装備
さて、零とやって来ましたキラーストリート。此処は人間界からの人間も来るメイン街…って話は前したかな。
そして、ここの街の特産品は何と言っても武器と防具。その代金が支給されたので、買いに来たのだ。
ただし、ここでの武器と防具の手に入れ方はちっとばかり他の村とは違うが。
さて、まずはキラーストリート最高の店舗武具卸屋本店。これは、全国各地にある武器屋、と言うものの総本山でそこで選ばれる武器と防具は一生物に成る。なにしろ、腕前に応じて武器が進化するとか。
その店のキャッチコピーは一人一振。意味は一人の人間には一つの武器しかいらない、と言う意味らしい。
そして、店内に入る。事前に予約を取っていてくれたからスッと入れたが、本来は十年待ちとからしい。
店長もそれだけの人材にあって見たくなったらしく、今日入れる事になった。
店に入ると、そこには武器などは一本も並んでおらず、ただそこに二振りの棒があるだけ。
そして、カウンターに、一人、髭の長いどこか異様な雰囲気のご老人が座っている。
「おや…これはL級冒険者という事も頷ける…精鋭秘密兵の軍隊よりももっと大きな気を感じる…」
「隣の方も、変わった気迫だ…まるで目的のためなら地獄まで引きずり込みそうな…」
「おや、失礼。私の名は鍛冶屋一閃と申します。本日は、武器と防具をお求め、という事で」
「ええ。それで、我々はなにをすれば」
「ふむ、地位に奢らず良い人間性じゃ…さて、こちらの棒を持つ。それだけで貴方にぴったりの武器を選んで見せよう。」
後ろのふた振りの棒を我々に持たせる。すると、その棒はどんどん重みを増したり、硬くなったり、柔らかくなったり、ウニョウニョと生きているような感触が伝わる。
そして、動きが止まる。
「では、こちらへ。」
その棒切れを手渡すと、そのお爺さんは膨大な魔力をその棒に注ぎ込む。何分経っただろうか。そのお爺さんは魔力薬を飲み続けながら、俺が手渡した棒に魔力を送り続ける。
その場を埋め尽くすような魔力は丁度一時間程で収まり、お爺さんは疲労困憊といった様子だった。
「これを…なかなかに貴方の実力が高過ぎて魔力が何度も枯渇してしまった…。想定外の、まるでブラッキンマウンテン全てに魔法をかけるような…」
と、言いながら棒をこちらに手渡し、完成です。と言った。
手にすると、棒は体の一部のように手に馴染む。その棒は姿を変え体を纏い始める。
そして、纏い終わると、武器が出来上がっていく。
鏡でその姿を見ると、その姿は海を思わせる。
まるで、服のようだが、叩くと一瞬で硬くなる。不思議な素材だ。
武器は大太刀と呼ばれるものでとても古い昔から受け継がれたような、そんな不思議な感じを受ける。
そのフルセットの姿はまるで、荒ぶる海の神。
立っている姿を鏡で見るだけで、凄い圧力がこちらにかかっているようだ。
「その防具は…この世に存在するか怪しいとも言われた世界三伝説装備の海神武王装束。和国に伝わる海神様が纏う戦闘特化の甲冑。そして、その武器も業物。海神王が死ぬ間際に次の海神王に託すため…と言って姿を変えたと言う伝承の残る、これも本当にあるか怪しかった武器…海斬刀」
「この装備を全て纏し者は神に至るとも言われた装備です。流石、L級。王族の頼みを断ってまでこちらを優先させてよかった…」
と話しつつも零の装備に魔力を込めているあたり職人だと思う。
そして、零のものは三十分ほどで終了した。
零の装備は、昔この世界の何処かを本当の主人を求めるために彷徨っていたルシファーと呼ばれる強大すぎるモンスターが、世界が産まれた当初から探し続けようやく見つけた主人を亡くした苦しみで泣き、その主人への念がたまたま近くにあった鎧と剣に宿ったと言われる装備堕天の涙と呼ばれる装備。
その装備は真っ白かつ、飾りの少ないメイド服を鎧にした様な装備。
そして、武器は伝説級の主婦マザーと呼ばれた今は亡き人が一生大事に使ったと言われる龍断包丁と呼ばれる超巨大な包丁だ。しかし、それはもう大剣にしか見えない。
これも、良い物を見させてもらった…と言い、棚からお礼の気持ちじゃ、これを受け取ってくれ。と、四角い白い箱を受け取った。
「これは、隷属の箱。いつか、色が変わった時にその箱を開けると、もっとも相性の良い隷属モンスターと出会うことが出来る、と言われる箱じゃ。残念ながらそちらの彼女の分はないが…そうじゃ、これを…と、ネックレスを差し出した。」
そして、零の耳元でごにょごにょと喋り、笑顔で送り出した。
「何を話していたんだ?」
「このネックレスは一番大事な人と結ばれる運命を手に入れると言われているネックレスだそうです。」
と、ウキウキとした顔で言ってきた。
そういうお年頃なのかな…ちょっと零の年齢感はよくわからないが。
そして、その装備のまま外に出ると、街の人達が気絶したり失禁したりと、大変な目にあった。
装備の着脱の方法を聞いていたので良かったが、この装備街中では着られないな。
そんなトラブルもありつつ、街中を歩く。古き良き街並みで、レンガ造りの建物が主だ。
良い匂いがしたので、店に入る。
その店は、どうやらクレープと言われるものを取り扱っているお店で、出来たばかりで行列は出来ていなかったが、結構並んでいた。
順番が来ると俺は苺とチョコのクレープを。零は、アイスと言われたものが入ったアイスクレープを頼んだ。
それが完成すると、ゆっくりと店員さんが笑顔で持ってきてくれた。
クレジット機能がある、と言われていたのでタブレットをその装置にかざすとティロリロリンと言う軽快なリズムが流れる。
その瞬間、店員の顔が引きつった。
「この度はこの様なお店にいらっしゃり、ありがとうございました!!気がつかずに並ばせてしまい申し訳無い!!死んでお詫びを!!」
大げさすぎやしないかね。まぁ、その程度で人が死んだら困るのでタダにしてくれたら許して上げると言って見た。軽い冗談のつもりだったが、店員は
「ありがとうございます!!これはほんの気持ちですが!!」
と言い、クレープの無料券がズラーっと並んだクーポン券をくれた。いや、冗談なんだけどって言おうと思ったがあらぬ誤解を受けて店員が切腹しても困るのでやめておいた。
このお店のクレープは美味しいな!苺とチョコが喧嘩せずに混ざり合い、鼻の中にチョコの香りが抜ける。食べたことがなかったが、タブレットで見て、一度食べて見たかったんだよね〜。食べて正解だったわ。また来よう。
今度からはちゃんと予約して行こう。今回の様なことになりかねない。
美味しかったよ、と店員に言い店を出ると、そこには多くの見物人が群がっていた。