やり過ぎ
さて、困ったな。私は今檻の中にいる。そして、闘技場の客はドン引きしている。まぁ、なにがあったか説明しようじゃないか。
そうだなーあれは、ついさっきの出来事。
「さーて、まずは初戦ダァ!!!!この強いモンスター十匹の檻の中に入れられてどれだけ生き延びられるか!!!!というのがこのテストの本質となってきます!危なくなればテレポートで脱出させるのでご安心を!勿論モンスターは殺しても構いませんよ!!!!」
と言われたので、全てのモンスターに固定をかけ、床に硬化の魔法を。そして、モンスターに軽量化、からの無重力化。さらに、加速魔法。床に打ち付けると水風船のようにバシャァっと音を立て、そこに残っているのはモンスターで出来た血の池。一部体液に毒性のあるモンスターがいる事がスキルで分かってたから、毒を分離、そして、一個だけなんか持って入ってもいいよって言われたんで大きな水槽をそこに毒と血液を収めて終了。後片付けは忘れない。
すると、この有様である。
審査員も若干引いている。
「さーて、次の試験までギルドでお待ちくださーい…」
実況しろよ。
そして、ギルドに戻ってくる。
「あら?脱落したのかしら?」
と聞かれたので、
「ここで待ってろって言われました」
というと、
「あら、おめでとう!!多分これでC級以上は確実よ!次の試験は厳しくなるから頑張って!!」
まぁ、やれるとこまで頑張るか…
そして、お祝いにお姉さんが、オレンジジュースなる飲み物をご馳走してくれた。
独特な味だ…実に美味…。
と、舌鼓を打っていると、また移動らしいので一気にそれを飲み干し、お礼を言ってワープホールをくぐる。
「次の試験はなんと!聖山ブラッキンマウンテンの暴れる猛獣を使った試験だぁぁぁ!!!!それが二匹もいるこの絶望的状況でいつまで生き残れるか!!!!この試験を行うのはなんと七年ぶりだと言う事で会場も湧いているぞ!!!!」
そして、また檻に入れられる。
今度の敵は魔法耐性がどうやらかなり高いらしく、と言うか大方そう言うモンスターを用意したんだろうが付け焼き刃の無重力化魔法が中途半端にしか効かない。後、このフィールド全域に魔法の流れを乱す装置みたいなものが所狭しと置かれている。檻には、自然の魔力を使わせないためか、魔力をシャットダウンする魔法が掛けられている。固定化ぐらいは出来るが、正直自分の魔力の無駄遣い感は否めない。
なので、単純にこの程度の魔物は物理で。とりあえず、筋力強化を最大まで、軽量化も掛け、スピード上昇も掛け、物理で殴る!!流石に、ブラッキンマウンテンのモンスターと言うだけあって、かなりの硬さだ。頭を吹き飛ばせ無かったよ。ただ、意識は失ったようだ。
そうしているうちに、背後からもう一匹のモンスターが爪で連撃をしてくる。それをその場で止まったまま全ての攻撃を当たることもなく躱し、最後の一撃を指先で止める。
これぐらいやればランクもうちょっと上がるんじゃねぇかと思った末のパフォーマンスだ。親指でその爪を挟み込み上に持ち上げ、ぐるぐると回り、檻にぶち当てる!!!!すると、檻が砕け、観客席に気を失っているモンスターが直撃仕掛ける所で、まわりこみ、そのモンスターを無重力化、硬化で床を固く、叩きつける!!
今度は水風船ではなく、例えるならばミンチのような状態になった。
すると、「勝負あり〜…」ドン引きで司会を続けている。
「もう試験ございませんので、適当に他のプレイヤーの観戦していてください。お連れの方頑張っていますよ」
あのテンションはどこへ。
観客達は、割と熱狂していたり、気絶していたり、色々な反応だ。
まぁ、前の闘技場の観客席になんか特別席みたいなのを用意されていたので、そこに座る。
すると、周りの観客はちょっとづつ、俺から距離をとった。
そんなに怖かったかな?
お、零は流石にもう試験を突破したようだ。そして、エルフは隠密術でちょっとづつ、モンスターの数を減らしていたが、今たまたまモンスターの一撃がクリティカルヒットし、檻に体をぶつけ、気絶。ワープで救出された。
マッチョメンは惜しいところまで行っていたが、流石に相手が多すぎてスタミナ切れを起こし、ギブアップした。
次に兵士二は、流石兵士。今まだ戦い続けている。剣技は流れるようで、その姿は周りの人を惹きつける。私とは正反対の戦い方だ。
そして、傷だらけになりながらも、最後の一匹を苦闘の末、なんとか倒し、次のステージへと移動した。
すると、俺の席も自動でワープし、さっきの場所に戻った。
今度の観客席は小高い所で、観客の目につかない所にある。
今零が、最後の一匹を強烈な蹴りの連撃でノックダウンした所だった。いやぁ…蹴りで打たれたところが、抉れていてなんとも血みどろですな。私が言える義理ではないが。
そして、拍手の中兵士二が入場する。あれ?私の時はなかったのにあれ?贔屓だ…。
と、しょげていると零がやって来て
「なかなか久し振りに手応えが少しはある相手でしたね!」
と、笑顔で来た。
そして、隣に椅子が出現し、二人で兵士二の戦いを見ることに。
兵士二の相手はなぜかモンスター一匹だった。しかも、俺が当たっていたモンスターより、断然質が落ちている。くそ…贔屓だ…。見た目がいいからってねぇ!!ちやほやされるのはどうかと思いますよ!ええ!はい!
と、一人で脳内で怒る事しか出来ない私だ。
そして、開戦した直後、激しい剣と爪との衝突音、兵士は押されながらも、なんとか相手の攻撃を躱す。そして、隙ができたときに、飛ぶ剣撃?のようなものを放つが、相手は気にも留めない様子で、一方的な暴力を振るう。
そして、剣士は魔力切れを起こしたのか、飛ぶ剣撃を打たなくなった。すると、次の瞬間体が赤くなった。多分これは身体強化系の魔法だな、戦法を切り替えたのか。
すると、押されていた剣士が相手をジリジリと押し返すが、モンスターはしびれを切らしたのか全力の一撃を打ち込んだ。すると、不意を突かれた兵士は檻に激突、なんとか耐えるが、フラフラだ。
「俺はまだ戦い続けるぞ!!!!」
と叫び、剣にも魔法をかけ、相手の懐に一瞬で走り込み
「ブレイブスラッシュ!!!!」
となにやら技名らしきものを叫び、モンスターに初めて傷をつけたが、力尽きたのか、その場で倒れてしまった。
しかし、周りからはよく頑張った!!!!さすが兵士!!!!と賞賛の声を浴びる。
私も感動したよ…私が一般客だったらな。
そして、表彰台に上がり、我々は表彰された。
マッチョメンはD級、エルフはE級、剣士はA級という、この初めての出場では五年ぶりという事で、賞賛される。そして、我々二人、零はSS級で、私はL級?らしい。なんか会場がドン引きしていたが、気のせいだろう。そして、ランキング?の様なもので名前を呼ばれた、職業と一緒に。
三位、城王・ブレイブ殿!職業!王子!。え?兵士じゃないん?そりゃもてはやされる訳ですよ。クソッ…権力に屈した…。
二位、海雪・零殿!職業!従者!。そうなのね。本当に従者なのね。
一位、海神・ドン殿!職業!無職!。なんかニートみたいで嫌だな。まぁ、ニートだけど。この世界では無職、と言うのは不思議な事ではない。フリーの狩人は、一応無職という扱いだし。裏稼業の人達も無職だ。
なので、当然あらぬ疑いで観客ドン引きだ。
そして、俺にはなんか虹色鉱石と呼ばれるもので作られたL級証明書を、これを持ってれば、ただで寝泊まりしたり、所定の場所でただで飲み食いしたり、家が与えられたり、顔パスで国を行き来出来る。他にも、マッサージはただ、商業も自由にしていい、というかこの世界で大抵のことは許されるらしく、人間界の転覆とかは流石に捕まるが大体多めに見られるらしい、怖すぎるだろ。
SSは、なんか怪しい光を放つ月鉱石というもので作られていた。これで許されないのは、王族の殺害はまずいらしい。逆に言えば、Lなら許されるのだ。しかし、王族にタメ口でも大丈夫だし、なんなら王宮で勝手に寝泊まりしてもなにも起こらないし、なんならいきなりの泊まりでも食事を王族が持ってきてくれる。
こういう特別待遇の理由は、たまに降りてくるブラッキンマウンテンのモンスターに単独対処がSSから可能だかららしい。一国が滅ぶ事もあるらしく、簡単に倒したが、この人間達的には非常に危険なのだ。
そして、SSはSS連合という集まりに行く義務がその特権の代わりに課せられる。SS級冒険者はこの世に零を合わせずに三人いて、過去を合わせても十人にも満たない。それ程に貴重な戦力なのだ。SS連合は年一回らしく、とりあえず顔合わせと、ディナーと、免許の更新に撮影されながら行くだけらしい。それだけでも、この世界にあるテレビ、という物の番組ランキング堂々の一位というから驚きだ。
そして、私L級。過去に一人居たらしいが、ブラッキンマウンテン単独登頂を目指して死体で発見されたらしい。要するにただのあアホである。
L級は義務などはなく、更新にも行かなくていい。ただ、そこに居てくれるだけでいいらしい。あれぐらいのモンスターを倒すだけでこの権力はどういう事だろうか?
でも、私は今日から権力に屈しないぞ!フハハ!と、脳内で王子に語りかける。
そして、解散した。このニュースは人間界全土に広まり、私の名前は知れ渡った。とりあえず数日はうるさそうなので、ギルドを出ると、直ぐに変装。少年の姿になる。そして、店で今日貰ったなんか、毎月振り込まれるらしい役職手当を貰い、早速、L級のために建てられている家とやらに向かうことにした。
L級になぜなったのか、という理由は後々語られます。