よくあるクラス転移
日向達樹はいわゆる日陰者だ。
中学一年の時に苛めを受けていた同級生の少女を庇ったことが原因で苛めをしていたグループに目を付けられてしまったことから始まり、中高一貫であったため高校二年の今まで目立たない様に過ごしてきた。
「よう、タツキ!昨日の『ダンあり』観たかよ?中々の胸アツ展開だったよな!」
今、話しかけてきたのは俺が苛められるようになっても変わらずに接してくれていた貴重な友人の一人『神崎竜牙』だ。
身長は178㎝で黒髪のショート、いかつい感じで割とイケメンだと思う。
彼は高二になってから彼女経由でアニメに目覚め、絶賛ヲタクライフ満喫中である。
以前の彼を知っている俺からすると色々と残念なことにはなってしまったが。
「そうそう!主人公がヒロインを庇って飛び出すシーンなんて王道展開過ぎてむしろ新鮮だったよね!」
そしてもう一人、今話に入ってきたのが先程紹介した竜牙の彼女で『名森結花』だ。
身長は160㎝ぐらいで茶色の髪を肩の辺りまでのばしている。
ゆるふわ系の美少女で彼女が竜牙と付き合い始めたときは学年中の彼女を狙っていた男子が発狂したとかしてないとか。
彼女と知り合ったのは中学二年の頃で竜牙ほど長い付き合いではないが今ではそれなりに気の置けない友人になっている。
竜牙と揃って良くも悪くも裏表の無い明るい性格で俺は二人に精神的な面で非常に助けられた。
是非とも幸せになって欲しいカップルだ。
俺への苛めが減ったのも二人の存在があったこともあるだろう。
昔想像していたような高校生活には程遠いが三日に一度くらいの頻度である苛めグループの嫌がらせを除けば幸せな日々。
もうすぐHRが、始まる。さっきまでの三人にもう一人を加えたいつもの四人で朝の時間ギリギリまで雑談をする。
昨日も、今日も、そして明日も。
高校生活が終わるまでずっと続くと思っていた。
そう。この時までは。
時刻は8時13分。
あと二分もすれば朝のHRが始まる時間だった。
「がっ!??っッあ?!」
突然頭を激痛が襲い視界がブレる。
(な、にが.......ッッ!?)
意識が切れる直前、竜牙達も何か苦しそうにしていたが、何か言葉を発する間もなく目の前は真っ暗になった。
そして深い闇に意識が沈んでいくのを感じた。
(眩しい)
ゆっくりと意識を覚醒させる。
窓から差す陽光に目を覚ました俺が周りを見ると同じように教室に居た生徒達が起き上がるところだった。
立ち上がって周りを確認する。
(中世のお城みたいだけど........?)
魔法陣の様なものが描かれた大理石の床。
ホールの様な広い部屋の脇に並ぶ何人もの甲冑の騎士。
(まさかこれって....)
そう思っていた時だった。
「勇者様!!どうかこの世界を救って頂けませんか!!!」
二人の騎士に挟まれて立っていた金髪碧眼の美少女が俺達に向かってそう言った。