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dearert heart  作者: 一条 いちか
amor
3/3

私があなたにした最初で最後の身勝手な事。




覚悟を決めて開けたドアには、私の決意なんて知らない彼が困った笑みで立っていた。




「久しぶりに会えた…元気にしてた?」




秋の肌寒さが体の横をすり抜ける。




「久しぶり…とりあえず上がって」




うまく笑えたかな?


部屋に上がる彼。

前はドキドキしたりソワソワしたり、後ろをついてくる彼にいろいろ思ったこの廊下。



今日はそれらが懐かしく思う。





「座ってて、飲み物作ってくる…」


「ありがとう」



ソファに座るのを見てからキッチンに向かう。




後悔してるわけじゃない。

でも、少しでも時間を伸ばそうとしてる自分がいる。




「コーヒーなくて紅茶なんだけどいい?」




小さく音を立ててカップを置く。




「ありがとう。…ん、」




いつものように両手を開いて自分の足の間に招く彼に、あぁこれが最後なんだ。と心の誰かが言う。




「なんでそこに座るんだよ」



笑ってる彼の足の間ではなく、彼の前の床に座る。


向き合うように座れば彼は真顔に変わった。







「冗談だよね?」



口を開いた私に冗談だよねと訊いてくる彼。


心が痛い。

心が痛いってこうゆう事なんだ…こんなに苦しいんだと痛感する。




もう嘘だよと笑えないの…

本当にさよならなの…

これがあなたと私の最後。





「なんで?」




困ったあなたを真っ直ぐ見つめる。

寂しそうに、悲しそうに私の頭を撫でて…頬を撫でる。




「不安に思うことなんて何もないのに」



そう一言残して彼は家を出た。




何をすればいいのか分からない。

彼を追って体は出て行った道を振り返るのに…

私はここから動けないでいる。





追いかけなければ終わってしまう。

優しく触れた手を失ってしまう。




車のドアの閉まる音。

心臓が飛び跳ねる。





「でも、冗談だよって言えない…言ってあげれない…」



思い出があるこの家をしばらく出れそうにない。


優しいあなたを思い出せば愛おしくなる。


だけど、決めたの。


大好きなあなたに、私が唯一した身勝手な事。


初めてした身勝手なこと。


本当に今日がさよなら。





『私があなたにした最初で最後の身勝手な事。』








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