろよ?」
「ぐぅ、クソッ!」
ヒュンヒュンとイルセスに向かって飛来する様々な色のミジンコ達(○○弾シリーズ)。
彼は鍛え抜かれたその身のこなしで、何とかその全てを避けきって見せた。
だが、完全に避けきったとは言えないようで、何発かミジンコが掠ってダメージを負っている。
「くっ!『ヒール』!」
「ぴぎょぉ、回復が使えたのか。ならもう少し手加減しなくてもよかろう?」
「はっ?なっ!!?」
未だに余裕を見せるマスクドMにイルセスは戦慄する。
(この男、自分とほぼ変わらない歳だろうに一体どんな鍛え方をしてどんな修羅場を潜り抜けてきたんだ!?)
手も足も出ない。
全く歯が立たない。
「キョーッキョッキョッキョ!『砂塵槍撃』!!!!」
砂の槍の代わりに砂のハリナガミジンコが三本現れる。
針の部分をイルセスに向けたミジンコ達は一気に襲いかかる。
「くそぉぉぉっ!!『空斬』!!!」
イルセスは剣術を使ってミジンコを一匹破壊したが、残った二匹がイルセスへと突き刺さる。
「ぐぅぅっ!」
口から血を吐いて倒れるイルセス。
ミジンコ男はそれを悠々と見下すと再び杖を掲げる。
「ぴぎょっ!『風霊結界』!」
「っ!お前!?」
「『影縫い』、さてこれでゆっくり話が出来るな」
『風霊結界』によって完全に周りとの音を遮断。
そして、『影縫い』によってイルセスの動きを完全に封じたタツキは彼に話しかける。
「お前は、ブランシュの事を本気で好きなわけでもないだろ?何故そんなに必死になる?」
「五月蝿い!ひ、 一目惚れだよ、悪いか! っぐふッ!」
「だからって他人から奪ってまでとか普通考えるか!」
「だっ! し、仕方ないだろ、ぼ、ボボ僕の初恋だったんだ!」
「............は?」
突然のキザ男のピュアな発言に面食らうタツキ。
何言ってんだ?こいつ。という顔になる。
「お前.......頭大丈夫か?」
「がはっ、う、五月蝿い平民の癖に調子に乗るな!」
「はぁ.......まあ、一つ言っとく。ブランシュは俺が守るって約束したんだ。この役目は誰にも渡せない」
「く.......そ.....、なんで、お前.....みたい........な」
「新しい恋でも探せ。わかったな?『火焔槍』」
流石に魔術160000の全力の火力は半端じゃない。
ジュッ、と音を立ててイルセスの身体は一瞬にして消滅した。
「終わったな、解除」
マスクドMに戻ったタツキは『風霊結界』を解除すると拳を天に突き上げる。
「ピギョオオオオオォォォォォォォォ!!!!」
「「「「「ウオオオオオオオオオッッ!!!!」」」」」
『決まったぁぁぁぁ!!!
一撃!一撃ですっっ!! 一瞬で蒸発しましたっ!
三回戦はぁっ圧倒的な実力差にてマスクドM選手の勝利ですっ!!!』
『うーむ、イルセス選手が手も足も出なかったのである。先ほどのウランフ選手もかなりの実力者であったが、これは確実に今大会の優勝候補筆頭であるなぁ』
マスクドMの圧倒的なまでの力に盛り上がる観客達、そんな中でマスクドMは相変わらず「デェェェェン」と変なポーズをとったりしている。
「変な格好だけど流石はタツキって感じだったねぇ!」
「ええ、達樹様は絶対に優勝しますからね!」
「ご主人、凄い」
「ひゃあぁ、あれならクリンドルの『六星騎士』にも普通に入れちゃいそうですねぇ」
観客席の四人も手を叩いて喜ぶ。
と、そこに。
「ねぇ!今タツキって言ったよね!?」
「ふぇっ!?ってミコトさん!??」
「ちょっと話を聞かせて貰っても良いかな?良いよね!?」
「へっ?ひゃっ!?ひゃいっ!」
突然現れたミコトの剣幕に圧されるミラ。
男と男の戦いが終わった直後、ここに女と女の戦いが勃発しそうになっていた。




