表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/91

覚醒

「ん.............うぁ.....??」


――――もぞもぞ



 ベッドの中、寝ていた俺の隣に無かったはずの何かを感じ、目を覚ます。


「なんらぁ.......?これ........?」



――むにゅっ



「ひゃあんっ」


 柔らかい物が手に触る。

 

 サーッと血の気が引いていくのを感じる。


「こ.....これってまさか..........!!」


「んっ......んあぁぁ...タツキ様ぁぁ.............」


「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


 そこにいたのは一糸纏わぬ姿のブランシュだった。

 手に触っていたのは彼女の胸。

 思わず悲鳴を上げてベッドから転がり落ちてしまった。完全にDTの鏡である。


「んっ.............。すぅ....すぅ............」


「..............ブランシュさん?」


 どうやら寝ぼけて入り込んできた?ようだ。

 しかし、彼女に限って寝ぼけてそんな失敗をするとは思えな―――――



チラッ。



 部屋の扉。

 すり抜けて上半身だけ覗かせたニコラスがサムズアップしていた。



「.............」


「...............」


「.................」


「..........ぶふっ」



「おっさんてめえぇぇぇぇぇ!!!!!!!

 ブランシュに何吹き込みやがったあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


「ふほほほほほっ。儂はブランシュちゃんの背中を押してあげただけじゃよーー!!!!

 ふほっ、ふほほほほほっ!!!!」


 朝っぱらからDTと白髭じいさんの追いかけっこが始まる。

 騒がしいダンジョンの朝だった。




「ん..........あれ?タツキ様居ない..............。

 ............................結局手を出してくれませんでしたか」


 日向達樹はDTの鏡にして紳士の鏡であった。







 朝食に集まる三人。


「ったく。おっさんはどういう神経してやがんだよ」


「んんー?儂はブランシュ嬢の背中を押してあげただけじゃと言っとるじゃろー。

 全てはブランシュ嬢が望んだことじゃ。

 それと儂はおっさんじゃなくてニコラスじゃよ」


「まだ出会って数日もたってないんだが..........。

 んな訳あるかよ........。なぁ?ブランシュ?」


「タツキ様は私が幸せでいる事が幸せなのですよね??」


「確かにそう言ったけど..........」


「つまり、そう言うことです」


「訳が分からないよ!!!???」


 俺が悪いのか?

 俺が悪かったのか???

 据え膳食わぬは男の恥なのだろうか。

 解せぬ。


「はぁ、ブランシュはもっと自分を大切にしなさい。もし、地上に戻った後にブランシュに好きな人が出来たとしてその人が本当に良い人ならその時にそういうことをするんだ。間違っても俺みたいなのにはしちゃ駄目だよ」


「安心して下さい。私にとってタツキ様以上に大切な存在は未来永劫現れないと断言できるでしょう」


「はぁ........。きっとそうはならないから話半分に聞いておくよ」


 俺にブランシュは釣り合わない。

 俺はたいして顔も良くなければ、性格だって微妙の一言だ。

 なんでもできて、性格も優しくさらには超絶美少女のブランシュとはどう頑張ったってつり合えないんだ。

 だから俺は彼女を守ろう。いつか彼女の隣に立てる男が現れるまで。



「タツキ......お主自分を卑下し過ぎではないかのぅ?

 そんなことほざいとったら世界中の男共の殆どを敵にまわすぞい.......?もし、今儂に娘が居ったらくっつけようと色々と策を巡らしとるところじゃぞ?」


 何を言ってるんだか.........。

 もし俺がそんなんだったら苛めなんかされてなかっただろ..............全く...。


「ハァ、それはもういいですよ。

 ニコラスさんも勝手に頭の中を読まないで下さい。

 そんなことよりミラナディア様の調子はどうです?目は覚ましましたか?」


「ミラ嬢はまだ目を覚ましとらんな。

 よっぽど疲れとったんじゃろう。ぐっすり眠っておるよ。

 そうじゃな、朝食が終わったら二人とも様子見に行くかの?」

 

 ちらりとブランシュに目線をむけると、うんうんと頷いてくれた。


「そうですね、俺達も心配ですしそうしましょうか。」


 そういって食べるのに集中し始める。

 朝食は目玉焼きにベーコン、ハッシュドポテトとバターロール。

 朝ご飯も普通に美味しかった。


「美味かった。ごちそうさま」


「ごちそうさまでした」


「オソマツサマデシタ」


「!!!!!???」


「フフ、タツキドノハイツモオイシイトイッテクダサルノデ、コチラモツクリガイガアリマスヨ」


 いつの間にか子供ぐらいの背丈の頭にコック帽を乗せたゴーレムが隣に来ていた。


「......喋れたのか」


「オヤ?キヅイテイナカッタノデ??

 ココデハタライテイルゴーレムハミンナシャベレマスヨ?」


 機械的な声でゴーレムが喋る。

 まじか、喋ってる所なんて見たこと無いから喋れないもんだと思ってたよ。

 見た目だって口の付いていない簡単な作りだし。


「ああ、全然気付かなかったよ。いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとうな」


「イエイエ、ゴーレムタルモノシゴトハカンペキニコナシテアタリマエデスノデ」


 こいつ等.........見た目以外ならブランシュより優秀だったりするんじゃないか??










 ゴーレムとの会話が終わった後。

 俺たちはミラナディアの眠っている部屋までやってきた。

 ミラナディアはすうすうと寝息をたてて穏やかに眠っている。

 ふかふかのベッドと毛布にくるまれて気持ちよさそうだ。


「とりあえず、大丈夫そうだな」


 緩みきった寝顔を見て安心した。

 助け出した後も、弱りすぎて死んでしまったりしないかと内心そわそわしていたのだ。


「うっ............んんぅぅ...........」


「おっ。起きるか?」


 彼女の瞼がぴくぴくと動く。


 ゆっくりと彼女は目を開いて起きあがった。


「ここは.............」


「此処は儂の家じゃよ、ミラ嬢」


「ニコラスさん.........!!」


 彼女は最初上手く事態を飲み込めずにおろおろしていたが、ニコラスを見つけると安心しきった表情になった。

 そしてそれと同時に何か思い出したようでキョロキョロと周りを見渡し―――



「――――!!!!」


「ん?うおっ!?やめっ.........んむぅーーーーーっ!!!!!」


「たっ、タツキ様!!!!????」


 いきなり俺に飛びかかると顔を近づけ、俺は彼女に唇を奪われてしまった。


「んむっ、ちょっっ、やめっ、むぐぅ................」


 彼女は抱きついたまま止まることなくキスを続ける。

 舌が口のなかに押し込まれ、ぴちゃぴちゃと音をたてて彼女の舌と俺の舌が絡み合う。

 抱きついて来た彼女の華奢な体はとても柔らかく、力を入れたら壊れてしまいそうだ。

 なんだかいい香りもしてきて頭がぼうっとする。

 マズい、危険だ。

 訳が分からないけどこれはDTにはキツすぎる。

 色々と我慢するので精一杯だ。



「むっ、ぷはぁ.................」


 やっと口が離される。

 彼女は頬を赤く蒸気させてとろんとした目で此方を見つめてくる。


「いっ、一体何を..............??」


「本当に............本当に君なんだね...........?

 やっと会えた..............。もう二度と離さない、何処にも行かないで..................」


 ニコラスにちらりと視線をむけるが「知らない知らない」といった風にぶんぶんと首を振られてしまった。


「もう、何処にも行かないって約束してくれる?」


「ひゃ......ひゃい.........」


 彼女の熱に気圧されて思わず了承してしまう。


「でっ、でも俺は君の事は全然知らないし多分君の思ってる人とは別人だと思うんだけど.......」


 そういうと彼女は少し悲しそうな顔をして俯いたがすぐに顔を上げた。


「ううん、僕が待っていたのは君だよ。

 君が生まれる前から知っていたしずっと君の事を見ていた。

 君がその力を手に入れたときは運命だと確信した。君は僕の騎士で僕の王子様なんだよ、タツキ.........」


 潤んだ瞳を此方に向けてそう言う彼女は嘘を言っている様には感じられない。


 なんだか甘いムードがただよってきてニコラスが居づらそうにしている。

 放心状態だったブランシュもやっと気を取り戻した。


「い、一体これはどういうことですか!!!()()タツキ様にいきなりキっ、きききっ、キスをするなんて!

 説明して下さい!!!ミラナディア!!!!!」


 いつの間にか『私の』にされてしまった。

 俺ってブランシュのご主人様なんじゃなかったのかな??しかも神様を呼び捨て...........。

 とりあえず後で自分をシメとこ...........。



 ブランシュの質問にミラナディアが答える。


「ふふふ、それじゃあ説明させて貰うね。

 まず僕は封印されて居たよね?それで大幅に力の下がった僕は頑張って封印に小さな穴を空けたんだよ。

 そして、僕はいつか僕を助けに来てくれる勇者に力を与えようと思ったのさ。それでその穴から外に向けて放ったのがタツキ君の持つ二つ目の称号だよ」


「じゃあ俺はこの世界に召喚される前からその力を持ってたって事なのか?」


「ううん。この力が与えられるのは勇者召喚されたその瞬間。つまり、それまでは誰がその力を持つことになるかわかんなかったんだよね。まあ、君のことは色々あって召喚される前から知ってたけど........」


「なんで俺の事を知ってたんだ?それに産まれる前からって............」


 何故彼女は俺のことをずっと見ていたんだろう?

 それに産まれる前から知っていた?一体どういう事だろう。


「それについては.........私からは言わない方が良いかな。

 ニコラスは大体想像がついてるんじゃないかな?

 でもまあ、いつか君は君自身の力でそれに気付くはずだよ。それまではそういうものなんだと思っていれば良いよ」


 ここでは教えてはくれないか。まあいつかわかるって言うのならそうなんだろう。それなら急ぐこともない。


「でっ、ですがそれだけだときっ、キスした理由になっていません!ちゃんと説明して下さい!!!!」


 いつもの物静かな彼女は何処へ行ったのやら。

 顔を真っ赤にしてミラナディアに詰め寄るブランシュ。

 どんどん人間らしくなっていく彼女に思わず頬が緩んでしまう。


「なっ?!タツキ様も何とか言って下さい!!!ねぇ!!!もしかして満更でも無かった感じなんですか???そうなんですか?????初対面の相手にいきなりキスしてくるようなビッ○がいいんですか??????そうなんですね!!????」


「そういう事じゃないんだけどね........」


 こりゃ駄目だ。

 ブランシュは完全にキャパオーバーしてしまったらしい。

 彼女なら絶対に使わないような汚い言葉がポロッと出てしまっている。

 俺もあのキスは訳が分からなかったよ。

 もう息子を抑え込むのに必死でしたよ。

 なんか柔らかい唇とか女の子特有のいいにおいとか押しつけられる胸の感触とかもう色々と危なかった。

 あともう少し離れるのが遅くなってたら俺もう死んでたな。

 うん、死んでた。


「ビッ○って........僕はそんなんじゃないんだけどな..........。後で覚えておきなよ.......??

 まあ、キスをしたのには理由があるのさ。タツキ、ステータスを見てみて?」


 言われるがままにステータスを見る。







日向達樹 人族? 16才 ♂

天職:勇者・軽業師

Lv.23

HP260000/260000

MP320000/320000

攻撃88000

防御79000

速度94000

魔攻90000

スキル:全属性魔法Lv.6 聖力Lv.MAX 拳法Lv.MAX アクロバットLv.- 身体強化Lv.MAX 暗殺術の極意Lv.- 天歩Lv.- 剣術Lv.MAX

称号:勇者・神装具の担い手・エースキラー



神装具の担い手:女神との契約を完全な物にし、一段階の封印が解かれた。低級の神装具ならば本物と同レベルの贋作を作製、使用出来る。神装具の本来の力を引き出すことが出来るようになる。






「文字化けが........無くなってる.......」


「そう、それがさっきのキスの理由。

 君と僕は二人で一つの運命共同体..........。

 と、言っても片方が傷ついたらもう片方も、とかは無いけどね。僕の力が戻れば戻るほど君は強くなる。そして君が強くなればなるほど僕は以前にも増して強くなる。そういう契約を持った称号だよ。

 そしてデメリットが無い代わりに二人はどんな事があっても互いの半径1キロメートルから離れられない。いや、運命が書き換えられてそうさせるんだよ。神でさえあらがえない強い力でね」


 称号の正体はとんでもない力だった。

 しかし........彼女から離れられないとなると俺は天界?とやらで暮らすことになるのか?

 竜牙達に会えなくなることだけは避けたいが.......。


「ふふふ、君が思っているような事にはさせないし、しないさ。

 僕の力は分けられて封印されたって聞いているんだろ?だったら僕も君について行く。出来ればその旅の途中で封印を解きにいってくれたら嬉しいかな」


「それなら........良いよ。折角自由になったんだし、旅はしてみようと思ってたんだ」


 前から地上に戻った後に何をするかは考えていた。

 彼女がついてくるというのならそれで良いだろう。


「そうか.......その契約...........お前はタツキを選んだんじゃな....。たとえ称号が得られても神自身が納得しなければ破棄することも出来た筈じゃからのぅ」


「そうだね。まあさっきの理由だけじゃなかったってことかな?」


 ニコラスは何か知っていたらしい。

 問い詰めようとは思わないがきっとこの話は俺がいずれ自分で気付くことになるのだろう。

 ブランシュは納得しきれない顔をしているがこれ以上の事はもう聞けないだろうな。


 ミラナディアがブランシュに向き直る。


「さて。ブランシュちゃんって言ったかな?

 突然だけどタツキのお嫁さんは僕ってことでいいよね!!!!!これから宜しくね!!!!!」


「えっ!!??はっ??だっ、ダメですッッ!!!!私のタツキ様はミラナディア様と言えども渡せません!!!!!」


「えーー?タツキは君の夫じゃなくてご主人様でしょ??別に私がお嫁さんになったって問題ないよね?」


「ーーーーッッ!!!とっ、とにかく駄目なものは駄目です!!!!そんなの許しません!!!!!」


「じゃあ僕と一緒に二人でお嫁さんになれば問題解決だね!!!!神様もこの世界の人間と一緒で重婚オッケーだし私もタツキのそばに居られれば充分だから気にしないよ」


「なっ!!!!???そんな、私がタツキ様とけ、けけけ結婚なんて.............でもタツキ様が受け入れて下さるならそれも...........」


「あーーー、二人共。よくわかんないけど俺まだ結婚とかよくわかんないし出会ったばっかりなのにそんなこと考えらんないから無理だわ。ごめん」


「「えええっ!!!!!????」」


 そんな驚いた顔されても困る。

 二人ともまだ出会ったばっかりで本当に好意があるのかもわからない。

 それに俺もまだ彼女達が好きだとかいう感情は感じていない、そんなんで俺が受け入れたら誠意もへったくれも無いだろ。


 それだけじゃない。

 二人とも凄い美少女だ。

 十中八九町中に居れば男達から声をかけられるだろう。

 俺なんかよりもずっといい相手は沢山居るはずだ。

 その方が幸せになるだろうし俺もそれが良いと思う。


 だから二人の想いは受けられない。



「こんな美少女二人に迫られてそれを振るなんて........。もう僕は訳が分からないよ..........」


「...................タツキ様のヘタレ........」


「訳が分からないのはお前達だよ...............」


「ふん、こうなったら二人でタツキを惚れさせてやるからね!ブランシュ!!分かったね?!!」


「もちろんです!!!ミラナディア様!!!!絶対にタツキ様を惚れさせて骨抜きのヘロヘロにしてやりましょう!!!」


「うっ、うおおお..........。凄い気迫だねブランちゃん............。

 あ、二人とも僕の事は『ミラ』で良いよ。その方が短くて良いし自然だからね」


「お、おう」


「なんかよくわからんが纏まったようじゃの。

 ミラ嬢も起きたし、居間に戻るとするかのぅ」



 グッと両拳を握りしめて何やら燃えているブランシュ。

 ニコニコしながらベッドから降りて腕にしがみついてきたミラ。

 今日から騒がしい日々が続くことになりそうだと俺は溜息をついて苦笑した。

ミラがタツキを好きになった理由は後々わかりますが、まだまだ後になるかと思います。

色々と表現や文章構成、人物の心情等拙い所が目立つと思いますが、これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ