本戦開幕
「って、事があってさ」
「ふーん、やっぱりここのお姫様も苦労してるね」
タツキは帰ってきた後、ミラ達にアオイ姫と話したことを伝えていた。
「でさ、タツキはアオイ姫もお嫁さんにするつもりなの?」
ミラが的外れな答えを出す。
「なんでそうなるよ.....」
「えっ?覚悟ってそういう意味かと..........」
「違うよ、王族を辞めるかって話だ」
タツキが考えていたのは、アオイ姫を王族や貴族達のしがらみから自由にするために、彼女を平民にすることだった。
だが、そうなれば今度は彼女の美貌を求めて更に多くの男達が寄ってくるだろう。
王族だったときとは違い、彼女を護るものは無い。
それが彼女にとっていいことなのか悪いことなのかは不明だ。
だが、彼女がそれでも望むのであれば、大会で優勝した時の願いをそうするべきだと考えていたのだ。
「案外、タツキも酷いこと言うね」
「それしか方法は無かったんだよ。俺は馬鹿だからこれぐらいしか思いつかないし。
でも、今回の話で確信したよ」
「へっ?......確信って?」
ミラが不思議そうな顔をするが、まだここでは教えないでおこう。
種明かしは全てが済んでからだ。
「アオイ姫は........どうするのでしょうか......」
ブランシュがアオイ姫について考え込む。
同じように自由を縛られていた身とあって、ブランシュは彼女に何か思うところがあるらしい。
「今それを考えててもしょうがないさ。
答えを出すのは彼女の役目だからな」
ここで俺たちがいくら話して、考えていても意味は無い。
彼女の人生は彼女が選ぶ。
今、彼女はその岐路に立っているのだ。
「タツキ、抱っこ、して?」
「ああ、いいよ」
状況を理解したクロエが抱っこを要求してくる。
彼女を座ったまま抱えると、耳のあたりをモフモフし始める。
「ん、ふみゅ........」
「ふふ、クロエちゃんを見てると癒されますね」
膝の上でモフモフされるクロエ見て、ブランシュが柔らかい笑みを見せる。
なんだかしんみりしてしまった空気がクロエのおかげで和らいだ感じだ。
「さて、今日はもう夕食にして寝るとしようか」
「そうだねぇ、僕今日はハンバーグが食べたい!」
「よしっ!それじゃあ皆で食べに行こうか!」
タツキ達はさっと準備をするとツバキの街へと出て行った。
次の日。
『さぁーーーっ!!!!
大会も二日目に入りました!本日からは本戦となりますっ、準備はいいかーーーッッ!??』
「「「「「うおおおおおおおおっ!!!!!!!」」」」」
ノリの良い観客達から歓声が上がる。
本格的なバトルはここからとあって、観客達のボルテージも始まる前から上がりっぱなしだ。
『さあさあ!それでは予選より上がってきた選手達のトーナメントはこちらぁ!!!!』
バッ!とカミラが上空を指さす。
するとそこには巨大な半透明のパネルが浮かんでおり、本戦のトーナメント表が表示されていた。
『流石、本戦ともなれば猛者揃いなのであるな。筋肉も皆素晴らしい物を持っているのである』
トーナメント表はこんな所だ。
一回戦 ミコトVSロイ
二回戦 ウランフVSナーシャ
三回戦 イルセスVSマスクドM
四回戦 グラドVSアレクセス
今日行われるのは、この四戦だ。
いずれも厳しい予選を勝ち抜いてきた猛者ばかり。
『一回戦はBブロックのダークホースの魔導師ミコト選手対Dブロックを勝ち抜いた賢者ロイ選手ですか。
どちらも同じ戦闘型の魔導師、どんな戦いになるのか楽しみですねぇ!』
『うむ、二人とも素晴らしい魔法の腕前なのである。俺の筋肉達も早く戦いを見たいのかピクピク疼いているのである』
『き、きんにくたち........?まあ、それはスルーしときましょうか............。
おっ!準備が出来たみたいですよ!
それでは一回戦、選手入場ーーっ!!!!!』
「「「「「うおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」
歓声と共に二つの選手入場口から一人ずつ選手が現れる。
「ほうほう........あの子がミコトちゃんですか........」
「むっ、結構な美人ですね」
「ん!黒髪、クロエとお揃い」
「ん~?例のライバルさんですか?」
観客席から入場してきたミコトをじっくりと観察する三人。
昨日、タツキから彼女の事を聞いていた三人は新しい嫁候補?に興味深々である。
コゼットも今日、ここに来たときに聞いていたので彼女達のおかしな行動にも落ち着いている。
『それでは本戦第一回戦を開始します!
準備は宜しいですか?では、始めッッ!!!!!』
―――ドォォォォォォン!!!!!
太鼓が叩かれて、戦闘開始の合図となる。
「はっ!!!」
「なっ!??」
開始と同時に『身体強化』をかけて間合いを詰めるミコト。
いきなりの接近戦にロイは一瞬防御が遅れる。
――ドガッッ!!!
防御に失敗したロイの腹に、ミコトの蹴りが深々とめり込む。
「が!?ぐふっ!」
『なんとーーーっっ!??
ミコト選手!予選とは打って変わって接近戦での勝負に切り替えたーーッッ!!!!!!
すごい!凄いスピードとパワーだっ!!!!』
蹴りを喰らったロイは吹っ飛ばされて場外スレスレまで飛んでいったが、なんとかギリギリで持ちこたえる。
「はぁはぁ、『轟炎鎮魂歌』!!!!」
「『氷弾蓮華』『大津波』」
ロイは火属性の上級魔法を放って体勢を持ち直す時間を稼ごうとしたが、ミコトの連続の魔法によって瞬時に相殺、攻撃される。
攻撃を力技にて通したミコトは更に自らに強化魔法を掛けると、ロイとの間合いを詰める。
「くっ、何なんだ!このバーサク女は!?」
「はぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!」
――ドッゴオオォォォォォォン!!!!
ロイは目の前に光魔法により光の壁を展開するが、ミコトのエンチャント盛り盛りのフルパワーに一撃で壁ごと粉砕、またも場外へと吹っ飛ばされた。
「ま、まだっ!『水ほ――』」
「『流星』!!!」
場外を回避しようとしたロイに向けて、ミコトから直径1メートル程の光の塊が放たれる。
――ゴシャッ!!!!ベキベキベキッ!!!!
流星が直撃したロイから鳴ってはいけない音が鳴った。
『う、おおおぉぉ。容赦ないですねぇ.........』
『とても良いパンチだったのである』
ロイはそのまま地面に墜落していく途中で消滅し、転送される。
ミコトの圧倒的勝利だった。
『一回戦!勝者はBブロックのダークホース!
バーサク魔導師のミコトだぁぁぁぁっっ!!!!!』
「「「「「うおおおおおおおっ!!!!!!!」」」」」
会場中から歓声が上がる。
ミコトは観客席に向けて笑顔で手を振る。
さっきまで対戦相手をぶん殴り続けていたとは思えない、良い笑顔だった。
『うへぇぇぇぇ........。滅茶苦茶良い笑顔ですよぉ。
本気で怖くなってきましたぁ』
『殺伐とした闘いの中でも笑顔を忘れない。良い心掛けなのである』
本気でガクブルし始めたカミラちゃんと満足そうに頷いているゴリゴリ。
その頃観客席では。
「ミコトちゃんかぁ........強いね......」
「ん、黒髪さらさら」
「クロエちゃんは観察してる所が私達とは違いますね」
「色が被る、つまりライバル」
「ライバルの定義ってなんだっけ~?」
相変わらずゆるーい感じのミラ達だった。
一章、新章に関して改稿を行う予定なのでしばらくお休みします。




