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ヤナギの街防衛戦のその後

戦闘狂が二匹


「.........で、いつからお前テイマーになったんだ?」


「いやぁ.........まさか俺もこの年でスキルが増えるとは.......」


 時刻は午後三時を過ぎた頃。

 あの大暴走があったのは昨日の事になる。


 タツキ達はギルドマスターの部屋に来ていた。


「ドマ殿ハ我等のような者達(せんとうきょう)ニトッテハコノ上無クスバラシイ主人(マスター)ナノデスヨ!!!」


「ああ.......成る程、納得した」


「はぁ.......父が戦闘狂でなんだか申し訳ない......」


 首にテイムモンスターの印としてギルドから配られるベルトを付けたジェネラルゾンビ『ゴドウィン』が誇らしそうに喋る。


 はぁ、と深い溜め息をつくエルザ。

 戦闘狂は父さん一人で充分だったとこぼす。

 隣で『サイズ調整』の能力で小さくなったドラゴンゾンビの『フォークス』が「同感だ」とでも言うようにキュ~と鳴いた。


「はぁ、これからまた苦労が増えそうだよ。今まで何度暴走しかけた父を止めてきたか..........」


「..........大変そうだな.....」


「憐れむぐらいなら私も嫁にして連れてってくれよぉぉぉぉぉ!!!!!」


「うわ、大丈夫かお前。判断能力低下しまくってるぞ」


「タツキの嫁が増えるのは構わないけど半端な気持ちでは来て欲しくないかなぁ?」


 半泣きでタツキの服にしがみついて「連れてってくれ」と懇願するエルザ。

 ストレスで精神が一時的に壊れてしまったようだ。

 ずりずりと落ちて床にへたり込むエルザ。

 ちらっとフォークスを方を見る。


「キュ~~.................」


「はぁ.......こいつの面倒もみてやれよ?フォークス」


「キュゥ」


 フォークスが居れば彼女の負担もある程度は減る?だろう。

 この中で一番しっかりしてそうなのフォークスだと思うしな。


「所で、今日は何なんだ?フラウ」


「うんうん、だんだん僕への接し方にも馴れてきたよね~。

 まあ、それは置いといて。今日はドマ達のテイムモンスターの話とブランシュちゃんに話があったんだよね。」


「ブランシュにか?」


 くるっとブランシュの方を見るが、彼女は「わからない」という顔をする。


「先に言っとくけどブランシュは誰にも渡さないからな?」


 他のパーティへの引き抜きだとかだったら許さないぞ?と威圧を飛ばす。


「うひぃ、怖っっ。そりゃわかってるって。まあ、そういうことじゃないんだけどね、ブランシュちゃんが東門の方で結構暴れたみたいで『凄腕の美少女召喚師』って有名になった訳よ」


「ほう、それで?」


「それが国の調査隊伝いに王様まで伝わっちゃったみたいでさぁ、一目見てみたいって言ってるんだよね」


「なんだその面倒事の予感プンプンの話は」


「も、申し訳ありませんタツキ様.....」


「ああもうブランシュも落ち込むな。俺の言うことをちゃんと守った結果だから大丈夫だって」


 落ち込むブランシュの頭を撫で撫でする。

 さらさらの髪が気持ちいい。


「んー、続き良いかな?」


「ああ、話してくれ」


「それでね、明後日には迎えが来て王都まで直行な訳だよ」


「王様フットワーク軽過ぎじゃないか?」


「アハハハ、そこは大臣も苦労してるみたいだよねぇ」


 そう言って苦笑いしてみせるフラウ。


「まあ無いだろうけどもしかしたらブランシュちゃんの見た目の事もあるし、貴族との縁談とかふっかけられるかもだけどあの王様軽いから普通に断っちゃって大丈夫だよ!!」


「なんだか王様にあったことがあるみたいな口振りだな」


「そりゃあ王様がまだ王子だった頃にお忍びで冒険者してたときのパーティメンバーだからね!!!」


 いや、フットワーク軽いにも程があるでしょ王様。

 大臣もこれは苦労するなぁ。


「..........初耳なんだが。まあ適当に会ってくれば良いだけなんだよな?」


「そうだね。普通に王都を楽しんでくると良いよ!!」


「そうだな、そうさせて貰おう。話はこんなんで終わりか?」


「うん、あとは特にないかな」


 話はこれで終わったようなのでタツキ達は部屋を後にした。


「うわぁ~ん、戦闘狂はもういやだぁぁぁぁ!!!」


「キュゥゥ~~~」


 エルザとフォークスの嘆く声が部屋に響く。

 ドマ達の旅はこれからまた色んな意味(主に戦闘面)で忙しくなりそうだ。










 東門方面。

 他の建物の殆どが倒壊している中、宿屋『風鈴邸』はほぼ無傷で残っていた。

 従業員の人曰く、この建物には防護結界が四重程掛けてあるらしい。

 とてもセ○ムだった。



 部屋に戻ったタツキ達。

 タツキは全員を集めるとある事を決定するために話し始めた。


「クロエ、話がある」


「ん.........何..............???」


 いつになく真剣な様子のタツキにクロエも顔を強ばらせる。


「ここから先、クロエがついてくるかついてこないか決め手欲しい。ついてこないなら奴隷契約も破棄する」


 タツキは彼女が嫌いなのではない。

 本音を言えばついてきて欲しいと思っている。

 でもクロエの人生を決めるのはクロエ自身。

 クロエがタツキの奴隷である間で一人で生きていけるだけの力は身につかせた。

 だからクロエにどうしたいか考えて欲しい。


「......クロエは.......要らない子...........?」


 クロエは目にじわっと涙を浮かべる。

 ミラとブランシュはクロエを慰めようとしたが、彼女の事を考えて踏みとどまる。


「そういうことが言いたいんじゃないんだ。ただ、ここから先の人生はクロエが選んで欲しい。今のクロエなら一人でももう充分に生きていける」


「ご主人様は........タツキは........クロエのことが嫌いになったの..............?」


「クロエのことは嫌いじゃない。でもずっと俺の言いなりになってたらクロエの為にならない。だから選んでくれ、ついてくるか、来な―――」 


「行く!!!!!」


 突然大声で宣言するクロエ。

 涙で顔をぐしゃぐしゃにしたまま彼女は喋り続ける。


「クロエはタツキ達の事が好きだもん!!!!こんな暖かい気持ちになった事だって久しぶりだったもん!!!!!」


「クロエ..........」


「クロエちゃん..........」


「でもクロエが要らない子だったらどうしようって.........ぐすっ......おもっ.......て............」


 そこまで言うとクロエは小さな身体を震わせて泣き始めてしまった。


「ごめん、クロエ。辛い気持ちにさせたな.....」


「うっ......ううっ..........ぐすっ..........」


 クロエをぎゅっと抱きしめる。

 腕の中で小さな身体がふるふると震えるのを感じる。

 クロエはそのままタツキの胸に顔を押しつけて泣き続ける。


「.........ごめんな。それと......クロエ」


「ぐすっ.........なぁ.....に..........?」


 顔を赤くしたクロエがきゅっとしがみついたまま此方を見上げてくる。

 そして、タツキは彼女の頭を優しく撫でながら言う。


「あの時はただの成り行きでの契約だった。

 だから、もう一度言わせてくれ」


「............ん」


「俺達は皆、クロエの事が大好きだ。だからクロエ、これからも一緒についてきてくれるか?」


「...........うん」


 クロエはそう言うと涙をふき取り、もう一度タツキに抱きつくと目を閉じる。


 とくん、とくん、と二人の心音が互いに聞こえてくる。


 ミラとブランシュはまるで親子の様なその光景に頬を緩め―――――


「ん........タツキ.....好き....。お嫁さん.........なる.........」


「えっ?」

「はっ?」

「うん?」


 三人揃って首を傾げる。


「クロエも........家族.........。タツキ.......好き。だから、結婚..........する」


「「「んんんんんんん???????」」」


「く、クロエちゃん?僕ちょっと意味がわからないよ?」


「まさかタツキ様はロリコン..........!!??」


「ちょっ!?待て待て!!!俺はノーマルだぞ!!!!」


「でも、一体いつの間に惚れて.......」


「はっ!?ミラ様!!もしや、あの訓練の時では!!??」


「教師と生徒の禁断の恋愛かい!!?しまった!!全く気が付かなかった!!!!」


「いやいや!!有り得ないでしょ!!!クロエが俺のこと好きになる要素アレの何処にあったの!???」


「じゃあ一体何処で............」





「んっ、ご主人.......すきぃ..........」


 幼女は爆弾発言を残してすやすやとそのまま眠ってしまった。

いつも読んで下さりありがとうございます。


日間『異世界転移/転生ランキング』ファンタジーにて64位に入っていました!!

書き始めた時はここまで伸びるとは思ってませんでした。

これからも本作品を宜しくお願いします!!

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