不死の王
こんな駄作にも......産みの苦しみがある........。
北門に到着したドマ達は信じられないものを見ていた。
あまりの恐怖に静まりかえっている北門。
「な.....何だよありゃあ........」
先ほどまで街を襲っていた下級アンデッド達は居なくなり替わりに20メートルはあろうかというアンデッドがリセントメントファラオに付き従う様に立っている。
リセントメントファラオの周りには他にも『リッチ』『ドラゴンゾンビ』『ジェネラルゾンビ』『スケルトンエンペラー』等、一体で街を壊滅させられる程の力を持った化け物達だ。
ゆっくりとリセントメントファラオが片腕を上げる。
その腕には禍々しい杖が握られており、荘厳なローブと相まって見る者に更なる恐怖を与える。
杖が輝き、化け物達は動き出した。
奴らは少しずつ街の戦力を削ぐよりも、すぐに壊滅させて『肉塊』にする事を選んだのだ。
「ガアアアアアアアアア!!!」
「殺セ!全テハ人類ノタメニ!!」
ドラゴンゾンビに騎乗したジェネラルゾンビが先鋒を勤める。
「くそがああああああ!!!」
絶叫しながらも二体のSランクモンスターを迎え撃つドマ。
彼の身体からは『限界突破』の銀色のオーラが噴き出し、その力を限界のその先へと持って行く。
「『身体強化付与』!『防御増強』!『速度増強』!!」
エルザもドマと自分に補助魔法を掛けて迎え撃つ。
「蹂躙セヨ!我二続ケ!!」
「「「「オオオオオオオ!!」」」」
進撃する化け物達。
流石のミスリルでも二人でその進撃を止めることは出来ず、リッチが何体かとスケルトンエンペラーが門を破壊する。
「『眷族召喚』!」
スケルトンエンペラーの特殊能力『眷族召喚』によって50体近い『スケルトンソルジャー』が現れる。
『スケルトンソルジャー』はランクC+のアンデッド系のモンスター。平均的な冒険者であれば4人で1体難なく倒せるが、流石に50体ものスケルトンソルジャーはきつい。
「迎え撃て!ミスリルにだけ戦わせるな!!」
フラウの怒号が冒険者達、衛兵達に渇を入れる。
「そうだ!ミスリルにだけ手柄を寄越すのか!?お前等!!」
「くそおおっ!もうどうにでもなれぇぇっっ!!」
「ぶっ潰してやれぇぇぇ!!」
金や白金ランクの冒険者達を筆頭にスケルトンソルジャー達を迎え撃つ。
所謂、上級冒険者と呼ばれる彼等にはC+の強さであるスケルトンソルジャーは歯が立たず、バラバラに崩されていく。
だが、スケルトンエンペラーの操る大剣に流石の上級冒険者達も中々手が出せず、特攻をしかけた者は真っ二つにされて死んでいく。
「まだだ!遠距離で潰せ!!」
タミルは数多の魔法主戦型の冒険者に混じってスケルトンエンペラーに魔法を打ち込む。
「ヌウウゥゥッッ!!コノ痛ミ、ドウシテクレヨウカ!!!」
魔導師達の集団へ突っ込んでいくスケルトンエンペラー。
「いいや、通さないよ!!」
振り下ろされた大剣を手甲で受け止めるフラウ。
フラウもまたギルドマスターになる前はミスリル級の冒険者であり武道家だった。
Sランクのモンスターであれば彼の力で倒しきることは可能だ。
だが、それは一対一ならの話。
「フラウさんの戦いの邪魔をさせるな!周りの雑魚を駆逐するぞ!」
仲間に指示を出し、鼓舞するタミル。
苦労性の冴えない冒険者だった彼はもう、そこには居なかった。
戦いの最中であっても冷静さを欠くことなく的確に指示を出す彼に、彼よりランクの高い冒険者達も指示に従い魔物を倒す。
彼を見たリッチの一体はグールを一匹召喚すると何処かへとやった。
北門、外壁での戦いは熾烈を極めた。
本来、人間であればあり得ないような力でパワーバトルを行うドマと不死者の竜騎士。
「うおおおおおおおおっっ!」
「ハアアアアァァァァッッ!!」
二人の剣がぶつかり合う度に凄まじい衝撃波が発生する。
「っ、はぁはぁ。お前本当にSランクかよ....。強すぎだろ.......」
「我モコレホドノ武人ト戦エテ嬉シイゾ。作戦ニハ従ワナケレバナランガナ」
「っは.....ハッハッハッ!確かに楽しいな!
これほどまでに熱くなるのは久しぶりだ!!」
「デハモウ一勝負イコウデハナイカ!!」
二人の剣がぶつかり合い、再び戦いが始まる。
一方のエルザも二体のリッチを相手にしていた。
「ふっ!はあああっっっ!!」
二体の魔法攻撃をかわす又は相殺しながら距離を詰めるエルザ。
「止めだ!!」
「殺ラセンッッ!!」
一体のリッチを追い詰めた所でもう一体が魔法を発動。
リッチの前に闇の壁が現れるが、
「それは既に知っている!『ブレイクスルー』!!」
父親と同じ技を使って闇の壁を攻略するエルザ。
更に、
「解放『轟炎戦斧』!!」
リッチに刺さったレイピアの先から炎の斧が現れ、その身を焼き尽くす。
これぞエルザをミスリルたらしめる力。
スキル『魔法固定』だ。このスキルは通常それについて学ぶことで手にはいるが、それでも手に入れられる者は少なく、持っている者の殆どは生まれつきだ。
能力は道具への魔法の封印・解放。
道具に特に定義は無く、石ころでも使うことが出来る。
今、エルザはレイピアに『轟炎戦斧』の魔法を封印しておいたものを解放して使ったのだ。
解放は頭の中で思うだけで充分で、発動までのタイムラグが一切無いのが強みとなっている。
「何ッッ!?貴様ァァッッ!」
「隙ありだ!アンデッドめ!!」
エルザは腰のポーチから石ころを三つ出して、リッチへと投げつける。
「解放!」
「ナッ!?ガッ――――――」
石ころからリッチへと向けて三種類の魔法が放たれる。
上級火魔法『極炎』、中級火魔法『爆炎』、中級水魔法『氷結槍』。
一瞬速く発動された『氷結槍』によって空気が冷やされ、二種類の火魔法によって爆発が起きる。
そしてそれを直に受けてしまったリッチは粉々に吹き飛んだ。
「父さんは――――ッッ!!」
リッチ達との戦いに勝利したエルザはドマの方を確認しようとして恐ろしいものを見てしまった。
―――ズシン、ズシン
巨大な身体を揺らし、街へと向かって歩いてくるアンデッド。
そしてその肩に乗り今にも街に向けて魔法を放とうとしているリセントメントファラオ。
「っ!魔導師隊!障壁を展開しろ!!」
「吹キ飛ベ。『流星豪雨』」
光属性上級魔法『流星豪雨』。
一撃一撃が凄まじい威力を誇る光の雨が街へと降り注ぐ。
障壁は間に合わない。
誰もが死を覚悟した、その時。
世界は一瞬光に包まれる。
そして、再びの世界で目にしたものは
街を守るように立つ、30メートルはあるかという巨人だった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
皆さんからの評価、ブクマ、感想はいつも本当にありがたいです。
2月も本作を宜しくお願いします!




