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波乱の予兆

「で、本日は一体どのようなご用件で?」



 今、俺達四人はギルドのギルドリーダー部屋に来ていた。

 俺に聞きたいことがあるらしい。


「単刀直入にいこう。君は100匹を越える数のゴブリンに遭遇したんだね??」


 なんだ、そのことなら良いだろう。

 どう倒したのかもある程度なら誤魔化せる。


「ええ、本当に遭遇しましたよ」


「!!ふむ、それなら色々対策をとらないとね........」


 口に手を当てて何か考え始めるフラウ。

 が、何か思い出したように顔を上げてこっちを見ると、


「そういえばどうやって100匹以上のゴブリンを倒したんだい?

 前から強いとは思ってたけど単騎でそれはかなりの猛者だよね」


「別に.....猛者ってほどじゃないですけど。

 運が良かったのもありますよ。

 ゴブリン達は此方に気付いていない様だったので魔力を練り込む時間が十分ありましたから」


「てことは範囲魔法で先制して倒した感じかな?

 魔法は何を使ったの?」


「風の上級魔法『大嵐(ハリケーン)』を使いました。その後数を減らしたゴブリンをナイフによる奇襲で殺しきりました」


 本当は静かに終わらせるために、使ったのは闇の上級魔法『黒炎』だ。

 だがこの魔法は使い手も少なく、範囲攻撃として使える者が存在するかも怪しいので、風魔法を鍛え続ければ誰でも覚えられる『大嵐』だと嘘をついたのだ。


「『大嵐』ねぇ、確かにあの魔法ならレベルの低いゴブリン程度、一掃できるだろうね。

 でもなんだか君の目は嘘っぽいなぁ~。

 本当はもっと強い魔法を使って一撃で全滅させたんじゃないの?」


 フラウは探るような目つきで嘘を的確に見抜いてくる。


「はぁ~、仕方ないですね。教えますよ。

 水の上級魔法『大津波(タイダルウェーブ)』を使いました。あれで討ち漏らしも殆ど無く倒しきりましたよ。

 フラウさんも手の内をここまで探ろうなんて人が悪いですね」


 ギルド内では相手の手の内を無理に聞き出すことは御法度だ。

 だからタツキは如何にもという風に、お手上げだとでも言うように両手をあげてひらひらと振ると、息をするように嘘をつく。

 一応この『大津波』は使い手の限られる魔法だ。

 水魔法をMAXまで上げても覚えられるかどうかといった魔法だが、『黒炎』ほど使い手が限られる魔法でもない。

 だからこの魔法を選んだわけだが完全に嘘八百である。

 ここで悪目立ちする訳にはいかないのだ。


「ふん、『大津波』。『大津波』ね。

 今は、そういうことにしといておこうか」


 納得しかねるような顔をしているが、どうやら引き下がってくれそうだ。

 フラウもそこの所は流石に理解しているからな。


「聞きたいことはここまでかな。あとはそうだね、以前話した事について教えてくれる気になったかい?」


「すみません、それは出来そうにないです。

 恐らく俺がこのことを広めれば多くの死人が出るでしょう。

 だから俺はこのことを話す気にはなれません。

 ですが、自ら調査に行く分には何も止めませんよ」


 あの裏ダンジョンについての俺の考えた結果はこれだ。

 『王の墓』には死人が沢山出るような()()がある。そのことだけ伝えてあとは自分達にどうするか決定させることにしたのだ。


「それが君の答えなんだね.....。

 君が言うんだから余程危険なものがあのダンジョンには眠っているんだろう?

 それだけ教えてくれただけ感謝するよ。」


 これに関してはフラウも納得したような顔をする。

 話のわかる人で助かった。


「この事を伝えるのは勝手ですが、ギルドから調査を促すのだけはやめて下さい。

 人によっては近づいただけで死んでしまうと思うので...........」


 ゴクリ、とフラウと部屋の隅に居る受付嬢が息を飲む。

 近づいただけで死ぬ魔物、トラップ、ダンジョンなんて前代未聞だ。

 だけど俺は嘘ついてはいない。

 人によってはあのダンジョンに入った時点で死亡するのだから、あまりすすめられるものでは無いのだ。


「忠告感謝するよ........。

 最後に伝えることがあるんだけど『新しいダンジョン』が今日から2日間出入り禁止になるんだ。

 昨日ある冒険者から報告があってね。そのことで国の調査団とギルドから派遣された金ランク以上の冒険者達で調査することになったんだ。

 だからしばらくはこの街でゆっくりするか、もう一つのダンジョンに潜ったりしててくれ。

 明後日にはまたダンジョンに入れるようになるはずだからね」


「情報ありがとうございます。今日そのダンジョンに行こうと思ってたので無駄足を踏まずに済みましたよ」


 俺たちはフラウにお礼を言うと部屋を出た。






 ギルドの一階にて。


「ねぇタツキ、今日どうする?あんまり良い依頼来てないしもう一つのダンジョンにでも行ってみる?」


「そうだなぁ、そっちの方も気になるしそうしようか」


 今日の予定についてミラと話していると、


「あっ!居ました!すいませーん、タツキさん達ですよね?ギルドリーダーが忘れていたことがあるそうなので受付まで来て下さい!」


「ん?何だろうな?」


「朝から.........忙しそう............」


「ギルド職員は給料は安定してるから人気だけどこういう所大変なんだよね~」


「ミラはやったことあるのか?」


「いやいや、昔の仲間の一人がやっててその話を聞いただけだよ」


 受付に行くと、ピンク色のウェーブのかかった髪の美女受付嬢『ミレディ』さんが待っていた。


「何度もすみません。

 ゴブリンの群れの討伐によりタツキ様達のランクが一段階上がることになりましたので、皆様はギルドカードを出してください」


 俺達四人はギルドカードを出す。

 戦ったのは俺だけだが、四人とものランクアップというのは恐らく『出来るだけ目立たないように』とのフラウの気遣いだろう。


 受付の奥を見るとフラウは降りてきていて、申し訳なさそうにヒラヒラと手を振ってきたのでこちらも軽く会釈しておいた。


「はい!こちらが皆様の新しいギルドカードになります。更に上を目指して頑張って下さいね!!」


「ありがとうございます。しばらくは此処に滞在するので宜しくお願いしますね」


 ニッコリと笑ってそう言った彼女にお礼を伝える。

 渡されたギルドカードは銅の色をしていて、光を当てると鈍く光る。


タツキ・ヒュウガ 男

ランク 銅


 表示もしっかりと変わっている。


「さてと、それじゃあもう一つのダンジョンに向かってみようか」


「ニコラスのとこ以外で初めてのダンジョンだね!!!楽しみ!!」


「気を引き締めて行きましょう」


「ん、役に立つように.....がんばる.......」




 そうして四人は『新月の迷宮』へと向かった。

読みにくかった話の行を整理して読みやすくしました。

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