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勇者達の結束

 剣を打ち合う音や、魔法を放つ音が鳴り響く。


 此処は、クリンドル王国の兵士の訓練場。

 36人の勇者達と十数人の指南役の騎士達と魔導師、そしてアリア王女とレイル王子が訓練に参加していた。



「中々やるな!君!」


「レイル王子こそ、凄い強いじゃないですか!!」


「キャー!!レイル様がんばってーーっ!!!」

「光太君もすごい!!がんばれーーっ!!」


 そう、剣を打ち合い模擬戦を行っているのはこの国の第一王子、金髪イケメンのレイル王子と勇者達のリーダー役で聖剣の担い手、茶髪イケメンの遠藤光太だ。

 ギャラリーには騎士が何人かと大量の女子生徒が集まっている。


「どうだっっ!!?」


「はぁぁっ!!!まだですよ!レイル王子!!(どうだ命?かっこいい俺を見ているか!??)」


「ん?どうした?光太、気が散っているぞ!!!」


「って、うわっっ!!!」


 王子の剣先が尻餅をついて倒れた光太の喉元に突きつけられる。


「俺の勝ちだな。」


「くっそー、参りました!(くそっ!!負けてしまった無様な俺を見ないでくれ命!!!)」


 勿論どちらの光太もミコトは見ていない。

 離れたところで結花と一緒に指南役の魔導師について貰って魔法の練習をしているからだ。


「『水弾蓮華(アクアガトリング)』!!」


 無数の水弾が十数メートル先の的を粉々にする。

 この魔法は『応用魔法』と呼ばれる類の魔法だ。

 これは分類的には初級に位置している魔法ではあるが、初級魔法を完全に理解し尽くした上で使うことが出来るようになる魔法で、一週間や一ヶ月そこらの魔導師ではまず使うことは出来ない。


「凄いわ!ミコト!!こんなにはやく水の応用魔法を覚えるなんて貴女天才だわ!!!」


 ふわっとウェーブのかかった髪のお姉さんといった感じの指南役の魔導師の女性が歓声を上げた。


「いえ、まだまだです先生。私はもっと強くならないといけないんです」


「そうね、貴女は勇者だもの。普通の人の求める強さとは一線を隔すのは当然よね」


 ミコトはあの日居なくなってしまった彼の事を考える。

 洞窟の中で一人なんて大丈夫だろうか。

 モンスターは?

 食糧は?

 無能と呼ばれた彼が生きていくにはダンジョンの中は過酷すぎる。普通なら彼はとっくに死んでいると思ってあたりまえなのだ。

 でも、彼女は信じている。彼の生存を。彼の生還を。


「怖い顔してるわよ、ミコト」


「ごめん、ユイカ。ちょっと考えごとしてた」


 結花は優しい。

 あの日から高校にいた頃の彼の話をよくしてくれた。

 自分の心が折れるとは微塵も思っていないが、自分の知らない彼の話を聞くのは楽しかったし、彼がまた側にいるようにも感じられた。


「二週間後には王城を出ての自由行動が解禁になる。それまでに充分に強くなってタツキ君を捜しに行こう」


「もちろんだよミコト!絶対にタツキ君を見つけよう!!」


そこへ、今日も1人の例の邪魔者(残念イケメン)がやってきた。


「やあ!姫路さん!!二週間後から自由行動が解禁になるね!!!僕のパーティに入ってくれる気にはなってくれたかな!!!??」


「邪魔。ウザい。死ね。」


「辛辣だなぁ!!そんなこと言ったって本当は姫路さんも僕のパーティに入りたいんだろ??!!いいよ!特別に入れてあげよう!!いまなら竜牙くんと名森さんもはいっても良いとも!!!」


「穢らわしいから近寄らないでくれるかな??」


 ニッコリ笑ってそう言うが、目は笑っていない。

 ミコトは何度もやってきては自分のことを勧誘してくる光太に大分嫌気がさしてきて遂に普段使わないような汚い言葉で追い返すようにまでなってしまった。

 残念イケメンよ、責任を取って潔く切腹するがいい。


「グハッ!!で、でももうあんな奴の事なんか考えてたって意味ないだろ?アイツはとっくに死んだんだからちゃんと前を見るべきだ。君は過去ばかりに目を「遠藤君??」」


 ツカツカと歩いてきた東堂伊織が光太の話を遮る。


「委員長?何かな?僕は今姫路さんと――」


「さっきから聞いていればこれはどういう事かしら?姫路さんはしつこい貴方に随分と迷惑しているようだったけれど?何か弁明はあるのかしら」


「そ、それは姫路さんが日向君の死を受け止めようとしないから僕が「もういいわ」」


「貴方は大好きな姫路さんを自分のモノにしたいだけでしょう?

 日向君が死んで嬉しかったんじゃない?

 貴方のパーティの一人が言っていたのだけれど、貴方日向君が死んだことを聞いたときに顔を下に向けて悲しんでいるフリをしていたようだけれど口元は笑ってたらしいわね。

 それに貴方学校にいたときから日向君を目の敵にして色々と嫌がらせをしていたそうじゃない」


「なっ!!?ちがっ、お、俺はそんな事していない!!彼を苛めていたのはあの三人組だろ!!??

 それに僕は日向君の死を笑ったりなんてしていないよ!」


「ふん、何処まで本当なのかしらね?

 でも、一言だけ言っておくわ。貴方は顔は良いんでしょうけど日向君の足下にも及ばないわ。

 好きな女の子に振り向いて貰いたいなら内面から磨き直す事ね」


「ーーーーッッ!!くそっ!!」


 そう言って光太は離れていった。


「委員長...........」


「別にお礼を言われる事なんてしてないわ。あんなことされてて見過ごせなかっただけよ」


「ううん、委員長。ありがとう」


「ふぅ、お礼はいらなかったんだけどね。

 私からも話があったのよ」


「??何かな、教えて?」


「私も日向君を捜すのを手伝わせてくれないかしら。」


 ミコトは一瞬びくっとした。


 (まさか、ライバル出現か!!??全力でぶっ潰す!!!!)


 ミコトの心を読みとったユイカが苦笑する。


「別に貴女が思っているみたいに彼に惚れたわけじゃないわ。

 ただ、あの時の借りを返したいだけ。

 正直私が流れ弾なんて受けなければ彼は居なくならなかったかもしれないもの...........」


「委員長........なんか邪推してゴメン.........」


「フフフ、どうかしら?本当は好きなのに嘘をついているかもしれないわよ??」


「ちょっ!!??委員長??!!」


「アハハハ!!別に彼のことは嫌いでもないけど好きでもないわ!...................................()はね......」


「はぁ~~。冗談きついって委員長。って今、最後何か言わなかった?」


「姫路さん、委員長じゃなくて伊織でいいわ」


「えっ!?あっ、うん!!じゃあ私もミコトでいいよ!

 宜しくね!イオリ!!」


「ええ!宜しく頼むわ、ミコト!!」


 ぐっと握手を交わす二人。

 この時タツキを捜しに行くパーティはイオリを加えて四人になった!!!



「うーーーん、さっきから私蚊帳の外じゃない?」


「まぁ、今のは話の流れから仕方ないんじゃないか?」


 少し離れて、寂しそうな顔のユイカと楽しそうな顔のリュウガが並んでいたが、二人はすぐにミコト達の所まで行くと談笑を始めたのだった。

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