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北の大地より

北のおはなしです

 北の大地。

 魔族の国家『大魔帝国』の首都『グラトニア』の王城の前に、大量の民衆が集められていた。


「なぁ、知ってるか?南の蛮族共が勇者召喚したらしいぜ?」

「かーっ、まじかよアイツ等。諦めわりぃなぁ」

「俺たちの魔王様が復活したんだ。今度こそ蛮族共は皆殺しにしてくれるって」

「おっ、そろそろみたいだぜ」


 国民の前に建つ、石造りの壇上の上に魔王の側近の一人が現れた。

 大魔帝国、魔導戦士団団長『魔導の極』ことゲヘナ・バーレイだ。


「皆の者!!!!よく聞くがいい!!!!!!!」


 拡声の魔法を使っているのか、その声はよく響く。


「先日の魔王様復活とほぼ同時に南の蛮族が勇者召喚を行った!!!!!!

 だが、われらが神民よ!!!喜びに身を震わせよ!!!!!

 遂に我らが至高の神々が完全なる復活を遂げられた!!!!!!!」


「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」」」」」」」」


 広場中に歓声が上がり、街中に響きわたる。


「更に我らが誇る魔導戦士団の精鋭が秘密裏に蛮族共に攻撃を行い、40人居る勇者の内の4人の抹殺に成功!!!!

 後に蛮族共と交戦し栄誉ある戦死を遂げた!!!!!!!」


「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」」」」」」」」


「すげぇ!!!!もう勇者四人も殺したのか!!!!!」

「流石は帝国軍人だな!!!!!我ら神民皆の誇りだ!!!!!」


「まずは彼らの偉業とその壮絶なる戦死に万雷の拍手を!!!!!!!」


「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」


 割れんばかりの拍手が会場を包み込む。

 彼らにとって戦死とは悲しむべき事では無い。むしろ、帝国の神民として非常に名誉な事であると信じているのだ。

 国中が彼らの偉業と戦死を祝福しているのだ。


「鎮まるがいい皆の者!!!!!!決戦は我らが魔王様の完全復活に合わせて三ヶ月後となっている!!!!

 そこで我らが至高の神々からありがたい神託が下った!!!!!!

 魔族の中で最強の四人を選び出せ、と!!!!!!!

 我らが至高の神々はその四人を新たな魔王として再臨させ、蛮族との戦いに終止符を打つおつもりだ!!!!!!!!」


 国民がごくりと息を飲む。


「そこで、我等が大魔帝国は北の大地全てより参加者を募り!!!!!!上位四人を選定する『大魔闘大会』を開催することにした!!!!!!!

 開催日時は今日から丁度一ヶ月後とする!!!!!!!!大会前日まで参加者は募り続けるから我こそは!という者はこぞって参加せよ!!!!!!!

 上位四名は帝国神民としてこれ以上ない栄誉を手にする事だろう!!!!!!!!」


「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」


 この日、一番の歓声が街中に響き渡った。


「本日より各街の領主宅にて受付を行う!!!!!!!!

 それでは諸君!!!!!!大会にて君たちの参加を待っているぞ!!!!!!!!!」


 勝ち抜ければ魔王になれる。

 帝国神民としてこれ以上無い栄誉だ。

 彼らが熱狂しないわけがない。








 そんな彼らを冷たい目で眺める者が居た。

 遥か上空。天空に居を構える彼らだ。

 

「ふっ、ゴミ虫共がいきがっているな。あの団長なんて中々の道化ぶりだとは思わないかね?」


 シャープな線の紫色の髪の男がワイングラスを片手に、赤毛で青い肌の美女に話しかける。


「はぁ、相変わらず嫌な趣味してるねアンタは」


 その女は呆れたように男にそう返す。


「ふん、お前には永遠にわからんだろうな。これぐらいわかり易いぐらいの狂気が安酒の肴には丁度良いんだ」


 男はワイングラスにワインをなみなみと注ぐとそれをぐいっと飲み干した。


「...........勇者共の様子はどうだ?」


「今のところ変わった様子は見られないね。死んだ四人ってのもたいして重要に思われてなかったんじゃねぇの?」


「まあ、特に動きが無いなら問題ない。俺達はあのゴミ虫共が四匹選定するのをここで待っていれば良い」


「まあ、そこは同感だけどよ。折角崇めてくれてる魔族共をゴミ虫呼ばわりたぁ、アンタも救えないね」


「フン................酒が不味くなる。さっさと消えろ」


「へいへい、さっさと消えますよ。ったくこれで序列一位なんだから面倒ったらありゃしないね」






 女は部屋を出てしばらく歩くと、独り溜め息をついた。


「はぁ、流石に1000年も仲間やってりゃ慣れるかと思ってたけどこりゃ無理だわ...........」


 そろそろ潮時かねー、と女は呟きながら暗い空へと飛び上がり、消えていくのだった。

いつも読んで下さり有り難う御座います。


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