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白銀の賢者

二章はじまるよ。

――ザ―――ザザ――――


 壊れたテレビの様にノイズの入り続ける視界。

 いや、これは夢?


 (何処か.........懐かしい..................?)


 走馬灯の様に駆けめぐる映像。


『僕は戻ってきた』


 声が聞こえる。

 何処かで聞いたことのある様な声。


『僕は君で君は僕』


 意味の分からないことを言う。

 俺は声を出そうとするけれど何故か声が出ない。


『だけど気にすることは無いよ。君は君であって僕じゃないから』


 お前は何なんだ?


『運命は君を掴んで逃がさない』


 一方的に話し続ける誰かの声。


『こうして運命は再び繋がった』


『それが僕の選んだ道だから』


『出来るなら君にはこの世界を救って欲しい』


『でも、これから先を決めるのは君であって僕ではない』


 次々に現れる何かの声。

 一言一言が別々の場所から聞こえてくる。


 沸き上がるように。

 頭の中に響いてくるように。


『時は来た』






 『『『『目覚めよ』』』』





―――――――――――――――――――――――――





 ―――――眩しい。



 目を開けるとそこは真っ白な部屋だった。

 いや、部屋だと認識したもののそれは部屋には見えない。

 どこまでも白の地平が広がり終わりが見えない。どこまでも白い空間が広がっていた。






 ポツン、と。






 すぐ近くに白いテーブルと二脚の椅子があり、その一つに長く白い髭の老人が座って手招きをしている。


「まぁ、座りなさい。少年よ。」


 一瞬警戒したが、ゆったりとした口調で喋る老人からは敵意は全く感じられない。


 ゆっくりと椅子に近づき、座る。


「ホッホッホッ。見知らぬ老人がいきなり現れたら警戒するのは当たり前じゃ。気にせんでええ。」


 ホッホッと笑って老人は楽になるように言う。


「此処は一体何処なんだ?貴方は何者なんだ?」


「気が急くのも仕方ないがまぁ、まずはこれを言わんとのぅ。」


 少し間が空いて。


「ダンジョン踏破おめでとう。君が1000年目にして初めての到達者じゃ。」


「えっと......つまり俺はまだ生きてるって事でいいんでしょうか?」


「もちろんじゃよ少年。あの場所まで来た者を死なせる訳が無かろう。」


「えっ?でも俺は死ねって言われたんですけど.......」


「そりゃあ試してみただけの話じゃろうな。それにあの場所では死んでも直ぐに生き返るようになっておる。生き返り次第このダンジョンに入った記憶は消してから地上に戻すがのぅ。」


「そう.......だったんですか........。あの広場の外に居た人達はどうにかならなかったんですか?」


「うむ、それは儂の管理外の事であるからのぅ、流石に出来んかったわい。生き返らせるというには下準備が色々と必要なのじゃよ。それにあの広場まで来れる人間なら国に戻っても『英雄』ぐらいにはなれるじゃろうしな。」


 どうやら俺はあそこで死んでも大丈夫だったらしい。

 まぁ今となっては後の祭りだし、生きてて良かったと思っている。

 生きていなければここで色々と話を聞くこともできなかっただろう。


「所でなんですけど俺はなんで此処にいるんでしょうか?確か気を失って倒れた筈なんですけど.......。」


「うむ、それには儂の正体が関係しておる。そうじゃな、自己紹介じゃ。儂の名前はニコラス・クリンドル。千年前に『白銀の賢者』として勇者と共に勇魔大戦を戦ったクリンドル国王にして、今は精霊王となっておる老いぼれじゃ。」


「なっ...........!?」


 驚きが音となって口からこぼれる。

 千年前に死んだ筈の国王がダンジョンに墓を作ったどころかダンジョンにお家を作ってまだ生きてましたなんて驚く他無い。


「そ、それが今の俺が此処に居ることに関係していると........?」


「そうじゃ、今のお主は現在進行形で気絶して眠っとる。それだけじゃのうてな、お主の体は儂が到達者のお主に力を与えたことで進化をしておる。」


 いきなりとんでもない事を言われた。

 進化?

 人間ってそんな簡単に進化するのだろうか?

 進化して見た目が変わったりしないだろうか?

 もし見た目が変わってしまったら竜牙達に再会したときに気付いて貰えないかもしれない。


「お主が心配しているようなことにはならんよ。進化しても姿は全くかわらん。只中身が変わるだけじゃ。つまりは生物としてさらなる高みへとのぼるための進化じゃな。」


「人間じゃ......なくなるってことでしょうか.......。」


「ホッホッホッ。そこまで意気消沈することでもあるまい。別に人間を辞める訳じゃのうてな、上位なる存在になるための下準備と考えておれ。実際儂も精霊王にはなったが人間だった頃と体が強くなったこと以外たいして変わらん。」


 相変わらず白髭の老人、もとい精霊王ニコラスはゆったりとした調子で話す。


「つまりはな。此処は気絶しているお主の精神の在るところ。お主の心の中にある世界じゃということじゃ。儂はそこにお邪魔させて貰っているだけに過ぎん。」


「じゃあ、俺は今まで通りの暮らしが出来るって事なんですね。」


「そうじゃな。目が覚めた後は変化した体に少し慣らせば十分に今まで通りに暮らせるじゃろう。安心しておるがよい。」


「良かった..................。」


 心の底から良かったと思いため息が出た。

 張り詰まった緊張の糸がほどけて楽になった。


「ホッホッ、楽になって落ち着いたようじゃの。それでええ。目が覚めたらまた見知らぬ場所に戸惑うじゃろうが儂もいるから安心しておれ。」


「そうですか、ありがとうございます。」


「礼を言われる事でもないんじゃがのぅ..........実際、進化の秘術を使ってお主を気絶させたのは儂じゃからな?」


「うえっ、そうだったんですか?力を与えたって言ってたけどそれで気絶するとは............。」


「申し訳ないのぅ、でもそれにも理由があったんじゃよ...........。」


 今まで元気だったニコラスが少し静かになる。


「ニコラス王..........」


「儂はもうヒトの王では無い。友人に話しかける調子で頼めるかの?儂もそのほうが良い。」


「わかりました。よろしく、ニコラス。」


「そうじゃの。それがええ、それがええ。」


 満足そうな顔をするニコラス。

 だが、何処か寂しいような雰囲気が抜けないのは気のせいだろうか。


「そろそろ目が覚めるようじゃな。続きは起きて、夕食を食べてからにしようかのぅ。ホッホッホッ。」


「ええ、では目が覚めた後も宜しくお願いします。」


「ホッホッ、敬語が抜けないのぅ。」


 ニコッと笑うニコラス。

 断じて親父ギャグ等ではない。

 気づいたらなってただけだ。

 寒い親父ギャグなんて認めん。

 そんなくだらないことを考えていたら目の前がだんだんと暗くなりはじめた。



 目が覚めるまで、もう少しだ。

どうでしたでしょうか?新キャラおじいちゃんのニコラスでした。



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