閑話・人族の男
かなり短め。
「何?ラウラプテュティカ様の力の残滓が見つかっただと!!?」
魔族の男は部屋に入ってきた諜報員の男に報告を受けていた。
「はっ。しかし復活すると同時にミスリル級冒険者と出会ってしまいまして、弱体化していたあの御方は負けて完全に消滅してしまいました」
「くそっ.......もう一足早く見つけられていれば」
拳を握りしめてギリッと歯ぎしりする男。
だが、まだ諦めるわけにはいかない。
「他の至高の神々の残滓は見つかったのか?」
「はっ。いずれも捜索中ですが『ウジャト神』の残滓についての情報は入ってきました。こちらをご覧下さい」
そう言うと男はピッと一枚の紙を出す。
「ふむ...............。これは、分かった。すぐに此方への人員を増やそう。絶対に残滓を手に入れるのだ」
「はっ!!了解しました!!!」
サッ、と敬礼の姿勢をとる諜報員の男。
「よし、もう下がっていいぞ」
「はっ!!!」
そう言うと諜報員の男は部屋を静かに出て行った。
「至高の神々は此度の戦いで決着を付けようとしていらっしゃる...........。絶対に至高のあの方々の同胞を取り戻さなければ................」
男は地図を開く。
地図には何カ所か印が付けられておりその一部には×マークもつけられている。
そして、その地図に男はあらたな印を書き込む。
「大魔闘大会まであと二週間程、ここまでに何か新たな成果をあげなければ.......」
新魔王四人を選定する『大魔闘大会』。
そこで新たな戦果を発表することが出来れば、国民達は更に勢いづき戦意の高揚に繋がるだろう。
至高の神々の為にも彼等は『邪神の復活』という成果をあげなければならないのだ。
「いや.........それに拘ることも無いか........。
蛮族共に気付かれずに奴等を減らすことが出来ればそれもまた戦果と成りうる」
彼は作戦を新しく考え始める。
「そういえば、あの人族の男の持っていた魔物が残っていたな。
まあ『不死の王』クラスの大物は残っていないが..............。
まあ、上手く使わせて貰うとしようか」
人族の男。
狂気の錬金術師。
長きに渡って魔族を屠り続けた男。
そしてその矛先を同族にまで向けた男。
「『ラウラプテュティカ』様を復活させた男か........。ふん、蛮族のくせに中々やるではないか。死ぬには惜しい奴だったな」
生きていれば利用してやったのに、と悔しがる魔族の男。
諜報員の一人から連絡が入る。
連絡用の魔道具を取り、会話を行う。
「ふむ.........そうか.....すぐに向かう........」
連絡が終わると彼は翡翠色のマントをバッと羽織る。
「蛮族共が、叩き潰してやる」
彼は魔族以外の全ての人類への憎悪をたぎらせると、指定されたエリアまで急ぐのだった。




